【中3国語】「それでも、言葉を」要旨・筆者の主張をわかりやすく解説

中学3年国語で学習する、鷲田清一「それでも、言葉を」について解説するよ。

この文章では、現代社会で「言葉」がどのような状態に置かれているのかを見つめながら、それでも言葉にはどのような力や可能性があるのかを筆者が考えているよ。

少し抽象的な言葉が多い文章だけれど、筆者の考えの流れを順番に追えば理解しやすくなるよ。

目次

「それでも、言葉を」基本情報

作品名それでも、言葉を
筆者鷲田清一わしだきよかず
ジャンル評論
主なテーマ現代社会における言葉のあり方と、言葉の力・可能性

筆者の鷲田清一は、1949年生まれ、京都府出身の哲学者だよ。

この文章では、新聞のコラムで言葉を紹介してきた筆者自身の経験を出発点にして、現代の社会で起きている「言葉」の問題について考えているんだ。

「それでも、言葉を」の要点

この文章で特に重要なポイント

  • 「言葉の暴力と無力」「言葉の横暴と言葉の喪失」という、両端に裂かれた状態が起きている
  • 言葉がイエスかノーかのように二極化している
  • 言葉には、意味だけでなく「言葉の肌理」がある
  • わかりやすさばかりを求めることが、言葉や価値の二極化につながっている
  • 言葉には、曖昧さ・含み・多義性などの独特の厚みがある
  • 筆者は、両端の「間」に息づく言葉を大切にしたいと考えている

くまごろう
この文章は、「今の言葉はダメだ」と批判するだけの文章じゃないよ。「それでも、言葉にはまだできることがある」と考えていくところが大切なんだ。

① 筆者が感じている「言葉の惨状」とは

筆者は新聞で、毎日誰かの言葉の一節を紹介するコラムを担当している。

ところが最近は、言葉そのものの状態に「めげそうになる」ことがあるというんだ。

筆者は、今の言葉の状態を、「言葉の暴力と無力。言葉の横暴と言葉の喪失。」と表しているよ。

大きく分けると、次の2つの方向があるんだ。

言葉の暴力・横暴

差別や捨てぜりふなど、人を傷つける言葉がむき出しのまま投げつけられる。

言葉の無力・喪失

「何を言っても変わらない」「聞いてもらえない」と感じ、言葉を発することを諦めてしまう。

つまり、一方では言葉を激しくぶつける人がいて、もう一方では言葉を使うこと自体を諦めてしまう人がいる。

くまごろう
片方は「言葉をぶつけすぎる」、もう片方は「言葉を出せなくなる」。正反対に見えるけれど、筆者はどちらも今の言葉が抱えている問題として見ているんだね。

「言葉が両端に裂かれる」とは?

本文では、言葉が「両端に裂かれ」、その結果、両極端な形でしか出てこない状態が問題にされている。

例えば、

  • イエスかノーか
  • オール・オア・ナッシング
  • 大声か沈黙か
  • ラブかヘイトか

というように、どちらか一方に振り切れた形になってしまうことだよ。

「言葉が『言葉の暴力・横暴』と『言葉の無力・喪失』の両端に裂かれ、イエスかノーか、ラブかヘイトかなどの両極端な形になっていく状態を示した図解。」

② SNSの普及と「反射的に返す言葉」

筆者は、私たちの周りにはたくさんの言葉があふれていると考えている。

SNSの普及によって、言葉を受け取った側が、自分に向けられた言葉に反射的にメッセージを返してしまうことも増えている。

ここで筆者が大切だと考えているのが、言葉をすぐに返さず、いったん自分の中に受け止める時間なんだ。

筆者が示している大切なプロセス

言葉を受け取る
↓
いったんのみ込む
↓
自分なりにその言葉と折り合いをつける
↓
それから言葉を返す

くまごろう
メッセージが届いた瞬間に「ムカつく!」と返すのではなく、「相手はどういうつもりで言ったんだろう?」と、一度考える時間をもつイメージだね。

③ 「言葉の肌理」とは?

この文章で、特にテストで重要なのが「言葉の肌理きめ」という表現だよ。

筆者は、言葉は単に「意味を伝えるための道具」ではないと考えている。

言葉には、「言いたいこと=意味」だけでなく、「言いたい」という気持ちも含まれているんだ。

言葉の肌理

言葉には、「言いたいこと」という意味だけでなく、「言いたい」という気持ちも含まれている。その気持ちは、言葉の感触や口調、声などに「肌理」となって現れるんだ。筆者は、言葉の背景にある「体温や手応え」まで想像することが大切だと考えているよ。

例えば、同じ「大丈夫」という一言でも、

  • 明るい声で「大丈夫!」と言う
  • 震える声で「……大丈夫」と言う

のでは、受け取る印象はかなり違うよね。

文字だけの意味が同じでも、声や表情、間の取り方などによって、そこに込められている気持ちは違ってくる。

「言葉には『言いたいこと=意味』だけでなく『言いたい』という気持ちも含まれ、それが感触・口調・声などの『言葉の肌理』として現れ、背景にある『体温や手応え』まで想像することを示した図解。」

くまごろう
「何を言ったか」だけじゃなくて、「どんな気持ちで、どんなふうに言ったか」まで含めて言葉なんだ、と筆者は考えているんだね。

④ 「言葉の二極化」とは?

現代は、たくさんの情報を短い時間で処理するため、わかりやすさや反応の速さが求められる。

その結果、じっくり考えたり、言葉を吟味して選んだりする余裕がなくなっていると筆者は考えている。

すると、複雑な問題まで、短く単純な言葉で片づけようとしてしまう。

言葉の二極化

物事を細かく考えず、「どちらか一方」だけに分けるような言葉が増えていくこと。

本文では、例えば、

  • 法令を遵守しているかいないか
  • ファクトかフェイクか
  • ラブかヘイトか
  • 大声か沈黙か

のような両極端な分け方が挙げられているよ。

その間にある、もっと複雑な事情や気持ちが見えなくなってしまうんだね。

「社会の余裕のなさ」と言葉の二極化

筆者は、こうした言葉の二極化の背景には、社会から「あそび」がなくなっていることがあると考えている。

ここでの「あそび」は、遊ぶという意味ではなく、隙間や余裕という意味だよ。

すぐ答えを出さずに考えたり、「どちらとも言い切れない」と立ち止まったりする余裕がなくなることで、言葉も先鋭化し、攻撃的になってしまうんだ。

⑤ 「言葉の二極化は、価値の二極化とも連動している」とは?

教科書の「学びへの扉」でも、特に考えるよう示されている重要部分だよ。

筆者は、言葉だけではなく、物事の価値そのものまで「よい/悪い」の2つに分けて考えがちになっていると指摘している。

例えば、

わかりやすい = よい
わかりにくい = 悪い

と単純に決めつけてしまうことだね。

でも現実の社会には、すぐには答えが出ない問題や、そもそも1つの正解がない問題がたくさんある。

筆者は、「わからないものに、わからないまま向き合い続ける」知的耐性が弱くなっていると考えている。

カンタンにいうと、「すぐ答えが出なくても、わからないまま考え続ける力」のことだね。

くまごろう
「すぐ答えが出ない=悪い」じゃないんだね。「まだわからないな」と考え続けることも大切だ、ということなんだ。

⑥ それでも、筆者が「言葉」を手放さない理由

ここまで読むと、「結局、言葉には力がないの?」と思うかもしれないね。

実際、筆者自身も言葉の無力さに打ちひしがれることがあると述べている。

それでも筆者は、言葉を手放すことはしない。

歴史を振り返ると、

  • 言葉を失いかけていることを知らせてきたのも言葉
  • 言葉の無力に苦しむ声を伝えてきたのも言葉
  • 言葉を抑え込もうとする力に抵抗してきたのも言葉
  • その挫折を残し、後から何度も反芻することを可能にしてきたのも言葉

だからなんだ。

つまり、言葉の無力さを知らせることも、言葉を抑え込む力に抗うことも、その挫折を残して後から考え直すことも、言葉が担ってきたということだね。

くまごろう
タイトルの「それでも」には、言葉の無力さや危うさを知りながらも、なお言葉に向き合おうとする筆者の姿勢が表れている、と考えられるね。

⑦ 筆者が注目する「両端の『間』に息づく言葉」

筆者が注目しているのは、両極端のどちらかに偏る言葉ではなく、両端の「間」に息づく言葉だよ。

例えば、

  • 言い切らずに含みをもたせる
  • いろいろな意味を含ませる
  • ちゃかしたり、皮肉ったりする
  • わざと裏返して表現する
  • 相手との距離を測りながら言葉を交わす

といった言葉のあり方だね。

「白か黒か」をすぐ決めるのではなく、その間にあるさまざまな違いを受け止める。

筆者は、そうした多様なグラデーションを許容する言葉が必要だと考えているんだ。

⑧ 「言葉には独特の厚みがある」とは?

これも「学びへの扉」で考えるよう示されている重要な表現だよ。

言葉の「厚み」

言葉には、1つのはっきりした意味だけではなく、含み・曲折・肌理・奥行き・曖昧さ・多義性など、さまざまなものが重なっているということ。

だからこそ言葉は、人の心の細かな動きや、物事のわずかな違いまで表現できるんだ。

例えば、人の気持ちは「うれしい」か「悲しい」かの2つだけではないよね。

うれしいけれど少し寂しい、怒っているけれど相手のことも理解できる――そんな簡単には1つに決められない気持ちもある。

そうした複雑なものを表現できるのが、言葉の「厚み」なんだ。

「二極化した言葉と、含み・曲折・肌理・奥行き・曖昧さ・多義性などの厚みをもつ『両端の「間」に息づく言葉』を比較し、多様なグラデーションを示した図解。」

くまごろう
言葉は「意味を1個運ぶ箱」じゃないんだね。いろいろな気持ちやニュアンスが何層にも重なっているから、人間の複雑な心まで表せるんだ。

⑨ 筆者が求めている言葉とは

筆者が求めているのは、相手にいきなりぶつかっていくような言葉でも、相手との接触を避ける言葉でもない。

お互いの距離を測りながら、「触れるか触れないか」の「あわい」で探り合うような言葉だよ。

ここでの「あわい」は、ものとものとの間や境目というイメージで考えると分かりやすい。

「自分の考えを押しつける」のでもなく、「何も言わない」のでもない。

その間で、相手との距離を考えながら、慎重に言葉を交わしていく。

それが、筆者が今の時代に必要だと考えている言葉のあり方なんだ。

⑩ 最後の「言葉のかけら」の意味

文章の最後で、筆者は自分が担当するコラムについて語っている。

筆者は、すぐ意味がわかる言葉ばかりではなく、読んだ人が「あれっ?」と引っ掛かる言葉も大切にしている。

一瞬では意味がつかめない表現や、逆説、意外な含みのある言葉などが、考え始めるための「フック」になるからだよ。

つまり、筆者にとって、すぐに理解できない言葉は「悪い言葉」ではない。

むしろ、そこから考えが始まることもあるんだ。

そして筆者は、自分が見つけた言葉がまだ見ぬ誰かへの贈り物となり、その人の中で育った言葉が、さらに別の誰かを支えることを願っている。

くまごろう
「言葉を届けて終わり」じゃないんだね。受け取った人の中でその言葉が育ち、また別の誰かへつながっていく。そこに筆者が見ている「言葉の可能性」があるんだ。

「それでも、言葉を」の文章構成

流れ内容
① 問題提起現代の言葉に「暴力と無力」「横暴と喪失」という両端に裂かれた状態が起きている
② 現代の言葉の状況SNSの普及によって反射的な言葉のやり取りが増え、さらに社会の「余裕のなさ」が言葉の二極化の背景にあると筆者は考えている
③ 言葉の本来の性質言葉には「肌理」があり、意味だけでなく「言いたい」という気持ちや体温・手応えも含まれている
④ 問題の深まり言葉の二極化は価値の二極化ともつながり、わかりやすさばかりが求められている
⑤ 言葉への見方言葉の無力や危うさそのものも、言葉によって知らされ、記録され、反芻されてきた
⑥ 主張両端の「間」に息づく、厚みをもった言葉を大切にする
⑦ 結び言葉が人から人へ渡り、誰かを支える可能性を示す

「それでも、言葉を」の筆者の主張

筆者の主張

言葉や価値が二極化する時代だからこそ、含み・曲折・肌理・奥行き・曖昧さ・多義性といった「厚み」をもつ、両端の「間」に息づく言葉を大切にし、互いに適切な距離を測りながら言葉を交わしていくことが必要である。

そして、そのような言葉が人から人へ渡り、誰かを支える可能性を筆者は見いだしているんだね。

「それでも、言葉を」の要旨

現代社会では、「言葉の暴力と無力」「言葉の横暴と言葉の喪失」が見られ、言葉が両端に裂かれて二極化している。しかし、言葉には意味だけでなく、肌理や含み、曲折、曖昧さ、多義性などの独特の厚みがある。だからこそ、わかりやすさだけを求めるのではなく、両端の「間」に息づく言葉を大切にし、互いに適切な距離を測りながら言葉を交わしていくことが必要である。

重要語句の意味

言葉意味・本文での使われ方
米びつ米を入れておく容器。
礫つぶて小さい石。本文では、人を傷つける言葉が石のように投げつけられる様子を表している。
アリバイ本文では、都合の悪い事実などを打ち消すために示す、別の事実や理由。
頬が緩むうれしさなどから、思わず表情がやわらぐ。
惨状むごく、いたましい状態。
露骨隠さず、むき出しにする様子。
うなだれる気落ちして、頭を垂れる。
あおる相手の感情や行動を強く刺激する。
折り合いをつける違いなどを調整し、自分なりに納得できるところを見つける。
肌理もともとは物の表面の細かさなどを表す言葉。本文では、言葉の感触や口調、声などに現れる「言いたい」という気持ちを表している。
腑に落ちる納得する。
短絡的十分に考えず、すぐに結論へ結びつける様子。
先鋭化考え方や態度などが、より鋭く極端になること。
遵守決まりなどに従って守ること。
ひもとく書物を読んだり、物事を調べたりする。
反芻本文では、あることを何度も思い返し、考え直すこと。
曲折物事がまっすぐ単純には進まず、さまざまな事情や変化を含むこと。
微細非常に細かいこと。
寛容他人の考えや違いなどを広く受け入れること。
あわいものとものとの間や境目。

「学びへの扉」で押さえたい4つの問い

① 「言葉の肌理」とは?

言葉には意味だけでなく「言いたい」という気持ちも含まれ、それが感触や口調、声などに現れるということ。

② 「言葉の二極化は、価値の二極化とも連動している」とは?

言葉を「イエス/ノー」のように両極端に分けるだけでなく、「わかりやすいものはよい/わかりにくいものは悪い」のように、価値まで単純な2つに分けてしまうこと。

③ 「言葉には独特の厚みがある」とは?

言葉には、含み・曲折・肌理・奥行き・曖昧さ・多義性などがあり、人の複雑な心や物事の細かな違いまで表現できるということ。

④ 筆者が大切にしたい言葉とは?

どちらか一方に偏る言葉ではなく、両端の「間」に息づく言葉。多様さや曖昧さを受け止めながら、相手との適切な距離を探っていく言葉。

「それでも、言葉を」まとめ

  • 現代では、「言葉の暴力と無力」「言葉の横暴と言葉の喪失」という状態が起きている。
  • 言葉は両端に裂かれ、両極端な形で表れやすくなっている。
  • 言葉には意味だけでなく、「言いたい」という気持ちが感触・口調・声などに現れる「言葉の肌理」がある。
  • 「わかりやすい/わかりにくい」のように、価値そのものも二極化している。
  • 言葉には、含み・曲折・肌理・奥行き・曖昧さ・多義性などの独特の厚みがある。
  • 筆者は、両端の「間」に息づく言葉を大切にしたいと考えている。
  • 言葉の無力や危うさも言葉によって伝えられ、残され、考え直されてきた。
  • 最後には、言葉が誰かへの贈り物となり、その人の中で育って、さらに別の誰かを支える可能性が示されている。

くまごろう
「すぐわかること」だけを求めず、わからないものや複雑なものと向き合うこと。それが、この文章を読むうえでとても大切なポイントだよ。

ここまで学習できたら、「それでも、言葉を」のテスト対策練習問題やドリルに挑戦しよう!

【中3国語】「それでも、言葉を」テスト対策練習問題
【中学国語】「それでも、言葉を」本文前半ドリル
【中学国語】「それでも、言葉を」言葉の肌理・二極化ドリル
【中学国語】「それでも、言葉を」言葉の厚み・両端の『間』ドリル
【中学国語】「それでも、言葉を」重要語句ドリル

参考文献・資料

  • 光村図書出版『国語3』鷲田清一「それでも、言葉を」
  • 光村図書出版『国語3』「学びへの扉」

運営者情報

青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。 ※サイト全体の運営実績についてはこちらにまとめています。「ゆみねこの教科書」は、ゆみねこの教科書教育メディア合同会社が運営しています。会社概要・事業内容については、コーポレートサイトをご覧ください。

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