「俳句を味わう」9句をわかりやすく解説|季語・情景・表現の効果
中学3年国語で学習する「俳句を味わう」について、教科書に登場する9つの俳句を一つずつわかりやすく解説するよ。
前の「俳句の可能性」では、俳句には季語・定型・切れ字・音やリズム・省略など、短い言葉の中にさまざまな表現の工夫があることを学んだね。
「俳句を味わう」では、そこで学んだことを実際の俳句に使って、季節・情景・表現の工夫・そこから感じられることを考えていこう。
※以下の俳句は、それぞれの季語・表現・構成・鑑賞について解説するため、必要な範囲で引用しています。引用部分は本文と区別し、それぞれに作者名と出典を示しています。
「俳句を味わう」はどう読めばいい?
俳句を読むときは、いきなり「作者はどんな気持ち?」と考えるよりも、まず句に実際に書かれている言葉を見るのがポイントだよ。
| 見るところ | 考えること |
|---|---|
| 季語 | どの季節の句なのか |
| 情景 | どんな場所・もの・動きが見えてくるか |
| 表現 | 繰り返し・比喩・切れ字・音・リズムなどが使われているか |
| 効果 | その表現によって、どんな印象や感じが生まれるか |
さらに、5・7・5の定型になっているか、どこに切れがあるかにも注目すると、俳句の作り方まで見えてくるよ。

石田波郷の俳句
バスを待ち大路の春をうたがはず
石田波郷/出典:光村図書出版『国語3』「俳句を味わう」
| 作者 | 石田波郷 |
|---|---|
| 季語・季節 | 「春」・春 |
| 形式 | 有季定型・5・7・5 |
| 切れ字・切れ | 明確な切れ字なし |
| 注目したい表現 | 「大路」「うたがはず」 |
| 中心的な鑑賞 | 広い大路に満ちる春の気配を、確かなものとして受け止めている感じ |
どんな情景?
「大路」は、大きな道、広い通りのことだよ。
バスを待っている作者の目の前には、広い道があり、そこに春の気配が大きく広がっているように感じられるね。
特に注目したいのが、最後の「うたがはず」。
これは「疑わない」という意味だよ。
「春なのかな?」と迷っているのではなく、目の前の大路に満ちている春の気配を、疑う余地のない確かなものとして受け止めている感じが伝わってくるね。
高屋窓秋の俳句
ちるさくら海あをければ海へちる
高屋窓秋/出典:光村図書出版『国語3』「俳句を味わう」
| 作者 | 高屋窓秋 |
|---|---|
| 季語・季節 | 「さくら」・春 |
| 形式 | 有季定型・5・7・5 |
| 切れ字・切れ | 明確な切れ字なし |
| 注目したい表現 | 「ちる」の繰り返し、「海あをければ」 |
| 中心的な鑑賞 | 「ちる」の反復によって、桜が青い海へ次々に散っていく動きが印象づけられる |
「ちる」が2回出てくることに注目
この句では、最初にも最後にも「ちる」という言葉が出てくるね。
最初の「ちる」で桜が舞い落ち始め、最後の「海へちる」で、その桜が青い海の方へ次々に散っていく様子が見えてくる。
「ちる」という同じ言葉を繰り返すことで、桜が一度だけ落ちるのではなく、次々と散り続けている動きが強く印象づけられるね。
また、「海あをければ」という言葉によって、目の前には鮮やかな青い海が広がっていることも分かる。
短い言葉なのに、桜が舞い、海へ散っていく大きく開けた景色が見えてくる句だね。
中村草田男の俳句
萬緑の中や吾子の歯生え初むる
中村草田男/出典:光村図書出版『国語3』「俳句を味わう」
| 作者 | 中村草田男 |
|---|---|
| 季語・季節 | 「萬緑」・夏 |
| 形式 | 有季定型・5・7・5 |
| 切れ字・切れ | 切れ字「や」。「萬緑の中」で大きく切れる |
| 注目したい表現 | 「萬緑」「や」「吾子の歯」 |
| 中心的な鑑賞 | 一面の草木の生命力と、幼い子どもの成長とが響き合う |
「萬緑」は、見渡す限り草木が青々と茂っている様子を表す夏の季語だよ。
「吾子」は自分の子どもという意味。
つまりこの句では、一面に力強く茂る緑の中で、作者の幼い子どもに小さな歯が生え始めた、その瞬間が詠まれているんだね。
大きな自然と、小さな歯

周りには「萬緑」という大きな自然の生命力が広がっている。
一方で、作者が見つめているのは「吾子の歯」という、とても小さなものだね。
大きさには大きな差があるけれど、草木が勢いよく育つことも、子どもに初めて歯が生えることも、どちらも新しい命の成長を感じさせる。
「萬緑」と「吾子の歯」が響き合うことで、子どもの成長がいっそう生き生きと感じられる句だね。
なお、「や」は代表的な切れ字。「萬緑の中」でいったん大きく切れ、そのあとに「吾子の歯」へ視線が移っていくところにも注目しよう。
桂信子の俳句
山越える山のかたちの夏帽子
桂信子/出典:光村図書出版『国語3』「俳句を味わう」
| 作者 | 桂信子 |
|---|---|
| 季語・季節 | 「夏帽子」・夏 |
| 形式 | 有季定型・5・7・5 |
| 切れ字・切れ | 明確な切れ字なし |
| 注目したい表現 | 「山」と「夏帽子」の形の重なり |
| 中心的な鑑賞 | 山と夏帽子の形が重なるように見える、視覚的なおもしろさ |
この句のおもしろさは、なんといっても山の形と夏帽子の形だね。
「山越える」とあるので、移動していく夏帽子の姿が見える。そして、その帽子の形が背景にある山の形と重なるように感じられる。
山という大きなものと、帽子という身近で小さなものが、「形」によって結び付けられているところに、視覚的なおもしろさがあるよ。
俳句に書かれていない「誰が帽子をかぶっているのか」まで一つに決める必要はないよ。句に書かれている景色を手がかりに想像して味わおう。
橋本多佳子の俳句
いなびかり北よりすれば北を見る
橋本多佳子/出典:光村図書出版『国語3』「俳句を味わう」
| 作者 | 橋本多佳子 |
|---|---|
| 季語・季節 | 「稲光」・秋 |
| 形式 | 有季定型・5・7・5 |
| 切れ字・切れ | 明確な切れ字なし |
| 注目したい表現 | 「北よりすれば北を見る」 |
| 中心的な鑑賞 | 稲光という一瞬の自然現象と、それを見る人の動きが結び付く |
「いなびかり」は稲光、つまり稲妻の光のことで、秋の季語だよ。
北の方で稲光が光った。その方向へ、作者の顔や視線が向く。
ただそれだけの動きなのだけれど、光った一瞬と、人がそちらを見る動きがぴったり重なっているんだね。
ほんの一瞬の自然現象と、それに反応する人間の動きを、短い言葉で鮮やかに切り取った句として味わえるよ。
川端茅舎の俳句
金剛の露ひとつぶや石の上
川端茅舎/出典:光村図書出版『国語3』「俳句を味わう」
| 作者 | 川端茅舎 |
|---|---|
| 季語・季節 | 「露」・秋 |
| 形式 | 有季定型・5・7・5 |
| 切れ字・切れ | 切れ字「や」・二句切れ |
| 注目したい表現 | 「金剛」「ひとつぶ」「石の上」「や」 |
| 中心的な鑑賞 | 「金剛」という硬く強い印象の語と、小さな一粒の露との取り合わせ |
「金剛」は、非常に硬く強いものを思わせる言葉だよ。
そして、この句ではその「金剛」という言葉が「露」を表しているところがおもしろいんだ。
そこに「ひとつぶ」という小ささと、「石の上」という情景が組み合わされている。
言葉の取り合わせを味わおう
「金剛」という硬く強い印象の語と、ごく小さな「露ひとつぶ」。さらに、その露が「石の上」にある。
この言葉の取り合わせによって、小さな一粒の露の存在が強く印象づけられると考えられるね。
「や」は切れ字で、第二句の最後に置かれているので二句切れ。「露ひとつぶや」でいったん大きく切れることで、一粒の露が印象に残るね。

水原秋桜子の俳句
冬菊のまとふはおのがひかりのみ
水原秋桜子/出典:光村図書出版『国語3』「俳句を味わう」
| 作者 | 水原秋桜子 |
|---|---|
| 季語・季節 | 「冬菊」・冬 |
| 形式 | 有季定型・5・7・5 |
| 切れ字・切れ | 明確な切れ字なし |
| 注目したい表現 | 「まとふ」「おのがひかりのみ」 |
| 中心的な鑑賞 | 冬菊そのものが、自らの光だけをまとっているような静かな美しさ |
この句には、少し昔の言葉が使われているね。
- まとふ=まとう
- おのが=自分自身の
- のみ=だけ
つまり、冬菊が自分自身の光だけをまとっているように見える情景だね。
冬は花の少ない季節。その中にある冬菊の姿へ目を向けることで、菊そのものが静かに光っているような美しさが感じられる。
特に「のみ」は「だけ」という意味。「おのがひかりのみ」と限定することで、ほかのものではなく、冬菊自身がもつ光がいっそう強く印象づけられているね。
神野紗希の俳句
星空は無音の瀑布鯨飛ぶ
神野紗希/出典:光村図書出版『国語3』「俳句を味わう」
| 作者 | 神野紗希 |
|---|---|
| 季語・季節 | 「鯨」・冬 |
| 形式 | 有季定型・5・7・5 |
| 切れ字・切れ | 切れ字なし。「無音の瀑布」の後で意味上の大きな切れを感じられる |
| 注目したい表現 | 「星空は無音の瀑布」という隠喩 |
| 中心的な鑑賞 | 星空・瀑布・鯨という大きなイメージが重なり、静けさと壮大さを感じさせる |
「瀑布」とは、滝のことだよ。
この句では、星空を「音のない巨大な滝」のように捉えているんだね。
「無音」と「瀑布」の組み合わせがおもしろい
本物の大きな滝なら、ごうごうとものすごい音がするはず。
ところが、この句では「無音の瀑布」。
音は全くないのに、満天の星が巨大な滝のように迫ってくる。そこから、静けさと圧倒的な大きさの両方が感じられるね。
さらに「鯨飛ぶ」という非常に大きなイメージが加わることで、星空・滝・鯨という巨大なものが重なり、現実の景色を超えるような壮大な世界が広がっていくよ。
「星空は無音の瀑布」は、「〜のようだ」と言わずに星空を瀑布にたとえているので、隠喩と考えられるね。

切れ字がなくても、句には切れが生まれる
この句には「や」「かな」「けり」のような切れ字は使われていないよ。
でも、「星空は無音の瀑布」で一つの大きなイメージができあがり、その後に「鯨飛ぶ」という新しい像が現れる。
そのため、切れ字がなくても「無音の瀑布」の後に意味上の大きな切れを感じることができるんだ。

尾崎放哉の俳句
咳をしても一人
尾崎放哉/出典:光村図書出版『国語3』「俳句を味わう」
| 作者 | 尾崎放哉 |
|---|---|
| 季語・季節 | 季語なし |
| 形式 | 自由律俳句・無季俳句 |
| 切れ字・切れ | 明確な切れ字なし |
| 注目したい表現 | 「咳をしても」「一人」 |
| 中心的な鑑賞 | 「咳をしても」と「一人」の結び付きによって、静けさや孤独感が強く印象づけられる |
これはとても短い句だね。
5・7・5の形でもなく、季語も使われていない。
そのため、この句は自由律俳句であり、同時に無季俳句でもあるよ。
「咳をしても」の後に残るもの
咳をすると、静かな場所ならその音が響くよね。
でも、その後にある言葉は「一人」。
咳をしても、それに応える人はいない。「一人」という短い言葉によって、周囲の静けさや、一人でいることから生まれる孤独感が強く印象づけられるね。
作者本人がその瞬間にどんな感情だったかを一つに決めるのではなく、この言葉の組み合わせが読み手にどんな感じを与えるかに注目して味わおう。
「俳句を味わう」9句を一覧で整理しよう
| 作者 | 季語・季節 | 形式 | 切れ字・切れ | 注目したい表現 | 中心的な鑑賞 |
|---|---|---|---|---|---|
| 石田波郷 | 春・春 | 有季定型 | 明確な切れ字なし | 「うたがはず」 | 春の気配を確かなものとして受け止める感じ |
| 高屋窓秋 | さくら・春 | 有季定型 | 明確な切れ字なし | 「ちる」の反復 | 桜が海へ散り続ける動きを印象づける |
| 中村草田男 | 萬緑・夏 | 有季定型 | 切れ字「や」。「萬緑の中」で大きく切れる | 萬緑と吾子の歯 | 大自然の生命力と子どもの成長が響き合う |
| 桂信子 | 夏帽子・夏 | 有季定型 | 明確な切れ字なし | 山と帽子の形 | 山と夏帽子が重なる視覚的なおもしろさ |
| 橋本多佳子 | 稲光・秋 | 有季定型 | 明確な切れ字なし | 「北よりすれば北を見る」 | 稲光と人の動作が一瞬に結び付く |
| 川端茅舎 | 露・秋 | 有季定型 | 切れ字「や」・二句切れ | 「金剛」「ひとつぶ」「や」 | 硬く強い印象の語と、小さな一粒の露との取り合わせ |
| 水原秋桜子 | 冬菊・冬 | 有季定型 | 明確な切れ字なし | 「おのがひかりのみ」 | 冬菊そのものが光をまとうような静かな美しさ |
| 神野紗希 | 鯨・冬 | 有季定型 | 切れ字なし。「無音の瀑布」の後に意味上の切れ | 「星空は無音の瀑布」 | 静けさと壮大さを同時に感じさせる比喩 |
| 尾崎放哉 | 季語なし | 自由律俳句・無季俳句 | 明確な切れ字なし | 「咳をしても」「一人」 | 静けさや孤独感を強く印象づける |
9句を比べると、俳句の表現の違いが見えてくる

9つの俳句を並べてみると、同じ「俳句」でも、魅力の生まれ方はずいぶん違うことが分かるね。
- 季語の力を生かしている句
- 言葉の繰り返しで動きやリズムを生み出している句
- 切れ字によって印象を強めている句
- 切れ字を使わなくても、意味上の切れを感じさせる句
- 形や方向など視覚的な特徴がおもしろい句
- 比喩によって現実を超えるような世界を作っている句
- 5・7・5や季語にとらわれない自由律・無季の句
つまり、俳句を味わうときに大切なのは、「この句は何を言っているの?」だけではないんだ。
「なぜ、この言葉なのか」
「どこで句が切れているのか」
「この言葉の並べ方によって、どんな感じが生まれているのか」
まで考えると、その俳句ならではのよさが見えてくるよ。
ここまで学習できたら、「俳句を味わう」のテスト問題とドリルに挑戦してみよう!
「俳句を味わう」テスト対策練習問題|9句の季語・表現・鑑賞
【中学国語】「俳句を味わう」漢字・語句ドリル
【中学国語】「俳句を味わう」季語・基本知識ドリル
【中学国語】「俳句を味わう」内容理解ドリル
【中学国語】「俳句を味わう」表現効果・鑑賞ドリル
鑑賞文を書くときのポイント
「この句が好きです」「きれいだと思いました」だけでは、鑑賞文としては少しもったいないよ。
自分が感じたこと+そう感じさせた具体的な表現をセットにするのがポイント。
例えば、
私は、〇〇という言葉が印象に残った。この表現によって〜という情景が浮かび、〜のような感じが伝わってくるからだ。
のように書けば、俳句の表現そのものを根拠にした鑑賞文になるよ。
前の「俳句の可能性」で学んだ季語・省略・音・リズム・切れ字・切れ・比喩なども使いながら、自分が一番心に残った一句を味わってみよう。
参考文献・参考資料
- 光村図書出版『国語3』「俳句を味わう」(令和7年度版中学校国語教科書)
- 光村図書出版「中学校 国語 年間指導計画・評価計画資料」
- 文部科学省「令和7年度使用中学校用教科書 編修趣意書」
- 文化庁「著作権テキスト 令和7年度版」
※本記事では、光村図書『国語3』「俳句を味わう」に掲載された9句について、季語・形式・切れ字・表現・構成・鑑賞を解説するため、必要な範囲で作品を引用しています。引用部分は本文と明確に区別し、それぞれ作者名と出典を示しています。作者の心情について句から一つに決められない部分は断定せず、実際に使われている言葉や表現を根拠に解説しています。
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青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。 ※サイト全体の運営実績についてはこちらにまとめています。

