宇多喜代子『俳句の可能性』解説|季語・定型・切れ字・表現の効果

中学3年国語で学習する、宇多喜代子さんの「俳句の可能性」について解説するよ。

俳句というと、「5・7・5で、季語を入れて作るもの」と覚えている人も多いよね。

もちろん、それは俳句の大切な基本だよ。

でも「俳句の可能性」では、そこからもう一歩進んで、俳句の短い言葉の中に、どのような表現の工夫があるのかを考えていくんだ。

宇多喜代子さんは、いくつかの俳句を取り上げながら、それぞれの句のどんな言葉や表現に注目し、そこにどんな魅力を見いだしているのかを説明しているよ。

そこから、季語や定型、省略、音やリズムなどを生かすことで、短い俳句にも豊かな情景や感覚を表す力があることが見えてくるんだ。

たろう
俳句って短いから、表現できることも少なそうだけど……。

yumineko
実は、その短さを生かしたさまざまな工夫にこそ、俳句のおもしろさがあるんだよ。
目次

「俳句の可能性」とは

「俳句の可能性」は、俳人の宇多喜代子(うだ きよこ)さんが、俳句という表現の特徴や魅力について説明した文章だよ。

この文章では、5つの俳句を取り上げながら、

  • 省略された部分を読み手が想像できること
  • 5・7・5という「定型」
  • 季節を表す「季語」
  • 音やリズムそのものが表現になること
  • 「切れ字」など、短い中で表現を工夫できること
  • 自由律俳句や無季俳句のような表現の広がり

などを説明しているんだ。

つまりこの文章では、単に「俳句の決まりを覚える」だけではなく、短い俳句の中で、作者がどのように言葉を選び、どんな表現の効果を生み出しているのかを考えることが大切なんだね。

俳句と散文の違い

文章の初めでは、飯田龍太の俳句を例にして、俳句と散文の違いを考えているよ。

俳句を読んでみると、「どの子」とは誰なのか、その子たちはどこにいるのか、何人いるのか、といったことまでは詳しく説明されていないよね。

出来事を正確に伝える報道記事などなら、「誰が」「いつ」「どこで」「何をしたのか」などを具体的に説明することが必要になる場合が多いよね。

でも、俳句では、全てを説明する必要はないんだ。

書かれていない部分があるからこそ、読む人が自分の経験や想像を使って、その場面を補いながら味わうことができるんだよ。

文章の種類特徴
散文一定の韻律や音数を基本とせず、通常の文章の形で書かれたもの。
韻文言葉のリズムや音の響きなどを生かして表現するもの。詩・短歌・俳句などが含まれる。

俳句は韻文の一つだよ。

たろう
書かれていないことが多いのに、それが俳句のよさになるの?

yumineko
そうなんだ。書かれている言葉を手がかりに、読む人が想像を広げられるところも俳句の魅力なんだよ。

俳句の基本「定型」と「季語」

「定型」とは

俳句の基本的な形は、5・7・5の17音だよ。

このように、決まった音数の型をもつことを「定型」というんだ。

「5文字・7文字・5文字」と考えるのではなく、正確には音の数で考えることに注意しよう。

「季語」とは

季語とは、季節を示したり、その季節と深く結び付いて使われたりする言葉のことだよ。

例えば、本文で取り上げられている「涼し」は夏の季語だね。

でも、季語はただ「この句は夏です」と知らせるだけの記号ではないんだ。

一つの季語から、その季節の空気や風景、気温、人々の暮らし、その季節にまつわる感覚や記憶などまで、想像を広げることができるよ。

短い俳句の中で、季語は少ない言葉から豊かなイメージを広げる大切な働きをしているんだね。

「歳時記」とは

歳時記(さいじき)とは、季節の言葉をまとめた本のことだよ。

俳句の歳時記では、季語を季節ごとに分類し、その意味や使われ方、例句などが紹介されているんだ。

俳句を作ったり鑑賞したりするときに、「この言葉はどの季節の季語なのか」「どんなイメージをもつ季語なのか」を確かめることができるよ。

「有季定型」とは

俳句の基本となる二つの特徴をまとめてみよう。

言葉意味
有季季語があること
定型5・7・5の基本的な型をもつこと

この二つを合わせたものを、「有季定型」というよ。

有季定型 = 季語がある + 5・7・5を基本とする

ただし、全ての俳句が必ずこの形で作られているわけではないんだ。

「自由律俳句」と「無季俳句」

俳句には有季定型という基本的な形がある一方で、それとは異なる形の俳句も作られてきたよ。

自由律俳句とは

自由律俳句とは、5・7・5の定型にとらわれず、自由な音数やリズムで作られた俳句のことだよ。

本文では、種田山頭火の句が例として取り上げられているね。

宇多さんは、同じ言葉が繰り返されるリズムが、山道をひたすら進む歩調に重なり、読み手まで一緒に歩いているような調子へ誘い込むところに注目しているよ。

つまり、5・7・5にそろっていなくても、言葉の繰り返しや音の並びによって、その句ならではのリズムを生み出すことができるんだね。

無季俳句とは

無季俳句とは、季語を用いない俳句のことだよ。

ここで間違えやすいのが、「自由律俳句=無季俳句」ではないということ。

俳句の種類5・7・5季語
有季定型基本的にありあり
自由律俳句定型にとらわれないある場合も、ない場合もある
無季俳句定型かどうかとは別なし

たろう
「自由律」は形の話で、「無季」は季語の有無の話なんだね。

yumineko
そのとおり!ここはテストでも区別できるようにしておこう。
有季定型・自由律俳句・無季俳句の違いを5・7・5と季語の有無で比較した図解

5つの俳句を筆者はどう評価している?

「俳句の可能性」でとても大切なのは、宇多喜代子さんが、それぞれの俳句のどんな表現に注目しているのかを考えることだよ。

5つの句について、大きく整理してみよう。

作者筆者が注目していることそこから分かる俳句の魅力
飯田龍太詳しい説明を省き、定型や季語を生かしていること書かれていない部分を読み手が想像し、さまざまな場面を思い描くことができる
正岡子規限られた言葉の中で、場面を印象的に表していることわずかな言葉から、病床の子規と雪景色との関わりを想像できる
友岡子郷短い言葉の中で、跳び箱に触れた瞬間と「冬」という季節感を結び付けていること一瞬の感覚を鮮やかに捉えることができる
加藤楸邨「ぽぽ」という音の響きや、声に出したときの唇の形言葉の音そのものを、たんぽぽの様子の表現に生かすことができる
種田山頭火言葉の繰り返しによって生まれるリズム定型にとらわれなくても、言葉のリズムによって情景や感覚を伝えることができる
飯田龍太・正岡子規・友岡子郷・加藤楸邨・種田山頭火の5句から俳句の表現の可能性を整理した図解

このように比べると、宇多さんは「俳句は5・7・5だからよい」と一つの基準だけで評価しているわけではないことが分かるね。

省略・季語・音・リズム・言葉の組み合わせなど、それぞれの句で特に効果的な表現に注目しているんだ。

俳句では音やリズムも表現になる

俳句を読むときは、言葉の意味だけではなく、実際に声に出したときの音やリズムにも注目することが大切だよ。

本文では、加藤楸邨のたんぽぽを詠んだ句について、「ぽぽ」というときの唇の丸い形と、声に出したときの響きに注目しているね。

その特徴をさらに生かすことで、たんぽぽの丸い綿毛の軽やかな様子が、言葉の音そのものから感じられるようになっているんだ。

種田山頭火の句でも、繰り返される言葉のリズムが歩調と重なり、読む人を句の世界へ引き込んでいくよ。

つまり俳句では、「何が書かれているか」だけではなく、「どんな音・リズムで表現されているか」も大切なんだね。

俳句は声に出して読んでみよう!

音の繰り返しや言葉の響き、リズムから、黙読だけでは気づきにくい表現の工夫が見つかることがあるよ。

「切れ字」と句の切れ目

俳句の切れ字と句の切れ目の違い、切れ字がなくても切れが生まれることを説明した図解

「切れ字」とは

切れ字とは、俳句の中で句の切れを作ったり、詠嘆や余韻を生んだりする言葉だよ。

代表的なものには、

  • かな
  • けり

などがあるよ。

例えば句の終わりに置かれた「かな」「けり」は、その言葉を強く印象づけたり、詠嘆や余韻を生んだりする働きをすることがあるんだ。

切れ字がなくても俳句は作れる

ただし、俳句を作るときに切れ字を必ず使わなくてはいけないわけではないよ。

本文では、友岡子郷の句について、切れ字を用いずに一句を完成させた俳句として紹介しているね。

つまり、定型の中でも、全てを同じ方法で表現する必要はないんだ。

限られた言葉の中で、どの言葉を置き、どこで意味や調子を区切り、どのような余韻を残すかという工夫も、俳句の表現の一つなんだね。

俳句は省略された部分を想像して味わう

俳句はとても短いから、いつ・どこで・誰が・どうして、ということを全て説明することはできないよね。

でも筆者は、それを俳句の弱点とは考えていないんだ。

むしろ、省略されている部分を、読む人が句の言葉を手がかりに想像して補えることが、俳句の大きな特徴なんだよ。

例えば正岡子規の句からは、重い病気で病床にある子規が、雪の深さを何度も尋ねていることが分かるね。

そこから、周囲の人に雪の深さを尋ねながら、外の雪景色へ思いを向けている様子などを想像することができるよ。

ただし、「想像できる」ということは、何でも好きなように考えてよいという意味ではないよ。

句に実際に使われている言葉や表現を根拠にして、書かれていない部分を補っていくことが大切なんだ。

俳句を味わうとき

書かれている言葉や表現を手がかりにする

省略されている場面を想像する

情景や句から伝わる感じ方を豊かに味わう

短い俳句が省略と読み手の想像によって豊かな情景へ広がる仕組みを示した図解

短い言葉だからこそ生まれる表現

「俳句は短いから、表現できることが少ない」と思ってしまいそうだよね。

でも、この文章に登場する俳句を見てみると、短いからこそ生まれるさまざまな表現があることが分かるよ。

  • 詳しい説明を省き、読み手の想像を広げる
  • 季語一つから季節の情景を広げる
  • 一瞬の動きや感覚を鮮やかに捉える
  • ある時間や風景を、少ない言葉で印象的に表す
  • 音やリズムそのものを表現として使う
  • 切れ字などを使い、詠嘆や余韻を生み出す

だから、俳句の魅力を「一瞬を切り取ること」だけにまとめることはできないんだ。

短い形式の中で、言葉の選び方・季語・音・リズム・省略などを生かして、鮮明な情景や感覚を生み出すことができる。

さらに、有季定型だけでなく、自由律俳句や無季俳句のようなさまざまな表現も生まれてきた。

そこに、題名にもなっている「俳句の可能性」を見ることができるんだね。

「俳句の可能性」で筆者が伝えていること

文章全体を整理してみよう。

俳句には、5・7・5の定型や季語という伝統的な基本があるよ。

一方で、自由律俳句や無季俳句のように、その基本形とは異なる俳句も作られてきたんだ。

そして、それぞれの俳句では、

  • 言葉の響き
  • リズム
  • 季語
  • 切れ字
  • 省略
  • 言葉の組み合わせ

などを生かすことで、わずかな言葉から鮮明な情景や感覚を生み出すことができるよ。

また、省略された部分を読み手が想像することで、句に書かれている以上の豊かな世界が広がっていくんだ。

「俳句の可能性」の重要ポイント

俳句は、定型や季語などの基本をもちながら、自由律俳句や無季俳句など、さまざまな形へ広がっている。

また、限られた言葉の中で、季語・音・リズム・省略などを生かすことで、鮮明な情景や感覚を表し、読み手の想像を広げることができる。

俳句を鑑賞するときのポイント

この次の単元「俳句を味わう」では、実際にいろいろな俳句を読んで鑑賞していくよ。

そのときは、次のような観点で考えてみると分かりやすいよ。

観点注目すること
1声に出して読み、音数やリズムを感じる
2季語があるか、どの季節かを確認する
3切れ字や、意味・調子の区切りに注目する
4どんな情景が描かれているか想像する
5特に印象に残る言葉や表現を探す
6その表現によって、どんな効果が生まれているか考える
7句から、どのようなものの見方・感じ方が伝わってくるか考える

たろう
「季語を答えられる」だけでは、俳句を味わったことにはならないんだね。

yumineko
そうだね。なぜその言葉を使ったのか、その表現によってどんな効果が生まれているのかまで考えると、俳句のおもしろさが見えてくるよ。

教科書でも、このあと好きな俳句を選んで、表現の仕方を評価しながら鑑賞文を書く学習へ進むよ。

だから「俳句の可能性」で学んだ、季語・定型・リズム・切れ字・省略・想像という観点を、そのまま「俳句を味わう」で使っていこう。

俳句を作るということ

文章の最後では、俳句を鑑賞するだけではなく、自分で俳句を作ることにも話が広がっていくよ。

「うまい俳句を作らなくてはいけない」と難しく考えすぎる必要はないんだ。

例えば、教室の窓から見える雲や、風に揺れる草木、道端の小さな虫、友達や家族の様子など、ふと目を留めたものに「こんにちは」と挨拶するような気持ちで向き合ってみる。

すると、その瞬間に感じたことや気づいたことが、俳句になっていくことがあるんだね。

そして、できあがった俳句は、そのとき自分が何を見て、何を感じたのかを鮮やかに残す、自分だけの大切な記録にもなるんだ。

俳句はわずかな言葉しか使わないけれど、だからこそ、目の前のものをよく見て、自分が本当に感じたことを言葉にすることが求められるんだね。

たろう
俳句って、決まりを覚えるだけのものじゃないんだね。

yumineko
そうなんだ。身の回りに目を向けて、「おもしろいな」「きれいだな」「なんだろう」と感じた瞬間から、俳句は始まっているとも言えるね。

「俳句の可能性」重要語句

語句意味
韻文言葉の音やリズムなどを生かして表現する文章。詩・短歌・俳句などが含まれる。
散文一定の韻律や音数を基本とせず、通常の文章の形で書かれたもの。
定型決まった形式。俳句では5・7・5の音数を基本とする。
季語季節を示したり、その季節と深く結び付いて使われたりする言葉。
歳時記季語を季節ごとに分類し、解説や例句などをまとめた本。
有季定型季語をもち、5・7・5の定型を基本とする俳句の形。
自由律俳句5・7・5の定型にとらわれず、自由な音数やリズムで作る俳句。
無季俳句季語を用いない俳句。
切れ句の意味・内容・リズムなどの大きな区切り。
切れ字「や」「かな」「けり」など、句の切れを作ったり、詠嘆や余韻を生んだりする言葉。
音律音の調子。ここでは、言葉のリズムのこと。
行脚僧が修行などのために各地を歩いて巡ること。また、各地を旅して歩くこと。
断念考えていたことや望んでいたことをあきらめること。
感性物事を感じ取る力や、その感じ方。
かきたてる気持ちや興味、想像などを刺激して、強く起こさせること。
膝(ひざ)脚の、ももとすねをつなぐ関節の前側の部分。「膝」は新出漢字なので、読み方も覚えておこう。

参考文献・参考資料

※本記事では、光村図書『国語3』掲載の宇多喜代子「俳句の可能性」の本文をもとに、定型・季語・自由律俳句・無季俳句・切れ字・音やリズム・省略など、教材で重要となる内容を整理しています。個々の俳句については、宇多喜代子さんが本文中で着目している表現とその効果を中心に、句に実際に使われている言葉を根拠として解説しています。

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青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。 ※サイト全体の運営実績についてはこちらにまとめています。

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