いしいしんじ『言葉の釣り糸を垂らす』をわかりやすく解説!比喩表現と筆者の考え

いしいしんじ「言葉の釣り糸を垂らす」は、私たちが日頃使っている「言葉」と、自分の中に眠っている記憶や思いとの関係について考えた随筆だよ。

私たちは、生まれてからずっと、たくさんのものを見たり聞いたりしながら、言葉を使ってさまざまなものを自分の中へ取り込んでいるんだ。

筆者は、それらがやがて「言葉の形をほどいて」、目には見えないものとなって「意識の水底」へ沈んでいくと考えているよ。

そして、自分の中に言葉を垂らすことで、そこに眠っている記憶や気持ち、まだ形になっていない未来につながるものまで引き上げることができると考えているんだ。

この記事で分かること

  • 「言葉の釣り糸を垂らす」の内容
  • 言葉によって、自分の中に何が取り込まれていくのか
  • 「言葉の形をほどいて」とはどういうことか
  • 「意識の水底」とは何か
  • 「言葉の釣り糸」と「釣り針」の比喩の意味
  • 言葉が引き上げる「過去・現在・未来」とは何か
  • 小説を書くことと「言葉を垂らすこと」の関係
  • 「自分の本当の生を、言葉の形で取り戻す」とはどういうことか
目次

1. 「言葉の釣り糸を垂らす」の基本情報

作品名言葉の釣り糸を垂らす
筆者いしいしんじ
文章の種類随筆
中心となる題材言葉と記憶、自分の内側、書くこと
重要な比喩言葉の釣り糸・釣り針・意識の水底
中心的な考え言葉を自分の中に垂らすことで、普段は気づいていないものを引き上げ、言葉の形にすることができる。

この文章は、まず私たちの身の回りにある「言葉」について考えるところから始まるよ。

そして話はだんだん、「言葉によって、私たちの中にはどんなものが取り込まれているのか」「それらはどこへ行くのか」「言葉を書くとはどういうことなのか」という、もっと深いところへ進んでいくんだ。

2. 私たちは言葉に囲まれて生きている

私たちは普段、いろいろなものに囲まれて暮らしているよね。

テレビ、自転車、動物、目玉焼きなど、目に見えるものには名前がついているよ。

それだけではないんだ。学校の作文や、本、大人が書いた文章なども、目に見える言葉でできているよね。

つまり、私たちは生まれてからずっと、言葉を見たり聞いたり、自分で使ったりしながら生きてきたんだ。

でも筆者が注目しているのは、「たくさんの言葉を覚えている」ということだけではないよ。

言葉によって取り込まれたものが、私たちの中でどのような形になっているのかを考えていくんだ。

3. 言葉によって、さまざまなものを自分の中へ収めている

言葉を聞いたり読んだりするとき、私たちは、言葉の意味だけを受け取っているわけではないよ。

例えば、ある言葉には、そのとき見た風景や音、匂い、気持ち、出来事などが結びついていることがあるよね。

筆者は、私たちはずっと言葉を使い、言葉を交わすことで、いろいろなものを自分の中へ収めてきたと考えているんだ。

例えば、「楽しかった誕生日」「好きな漫画」「飼っていた動物」「おばあちゃんの癖」といったものもそうだよ。

名前もなく、普段は目にも見えないような記憶が、たくさん自分の中にあるんだ。

たろう
忘れていることも、自分の中には残っているってこと?
くまごろう
そうなんだ。筆者は、普段は思い出していないものでも、なくなったわけではないと考えているよ。

4. 「言葉の形をほどいて」とは

ここは、この文章を理解するうえでとても重要だよ。

筆者は、私たちが言葉を使って自分の中へ収めたものが、ずっと言葉の形のまま残っているとは考えていないんだ。

それらはやがて、「言葉の形をほどいて」、意識の奥深くへ沈んでいくと表現されているよ。

つまり、「楽しかった誕生日」という言葉そのものが、そのまま保存されているということではないんだ。

そのときの光景や声、匂い、気持ちなどが、言葉だけでは表せない形となって、自分の内側へ沈んでいくというイメージなんだよ。

「言葉の形をほどいて」とは

言葉によって自分の中へ取り込んだものが、はっきりした「言葉」の形を失い、目には見えない記憶や思いとなって自分の奥へ沈んでいくことだよ。

5. 「意識の水底」とは

いしいしんじ「言葉の釣り糸を垂らす」で、言葉によって自分の中に収めたものが言葉の形をほどき、意識の水底へ沈んでいく様子を表した図解

筆者は、普段は思い出したり気づいたりしていないものが、自分の中から消えてしまうとは考えていないよ。

言葉の形をほどき、目には見えなくなったものは、「意識の水底」に沈んでいるものとして表されているんだ。

水面からは見えなくても、水の底にはいろいろなものがあるよね。それと同じように、自分では普段気づいていない記憶や思いも、自分の内側に残っていると筆者は考えているんだ。

そして、それらは一つ一つきれいに分かれているというより、「奥のほうで溶け合わさっている」ように捉えられているよ。

つまり、昔の出来事、景色、音、匂い、気持ちなどが、互いに結びつきながら自分の奥にあるということなんだ。

6. 自分の中に「言葉の釣り糸」を垂らす

いしいしんじ「言葉の釣り糸を垂らす」で、自分の中に言葉を釣り糸のように垂らし、意識の水底にある記憶や思いを引き上げる比喩を説明した図解

そこで筆者が勧めているのが、自分の中に言葉を垂らしてみることなんだ。

これは、小説を書いているときだけの話ではないよ。

遊んでいるときでも、仲のいい人とご飯を食べているときでも、夫婦で黙って散歩しているときでもいいんだ。

ある言葉を、自分の中に「釣り糸」のように垂らしてみるんだね。

すると、その言葉をきっかけに、自分でも思っていなかった何かがくっついてくることがあるんだ。

「言葉の釣り糸を垂らす」とは

自分の中に言葉を置くことで、その言葉をきっかけに、自分の奥底に眠っている記憶や思いなどを探っていくことの比喩なんだ。

たろう
文章を書くときだけじゃなくて、普段の生活でもできるんだね。
くまごろう
そうだよ。まず「自分の中に言葉を垂らす」ということがあって、小説を書くこともそれと同じだ、と筆者は後から説明しているんだ。

7. 言葉は記憶に形を与え、光を当てる

いしいしんじ「言葉の釣り糸を垂らす」で、言葉が意識の水底にある記憶に形を与え、光を当て、日常の意識の上へ引き上げる働きを示した図解

自分の中に言葉を垂らすと、その言葉の周りに、奥底で溶け合っていた記憶などがくっついてくるよ。

そして筆者は、言葉には、それぞれの記憶に形を与え、光を当てる働きがあると考えているんだ。

それまで自分でもよく見えていなかった記憶が、言葉と結びつくことで、だんだん見えるようになってくるということだね。

さらに、その言葉を引き上げることで、記憶もいっしょに「日常の意識の上」へ引き上げられてくるんだ。

言葉の働き

  • 自分の奥にあるものを引っ掛ける。
  • 記憶に形を与える。
  • 光を当て、見えるようにする。
  • 日常の意識の上へ引き上げる。

8. 言葉が引き上げるのは「過去」だけではない

いしいしんじ「言葉の釣り糸を垂らす」で、言葉が過去の記憶だけでなく、現在の言葉にならない気持ちや未来につながるものまで引き上げることを示した図解

ここも大切なところだよ。

言葉によって引き上げられるものは、昔の記憶だけではないんだ。

筆者は、「これは、実は過去のことだけではなくて」と話を広げているよ。

日頃なんとなく思っているけれど、まだ言葉になっていない気持ちもあるよね。

また、まだ起きていない出来事や、未来からやって来るような形にならないものも、自分の中には集まってくると筆者は考えているんだ。

つまり、言葉を垂らすことで引き上げられるのは、過去の記憶・現在の言葉になっていない気持ち・未来につながるものまで含まれているんだよ。

言葉が引き上げるもの

過去昔の出来事や記憶
現在今感じているけれど、まだ言葉になっていない気持ち
未来まだ起きていない出来事につながる、形になっていないもの

9. 「言葉は釣り針みたいなもの」とは

いしいしんじ「言葉の釣り糸を垂らす」で使われる、言葉を自分の中へ垂らす「釣り糸」と、過去・現在・未来に関わるものを引っ掛ける「釣り針」の比喩の違いを説明した図解

文章の後半では、釣りの比喩がさらに発展するよ。

筆者は、言葉を「過去・現在・未来の記憶を引っ掛ける、釣り針みたいなもの」と表しているんだ。

前半では、「自分の中に言葉を垂らす」という動きから釣り糸として描かれていたよね。

ここでは、自分の中にあるものを引っ掛けて取り出す働きに注目して、言葉を釣り針にたとえているんだ。

「釣り糸」と「釣り針」

  • 釣り糸:言葉を自分の内側へ垂らしていくイメージ。
  • 釣り針:言葉によって、過去・現在・未来に関わるものを引っ掛けるイメージ。

10. 小説を書くことと「言葉を垂らすこと」

筆者は、小説を書くということも、この「自分の中に言葉を垂らす」ことと同じだと考えているよ。

小説を書くというのは、意識の上に見えている言葉だけを、ただ順番につなぎ合わせることではないんだ。

言葉を書いているうちに、不意に自分の中へメッセージを送ったように、思いがけない言葉が沈んでいくことがあるよ。

そして、その言葉をきっかけに、自分でも気づいていなかった何かが引き上げられてくるんだ。

だから小説を書くということは、最初から頭の中に完成している文章を書き写すことだけではないんだね。

言葉を使いながら、自分の内側にあるものを探っていくことでもあるんだ。

11. 目に見えないものが、私たちの生を支えている

私たちは日常生活では、自分の中にあるすべてを意識しているわけではないよね。

でも筆者は、目に見えなくなった記憶や、まだ言葉になっていないものは、消えてしまったわけではないと考えているんだ。

それらは、自分の内側で眠りながら、私たちが生きていくことを支えているよ。

本文では、「目に見えない、言葉になっていない記憶や未来からの光」が、私たちの生を底から支えていると考えられているんだ。

普段は意識できないものも含めて、自分の中にはとても豊かなものが眠っているということだね。

だから筆者は、自分の中に言葉を垂らし、それらを「かき立てながら生きていく」ことを大切にしているんだ。

12. 「書く」ことの本当の意味

文章の最後で、筆者は「書く」ということについて、大切な考えを示しているよ。

文章を書くことは、世の中にある目に見える言葉を並べて、人に読ませる文章を作るだけではないんだ。

自分の中に言葉を垂らし、言葉の形をほどいて意識の水底へ沈んでいるものを引き上げ、それを再び言葉の形にしていくんだ。

筆者は、それこそが、「自分の本当の生を、言葉の形で取り戻すこと」だと考えているんだよ。

たろう
「本当の生」って、「本当の自分」と同じこと?
くまごろう
少し違うんだ。「本当の生」には、昔の記憶だけでなく、今の言葉にならない気持ちや未来につながるものまで含めた、自分が生きてきたこと・生きていること全体が含まれていると考えると分かりやすいよ。

筆者にとって「書く」こととは

自分の中に眠っているものを、言葉によって引き上げ、もう一度言葉の形にすることで、自分の「本当の生」を取り戻すことなんだ。

いしいしんじ「言葉の釣り糸を垂らす」で、自分の中に眠る過去の記憶や現在の思い、未来につながるものを言葉で引き上げ、「本当の生」を言葉の形で取り戻す流れを示した図解

13. 「言葉の釣り糸を垂らす」の主題

この文章は、単に「言葉は大切だ」と伝えている文章ではないよ。

私たちは、言葉を通して、たくさんのものを自分の中へ取り込んできたんだ。

それらはやがて言葉の形をほどき、普段は見えないものとなって意識の水底へ沈んでいくよ。

でも、それらは消えたわけではないんだ。

言葉を自分の中へ垂らすことで、過去の記憶や現在の言葉にならない気持ち、未来につながるものまで引き上げることができるんだよ。

そして、それらをもう一度言葉の形にすることが、「書く」という営みにつながっているんだ。

「言葉の釣り糸を垂らす」の主題

言葉を自分の中に垂らすことで、普段は気づいていない記憶や思い、未来につながるものを引き上げることができる。「書く」ことは、それらを言葉の形にし、自分の「本当の生」を取り戻す営みである、ということなんだ。

14. 重要語句の意味

本文に出てくる大切な言葉を確認しよう。

語句意味
日常毎日の普通の生活。
記憶過去に経験したことを覚えていること。また、その内容。
奥底いちばん奥深いところ。
溶け合う別々のものが混ざり合うこと。本文では、さまざまな記憶などが心の奥で結びついている様子を表しているよ。
情景目に見える景色や、その場の様子。
奥行き奥へ向かう深さ。本文では、物事の広がりや深さにも関係する言葉だよ。
意識自分が考えたり感じたりしていることに、自分で気づいている状態。
意識の水底普段は自分では気づいていない記憶や思いなどが沈んでいる場所を、水の底にたとえた表現。
不意に思いがけず、突然。
かき立てる気持ちや記憶などを刺激して、強く起こさせること。
釣り糸魚を釣るために使う糸。本文では、自分の中へ言葉を垂らしていくことの比喩として使われている。
釣り針魚を引っ掛ける道具。本文では、過去・現在・未来に関わるものを言葉によって引っ掛けることの比喩として使われている。
ざわつき心などが落ち着かず、ざわざわする感じ。
浸す液体などの中につけること。
可能性これから実現するかもしれない見込み。
広がり広がっていくこと。また、その範囲。
生きること、生命、人生。本文の「本当の生」では、自分がこれまで生き、今生き、これから生きていくこと全体に関わる言葉として使われているよ。

15. テスト対策ポイントまとめ

最後に、「言葉の釣り糸を垂らす」のテストで特に大切なポイントをまとめるよ。

「言葉の釣り糸を垂らす」テスト対策ポイント

  • 私たちは、生まれてからずっと言葉を使い、言葉によってさまざまなものを自分の中へ収めてきた。
  • 言葉によって収めたものは、やがて「言葉の形をほどいて」、目には見えないものとなる。
  • 目には見えなくなったものも消えるのではなく、「意識の水底」へ沈んでいる。
  • 記憶などは、一つ一つ完全に独立しているのではなく、「奥のほうで溶け合わさっている」ように捉えられている。
  • 自分の中に言葉を垂らすことで、その言葉をきっかけに奥底にあるものがくっついてくることがある。
  • 言葉には、記憶に形を与え、光を当て、見えるようにする働きがある。
  • 言葉によって、記憶などを「日常の意識の上」へ引き上げることができる。
  • 言葉が引き上げるのは、過去の記憶だけではない。
  • 現在の言葉になっていない気持ちや、未来につながる形になっていないものも含まれる。
  • 言葉は、「過去・現在・未来の記憶を引っ掛ける、釣り針みたいなもの」と表現されている。
  • 「釣り糸」は、自分の中へ言葉を垂らすことを表す比喩である。
  • 「釣り針」は、自分の中にあるものを言葉によって引っ掛ける働きを表す比喩である。
  • 小説を書くことも、自分の中へ言葉を垂らすことと同じだと筆者は考えている。
  • 小説を書くことは、目に見えている言葉だけをつなぎ合わせることではない。
  • 目に見えない、言葉になっていない記憶や未来からの光が、私たちの生を底から支えている。
  • 筆者は、自分の中に眠るものを「かき立てながら生きていく」ことを大切にしている。
  • 「書く」ことは、自分の中に眠っているものを引き上げ、もう一度言葉の形にすることである。
  • 文章の最後では、「書く」ことを「自分の本当の生を、言葉の形で取り戻すこと」と表している。
  • 主題は、言葉によって自分の奥に眠る過去・現在・未来に関わるものを引き上げ、それを言葉の形にすることで、「本当の生」を取り戻せるということ。

ここまで学習できたら、「言葉の釣り糸を垂らす」テスト対策練習問題とドリルにも挑戦してみよう!

いしいしんじ『言葉の釣り糸を垂らす』テスト対策練習問題と過去問まとめ
【中学国語】いしいしんじ「言葉の釣り糸を垂らす」漢字ドリル
【中学国語】いしいしんじ「言葉の釣り糸を垂らす」語句・表現技法ドリル
【中学国語】いしいしんじ「言葉の釣り糸を垂らす」内容理解ドリル
【中学国語】いしいしんじ「言葉の釣り糸を垂らす」主題・表現効果ドリル

参考文献・参考資料

※本記事では、光村図書『国語3』掲載のいしいしんじ「言葉の釣り糸を垂らす」の本文をもとに、定期テストで重要となる内容・表現・主題を整理しています。本文中の比喩表現や「本当の生」などの言葉については、文章全体の流れを踏まえて解説しています。

運営者情報

青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。 ※サイト全体の運営実績についてはこちらにまとめています。

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