伊坂幸太郎「ヒューマノイド」を徹底解説|あらすじ・登場人物・伏線まとめ
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中学2年生の国語で学習する伊坂幸太郎さんの「ヒューマノイド」について、登場人物とあらすじ、場面分け、重要な言葉や表現、過去と現在のつながり、作品から読み取れることをわかりやすく解説するよ。
「恥ずかしい」という気持ちや、「転ぶこと」「起き上がること」が物語の中でどのようにつながっているのかにも注目しながら読んでいこう!
目次
1. 「ヒューマノイド」の登場人物とあらすじ

作者の伊坂幸太郎さんについて
「ヒューマノイド」の作者、伊坂幸太郎(いさか こうたろう)さんは、1971年生まれの人気小説家だよ。
2000年に『オーデュボンの祈り』でデビューし、『重力ピエロ』『アヒルと鴨のコインロッカー』『ゴールデンスランバー』『逆ソクラテス』など、たくさんの作品を書いているんだ。
伊坂さんの作品には、何気なく出てきた言葉や出来事が、後になって別の場面とつながるような構成も多く見られるよ。
「ヒューマノイド」でも、中学時代の出来事と、大人になった現在の出来事が重なっていく構成が大きなポイントなんだ。
主な登場人物
| 僕 | 物語の語り手。三十歳の会社員。人前で恥をかくことに敏感で、中学時代のタクジとの最後のやり取りに後ろめたさを感じ続けている。 |
| タクジ | 「僕」の中学時代の同級生。「僕がヒューマノイドロボットを作るなら」と、人間のさまざまな性質を「機能」として考える独特な少年。大人になり、ロボット開発に関わっている。 |
あらすじ
伊坂幸太郎「ヒューマノイド」あらすじ
主人公の「僕」は、入社8年目の会社員だよ。
ある日の会議中、先輩社員の「恥かいちゃった」という言葉をきっかけに、中学時代の同級生・タクジとの記憶が突然よみがえるんだ。
その中には、「三十歳になった六月十日に会う」という約束もあったよ。そして、カレンダーを確認した「僕」は、その約束の日がまさに今日であることに気づくんだ。
中学時代のタクジは、「僕がヒューマノイドロボットを作るなら」と言いながら、「飽きる」「恥ずかしい」といった人間の性質についてよく考えていたよ。
「僕」は、恥をかくような場面でも動じないように見えるタクジに、憧れに近い思いを抱いていたんだ。
しかし、美術の時間、タクジが絵の具を踏んで転び、クラスのみんなに迷惑をかけてしまうよ。
動揺して謝り続けるタクジを見た「僕」は、それまで自分が思っていたタクジの姿との違いに戸惑うんだ。
その後、タクジから「ロボットの日」のイベントへ誘われるけれど、「僕」はいら立ちを感じ、冷たい態度で断ってしまうよ。
タクジは最後に、「三十歳になったときにしようか」という言葉を残すんだ。
その後、タクジは転校し、二人は会わなくなるよ。
十数年後、約束の日を思い出した「僕」は、迷いながらも「ロボットの日」のイベント会場へ向かうんだ。
会場ではヒューマノイドロボットの実演が行われていたよ。ロボットが転ぶと、開発者は「転ぶことはしかたがありません。大事なのは、起き上がることです。」と語るんだ。
その開発者こそ、大人になったタクジだったよ。
突然名前を呼ばれ、会場中から注目された「僕」は、タクジに謝りたいのに、恥ずかしさもあって言葉が出てこないんだ。
そして、自分に向かって無邪気に手を振るロボットを見ながら、心の中で「タクジ、聞いていた話と違うじゃないか。」と思うところで物語は終わるよ。
2. 「ヒューマノイド」の場面分け
「ヒューマノイド」は、時間がまっすぐ進む物語ではないんだ。
現在の「僕」と、中学時代の「僕」の回想が交互に描かれながら、少しずつ物語の全体像が見えてくるよ。
「現在」と「過去」が行き来する
大きく分けると、二つの時間があるよ。
現在
三十歳の「僕」が、会社で約束を思い出し、イベント会場へ向かう。
過去
中学生だった「僕」とタクジの会話や、二人が気まずくなった出来事が回想される。
この二つが行き来することで、「僕」がなぜタクジに後ろめたさを感じているのかが、少しずつ明らかになっていくんだ。
過去を思い出す「きっかけ」がある
回想は、突然始まるわけではないよ。
現在の「僕」が見たり聞いたりしたものがきっかけになって、中学時代の記憶がよみがえるんだ。
「恥かいちゃった」という言葉
↓
タクジと「恥ずかしい」という気持ちについて話した記憶
「カラフルな絵の具」の映像
↓
美術室でタクジが絵の具を踏んで転んだ記憶
こうしたつながりに注目すると、現在と過去がどう結びついているのかが分かりやすくなるよ。
場面分けにはいくつかの考え方がある
物語の場面分けには、必ず一つだけの正解があるとは限らないよ。
時間・場所・行あきなどに注目して細かく分けることもできるし、物語全体を大きく捉えることもできるんだ。
ここでは、物語全体を理解するための一つの整理として、4つの大きな場面に分けて考えていくよ。
| 第一場面 現在の会議室 | 三十歳の「僕」が、タクジとの約束を思い出す。 |
| 第二場面 過去の回想① | タクジとの会話や、「僕」がタクジに憧れに近い思いを抱いていたことが描かれる。 |
| 第三場面 過去の回想② | タクジが絵の具を踏んで転び、「僕」と気まずい別れ方をする。 |
| 第四場面 現在のドーム施設 | 約束の日に「僕」がイベント会場へ行き、大人になったタクジと再会する。 |
くまごろう3. 第一場面「現在の会議室」の内容とポイント
「頭の記憶の箱、その錠に鍵がかちゃりと入ったような感覚」とは
これは、長い間意識していなかった記憶が、ある言葉をきっかけに突然よみがえる感覚を表した比喩だよ。
「記憶」を箱に、「思い出すきっかけ」を鍵にたとえているんだね。
そして「かちゃり」という音の表現によって、鍵がぴったりとはまり、記憶が突然開かれるような感覚が伝わってくるよ。
「そう口にした自分に、はっとする」のはなぜか
「僕」が口にした言葉が、十数年前にタクジが言っていた言葉と重なったからだよ。
長い間意識していなかったタクジの言葉が、自分の口から自然に出てきたことに、「僕」自身が驚いたんだね。
そして、このことをきっかけにタクジの記憶が次々によみがえっていくんだ。
カレンダーを確認してショックを受けたのはなぜか
忘れていたタクジとの約束の日が、過去でも未来でもなく、まさに今日だったことに気づいたからだよ。
十数年も忘れていた約束を突然思い出し、しかもその日が今日だと分かったことで、「僕」は強い驚きを感じたんだね。
「三十歳の六月十日」が「僕」にとって持つ意味
この日は、ただ昔交わした約束の日というだけではないよ。
「僕」にとって、忘れていた約束と、タクジに対する過去の後悔に向き合い、二人の関係をもう一度動かすきっかけとなった特別な日だと考えることができるんだ。
4. 第二場面「過去の回想① タクジとの思い出」の内容とポイント
タクジの「飽きる」という機能についての考え
タクジは、人間が「飽きる」ことにも何か意味があると考えるよ。
一つのことに飽きれば、新しいことをやりたくなる。だから「飽きる」という機能がなければ、人間は進化しないのではないか、と考えるんだ。
「僕」は最初、「人類の進化」とまで話を広げるタクジを大げさだと思ってあきれるよ。
でも後になると、自分が勉強に飽きたときに、タクジの「これは人間の機能なのかもしれない」という考え方を思い出すようになるんだ。
それだけタクジの考え方が、「僕」の中に強く残っていたことが分かるね。
人違いをして「ぞっとした」のはなぜか
「僕」は、アイコだと思って親しげに声をかけた相手が、実は上級生だったことに気づくよ。
人違い、それも上級生に親しげに声をかけてしまったことで、強い恥ずかしさと焦りを感じたんだ。
そのため、「間違えました」とも「すみません」とも言えず、髪の毛を触って取り繕おうとするんだね。
タクジは「恥ずかしさ」をどう考えたのか
人違いをして恥ずかしがっている「僕」を見て、タクジは「どうして人間って恥ずかしくなるのか」と考えるんだ。
まずタクジは、失敗を繰り返さないための機能なのではないかと考えるよ。
ところが、「失敗しなくても恥ずかしいことはある」と「僕」に指摘されるんだ。
そこでタクジはさらに考えるよ。
恥ずかしい記憶はいつまでも残ることがあるし、恥をかいたことで泣いたり怒ったりする人もいる。
つまり、「失敗を繰り返さないため」だけでは説明できない、人間の記憶や感情を大きく動かす重要なものだと考えていくんだね。
だからタクジは、「人間の恥ずかしい気持ちを理解できるロボット」を作りたいと話すんだ。
「連鎖反応です」と言ったタクジ
授業中に「僕」が言い間違いをして、クラスのみんなに笑われる場面があるよ。
すると、タクジも続けて言い間違いをし、「連鎖反応です」と言うんだ。
タクジが本当にどんな意図でそうしたのかは、本文では直接説明されていないよ。
ただ、タクジも続けて間違えることで、「僕」一人だけが失敗して笑われる状況ではなくなったよね。
そのため、この行動には、恥ずかしがっている「僕」の気持ちをやわらげようとするタクジの気遣いがあった、と読むことができるよ。
「僕」がタクジに憧れに近い思いを抱いた理由
「僕」は、タクジについて、恥をかくような場面でもあまり動じない人物だと感じているよ。
自分自身は恥をかくと強く動揺してしまうため、それとは対照的に見えるタクジに、自分にはない強さを感じていたと考えられるんだ。
ただし、この後の美術室の場面では、タクジ自身も失敗によって大きく動揺することが分かるよ。
「僕」が思っていたタクジと、実際のタクジとの違いが、二人の関係を大きく動かしていくんだ。
言動から分かるタクジの人物像
タクジは、「飽きる」「恥ずかしい」といった身近なことについても、「なぜ人間にはこんな機能があるんだろう」と深く考える人物だよ。
また、「僕」が恥ずかしい思いをしたときに笑ったりからかったりせず、その気持ちそのものについて考えようとするよね。
一方で、美術室で自分が失敗したときには、耳まで赤くして動揺し、謝り続けるんだ。
タクジの人物像
- 物事を独特の視点から深く考える。
- 「僕」の恥ずかしさに向き合おうとする。
- 一見動じないように見えても、自分が失敗したときには動揺する。
5. 第三場面「過去の回想② 決別となった出来事」の内容とポイント
謝り続けるタクジの顔を見ることができなかったのはなぜか
美術室でタクジが転び、絵の具を広げてしまったとき、タクジは耳まで赤くして、ひたすら謝るよ。
それまで「僕」は、タクジを「失敗や不運にいちいち動じない人物」のように捉えていたんだ。
ところが、目の前のタクジは、失敗して強く動揺しているよ。
伊坂幸太郎さん自身も、この場面の「僕」には、「タクジと友達なのが恥ずかしい」という思いや、「タクジが恥ずかしがっている姿を見たくない」という思いなど、複雑な感情があり得ると話しているよ。
一つの感情だけで説明しきらず、いくつもの気持ちが重なった場面として読むのがポイントなんだ。
ロボットのイベントに誘われて「いら立ち」を感じたのはなぜか
「僕」から見ると、タクジは大きな失敗をした直後なのに、いつものようにロボットのイベントへ誘ってくるよ。
その態度が「僕」にはあまりにのんきに見え、「さっきあんなことがあったのに、どうしてそんなに平気なんだ」という気持ちが生まれたんだ。
また、これまで「動じないタクジ」に憧れに近い思いを抱いていた「僕」は、実際には大きく動揺していたタクジを見たことで、気持ちの整理がつかなかったとも考えられるよ。
「笑顔のできそこない」とは
「僕」に冷たい態度を取られたタクジは、「笑顔のできそこない」を浮かべるよ。
これは、きれいな笑顔にはならなかった、不自然な笑顔を表しているんだね。
「僕」の言葉によってタクジが傷ついたり、戸惑ったりしていることが、表情から伝わってくるよ。
「軽口のつもり」とは
タクジは、「じゃあ、二十歳になったときに」と言うよ。
「軽口のつもり」とあることから、深刻な約束として強く迫るのではなく、重くなった場面で軽い調子にしようとして言ったものと考えられるよ。
ただし、「僕」はその言葉も受け入れず、「意味のわからないことを言わないでよ」と突き放してしまうんだ。
「僕がロボットを作るとしたら、転ばないようにはするね」の意味
この言葉を言ったのは、タクジだよ。
「僕」に拒絶され、肩を落としたタクジが、自分が転んだ出来事と、それまで話してきたロボットの話を重ねて発した言葉なんだ。
この言葉には、タクジの落ち込みや悔しさがにじんでいると読むことができるよ。
後の場面で出てくる「転ぶことはしかたがありません。大事なのは、起き上がることです。」という言葉との対応にも注目しよう。
「三十歳になったときにしようか」という言葉
二十歳という提案まで拒絶されたあと、タクジは「三十歳になったときにしようか」と言うよ。
この言葉からは、今はうまくいかなくても、遠い未来にもう一度会う可能性を残そうとしていると読むことができるね。
ただし、この時点でタクジが自分の転校を知っていたのか、なぜこの言葉を選んだのかについて、本文では詳しく説明されていないよ。
なぜタクジは転校を知らせなかったのか
これは、本文だけからは答えを一つに決めることができないんだ。
「僕」と気まずい別れ方をしたことが関係していたのではないか、と想像することはできるよ。
でも、タクジが本当にどんな理由で転校を知らせなかったのかは、本文では明らかにされていないんだ。
こうした「書かれていない部分」を、本文にある行動や言葉を手がかりに考えるのも、小説を読むおもしろさの一つだね。
タクジの転校を知った「僕」の気持ち
先生からタクジの転校を知らされた「僕」は、窓の外を眺めながら話を聞いているよ。
「僕」は、タクジとの最後のやり取りについて後ろめたさを感じていたんだ。
その直後にタクジがいなくなってしまったことで、謝ることも、関係を修復することもできないまま別れてしまったという思いが残ることになるんだね。
6. 第四場面「現在のドーム施設」の内容とポイント
再び現在へ戻るよ。
「僕」は、タクジとの最後のやり取りへの後ろめたさを抱えながら、約束の日のイベント会場へ向かうんだ。
タクジと連絡を取らなかったのはなぜか
「僕」は、タクジが転校したあと、連絡先を調べたりしていないよ。
部活動や受験などで忙しかったこともあるけれど、それだけではないんだ。
タクジに冷たい態度を取ったことへの後ろめたさがあり、連絡することを先延ばしにしているうちに、それきりになってしまったんだね。
「胸の奥に重苦しいもの」を感じたのはなぜか
タクジとの最後のやり取りを思い出すと、「僕」は胸の奥に重苦しいものを感じるよ。
それは、失敗して動揺していたタクジに対して、冷たい言葉をぶつけてしまったことを後悔しているからだね。
しかも、そのままタクジが転校してしまったため、きちんと謝ることができなかったんだ。
その後悔や後ろめたさが、十数年後にも残っているんだよ。
「頭の中を小突かれたような気分」とは
駅で「カラフルな絵の具」の映像を目にしたことをきっかけに、「僕」は中学時代の出来事を改めて思い出すよ。
そして、タクジとの約束を思い出しているのに、このまま何もしないで帰ってよいのか、と考え始めるんだ。
「頭の中を小突かれたような気分」は、それまで迷っていた「僕」が、はっと何かに気づかされたような感覚を表しているよ。
なぜイベント会場へ入ったのか
「僕」は自宅とは逆方向の列車に乗り、ロボットのイベント会場へ向かうよ。
「入場無料」という文言にも後押しされるけれど、根本にあるのは、タクジとの約束と、もしかしたらタクジに会えるかもしれないという思いなんだ。
「転ばないようにはするね」と「大事なのは、起き上がることです」
ここは、過去と現在が強くつながる重要な場面だよ。
中学時代のタクジ
「僕がロボットを作るとしたら、転ばないようにはするね」
大人になったタクジ
「転ぶことはしかたがありません。大事なのは、起き上がることです。」
この二つの言葉は対照的だよね。
ここから、タクジの考え方が年月の中で変化したことや、「失敗しないこと」から「失敗したあとにどうするか」へ視点が移っていると読むことができるよ。
ただし、ステージ上のロボットが「わざと転ぶように作られていた」とは本文には書かれていないので注意しよう。
本文から分かるのは、ロボットが転んだことと、そのあとタクジが「大事なのは、起き上がることです」と語ったことなんだ。
タクジとの再会で「棒立ち」になった「僕」
開発者がタクジだと分かり、さらにタクジから名前を呼ばれた「僕」は、通路で棒立ちになるよ。
このときの気持ちは、一つだけではないんだ。
- 本当にタクジと再会した驚き
- 会えたことへのうれしさ
- 過去のことを謝りたいという思い
- 大勢の観客に注目されている恥ずかしさ
いろいろな感情が一度に押し寄せたため、すぐに動いたり話したりできなかったんだね。
「胸に空気が詰まっているかのよう」とは
「僕」はタクジに「あのときはごめん」と伝えたいんだ。
でも、再会できたうれしさ、驚き、大勢に見られている恥ずかしさなどが重なり、言葉が外に出てこないよ。
その、言いたいことがあるのに言葉にできない苦しさが、「胸に空気が詰まっているかのよう」という表現で伝えられているんだ。
「タクジ、聞いていた話と違うじゃないか」の意味
物語の最後をしめくくる、とても重要な言葉だよ。
中学時代、タクジは「人間の恥ずかしい気持ちを理解できるロボット」を作りたいと話していたよね。
ところが現在の「僕」は、大勢に注目されて、とても恥ずかしい状態になっているよ。その「僕」に向かって、ロボットは無邪気に手を振るんだ。
「僕」から見ると、「人間の恥ずかしさを理解するって言っていたのに、全然こちらの恥ずかしさを気にしてくれていないじゃないか」と思わずツッコミたくなるような状況なんだね。
ただし、本当にロボットが「恥ずかしさを認識できなかった」と技術的に断定できるわけではないよ。
ここで大切なのは、この言葉に込められている「僕」の気持ちなんだ。
伊坂幸太郎さん自身も、この最後の部分には、タクジに謝りたい気持ち、再会できたうれしさ、「ごめん」という思い、照れ隠しなど、いくつもの気持ちが混ざっているという趣旨のことを話しているよ。
だから、「聞いていた話と違うじゃないか」は、単純な怒りや不満ではないんだ。
タクジへの親しみを含んだ、照れ隠しのようなツッコミとして読むことができるんだね。
この一言からは、「僕」がタクジとの距離を再び縮めようとしていることや、長い間止まっていた二人の関係が、再び動き始めたことを感じ取ることができるよ。
物語に出てくるさまざまな「恥ずかしさ」
「ヒューマノイド」では、「恥ずかしい」という感情が何度も登場するよ。
| 場面 | 恥ずかしさ |
|---|---|
| 会議 | 先輩社員が、うまく説明できなかったことを「恥かいちゃった」と表現する。 |
| 人違い | 「僕」がアイコと間違えて上級生に声をかけ、強い恥ずかしさを感じる。 |
| 授業中 | 「僕」が言い間違いをし、クラスに笑われる。 |
| 美術室 | タクジが転んで絵の具を広げ、耳まで赤くして動揺する。 |
| 再会 | 「僕」がドーム中から注目され、言葉が出なくなるほど恥ずかしくなる。 |
こうして見ると、「恥ずかしさ」は単なる一度きりの出来事ではなく、作品全体を通して何度も現れる重要なキーワードになっていることが分かるね。
7. 「ヒューマノイド」の伏線・繰り返し・対応関係を見てみよう
「ヒューマノイド」では、過去に出てきた言葉や出来事が、現在の場面とつながっているよ。
ただし、すべてを同じ「伏線」と呼ぶよりも、伏線・繰り返し・対応・回想のきっかけなど、それぞれの働きを分けて考えると分かりやすいんだ。
「恥ずかしい」―作品全体を貫くキーワード
中学時代、タクジは「人間の恥ずかしい気持ちを理解できるロボット」を作りたいと語るよ。
そしてラストでは、「僕」がまさに強烈な恥ずかしさを感じることになるんだ。
「恥ずかしい」は、前半と後半をつなぐだけでなく、物語全体を貫いている重要なモチーフ・キーワードなんだね。
「転ぶ」―過去と現在の対応・反復
中学時代には、タクジ自身が美術室で転ぶよ。
現在では、タクジが開発に関わったロボットがステージ上で転ぶんだ。
そして、
「転ばないようにはするね」
↓
「転ぶことはしかたがありません。大事なのは、起き上がることです。」
という言葉の対応もあるよ。
過去と現在で同じ「転ぶ」という出来事が繰り返されることで、時間を超えたつながりが強く印象づけられているんだ。
「六月十日」―二人をつなぐ約束
六月十日は「ロボットの日」であり、中学時代のタクジがイベントに「僕」を誘った日でもあるよ。
そして、「三十歳になったときに」という約束が、十数年後の六月十日につながっていくんだ。
この「六月十日」という日付が、過去と現在、そして「僕」とタクジを結びつける設定になっているんだね。
「カラフルな絵の具」―過去を呼び起こすきっかけ
中学時代、タクジとの関係が大きく変わるきっかけとなったのが、美術室での絵の具の出来事だったよね。
そして現在、駅の広告で「カラフルな絵の具」の映像を見たことが、「僕」の記憶をもう一度強く呼び起こすんだ。
そのため、「カラフルな絵の具」は、後の展開を予告する伏線というよりも、過去と現在をつなぎ、「僕」の記憶や行動を動かす重要なモチーフ・きっかけとして考えると分かりやすいよ。
8. 「ヒューマノイド」から読み取れること・作者インタビューから分かること
「ヒューマノイド」は、「作者がこの教訓を伝えるために書いた」と一つの言葉だけでまとめてしまうより、作品に描かれているさまざまな要素を考えることが大切だよ。
伊坂幸太郎さん自身も、光村図書のインタビューで、作品を単純な教訓だけで終わらせたくなかったという趣旨のことを語っているんだ。
「恥ずかしさ」は人間にとって大きな感情
伊坂さんは、思春期を振り返ったときに、「恥をかくこと」はとても大きな問題だったと話しているよ。
恥ずかしい記憶はなかなか消えないし、恥ずかしさによって泣いたり、怒ったりすることもあるよね。
作品の中でタクジが「恥ずかしさ」を「機能」として考えることで、普段はただ「嫌だ」と感じている感情を、少し離れたところから考えることができるんだ。
「恥ずかしさ」について読み取れること
「恥ずかしい」という感情は、単なる弱さや嫌な気持ちではなく、人の記憶や行動を大きく動かす、人間らしい複雑な感情として描かれているよ。
「転ぶ」と「起き上がる」
「転ぶことはしかたがありません。大事なのは、起き上がることです。」という言葉からは、失敗そのものを完全になくすことより、失敗したあとにどうするのかという考えを読み取ることができるよ。
ただし、これをそのまま「作者が読者に教えたい教訓」と決めつける必要はないんだ。
中学時代の「転ばないようにはするね」と、大人になったタクジの言葉の違いを考えながら、自分なりに作品を読んでみよう。
昔の約束と、人とのつながり
「僕」とタクジは、中学時代に気まずいまま別れるよ。
それでも、十数年前に交わした「三十歳になったときに」という言葉が、二人を再び同じ場所へつなぐことになるんだ。
伊坂さんはインタビューで、今一緒にいる中学校の同級生が、将来にも関わる人になるかもしれないことや、今だけではない人との関係についても考えて作品を書いたという趣旨のことを話しているよ。
そのため、この作品からは、今の友人との関係が、思っている以上に長い時間につながっていくこともあると読み取ることができるね。
「ヒューマノイド」の主題をどう考える?
この作品には、「友情の大切さ」だけではまとめきれない、いくつもの要素があるよ。
- 恥ずかしいという人間らしい感情
- 失敗したときの人の反応
- 過去への後悔
- 昔の約束
- 時間を超えて続く人とのつながり
- 単純には言葉にできない複雑な感情
「ヒューマノイド」の主題のまとめ方の例
恥ずかしさや失敗、後悔なども含めた人間の複雑さと、過去の出来事を抱えながらも時間を超えて続いていく人とのつながりが描かれている。
これは作品全体を踏まえた一つのまとめ方だよ。
「作者の正解はこれ」と一つに決めるのではなく、本文の言葉や登場人物の行動を根拠に、自分なりの読みを考えることも大切なんだ。
9. 「ヒューマノイド」の感想文の例
「ヒューマノイド」を読んだ感想文では、作品から読み取れることを「正解」として書くのではなく、自分がどこに注目し、どう考えたのかを書くことが大切だよ。
感想文の書き方
- 心に残った場面や言葉を選ぶ
- なぜ心に残ったのかを書く
- 自分の体験や考えと結びつける
- 読んだ後、自分の考えがどう変わったかを書く
例えば、「転ぶことはしかたがありません。大事なのは、起き上がることです。」という言葉に注目して、自分の失敗経験と重ねて書くこともできるよ。
「ヒューマノイド」感想文の例
『ヒューマノイド』を読んで、僕の心に一番強く残ったのは、大人になったタクジが言った「転ぶことはしかたがありません。大事なのは、起き上がることです。」という言葉だった。
主人公の「僕」が、人違いをして恥ずかしくなったり、授業中に言い間違いをして笑われたりする場面を読んで、僕にも似た経験があると思った。
僕は以前、バスケットボールの練習試合で簡単なパスを取り損ね、相手に点を取られてしまったことがある。その瞬間、みんなが自分を見ているような気がして、とても恥ずかしかった。その後は、また失敗することが怖くなり、思い切ったプレーができなくなってしまった。
だから、「僕」が恥ずかしい思いをいつまでも覚えていることに、とても共感した。
一方で、タクジが「恥ずかしい」という気持ちを「機能」として考えていることは面白いと思った。僕はこれまで、恥ずかしさはできれば感じたくない嫌な気持ちだと思っていた。でも、恥ずかしかった出来事は確かに強く覚えているし、その経験から次は気をつけようと思うこともある。
特に印象に残ったのは、中学時代にタクジが「僕がロボットを作るとしたら、転ばないようにはするね」と言っていたのに、大人になったタクジが「転ぶことはしかたがありません。大事なのは、起き上がることです。」と言ったことだ。
僕は、この二つの言葉の違いから、失敗しないことだけが大切なのではなく、失敗したあとにどうするかも大切なのではないかと感じた。
もちろん、この言葉だけが作品の答えではないと思う。「僕」とタクジの関係や、「恥ずかしい」という気持ちについても、いろいろな読み方ができるからだ。
僕はこの作品を読んで、恥ずかしい失敗をしたときに、「恥ずかしいから全部忘れてしまいたい」と思うだけでなく、そのあと自分がどうするのかも考えたいと思った。
10. 「ヒューマノイド」語句の意味
「ヒューマノイド」に出てくる重要な語句の意味を確認しよう。
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 手応え | 自分のしたことに対して返ってくる、確かな反応や実感。 |
| 錠 | ドアや箱などを、鍵を使って開け閉めするための仕掛け。 |
| 感覚を覚える | 「〜な感じがする」と心や体で感じること。 |
| たわいもない | 取り立てて重要というほどでもない、ささいなこと。 |
| ヒューマノイドロボット | 人間の形や動きなどをまねるように作られたロボット。 |
| もしくは | 「または」「あるいは」。二つなどの選択肢を示す言葉。 |
| 機能 | あるものが持っている働きや役目。本文では、タクジが人間の性質について考えるときにも使っている。 |
| 主張する | 自分の意見や考えをはっきり述べること。 |
| あえて…する | 普通ならしないことを、考えがあってわざと行うこと。 |
| ぞっとする | 恐怖や強いショック、失敗に気づいたときなどに、背筋が寒くなるような感じがすること。本文では、人違いに気づいた「僕」の強い焦りや恥ずかしさに関係している。 |
| けげんそうに | 事情が分からず、不思議に思ったり疑問に感じたりしている様子。 |
| 眉をひそめる | 心配や不快感などから、眉間にしわを寄せること。 |
| 取り繕う | 失敗や本心などが分からないように、うわべを整えたりごまかしたりすること。 |
| 地に落ちる | それまで高かった信用や評価などが、すっかり低くなること。 |
| 困惑する | どうしたらよいか分からず、とまどうこと。 |
| 飛び交う | 多くのものがあちこちを行き来すること。「発言が飛び交う」なら、多くの人が次々と発言すること。 |
| 思いをはせる | 遠くの人や場所、過去などに心を向けて考えること。 |
| 連鎖反応 | 一つの出来事をきっかけに、次々と同じような反応が起こること。 |
| 面もち | その人の気持ちが表れている顔つき。 |
| どっと沸く | 大勢の人が一斉に笑ったり声を上げたりして、その場が急に盛り上がること。 |
| 動揺する | 予想していなかったことなどによって、心が揺れ、落ち着きを失うこと。 |
| …ものの | 「〜ではあるけれど」という逆接を表す言葉。 |
| 立ち尽くす | 驚きや悲しみなどによって、立ったまま動けなくなること。 |
| 急きょ(急遽) | 予定していなかったことを、急に行うこと。 |
| 舌打ち | 不満やいら立ちなどを表すため、舌で「チッ」という音を立てること。 |
| ひたすら | ほかのことを考えず、一つのことだけを続ける様子。 |
| 語呂 | 言葉の音の響きや調子。 |
| いら立ちが湧く | いらいらした気持ちが心の中に生まれてくること。 |
| のんき | あまり細かいことを気にせず、のんびりしている様子。 |
| 笑顔のできそこない | 笑顔になりきれていない、不自然な笑顔。本文ではタクジの複雑な気持ちが表れた表現。 |
| 視線をそらす | 相手などから目をそらし、見ないようにすること。 |
| 雰囲気を和らげる | 緊張した空気などを、穏やかなものにすること。 |
| 軽口 | 軽い調子で言う冗談や、深刻ではない言葉。 |
| 肩を落とす | がっかりして、元気をなくした様子になること。 |
| 力を振り絞る | 残っている力をできる限り出すこと。 |
| 判明する | 分からなかったことが、はっきり分かること。 |
| …を後にする | その場所から離れること。 |
| 行動に移す | 考えているだけではなく、実際に行うこと。 |
| 後ろめたさ | 自分が悪いことをした、申し訳ないという気持ち。 |
| …をいいことに | 自分にとって都合のよい状況を利用して何かをすること。 |
| それきり | その出来事を最後に、その後何もないこと。 |
| 時おり(時折) | ときどき。たまに。 |
| プラットフォーム | 駅で電車に乗り降りする場所。ホーム。 |
| 期待が増す | 「こうなってほしい」という気持ちが、さらに大きくなること。 |
| 日が落ちる | 太陽が沈むこと。 |
| 文言 | 文章などに書かれている言葉。 |
| 後押しされる | 何かをきっかけに、行動する勇気や決心を強められること。 |
| 軌道 | 物が動いていく道筋。本文では、ボールが飛ぶ道筋などに関係する。 |
| AI(エーアイ) | 人工知能。コンピューターが学習・判断などを行う技術。 |
| 万が一 | 可能性は低いが、もしもそのことが起きた場合。 |
| 腰を下ろす | 座ること。 |
| 捉える(とらえる) | 物事をしっかりつかむこと。カメラなどが対象を映像として記録する意味でも使われる。 |
| 棒立ちになる | 驚きなどによって、立ったまま動けなくなること。 |
| 無邪気 | 素直で悪気がなく、飾ったところのない様子。 |
ここまで学習できたら、「ヒューマノイド」のテスト対策練習問題とドリルに挑戦しよう!
伊坂幸太郎「ヒューマノイド」定期テスト対策|予想問題と解答・解説
【中学国語】伊坂幸太郎「ヒューマノイド」漢字ドリル
【中学国語】伊坂幸太郎「ヒューマノイド」語句・表現技法ドリル
【中学国語】伊坂幸太郎「ヒューマノイド」内容理解ドリル
【中学国語】伊坂幸太郎「ヒューマノイド」主題・表現効果ドリル


参考文献・参考資料
- 光村図書出版『国語2』「ヒューマノイド」伊坂幸太郎(2024年検定済教科書、92~103ページ)
- Japanese Textbook LOD「4 人間のきずな:ヒューマノイド」
- 光村図書出版「伊坂幸太郎、新作『ヒューマノイド』を語る」
- 光村図書出版「教材別資料一覧・関連リンク 2年」
- 新潮社「伊坂幸太郎 著者プロフィール」
※本記事では、光村図書『国語2』掲載の伊坂幸太郎「ヒューマノイド」の本文をもとに、定期テストで重要となる登場人物の心情・表現・構成・主題を整理しています。作品の解釈については、本文から確認できる事実と、文章全体を踏まえて読み取ることができる内容を区別し、光村図書が公開している伊坂幸太郎さん本人のインタビューも参考にしています。
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運営者情報
檜垣由美子
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本当そうですよね!!
テスト近いときにとても助かります…!
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今中2です。国語の物語が好きで大体教科書を先読みするのですが、このヒューマノイドにとてもはまってしまいました。一年の時の「少年の日の思い出」が一番大好きで、ゆみねこさんの考察を読んだ時は180度視点が変わり新しい物語に見えるようになったので、このヒューマノイドでも視点が大分変わったような気がします。自分では気づかないゆみねこさんの物語の深読みや気付きにとても感謝しています。少し長くなりましたが、有り難うございました!
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初めまして、初めてコメントさせていただきます。
こちら中学校の国語教師をしております。yumime koさんよりだいぶ歳上になりますが、わたしも青学教育学科の卒業です。
今年度初めて「ヒューマノイド」をやることになり、参考にさせてもらいました。感謝しております。他の単元のところも覗くこともあります。今後共よろしくお願いします。



ありがとうございます!!
毎回助かっています♀️
テストが近かったのでナイスタイミングです