「落葉松(北原白秋)」詩の現代語訳・表現技法をわかりやすく解説

中学校2年生の国語で学習する北原白秋の詩「落葉松(からまつ)」について、詩の形式、詩の意味、現代語訳、使われている表現技法など、定期テストで必要になるポイントをわかりやすく解説するよ。

「落葉松」テスト対策ポイントまとめ

  • 作者は明治〜昭和の詩人・歌人である北原白秋
    他の作品には「邪宗門」「思ひ出」「桐の花」「雲母集」など。
  • 落葉松は「五七調」文語定型詩
  • 第一・三・四・五・七・八連には、対句法が使われている。
  • 第六連には、倒置法反復法が使われている。
  • 第八連には、体言止めが使われている。
  • 「ふ(ウ)」「ひ(イ)」「へ(エ)」「づ(ズ)」「は(ワ)」などの歴史的仮名遣いが使われている。
  • 落葉松の主題は、「人の世は寂しく無常だが、世の中は味わい深く、楽しみを与えてくれるもの」ということ

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「落葉松(からまつ)」要点と解説 (期末テスト対策ポイント)

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目次

北原白秋「落葉松」詩の本文

北原白秋の詩「落葉松(からまつ)」の本文を確認しよう。

たろうたろう

詩の行のかたまりのことを「連」と呼ぶよ。
「落葉松」は、全部で八連から出来ている

落葉松 作:北原白秋


からまつの 林を過ぎて、
からまつを しみじみと見き。
からまつは さびしかりけり。
たびゆくは さびしかりけり。


からまつの 林を出でて、
からまつの 林に入りぬ。
からまつの 林に入りて、
また細く 道はつづけり。


からまつの 林の奥も
わが通る 道はありけり。
霧雨きりさめの かかる道なり。
山風の かよふ(ウ)道なり。


からまつの 林の道は
われのみか、ひともかよひ(イ)ぬ。
ほそぼそと 通ふ(ウ)道なり。
さびさびと いそぐ道なり。


からまつの 林を過ぎて、
ゆゑ(エ)しらず 歩みひそめつ。
からまつは さびしかりけり、
からまつと ささやきにけり。


からまつの 林を出でて、
浅間嶺あさまねに けぶり立つ見つ。
浅間嶺に けぶり立つ見つ。
からまつの またそのうへ(エ)に。


からまつの 林の雨は
さびしけど いよよしづ(ズ)けし。
かんこ鳥 鳴けるのみなる。
からまつの るるのみなる。


世の中よ、あは(ワ)れなりけり。
常なけど うれしかりけり。
山川やまがは(ワ)に 山がは(ワ)の音、
からまつに からまつのかぜ。

北原白秋「落葉松」現代語訳

「けり」は、過去をあらわす助動詞なのだけれど、会話の中や、心の中の言葉、和歌の中で使われるときは詠嘆の意味になりやすいよ。
ここでも、現代語訳は「けり」を詠嘆(~だなあ)として訳しているよ。


落葉松の林の中を通って、
落葉松をしみじみと見た。
落葉松は寂いものだなあ。
旅行くのは寂しいものだなあ。


落葉松の林を抜け出て、
(また)落葉松の林に入った。
落葉松の林に入って、
また細く道はつづいていた。


落葉松の林の奥にも
私が通れる道はあった。
霧雨きりさめのかかる道だ。
山風の通う道だ。


落葉松の林の道は
私だけでなく、人々も通った。
細々と通う道だ。
いかにも寂しい様子で、急ぐ道だ。


落葉松の林を過ぎて、
わけもなくそっと歩いた。
落葉松は寂しいものだなあ。
「落葉松」と囁いた。


落葉松の林を抜け出て、
浅間嶺あさまねに煙が立つのを見た。
浅間嶺に煙が立つのを見た。
落葉松のまたその上に。


落葉松の林に降る雨は
寂しいけれど、ますます静かだ。
閑古鳥が鳴くのが聞こえるのみだ。
落葉松がれる音がするのみだ。


世の中とはしみじみとするものだなあ。
常ではないけれど、嬉しいものだなあ。
山川には山川の音がして、
落葉松には落葉松の風が吹いている。

「落葉松」の詩の主題(テーマ)・作者の伝えたいこと

落葉松には、「さびしかりけり(寂しい)」や「あはれ」「しづけし」という言葉がたくさん使われているように、なんだか寂しくてひっそりとした雰囲気がずっと続いているね。

でも、最後の第八連では、「うれしかりけり」という言葉が登場している

第一連から第七連までは、落葉松の林を歩きながら、ずっと寂しい気持ちや、孤独感が書かれてきたけれど、
第八連では「世の中(人の世)は寂しいものだけれど、山川に山川の音があったり、落葉松に落葉松の風が吹く。自然は味わい深く、楽しみを与えてくれる」と締めているんだ。

つまり、この詩は「ただただ寂しい」とか「つらい」というマイナスのことを伝えたいのではないよ。

「人の世は孤独で寂しいものだが、世の中は味わい深くて、楽しみを与えてくれる」
というのがこの詩の主題(テーマ)だよ。

この、落葉松の詩が「どんなことを伝えたいのか」とか、「どんな心情を書いたものか」という問題がテストでは良く出るのでおさえておこう。

「落葉松」の詩の形式「文語定型詩」とは

詩には「形式けいしき」というものがあるんだ。
詩の形式は、「口語か文語か」「定型か自由か」で4つにわけられるよ。
それぞれくわしく説明するね。

口語こうご」と「文語ぶんご」とは

「口語」というのは、今の日本で普通に使われている話し言葉のこと。

それに対して、「文語」とは、昔の書き言葉(文章を書くときだけに使う言葉のこと)のことで、平安時代の文法をキホンとしているんだ。

文語と口語の違いを説明するイラスト

だから、「落葉松」には「さびしかりけり」とか、「入りぬ」というように、いかにも平安時代っぽい言葉が使われているんだね。

定型詩ていけいし」と「自由詩じゆうし」とは

「定型詩」とは、字数などの詩の型が、「定まっている」ということ。
つまり、自由に思いつくままに好きな言葉を並べていいというわけではないということ。

それに対して、字数などに縛りがなく、自由に作る詩は「自由詩」というよ。

「落葉松」の詩は、
「からまつの(5音)」「林を過ぎて(7音)」というように、
ずっと「5音」と「7音」の組み合わせで詩が作られているよね。

だから、型が「5・7」のカタチで定まっているから、「定型詩」 なんだ。

このように「5音」と「7音」で繰り返すものを「五七調ごしちちょう」と呼ぶよ。

たろうたろう

「文語」で書かれた「定型詩」だから、文語定型詩ぶんごていけいしなんだね。

口語自由詩・文語自由詩・口語定型詩・文語定型詩の詩の形式の見分け表の図解イラスト

この「五七調」と「文語定型詩」という用語は、テストで必ず出るといってもいいくらい重要だから、確実におさえておこう。

「落葉松」の作者・北原白秋について

「落葉松」の詩を作った北原白秋きたはらはくしゅうは、明治から昭和にかけての詩人・歌人
童謡どうようや短歌でも有名なんだ。

北原白秋の作品には、他に邪宗門じゃしゅうもん」「おもひ(イ)」「きりの花」「雲母きらら集」などがあるよ。
テストでは北原白秋の名前を漢字で書いたり、活躍した時代、他の代表作などが問題に出ることもあるよ。

「落葉松」で使われている歴史的仮名遣い

北原白秋の「落葉松」が発表されたのは大正10年。
なので、使われている言葉や、仮名遣かなづかいに現代と違うものがあるんだ。

テストでは、「落葉松」で使われている言葉や仮名遣いが、現代の言葉や仮名遣いだとどういう意味や書き方になるかがわれる よ。

「歴史的仮名遣い」とは

歴史的仮名遣いは、今の日本で普通に使われている現代仮名遣いに比べて「古い」仮名遣いのことで、明治から第二次世界大戦まで使われていたものなんだ。

例えば「ゑ」は、今なら「え」になっているし、
「ゐ」も「い」、
「ぢ」が「じ」に・・・など今と違うところがあるんだ。

「落葉松」で使われている歴史的仮名遣い

「落葉松」の中で使われている歴史的仮名遣いを全て紹介するので、全部「歴史的仮名遣い」から現代の仮名遣いに直せるようにしておこう!

第三連の「かよふ」→「かよう」

かよう」つまり、とおるということだけど、今なら「う」と書くところが、「ふ」になっているね。

第四連の「通ふ」→「通う」

第三連と同じく、「う」が「ふ」になっているね。

第五連の「ゆゑしらず」→「ゆえしらず」

「ゆえ」とは、「理由」のこと。「ゆえしらず」は「理由もわからずに」ということだね。
今なら「え」と書くところが、「ゑ」になっているね。

第六連の「そのうへに」→「そのうえに」

「上」の「え」が、「へ」になっているね。

第七連の「しづけし」矢印「しずけし」

「しずけし」というのは、今の言葉で言うと「静かだ」ということ。
しずかの「ず」が、「づ」になっているね。

第八連の「あはれ」→「あわれ」
「山がは」→「山がわ」

「あわれ」というのは、「さびしい」とか、「しみじみしている」ということ。
「あわれ」の「わ」が「は」になっているね。
そして「山川やまがわ」の「わ」が「は」になっているね。

「落葉松」で使われている表現技法

「落葉松」では、対句法ついくほう」・「倒置法とうちほう」・「体言止たいげんどめ」・「反復法はんぷくほう」などの色々な表現方法が効果的に使われているよ。

テストでは、「第○連にはどんな表現技法が使われているか?」とか、「〇〇法が使われているのはどの連か?」というように問題が出ることがあるので、しっかり把握しておこう。

対句法ついくほうについて

対句法とは

似た表現や、関係する表現を並べることで、リズムを作ったり、印象を強くする効果がある表現技法のこと。

第一連の
「からまつは さびしかりけり」
「たびゆくは さびしかりけり」

第三連の
「霧雨の かかる道なり」
「山風の かよふ(ウ)道なり」

第四連の
「ほそぼそと 通ふ道なり」
「さびさびと いそぐ道なり」

第五連の
「からまつは さびしかりけり」
「からまつと ささやきにけり」

第七連の
「かんこ鳥 鳴けるのみなる」
「からまつの 濡るるのみなる」

第八連の
「山川に山がはの音」
「からまつに からまつのかぜ」

これらは、それぞれ似たような言い回しにする「対句法」が使われている んだ。

倒置法とうちほうについて

倒置法とは

文章の語順をあえて通常とは逆にすることで、印象を強める効果がある表現技法のこと。

第六連の
「浅間嶺に けぶり立つ見つ」
「からまつの またそのうへ(エ)に」

これは、「からまつの上に見える浅間嶺で煙が立っているのが見える」という状況を表しているので、本当だったら「からまつの またそのうへ(エ)に 浅間嶺に けぶり立つ見つ」という順番の方が自然だね。

それをあえて逆にする「倒置法」を使うことで、印象を強めている んだ。

体言止たいげんどめについて

体言止めとは

文章の最後を名詞で終わらせる表現技法。リズム感が出て、印象を強める効果があるよ。

第八連の
「山川に山がはの
「からまつに からまつのかぜ

ここでは文章の最後を名詞である「音」と「かぜ」で終わらせる「体言止め」を使うことで、リズム感を出して印象を強めているよ。

反復法について

反復法とは

同じ言葉や、句を繰り返すことで、強調する効果を持たせる表現技法のこと。

第六連の
「浅間嶺にけぶり立つ見つ」
「浅間嶺にけぶり立つ見つ」

ここでは同じ文章が繰り返されているね。繰り返すことで印象を強める「反復法」が使われいてるよ。

「落葉松」言葉の意味

内容を理解するためには、登場する言葉の意味もしっかりとおさえておこう。使われている言葉も、テストで穴埋め問題で出されたりするので、キーワードとなる言葉は全て覚えておこう。

からまつ(落葉松)

日本の固有種であるマツ科の落葉針葉樹。
標高が高く寒冷な土地に生える。

しみじみ

心の底から深く感じること。
「つくづく」と同じ。

さびしかりけり

「寂しいものだ」ということ。
「けり」は過去をあらわす助動詞だけれど、会話の中や心の中の言葉、和歌の中で使われている場合は、詠嘆(~だなあ)の意味になりやすいよ。
なので、ここでの「さびしかりけり」は「寂しいものだ(なあ)」となるよ。

ひともかよひぬ

「われのみか ひともかよひぬ」で、
「我(自分)だけか? (いや、) 人々も通っていた」という意味。

さびさびと

漢字で書くと、「寂寂と」。
つまり、「いかにも寂しい様子」のこと。

ゆゑしらず

「ゆゑ」とは、「理由」のこと。
「理由も知らず」、という意味。

歩みひそめつ

「ひそめ」は、「ひそむ」の連用形で、「目立たないようにする」という意味。
つまり、「目立たないように歩く」ということ。
「ゆゑしらず 歩みひそめつ」で「わけもなく そっと歩いた」という意味になるよ。

浅間嶺

浅間嶺とは、浅間山のこと。
浅間山は、長野県にある火山。
北原白秋は長野県の温泉地に宿泊しているときに、この浅間山から煙が出ている姿と、落葉松との風景を楽しむのがお気に入りだったとのことだよ。

いよよしづけし

「いよよ」は「いよいよ」ということ。
「しづけし」は、「静かだ」という意味。
つまり、「いよいよ静かだ(ますます静かだ)」ということ。

かんこ鳥鳴ける

「かんこ鳥(カッコウの別名)」は、「閑古鳥が鳴く」で知られるように、「誰もいないさみしい様子」を表現するために使われているよ。
かんこ鳥の鳴き声は切なくて、なんだか寂しい印象なので、「閑古鳥が鳴く」=「とても寂しい」という使われ方をするようになったよ。

あはれ

寂しくて孤独な様子としての意味と、しみじみと味わい深い様子としての意味があるよ。
「世の中よ あはれなり」で、人の世や寂しく孤独であることと、世の中の自然はしみじみと味わい深い、という両方の意味を表現していると考えられているよ。

常なけど

「常なけど」は、「常ではない」、つまり「無常むじょうはかない」と言う意味。

うれしかりけり

「嬉しいことだ」という意味

「落葉松」テスト対策ポイントまとめ

「落葉松」テスト対策ポイントまとめ

  • 作者は明治〜昭和の詩人・歌人である北原白秋
    他の作品には「邪宗門」「思ひ出」「桐の花」「雲母集」など。
  • 落葉松は「五七調」文語定型詩
  • 第一・三・四・五・七・八連には、対句法が使われている。
  • 第六連には、倒置法反復法が使われている。
  • 第八連には、体言止めが使われている。
  • 「ふ(ウ)」「ひ(イ)」「へ(エ)」「づ(ズ)」「は(ワ)」などの歴史的仮名遣いが使われている。
  • 落葉松の主題は、「人の世は寂しく無常だが、世の中は味わい深く、楽しみを与えてくれるもの」ということ

ここまで学習できたら、「落葉松」定期テスト対策問題のページに挑戦しよう!

運営者情報

青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。

感想や意見を聞かせてね

  1. 新井潤惺 より:

    期末テストがもう少しで焦っていたのですがうみねこさんが詳しく教えてくれたおかげで少し、できるようになりました。ありがとうございます!!
    この調子で期末テストに向けて精一杯頑張っていきますこの調子で期末テストに向けて精一杯頑張っていきます!!
    今回は本当にありがとうございました!

  2. 小西 より:

    わかりやすいです!

  3. より:

    単元テストが明日で焦っていたけれど、重要な単語などたくさん丁寧に説明されていて明日のテストで高得点が取れそうです!
    ありがとうございます♪