『平家物語』「敦盛の最期」あらすじ・現代語訳・心情をわかりやすく解説
中学2年生の国語では、『平家物語』の「敦盛の最期」を学習するよ。
「敦盛の最期」は、源氏の武将・熊谷次郎直実と、平家の若い武将・平敦盛が、一ノ谷の戦いで出会う場面なんだ。
このお話で一番大切なのは、「直実が敦盛を討った」という出来事だけではないよ。
直実が敦盛をどう見ていたのか、そして、その気持ちがどのように変わっていったのかを読み取ることが、とても大切なんだ。
最初は「敵」として敦盛を追いかけていた直実が、なぜ「助けたい」と思うようになったのかな? それなのに、どうして最後には敦盛を討ったのかな?
本文の流れを追いながら、一緒に考えていこう。
この記事で分かること
- 「敦盛の最期」の原文とあらすじ
- 熊谷次郎直実と平敦盛の人物関係
- 直実の心情がどのように変化したのか
- 「助けまゐらせん」「名のるまじぞ」「泣く泣く」の意味
- 敦盛の笛が表していること
- 「弓矢とる身ほど口惜しかりけるものはなし」の意味
- 当時の武士の生き方や価値観
- 歴史的仮名遣いと係り結び
目次
- 1. 「敦盛の最期」はどんな話?
- 2. 登場人物を整理しよう
- 3. 一ノ谷の戦いとは
- 4. 「敦盛の最期」原文を読んでみよう
- 5. 直実が敦盛を呼び戻す
- 6. 「あっぱれ、大将軍や。」の意味
- 7. 直実が敦盛を討てなくなった理由
- 8. 「助けまゐらせん」に表れた直実の心情
- 9. 「なんぢにあうては名のるまじぞ。」の意味
- 10. なぜ直実は敦盛を結局討ったの?
- 11. 「泣く泣く首をぞかいてんげる。」の意味
- 12. 敦盛の笛が意味するもの
- 13. 「弓矢とる身ほど口惜しかりけるものはなし」の意味
- 14. 敦盛はどんな人物?
- 15. 直実はどんな人物?
- 16. 「敦盛の最期」から分かる武士の価値観
- 17. 「敦盛の最期」の主題
- 18. 歴史的仮名遣いを確認しよう
- 19. 「ぞ」の係り結び
- 20. 「敦盛の最期」重要語句のまとめ
- 21. 直実の心情変化をまとめよう
- 22. テスト対策ポイントまとめ
1. 「敦盛の最期」はどんな話?
「敦盛の最期」は、『平家物語』の中の一場面だよ。
舞台になっているのは、源氏と平家が戦った一ノ谷の戦いなんだ。
この戦いで平家は敗れ、多くの人々が海の上にいる船へ逃れようとしていたよ。
その中にいた一人の若い武者が、平敦盛なんだ。
源氏側の武将・熊谷次郎直実は、海へ逃げようとする敦盛を見つけるよ。
ここから、二人の運命が大きく動き始めるんだ。
たろう
くまごろう2. 登場人物を整理しよう

まずは、登場人物の関係を整理しておこう。
熊谷次郎直実
- 源氏側の武将
- 一ノ谷の戦いで敦盛を追う
- 小次郎という息子がいる
平敦盛
- 平家側の若い武将
- 平経盛の子
- 17歳ほどの若者
- 笛をたしなみ、管絃に親しんでいる
ここはまず、直実=源氏、敦盛=平家と覚えておけば大丈夫だよ。
3. 一ノ谷の戦いとは
どうして敦盛は、馬で海の中へ入っていたのかな?
それは、平家が一ノ谷の戦いで敗れ、海上の船へ逃げようとしていたからなんだ。
敦盛も、ほかの平家の人々と同じように、船へ向かおうとしていたよ。
だから、この場面は平家が勢いよく攻めている場面ではなく、戦いに敗れて逃げている場面だということをおさえておこう。
4. 「敦盛の最期」原文と現代語訳
ここで、「敦盛の最期」の原文を読んでみよう。
古文だから、初めて読んで「何を言っているのか分からない!」と思っても大丈夫だよ。
原文を場面ごとに区切って、そのすぐ下にやさしい現代語訳をつけているよ。
まずは「誰が・何をしたのか」を追いながら読んでみよう。このあと、それぞれの言葉や登場人物の心情をもっと詳しく解説していくからね。
たろう
くまごろう① 直実が敦盛を組み伏せる
原文
汀にうち上がらんとするところに、おし並べてむずと組んでどうど落ち、とつて押さへて首をかかんと甲をおしあふのけて見ければ、年十六七ばかりなるが、薄化粧して、かねぐろなり。わが子の小次郎がよはひほどにて、容顔まことに美麗なりければ、いづくに刀を立つべしともおぼえず。
現代語訳
(その武者が)岸へ上がろうとするところに、直実は馬を並べて一気に組みつき、二人ともどっと馬から落ちた。
直実は相手を押さえつけ、首を切ろうとして兜を押し上げて顔を見ると、十六、七歳ほどの若者だった。
薄化粧をし、歯を黒く染めている。年ごろは自分の息子・小次郎と同じくらいで、顔立ちも本当に美しかったので、直実はどこに刀を突き立てればよいのか分からなくなってしまった。
ここで直実は初めて、敦盛の若さを目の当たりにするよ。
それまで「敵の武者」だった相手が、自分の息子と同じくらいの若者に見えてきたんだ。
② 直実が敦盛を助けようとする
原文
「そもそもいかなる人にてましまし候ふぞ。名のらせたまへ。助けまゐらせん。」と申せば、
「なんぢは誰ぞ。」と問ひたまふ。
「物その者で候はねども、武蔵の国の住人、熊谷次郎直実。」と名のり申す。
「さては、なんぢにあうては名のるまじぞ。なんぢがためにはよい敵ぞ。名のらずとも首をとつて人に問へ。見知らうずるぞ。」とぞのたまひける。
現代語訳
直実が、「いったい、あなたはどのようなお方なのですか。お名前をおっしゃってください。お助け申し上げましょう。」と言うと、
その武者は、「お前は誰だ。」と尋ねた。
直実は、「たいした者ではありませんが、武蔵の国の住人、熊谷次郎直実です。」と名乗った。
すると武者は、「それなら、お前には名乗るまい。お前にとって私は、討ち取るには十分な相手だ。私が名乗らなくても、首を取って人に尋ねれば、誰なのか分かるだろう。」と言った。
直実は、この時点ですでに敦盛を助けたいと思っているよ。
一方の敦盛は、命乞いをするのではなく、「首を取って人に見せれば自分が誰なのか分かる」と答えているんだ。
③ 直実が「助けたい」と思う
原文
熊谷、「あつぱれ、大将軍や。この人一人討ちたてまつたりとも、負くべきいくさに勝つべきやうもなし。また討ちたてまつらずとも、勝つべきいくさに負くることもよもあらじ。小次郎が薄手負うたるをだに、直実は心苦しうこそ思ふに、この殿の父、討たれぬと聞いて、いかばかりか嘆きたまはんずらん。あはれ、助けたてまつらばや。」と思ひて、後ろをきつと見ければ、土肥、梶原五十騎ばかりで続いたり。
現代語訳
直実は、「なんと立派な大将だ。この人一人をお討ちしたからといって、負けるはずの戦に勝てるわけでもない。また、この人を討たなかったからといって、勝つはずの戦に負けることもあるまい。
小次郎が軽い傷を負っただけでも、私はこんなにつらく思ったのだ。この方の父親は、息子が討たれたと聞いたら、どれほどお嘆きになることだろう。
ああ、なんとかこの方をお助けしたいものだ。」と思った。
そこで後ろをさっと見ると、土肥や梶原らが五十騎ほどで続いてやって来ていた。
ここは、直実の心情を考えるうえでとても大切だよ。
直実は、自分の息子・小次郎が軽い傷を負っただけでもつらかったことを思い出しているんだ。
だから、「敦盛が死んだら、その父親はどれほど悲しむだろう」と考え、助けたいと思ったんだね。
④ それでも敦盛を討つことを決める
原文
熊谷涙をおさへて申しけるは、「助けまゐらせんとは存じ候へども、味方の軍兵、雲霞のごとく候ふ。よも逃れさせたまはじ。人手にかけまゐらせんより、同じくは、直実が手にかけまゐらせて、後の御孝養をこそつかまつり候はめ。」と申しければ、
「ただとくとく首をとれ。」とぞのたまひける。
現代語訳
直実は涙をこらえながら、
「お助け申し上げたいとは思いますが、味方の兵が雲や霞のように大勢集まっています。とてもお逃げになることはできないでしょう。
ほかの者の手におかけするくらいなら、同じことなら私の手におかけして、その後のご供養をさせていただきましょう。」
と言うと、敦盛は、
「ただ、早く早く首を取れ。」
と言った。
「助けたい」のに、「逃がしても助からない」。
ここで直実は、とても苦しい決断をすることになるんだ。
⑤ 直実が泣きながら敦盛を討つ
原文
熊谷あまりにいとほしくて、いづくに刀を立つべしともおぼえず、目もくれ心も消えはてて、前後不覚におぼえけれども、さてしもあるべきことならねば、泣く泣く首をぞかいてんげる。
「あはれ、弓矢とる身ほど口惜しかりけるものはなし。武芸の家に生まれずは、何とてかかる憂きめをばみるべき。情けなうも討ちたてまつるものかな。」とかきくどき、袖を顔に押しあてて、さめざめとぞ泣きゐたる。
現代語訳
直実は、あまりにも敦盛がかわいそうで、どこに刀を当てればよいのかも分からず、目の前が真っ暗になり、心も消え入りそうで、何が何だか分からないような気持ちになった。
しかし、そのままにしておくわけにもいかなかったので、泣きながら敦盛の首を切った。
そして、
「ああ、武士であることほど、つらく残念なものはない。武士の家に生まれていなかったなら、どうしてこんなつらい目にあうことがあっただろう。なんともかわいそうなことに、この方を討ってしまったものだ。」
と何度も嘆き、袖を顔に押し当てて、さめざめと泣いた。
「泣く泣く」という言葉からも分かるように、直実は喜んで敦盛を討ったわけではないよ。
さらに、敦盛を討つ悲しみから、「武士として生きることそのものがつらい」とまで考えるようになっているんだ。
⑥ 敦盛の笛を見つける
原文
さてもあるべきならねば、鎧直垂をとつて、首を包まんとしけるに、錦の袋に入れたる笛をぞ、腰にさされたる。
「あないとほし、この暁、城の内にて管絃したまひつるは、この人々にておはしけり。当時味方に、東国の勢何万騎かあるらめども、いくさの陣へ笛持つ人はよもあらじ。上臈は、なほもやさしかりけり。」
とて、九郎御曹司の見参に入れたりければ、これを見る人、涙を流さずといふことなし。
後に聞けば、修理大夫経盛の子息に大夫敦盛とて、生年十七にぞなられける。それよりしてこそ熊谷が発心の思ひはすすみけれ。
現代語訳
いつまでもそうしているわけにはいかなかったので、直実が敦盛の鎧直垂を取って首を包もうとすると、敦盛の腰に、錦の袋に入れた笛が差してあった。
直実は、
「ああ、なんとかわいそうなことだ。今日の明け方、平家の陣の中で管絃をなさっていたのは、この方たちだったのだ。
今、こちらの味方には東国の武士が何万騎もいるだろうけれど、戦場に笛を持ってくる者など、きっと一人もいないだろう。身分の高い方というものは、やはり優雅なものなのだなあ。」
と思い、それを九郎御曹司・源義経にお見せすると、それを見た人で涙を流さない者はいなかった。
後になって聞いてみると、討たれた若者は修理大夫・平経盛の息子、大夫敦盛という人で、17歳だった。
この出来事があってから、熊谷直実の、仏門に入ろうという気持ちはますます強くなっていった。
たろう
くまごろう原文を読むときのポイント
- 敦盛の顔を見る前と後で、直実の気持ちがどう変わったか
- なぜ直実は敦盛を「助けたい」と思ったのか
- なぜ助けたいのに、結局は敦盛を討ったのか
- 「泣く泣く」から、どんな心情が読み取れるか
- 敦盛の笛を見て、直実の考えがどう深まったか
- 「弓矢とる身ほど口惜しかりけるものはなし」が何を表しているか
この流れを意識して原文を読むと、テストの心情問題にも答えやすくなるよ。
5. 直実が敦盛を呼び戻す
直実は、海へ向かって逃げていく敦盛を見つけるよ。
そして、「敵に後ろを見せるのか」という意味の言葉をかけ、敦盛を呼び戻すんだ。
すると敦盛は、逃げ続けるのではなく、馬を引き返してくるよ。
このときの直実は、まだ敦盛を「討つべき敵の武者」として見ているんだ。
ここから、直実の敦盛に対する見方がどんどん変わっていくよ。
6. 「あっぱれ、大将軍や。」の意味
直実は敦盛を組み伏せ、首を取ろうとするよ。
ところが、敦盛の顔を見た直実は驚くんだ。
敦盛は、薄化粧をし、かねぐろをした、若く気品のある姿をしていたよ。
そこで直実が言ったのが、
「あっぱれ、大将軍や。」
という言葉なんだ。
ここでの「あっぱれ」は、「なんと見事な」「立派な」という意味だよ。
直実は敦盛の立派な身なりを見て、身分の高い武者だと受け止めているんだ。
たろう
くまごろう7. 直実が敦盛を討てなくなった理由

ここからが、「敦盛の最期」のとても大切なところだよ。
敦盛の顔を見た直実は、敦盛が自分の息子・小次郎と同じくらいの年ごろだと気づくんだ。
直実の息子・小次郎は、この戦いで軽い傷を負っていたよ。
直実は、自分の子どもが少し傷ついただけでも、とても心を痛めていたんだ。
そこで、目の前にいる敦盛を見て考えるよ。
「この若者が討たれたと知ったら、この子の父親はどれほど悲しむだろう。」
敵だった敦盛を、自分の子どもと同じくらいの一人の若者として見るようになったんだね。
たろう
くまごろう8. 「助けまゐらせん」に表れた直実の心情
敦盛を討つことができなくなった直実は、ついに敦盛を助けたいと思うようになるよ。
「助けまゐらせん」
これは、「お助け申し上げよう」という意味なんだ。
最初は敦盛を討つために追っていたのに、今度は「助けたい」と思っているよね。
直実の中で、敦盛はもう単なる「敵」ではなくなっているんだ。
自分の子ほど若い敦盛を見て、その父親の悲しみまで思いやったからこそ、直実は敦盛を討つことがしのびなくなったんだね。
9. 「なんぢにあうては名のるまじぞ。」の意味
直実は敦盛に、「お前は誰なのか」と名前をたずねるよ。
すると敦盛は、
「なんぢにあうては名のるまじぞ。」
と答えるんだ。
意味は、「お前には名乗るまい」だよ。
たろう
くまごろうつまり敦盛は、自分が討たれるかもしれない状況でも、命乞いをしていないんだね。
そこから、死を覚悟したような、武士としての毅然とした態度を読み取ることができるよ。
10. なぜ直実は敦盛を結局討ったの?

ここで、ちょっと不思議に思うよね。
直実は敦盛を助けたいと思ったのに、どうして最後には敦盛を討ったのかな?
その理由は、味方の源氏の軍勢がすぐ近くまで迫っていたからなんだ。
本文では、その様子を「雲霞のごとく」と表しているよ。
「雲霞のごとく」は、雲や霞のように、大勢の人が一面に集まっている様子なんだ。
たろう
くまごろうそこで直実は、「どうせほかの人に討たれるのなら、自分の手で討って、その後の供養をしよう」と決めるんだ。
つまり、直実は冷たくなって敦盛を討ったわけではないよ。
助けたいという気持ちをもちながら、それでも戦場の現実の中で討つしかないと考えたんだ。
11. 「泣く泣く首をぞかいてんげる。」の意味
そして直実は、敦盛を討つよ。
「泣く泣く首をぞかいてんげる。」
ここで絶対に見落としたくないのが、「泣く泣く」という言葉なんだ。
直実は、敦盛を討てたことを喜んでいるわけではないよ。
本当は助けたい。けれど、逃がしても敦盛は助からない。
その苦しい気持ちのまま、直実は敦盛を討ったんだ。
だから「泣く泣く」からは、直実の深い悲しみ、ためらい、葛藤を読み取ることができるよ。
12. 敦盛の笛が意味するもの

敦盛を討ったあと、直実はあるものに気づくよ。
敦盛の腰には、笛が差してあったんだ。
たろう
くまごろう直実は、明け方に平家の陣から管絃の音が聞こえていたことを思い出すよ。
そして、「あの音楽を奏でていたのは、この人たちだったのか」と気づくんだ。
最初、敦盛は直実にとって「敵の武者」だったよね。
でも笛を見たことで、敦盛は音楽に親しみ、都の文化の中で生きていた一人の若者として、さらに強く意識されるようになるんだ。
命を奪い合う荒々しい戦場と、笛や管絃の優雅な世界。
この二つが対照的に描かれることで、敦盛の死の痛ましさが、より強く伝わってくるよ。
13. 「弓矢とる身ほど口惜しかりけるものはなし」の意味

敦盛の笛を見た直実は、さらに深く悲しむよ。
そして、
「弓矢とる身ほど口惜しかりけるものはなし。」
と嘆くんだ。
「弓矢とる身」とは、弓矢を取って戦う身、つまり武士のことだよ。
そして、この「口惜し」は、ここでは単純な「悔しい!」という意味だけではないんだ。
武士として生きているからこそ、敦盛のような若者を自分の手で討たなければならなかった。
直実は、「武士の家に生まれなければ、こんなつらい目にあわずにすんだのに」と、武士として生きることそのものをつらく感じているんだね。
たろう
くまごろう14. 敦盛はどんな人物?

ここまで読んだら、敦盛がどんな人物として描かれているのか整理してみよう。
- 平家側の若い武将
- 平経盛の子で、17歳ほどの若者
- 薄化粧やかねぐろをした、気品のある姿
- 命乞いをせず、毅然とした態度をとる
- 笛や管絃に親しんでいる
敦盛は、ただ「若くてかわいそうな人」として描かれているわけではないよ。
武士としての誇りをもちながら、都の文化にも親しんだ、気品ある若者として描かれているんだ。
15. 直実はどんな人物?
直実についても整理してみよう。
- 源氏側の武将として、最初は敦盛を討とうとする
- 敦盛が自分の息子ほど若いと知り、心を動かされる
- 敦盛の父の悲しみまで思いやる
- 敦盛を助けたいと思う
- それでも戦場の現実から、敦盛を討つ決断をする
- 敦盛の笛を見て、武士として生きることまで嘆く
直実は、「武士としての立場」と「一人の人間としての情」の間で苦しむ人物として描かれているんだ。
そして、この出来事のあと、直実の発心の思いはさらに深まっていくよ。
発心とは、仏門に入り、僧になろうという心を起こすことなんだ。
16. 「敦盛の最期」から分かる武士の価値観
教科書では、このお話から当時の武士の生き方や価値観について考えることも大切になっているよ。
敵に後ろを見せることを恥とする
直実は、逃げていく敦盛を呼び戻すよ。
そこから、当時の武士が戦場での名誉や、武士らしい振る舞いを大切にしていたことがうかがえるんだ。
名乗る・首を取る
当時の戦では、誰を討ち取ったかが武功として大切だったよ。
だから本文にも、相手の名前をたずねたり、討った相手の首を取ったりする場面が出てくるんだ。
でも、武士にも人間としての情がある
一方で、直実は敦盛を単なる「敵」として見ることができなくなっていったよね。
自分の子と同じくらいの若者だと知り、その父親の悲しみを想像し、助けたいと思うようになるんだ。
「敦盛の最期」では、武士の勇ましさだけではなく、戦わなければならない立場と、人間として相手を思う気持ちとのぶつかり合いが描かれているんだね。
17. 「敦盛の最期」の主題
では、「敦盛の最期」から、どんなことを考えることができるのかな?
文学作品だから、「答えはこの一つだけ」と決めつける必要はないよ。
でも、この場面では特に、次のことが大切なんだ。
- 武士としての立場と、人間としての情の間で直実が苦しんでいること
- 敵味方に分かれていても、一人一人には命や家族があること
- 若く気品のある敦盛の命が、戦によって失われる悲しさ
- 戦によって、若い命が失われ、人々に深い悲しみが生まれること
そして、若い敦盛の命が失われるはかなさは、『平家物語』全体に流れる無常観にもつながっているよ。
ただし、最初から「これは無常観の話」と覚えるのではなく、まずは直実の心情の変化や、敦盛の死の悲しさを本文からしっかり読み取ることが大切なんだ。
18. 「敦盛の最期」の歴史的仮名遣いを確認しよう
「敦盛の最期」では、歴史的仮名遣いもテストによく出るよ。
歴史的仮名遣いとは、昔の文章で使われていた、今とは違うかなの書き方のことなんだ。
ここでは、「敦盛の最期」の原文に出てくる現代仮名遣いに直すと書き方が変わるもののうち、特に確認しておきたいものをまとめて見てみよう
同じ言葉が本文に何度も出てくる場合は、一つにまとめているよ。
| 本文の歴史的仮名遣い | 現代仮名遣い | ポイント |
|---|---|---|
| とつて | とって | 促音の「つ」を小さい「っ」にする |
| 押さへて | 押さえて | 語中の「へ」→「え」 |
| おしあふのけて | おしあおのけて (「おしおうのけて」でもよい) | 「あふ」の部分を現代の発音に合わせる |
| よはひ | よわい | 「は」→「わ」、「ひ」→「い」 |
| いづく | いずく | 「づ」→「ず」 |
| 候ふ(さうらふ) | 候(そうろ)う | 語尾の「ふ」→「う」 |
| たまへ | たまえ | 語尾の「へ」→「え」 |
| まゐらせん | まいらせん | 「ゐ」→「い」 |
| 問ひ | 問い | 語尾の「ひ」→「い」 |
| たまふ | たまう (「たもう」でもよい) | 語尾の「ふ」→「う」 |
| なんぢ | なんじ | 「ぢ」→「じ」 |
| あうて | おうて | 「あう」→「おう」 |
| 見知らうずる | 見しろうずる | 「らう」→「ろう」 |
| のたまひ | のたまい | 語尾の「ひ」→「い」 |
| あつぱれ | あっぱれ | 促音の「つ」を小さい「っ」にする |
| やう | よう | 「やう」→「よう」 |
| 心苦しう | 心苦しゅう | 「しう」→「しゅう」 |
| 思ふ | 思う | 語尾の「ふ」→「う」 |
| たまはん | たまわん | 語中の「は」→「わ」 |
| あはれ | あわれ | 語中の「は」→「わ」 |
| 思ひて | 思いて | 語中の「ひ」→「い」 |
| きつと | きっと | 促音の「つ」を小さい「っ」にする |
| おさへて | おさえて | 語中の「へ」→「え」 |
| 候へども | 候えども | 「へ」→「え」 |
| たまはじ | たまわじ | 語中の「は」→「わ」 |
| 候はめ | 候わめ | 語中の「は」→「わ」 |
| いとほし | いとおし | 語中の「ほ」→「お」 |
| 情けなう | 情けのう | 「なう」→「のう」 |
| 泣きゐたる | 泣きいたる | 「ゐ」→「い」 |
| したまひつる | したまいつる | 語中の「ひ」→「い」 |
| おはしけり | おわしけり | 語中の「は」→「わ」 |
| なほ | なお | 語中の「ほ」→「お」 |
| いふ | いう | 語尾の「ふ」→「う」 |
| 思ひ | 思い | 語尾の「ひ」→「い」 |
たろう
くまごろうよく出る歴史的仮名遣いのルール
- 語中・語尾の「は・ひ・ふ・へ・ほ」は、「わ・い・う・え・お」と読むことが多い。
例:あはれ → あわれ、思ふ → 思う、いとほし → いとおし - 「ゐ・ゑ」は、「い・え」と読む。
例:まゐらせん → まいらせん、泣きゐたる → 泣きいたる - 「ぢ・づ」は、「じ・ず」と読む。
例:なんぢ → なんじ、いづく → いずく - 「あう」など母音が続く形は、長くのばして読む形になることがある。
例:やう → よう、あうて → おうて - 「しう」は「しゅう」と読む。
例:心苦しう → 心苦しゅう - 昔の文章では、今なら小さい「っ」で書く音も大きい「つ」で書かれることがある。
例:あつぱれ → あっぱれ、きつと → きっと、とつて → とって
特にテストでは、「歴史的仮名遣いを現代仮名遣いに直しなさい」という問題がよく出るよ。
本文に出てきた言葉を使って、何度か声に出して読んでおくと覚えやすいよ。
たろう
くまごろう「現代仮名遣いに直す」のか、「現代語訳する」のかで答え方が変わるから、テストでは問題文をよく確認しようね。
歴史的仮名遣いのルールについて解説している記事もあるからよかったらチェックしてね!
19. 「ぞ」の係り結び

教科書では、次の文の文法にも注目するよ。
「笛をぞ、腰にさされたる。」
この文の「ぞ」は、係助詞なんだ。
係助詞「ぞ」が使われると、文末は連体形になるよ。
この文では、もとの「たり」が、連体形の「たる」に変わっているんだ。
たろう
くまごろう20. 「敦盛の最期」重要語句のまとめ
「敦盛の最期」には、今ではあまり使わない古文の言葉や、人物名・地名などがたくさん出てくるよ。
ここでは、本文や教材に出てくる順番に、大切な語句をまとめて確認しよう。
| 語句 | 意味・ポイント |
|---|---|
| 源頼朝 | 源氏の中心人物。平家打倒のため、東国で兵を挙げた。 |
| 平清盛 | 平家の中心人物。平家が大きな力をもつ時代を築いた。 |
| 源義仲 | 木曾義仲ともいう。平家を京都から追い出した源氏の武将。 |
| 一の谷 | 現在の兵庫県神戸市付近。平家が陣を構え、一ノ谷の戦いが行われた場所。 |
| 源義経 | 源氏の武将。一ノ谷の戦いなどで平家軍と戦った。本文の「九郎御曹司」も義経を指す。 |
| 汀 | 水ぎわ。海や川などの、水と陸地が接しているところ。 |
| 薄化粧 | うすく化粧をすること。当時の貴族などに見られた身だしなみ。 |
| かねぐろ | 歯を黒く染めること。お歯黒。 |
| 容顔 | 顔かたち。顔立ち。 |
| いづくに | どこに。 |
| おぼえず | 思われない。分からない。 |
| 武蔵の国 | 昔の国名。現在の東京都・埼玉県・神奈川県の一部にあたる。 |
| 大将軍 | ここでは、身分が高く立派な武将という意味。直実は敦盛の姿を見て「あっぱれ、大将軍や」と感じた。 |
| あっぱれ | 見事だ。立派だ。 |
| よもあらじ | まさかあるまい。決してないだろう。 |
| 薄手 | 軽い傷。 |
| いかばかり | どれほど。どんなにか。 |
| 土肥、梶原 | 源氏側の武将たち。直実が後ろを見ると、土肥・梶原らの軍勢が迫っていた。 |
| 軍兵 | 戦いに参加する兵士。軍勢。 |
| 雲霞のごとく | 雲や霞のように、大勢の人が一面に集まっている様子。 |
| 孝養 | ここでは、死者のために供養をすること。仏や死者の霊を慰めること。 |
| とくとく | 早く早く。「ただとくとく首をとれ」は、「ただ早く早く首を取れ」という意味。 |
| いとほし | かわいそうだ。気の毒だ。 |
| 弓矢とる身 | 弓矢を取って戦う身、つまり武士の身・立場。 |
| 憂きめ | つらい目。苦しい経験。 |
| かきくどき | 何度も繰り返して嘆く。 |
| 久しうあつて | しばらく時間がたって。「久しう」は「長い間・しばらく」の意味。 |
| 鎧直垂 | 武士が鎧の下に着る衣服。 |
| 錦 | 美しい模様を織り出した絹織物。敦盛の笛は錦の袋に入れられていた。 |
| 城の内 | ここでは、一ノ谷にあった平家の陣の中。 |
| 管絃 | 笛などの管楽器や、琴などの弦楽器を使った音楽。 |
| 騎 | 馬に乗った武士などを数えるときに使う語。 |
| 上臈 | 身分の高い人。ここでは、都の文化を身につけた身分の高い平家の人々を指している。 |
| 見参 | 身分の高い人にお目にかけること。「見参に入る」で、お見せするという意味。 |
| 修理大夫 | 役職名。本文では平経盛を指す。「修理」は皇居の造営や修理を行う役所で、大夫はその長官。 |
| 経盛 | 平経盛。平清盛の弟で、敦盛の父。 |
| 発心 | 仏門に入り、僧になろうという心を起こすこと。敦盛を討った経験のあと、直実の発心の思いは深まっていった。 |
| 屋島 | 現在の香川県高松市にある場所。一ノ谷で敗れた平家は、その後、屋島へ逃れた。 |
| 壇ノ浦 | 現在の山口県下関市付近。1185年、源平最後の戦いである壇ノ浦の戦いが行われ、平家が滅亡した。 |
たろう
くまごろう特に、「よもあらじ」「いかばかり」「雲霞のごとく」「孝養」「弓矢とる身」「憂きめ」などは、本文の意味や直実の心情を考える問題にもつながりやすいから、しっかり確認しておこう。
「敦盛の最期」の新出漢字
教科書で新しく学ぶ漢字も確認しておこう。
| 新出漢字 | 読み | 本文・教材での使われ方 |
|---|---|---|
| 陣 | ジン | 「陣」「陣へ」など。軍勢が戦いのために構えている場所。 |
| 粧 | ショウ | 「薄化粧」の「粧」。身なりを美しく整えることを表す漢字。 |
| 騎 | キ | 「五十騎」など。馬に乗った武士を数えるときに使う。 |
| 錦 | キン/にしき | 「錦の袋」。美しい模様を織り出した織物。 |
漢字は、字だけを覚えるより、「五十騎」「薄化粧」「錦の袋」のように、本文に出てきた言葉ごと覚えるとテストでも思い出しやすいよ。
21. 直実の心情変化をまとめよう
最後に、このお話で一番大切な直実の心情変化をもう一度整理してみよう。
熊谷直実の心情変化
敦盛を「討つべき敵」として追う
↓
敦盛を組み伏せ、顔を見る
↓
若く気品のある武者だと気づく
↓
「自分の息子・小次郎ほど若い」
↓
「敦盛の父はどれほど悲しむだろう」
↓
「助けたい」
↓
しかし味方の軍勢が迫る
↓
「逃がしても他の武者に討たれる」
↓
泣く泣く自分の手で討つ
↓
敦盛の笛を見つける
↓
敦盛が管絃に親しんだ若者だったと知る
↓
「武士として生きることは、なんとつらいのだろう」
↓
発心の思いが深まっていく
こうして流れで見ると、直実の敦盛に対する見方が、どんどん変わっているのが分かるね。
最初の敦盛は、直実にとって「敵」だったよ。
でも最後には、敦盛を自分の子ほど若く、音楽にも親しんだ一人の人間として見るようになっているんだ。
この変化をつかめると、「敦盛の最期」はぐっと分かりやすくなるよ。
22. 「敦盛の最期」テスト対策ポイントまとめ
「敦盛の最期」のテスト対策ポイント
- 「敦盛の最期」は『平家物語』の一場面。
- 舞台は一ノ谷の戦い。
- 熊谷次郎直実は源氏側、平敦盛は平家側。
- 敦盛は平経盛の子で、17歳ほどの若い武将。
- 「あっぱれ、大将軍や。」と言ったのは熊谷次郎直実。
- 直実は、敦盛が自分の息子・小次郎ほど若いと気づき、心を動かされる。
- 直実は、自分の子が軽い傷を負っただけでも苦しかったことから、敦盛の父の悲しみを想像する。
- 「助けまゐらせん」には、敦盛を助けたい直実の気持ちが表れている。
- 「なんぢにあうては名のるまじぞ。」からは、命乞いをせず毅然とする敦盛の姿が読み取れる。
- 味方の軍勢が「雲霞のごとく」迫るため、直実は敦盛を逃がしても助からないと考える。
- 「泣く泣く」には、敦盛を討つ直実の深い悲しみや葛藤が表れている。
- 敦盛の笛から、敦盛が管絃や都の文化に親しんだ人物だと分かる。
- 戦場の荒々しさと、笛・管絃の優雅な世界との対比も大切。
- 「弓矢とる身」は武士のこと。
- 直実は、武士として生きることそのもののつらさを嘆いている。
- 敦盛を討った経験は、直実の発心の思いが深まることにもつながる。
- 「笛をぞ、腰にさされたる。」では、「ぞ」による係り結びが使われている。
- 係助詞「ぞ」によって、「たり」が連体形の「たる」になっている。
- 直実の心情変化と、武士としての立場と人間としての情の葛藤をおさえる。
「敦盛の最期」は、古文の言葉だけを見ると最初は少し難しく感じるかもしれないね。
でも、直実の気持ちを「敵だ」→「自分の子ほど若い」→「助けたい」→「それでも討たなければならない」→「武士であることまでつらく感じる」という流れで追っていくと、お話の意味がずっと分かりやすくなるよ。
まず原文をもう一度読んでから、心情変化や重要語句を確認すると、テスト前の復習もしやすいよ。
「敦盛の最期」のテスト対策問題やドリルにも挑戦して、理解を定着させよう。
『平家物語』「敦盛の最期」テスト対策問題・心情や係り結びを確認
【中学国語】「平家物語『敦盛の最期』」漢字ドリル
【中学国語】「平家物語『敦盛の最期』」語句・古文・文法ドリル
【中学国語】「平家物語『敦盛の最期』」内容理解ドリル
【中学国語】「平家物語『敦盛の最期』」心情・人物像・主題ドリル
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青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。 ※サイト全体の運営実績についてはこちらにまとめています。


源平合戦では、那須与一の扇の的、安徳天皇の入水と並ぶ名場面だと思います。
詳しく、分かりやすく解説してあり、手に取るように頭に入ってきます。
最近の子どもたちは、ネットでも勉強できるから羨ましいです(それ以上に誘惑が多いですが)
ありがとうございます。