正岡子規「くれないの二尺伸びたる~」解説まとめ(短歌に親しむ)
中学校2年生の国語で学習する「短歌を味わう」より、正岡子規の短歌「くれないの二尺伸びたる薔薇の芽の針やわらかに春雨のふる」をわかりやすく解説するよ。
短歌の意味、作者の心情、使われている語句についてなど、定期テスト対策に必要なポイントをくわしく説明するよ。
「くれないの二尺伸びたる薔薇の芽の針やわらかに春雨のふる」定期テスト対策ポイント
- 作者は明治時代に活躍した俳人・歌人の正岡子規
- 「二尺(にしゃく)」「春雨(はるさめ)」の読みに注意しよう
- 歴史的仮名遣い「くれなゐ」は現代仮名遣いで「くれない」となる。
- 歴史的仮名遣い「やはらか」は現代仮名遣いで「やわらか」となる。
- 意味は「60cmほど伸びた赤い薔薇の芽。そのトゲはまだやわらかく、そこに春雨がやわらかく降っている。」
- 特に使われている表現技法はない。
- 句切れは「句切れなし」である。
- 「くれなゐ」とは、赤い色のこと。
- 「二尺」は約60cm
- 「針」とは薔薇のトゲのことである。
- 「やわらかい」のは、「針」と「春雨」のこと。
- 「春雨」は、春にしとしとと静かに降る雨のこと。
- 「の」の持つ役割をおさえよう。
目次
「くれないの二尺伸びたる薔薇の芽の針やわらかに春雨のふる」歌と読み方
くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる
【読み方】
くれないの にしゃくのびたる ばらのめの はりやわらかに はるさめのふる
歴史的仮名遣いについて
「くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる」の「くれなゐ」と「やはらかに」には、歴史的仮名遣いが使われているよ。
歴史的仮名遣いとは
歴史的仮名遣いとは、「仮名(ひらがな・かたかな)」で書くときの表記の仕方のひとつなんだ。
現代、みんなが普通に使っている仮名遣いは、現代仮名遣いと呼ばれるよ。
それに対して、明治時代までに使われていた仮名遣いを歴史的仮名遣いと呼ぶんだ。
歴史的仮名遣いの「ゐ・ゑ・を」は現代仮名遣いの「い・え・お」に直すよ。
なので、「くれなゐ」は「くれない」となるね。
語頭以外の歴史的仮名遣いの「は・ひ・ふ・へ・ほ」は現代仮名遣いで「わ・い・う・え・お(わ行)」になるんだ。
なので、「やはらか」は「やわらか」となるよ。
「くれないの二尺伸びたる薔薇の芽の針やわらかに春雨のふる」意味と解釈
「くれないの二尺伸びたる薔薇の芽の針やわらかに春雨のふる」の歌は、古語(昔使われていた言葉)で書かれているね。
このあとでも語句の意味をまとめているけれど、「くれない」は赤い色、「二尺」は約60cmで、薔薇の木の高さのこと。「針」とは、薔薇のトゲのこと。「春雨」は春にしとしとと降る、しずかな雨のことだよ。
なので、現代の言い方でまとめると次のようになるよ。
60cmほど伸びた赤い薔薇の芽。そのトゲはまだやわらかく、そこに春雨がやわらかく降っている。
薔薇の芽は、たしかに赤いね。
薔薇の芽が生えてくるのは3月前後。薔薇の花が咲くのは春の終わりくらいから夏の始まりにかけてだよ。
「やわらかに」がかかっている言葉
「やわらかに」という言葉は、何に対してかかっているのだろう。
「針やわらかに」とあるので、まず「針(薔薇のトゲ)」がやわらかいということがわかるね。
もうひとつ、「やわらかに」という言葉がかかっているのは「春雨」。
「春雨がふる(様子)」も、やわらかいと表現しているんだ。
句切れについて
句切れとは
句切れとは、俳句や短歌などの一首・歌の中の「大きな意味の上での切れ目」のこと。
短歌の場合、意味や調子の切れ目が句切れになるよ。
「くれないの二尺伸びたる薔薇の芽の針やわらかに春雨のふる」の歌には、歌の中で意味や調子が切れている部分はないよね。
なので、この歌は「句切れなし」だよ。
表現技法について
表現技法には、「反復法」「擬人法」「対句法」「倒置法」「体言止め」などがあるよね。
けれど「くれないの二尺伸びたる薔薇の芽の針やわらかに春雨のふる」の歌には、とくに表現技法は使われていないよ。
作者「正岡子規」とは
おもに明治時代に活躍した日本を代表する歌人・俳人。
34歳という若さで亡くなってしまった正岡子規は、俳句界に大きな影響を与えたよ。
明治時代には、西洋からいろいろな美術作品が入ってきた中、正岡子規は日本の俳句も西洋の芸術に負けるわけにはいかないと考えたんだ。
「俳句は文学の一部。文学は美術の一部。」と正岡子規は言っているよ。
西洋の芸術に負けない優れた俳句を作るためには、自然やものごとを、自分の目で見たまま描写して、自分の感じたことを表現することが大切だと考えたよ。
西洋から入ってきた新しい言葉も積極的に俳句に取り入れるなど、俳句界に新しい風をふきこんだんだ。
そのため、「近代俳句の父」とも呼ばれているよ。
「くれないの二尺伸びたる薔薇の芽の針やわらかに春雨のふる」作者の心情
写生的・写実的であることを大切にしていた正岡子規らしく、「くれないの二尺伸びたる薔薇の芽の針やわらかに春雨のふる」の歌も、「見たままの景色を忠実にそのまま」表現しているね。
この作品が作られたのは、明治33年。正岡子規が亡くなったのは明治35年で、亡くなるまでの3年ほどはずっと寝たきりだったんだ。
つまり、この歌は寝たきりの状態の中、眺めていた庭の情景を詠んでいるんだよ。
正岡子規は、小さい頃から病弱で、18歳のときに結核を発症したんだ。
当時の結核は、「不治の病(治らない病気)」で、正岡子規はずっと結核と戦いながら作品を作り続けてきたよ。
はじめて喀血(かっけつ:血を吐くこと)したときに、「鳴いて血を吐く」と言われているホトトギスと自分を重ねて、ホトトギスの別名である「子規」を自分の号(俳人としての愛称)にしたんだ。
日清戦争へ記者として渡り、帰国するとき、結核の菌が脊髄に入り込んでしまって、歩くことはもちろん、座ることもできなくなってしまったんだ。
寝たきりで過ごした最後の3年間は、激しい痛みで寝返りすることさえもできなかったと伝えられているよ。
そんな中でも、正岡子規は作品を作り続けたんだ。
この短歌を詠んだときの正岡子規は「何を想っていた」のだろう。
激しい痛みに毎日耐え、まだ30代という若さであるのに、起き上がることもできない。きっと「じわじわと迫りくる死」も意識していたと思うんだ。
そんな中、しとしととやさしく春雨が降るなか、まだ60cmほどの薔薇にあたらしい芽が出始めている。
生き生きとした、あざやかな赤い薔薇の芽。とげはまだやわらかい。
そんな薔薇の芽にも、雨はやわらかに、やさしく降りそそぐ。
「くれないの二尺伸びたる薔薇の芽の針やわらかに春雨のふる」
正岡子規が何を想いながらこの歌を詠んだのか。その情景を思い浮かべながら、みんなもぜひ心のままに感じ取ってほしい。
「くれないの二尺伸びたる薔薇の芽の針やわらかに春雨のふる」語句
語句 | 意味 |
---|---|
くれなゐ(くれない) | 紅(くれない)のこと。 あざやかな赤い色。 |
二尺 | 一尺は約30.3cmなので、二尺は約60.6cm。 |
針 | ここでは薔薇のとげのこと。 |
春雨 | 春に、しとしとと優しく静かに降る雨のこと。 |
「の」の効果について(文法)
「くれないの二尺伸びたる薔薇の芽の針やわらかに春雨のふる」の短歌では、「くれないの」「薔薇の芽の」「春雨の」というように、「の」がたくさん出てくるね。
「くれないの二尺伸びたる薔薇の芽の針やわらかに春雨のふる」は、古語(昔使われていた言葉)で書かれた歌だね。
だから、現代の「の」とはちょっとちがう意味でつかわれているんだよ。
この「の」は「格助詞」なんだ。
この「の」の文法については、中学国語ではテストにまでは出ないかもしれないけれど、念のため紹介しておくよ。
格助詞とは
主に体言(名詞)について、文節どうしの関係を表す助詞
(その体言が、文の中の他の言葉とどういう関係なのかを表す)
格助詞には、いくつか種類があって、それぞれ持っている役割がちがうよ。
種類 | 役割 | 例文 |
---|---|---|
主格(~が) | 主語であることを表す | 春雨のふる (春雨がふる) |
連体修飾格(~の) | 体言を詳しく説明する | 薔薇の芽 (「薔薇の」芽) くれないの‥薔薇 (紅い薔薇) |
同格(~で) | 並立の関係を表す | 高き山の峰 (高い山=峰) |
体言の代用(~のもの) | 体言の代わりになる | 唐のはさらなり (唐のものは言うまでもない) |
連用修飾格(~のように) | 用言を詳しく説明する | 例の集まりぬ (例のように、集まった) |
「くれないの二尺伸びたる薔薇の芽の針やわらかに春雨のふる」短歌に出てくる、それぞれの「の」のもつ役割(文法)をおさえておこう。
「くれなゐの」の「の」は、後の体言「薔薇」が紅いという性質を表しているよね。
「薔薇の芽」の「の」は、体言である「芽」が薔薇の芽であるということを説明しているよね。
「…芽の針」の「の」も、体言である「針」が、薔薇の芽の針であるということを説明しているよ。
「春雨のふる」の「の」は、「春雨がふる」と言い換えることができるよね。
つまり、「春雨」が主語であることを表しているんだよ。
- 「くれないの」「薔薇の芽」「…芽の針」は連体修飾格の「の」
- 「春雨の」の「の」は、主格の「の」
「くれないの二尺伸びたる薔薇の芽の針やわらかに春雨のふる」定期テスト対策ポイントまとめ
「くれないの二尺伸びたる薔薇の芽の針やわらかに春雨のふる」定期テスト対策ポイント
- 作者は明治時代に活躍した俳人・歌人の正岡子規
- 「二尺(にしゃく)」「春雨(はるさめ)」の読みに注意しよう
- 歴史的仮名遣い「くれなゐ」は現代仮名遣いで「くれない」となる。
- 歴史的仮名遣い「やはらか」は現代仮名遣いで「やわらか」となる。
- 意味は「60cmほど伸びた赤い薔薇の芽。そのトゲはまだやわらかく、そこに春雨がやわらかく降っている。」
- 特に使われている表現技法はない。
- 句切れは「句切れなし」である。
- 「くれなゐ」とは、赤い色のこと。
- 「二尺」は約60cm
- 「針」とは薔薇のトゲのことである。
- 「やわらかい」のは、「針」と「春雨」のこと。
- 「春雨」は、春にしとしとと静かに降る雨のこと。
- 「の」の持つ役割をおさえよう。
運営者情報
ゆみねこ
詳しいプロフィールを見る
青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。