「仁和寺にある法師(徒然草から)」あらすじとテスト対策ポイント
中学2年国語で学ぶ、兼好法師の「仁和寺にある法師ー徒然草から」のテスト対策ポイント。内容とあらすじ、口語訳(現代語訳)、古語の意味、係り結びの法則などをそれぞれくわしく解説しています。
「仁和寺にある法師ー徒然草から」
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目次【本記事の内容】
- 1.あらすじと原文・口語訳
- 2.語句・古語の意味
- 3.話の内容
- 4.作者の主張について
- 5.まとめ
徒然草から「仁和寺にある法師」
あらすじ・原文・口語訳
「仁和寺にある法師」あらすじ

仁和寺のある僧は、石清水八幡宮に行ったことがないのを残念に思っていたので、ある時、思い立って1人で歩いて参詣した。
しかし麓の極楽寺や高良を拝むと、帰ってしまった。
帰りついた僧は言う。
「石清水にやっと行けた。すばらしかった。それにしても、みんな山へ登っていくのはなんでだろう」
兼好法師は思う。「ちょっとしたことでも、案内役は欲しいものだ。」
石清水八幡宮の神社のうち、「神様」がいらっしゃる建物のこと。 本殿は山の上にあるのに、その麓の寺社だけを見て「これが石清水八幡宮だ」と勘違いして帰ってしまったというおはなしだね。
つまり、「肝心の本殿を見ないで帰るなんて、おっちょこちょいだね」ということ。
仁和寺にいる僧といえば、今でいうエリートなんだ。
そんなエリートが思い込みで失敗してしまったことを、面白おかしく書かれているんだね。
※ 背景に色がついている言葉は、クリック(タップ)すると言葉の意味が表示されるよ!
「仁和寺にある法師」
原文と口語訳
【原文】
【序段】
つれづれなるままに、日暮らし、
硯に向かひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。
【第52段】
仁和寺にある法師、年寄るまで石清水を拝まざりければ、心うく覚えて、あるとき思ひたちて、ただ一人、徒歩より詣でけり。
極楽寺・高良などを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり。
さて、かたへの人にあひて、「年ごろ思ひつること、果たしはべりぬ。聞きしにも過ぎて、尊くこそおはしけれ。そも、参りたる人ごとに山へ登りしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど、神へ参るこそ本意なれと思ひて、山までは見ず。」とぞ言ひける。
少しのことにも、先達はあらまほしきことなり。
※「先達」は「せんだち」と読む場合もある。
【口語訳】
【序段】
とくにするべきこともなくて退屈なので、一日中硯を前にして、心に浮かんでくるたわいもないことを次々になんとなく書きつけていくと、なんだか妙に狂ったような気持ちになる。
【第52段】
仁和寺にいた僧が、年をとるまで石清水八幡宮を参拝したことがないということを残念に思って、ある時に思い立って、たった1人で歩いて参拝しに行った。
(石清水八幡宮のある山のふもとの)極楽寺・高良などを参拝すると、「これくらいのものか」と思い込んで帰ってしまった。
さて、(仁和寺に)帰ってきた僧は、仲間の人に向かって「ずっと長い間思っていたこと(石清水八幡宮を参拝すること)ができた。(石清水八幡宮は)聞いていたよりも尊くあられた。それにしても、参詣に来た人々が山へ登っていったが、山の上にも何かがあったのだろうか?知りたかったけれど、神を参拝することが本来の目的なのだから、山の上までは見なかった」と言った。
ちょっとしたことでも、案内してくれる人はほしいものである。
「仁和寺にある法師」
語句や古語の意味を確認しよう!
「仁和寺にある法師」とは?
仁和寺というのは、皇室出身の僧が代々住職をつとめたりしていた格式高いお寺なんだ。
宇多天皇が家を出て仏の道に入ること。出家した後に住んでいたこともあるんだって。
法師というのは、「僧」のこと。
「仁和寺にある法師」は、「仁和寺にいる僧」ということだよ。
つまり、超エリートの僧だね。
「徒然草」とは?
徒然草は、鎌倉時代の終わりごろの作品で、兼好法師という人が書いた「ずいひつ」。心に浮かんだり、見聞きしたことなどを筆にまかせて書いた文章や作品のこと。随筆のこと。
「清少納言が書いた作品。「春はあけぼの…」で有名。枕草子」「方丈記ほうじょうき」と並んで日本の三大随筆といわれているよ。
作品の出だしが
「つれづれ(徒然)なるままに、日暮らし」
となっていたので、そこから「徒然草」と呼ばれているよ。
「徒然」は、「するべきことがなくて、退屈」という意味があるんだ。
「草」は、「枕草子」でも使われているように、「冊子(ノート・本)」という意味を持っているよ。
作品のはじめの「つれづれ」と、「冊子」という意味の「草」を合わせて、「徒然草」という呼び名ができたんだね。
徒然草は、序段と本文243段からできているよ。
序段は、「つれづれなるままに、日暮らし、硯に向かひて・・あやしうこそものぐるほしけれ。」という部分のこと。
いわゆる「プロローグ」のようなイメージだね。
「たいくつだから」とか、「たわいもないことを」とか「書きつける」というのは、それまでの作品にも使われてきていた決まり文句のようなもので、謙遜を表しているんだって。
※謙遜とは、「自分をへりくだって、ひかえめな態度でふるまうこと」だよ。
「よしなし事」の意味
漢字だと、「由無し事」と書くよ。「由」には「理由」とか、「内容」という意味があるんだ。だから「由無し事」は、「意味もないこと・たわいないこと」ということだね。
「そこはかとなく書きつくれば」の意味
「そこはかとなく」は「なんとなく」。
「書きつくれば」は「書きとめる」ということ。
思いついたことを深く考えずに、どんどん紙に書きとめていくイメージだね。
「あやしうこそものぐるほしけれ」の意味
「あやしうこそ」は「なんとも妙なことに」という意味。
「ものぐるほし」は「物狂おしい」ということで、「気が変になりそう・狂ったような」という意味。
(思いついたことを書きとめていると)なんだか妙に狂ったような気持ちになる、と書いているんだね。
なんで急に「狂ったような気持ち」になるの??
兼好法師がこの部分をどういう意味で書いたのかは、色々な説があるよ。
・思いついたことをなんとなく書くなんて、狂ったようなものだ(謙遜している)
・思いついたことを書いているだけだけど、なんだかテンションが上がってくる!(興奮している)
というような考え方があるよ。

係り結びについて
この「あやしうこそものぐるほしけれ」のように、「こそ」が使われると文末の形が「けれ」と変化するような決まりの名前について問題が出た学校があるよ!
答えは、「係り結び」だよ。
係り結びは、文の中に「や」「か」「ぞ」「なむ」「こそ」などの係助詞がある場合に、それに対応して文末(結び)の活用語が「体言(名詞)に連なる活用形のこと。連体形」または「「すでにその事態になった」ということを表す活用形のこと。已然形」になる法則のこと。
係り結びを使うことで、その文や言葉を強めたり、疑問や言いたいことと反対の内容を疑問の形で述べる表現方法。例えば「こんなひどいことがあって良いのだろうか?」は、「こんなひどいことがあっては良くない」という考えと反対の内容をあえて疑問形にしている。反語の意味を持たせることができるんだ。
【係り結びの法則は次の3通り】
- 「や」「か」は疑問または反語の意味を持たせる係助詞で、文末は連体形で結ぶ。
- 「ぞ」「なむ」は強める効果をもつ係助詞で、文末は連体形で結ぶ。
- 「こそ」は強める効果をもつ係助詞で、文末は已然形で結ぶ。
「あやしうこそものぐるほしけれ」は、❸のパターンだね。
係助詞「こそ」に対応して、「ものぐるほし」が已然形の「ものぐるほしけれ」になっているんだ。
「心うく覚えて」の意味
漢字だと「心憂く」と書くよ。「憂い」は「つらい・せつない・ゆううつ」という意味があるように、心がつらいので、「残念に思って」という意味になるんだ。
「かばかり」の意味
「かばかり」は、「この程度」とか、「このくらい」という意味。
仁和寺の僧が、極楽寺・高良を見て、「石清水八幡宮はこのくらいか」と思ってしまったということだね。
「かたへの人」の意味
「かたへ」は、漢字だと「片方」と書くよ。
セットになっているものの「もう片方」のように、「そばにあるもの、かたわらにあるもの」から、「仲間」という意味を持っているよ。
僧は、仁和寺に帰って、仲間の人に向かって話したんだね。
「そも」の意味
「そも」は、「それにしても」という意味。
石清水八幡宮の尊さを語ったあとに、話を変えるために「それにしても・ところで」という意味で使われているね。
「ゆかしかりしかど」の意味
「ゆかしかりしかど」は、「知りたかったが」という意味。
「人々が山の上に登るのはなぜか」を、知りたかったということだね。
「本意なれ」の意味
これは今でも「本意」という言葉を使うね。
本当の意図、つまり「本来の目的」ということ。
「先達はあらまほしきことなり」の意味
「先達」は、「他の人より先にその道を進んでいる人・経験者」のこと。
「あらまほし」は「望ましい・ほしい」という意味。
仁和寺の僧は、石清水八幡宮が山の上にあることを知らなかったから、見ないまま帰ってしまったんだよね。
石清水八幡宮を参拝したことのある人(経験者)がいれば、誤解しないでちゃんと山の上の本殿を参詣することができたので、
(石清水八幡宮を参拝したことのある)経験者がいれば良かったのに、という意味になっているんだね。
「先達」の読み方は基本的には「せんだつ」で、「せんだち」とも読む、という情報が多かったので、ここでは「せんだつ」とふりがなをふっているよ。
教科書によっては、「せんだち」とふりがながふっているものがあったり、両方をふっているものがあったりもするので、テストでは、どちらを書いてもマルとなるかとは思うけれど、授業で習ったとおりにするのが一番安心かな。
「仁和寺にある法師」
話の内容を理解しよう!
何を「心うく覚えた」の?
仁和寺の僧が「心うく覚えた」のは、「年寄るまで石清水を拝まざりければ」とあるように、年をとるまで石清水八幡宮を参拝したことがないということ。
石清水八幡宮は平安時代の初めに開かれて、伊勢神宮・賀茂神社と並んで「三大神社」と言われるくらいの神社なんだ。
そんな素晴らしい神社を参拝したことがないなんて、とても残念なことだ、と思ったんだね。
何を「かばかり」と思ったの?
仁和寺の僧は、石清水八幡宮を参拝するつもりだったのに、山の麓にある極楽寺・高良などを見ただけで「石清水八幡宮はこのくらいだ(これで全てだ)」と思い込んでしまった、ということだね。
つまり、極楽寺・高良を「石清水八幡宮のすべて」と思ってしまったんだね。
「年ごろ思いつること」の内容は?
「年ごろ(長い間)思っていたこと」は、もちろん仁和寺の僧が「石清水八幡宮を参拝してみたい」と思っていたことだね。
なにが「尊くこそおはしけれ」なの?
「尊くこそおはしけれ」は、「尊くあられた」ということ。
仁和寺の僧が「尊い」と思ったのは、もちろん(石清水八幡宮だと誤解した)「極楽寺・高良」のことだね。
なにを「ゆかしかりしかど」だったの?
「ゆかしかりしかど」は「知りたがったが」という意味だったね。
仁和寺の僧は、何を知りたかったのかというと、「どうして人々が山の上に登っていくのか」ということだね。
どうして僧は「山までは見ず」だったの?
人々が山の上に登っていく理由を知りたいと思ったそうだったけれど、結局山の上には登らなかった。
それは、「神へ参るこそ本意」と書かれているように、「神を参拝すること」が本来の目的だから、山の上に登るなんて本来の目的からは外れてしまうからやめておこう、と考えたということだね。
なぜ「先達」が欲しいの??
先達は「経験者」なので、石清水八幡宮が山の上にあることを知っているよね。
そんな人がいれば、僧が極楽寺・高良を石清水八幡宮の全てだと誤解することもなく、ちゃんと山の上まで登って本殿を参拝することができたハズだよね。
「仁和寺にある法師」
作者の言いたいことを理解しよう!
ちょっとしたことでも、案内してくれる人って必要だよね!
「仁和寺にある法師」のお話の最後の一文「少しのことにも、先達はあらまほしきことなり」には、作者の言いたいことが込められているよ。
案内役もいないまま、たった1人で行ってしまったせいで、極楽寺・高良を全てだと思って肝心の本殿を見ないまま帰ってしまった僧のエピソードをもとに、
「ちょっとしたことでも、案内をしてくれる人は欲しいものだ」と結論づけているんだね。
「仁和寺にある法師ー徒然草から」
まとめ
- 徒然草は鎌倉時代末期に書かれた、兼好法師による随筆作品。
- 「心うく覚えて」は「残念に思って」
- 「かばかり」は「このくらい」
- 「かたへの人」は「仲間」
- 「ゆかしかりしかど」は「知りたかったが」
- 「先達」は「その道をすでに進んでいる人・経験者」
- 「あらまほしきことなり」は「欲しいものだ」
- 書かれている内容を理解しよう!
- 「あやしうこそものぐるほしけれ」は「こそ」に対応して已然形「ものぐるほしけれ」で結ぶことで強める効果をもつ係り結び。
「仁和寺にある法師」テスト練習問題のページもあるので、ぜひチャレンジしてみてね。
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ゆみねこ
詳しいプロフィールを見る
青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。

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サイト制作お疲れ様です。
このサイトに利用されている2枚の絵(冒頭とあらすじ説明の2枚のこと )
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とても分かりやすい絵に感動して質問させてもらいました。 -
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返信ありがとうございます。
突然ですが私は学生なのですが自分の発表時にあなた様の絵を引用したいのですがいいでしょうか?
もし使わせてもらうとしたらもちろん営利目的に利用しませんし しっかりとこのサイトのURLを貼ります。 -
本当にありがとうございます。
使わせてもらえたからには最大限に有効活用させてもらいます。
今後のブログ活動頑張ってください。楽しみにしています。 -
すごいわかりやすいです!教科書が学校のと同じなので、テストの時はとっても役立っています。ぜひこれからもいろんな教科を解説してほしいです!!
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よくわからない
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とてもわかりやすくて参考になりました。ありがとうございます!!できれば他の教科の解説もしていただけると助かります
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今日はテストでした
古典の範囲が、ずっと心配だったのですが、ここを見つけて、説明を読んで、過去問とかをやったおかげで、スラスラと問題を解くことができました!
ありがとうございます!
これからもよろしくおねがいします!
中二です。
このサイトのおかげで国B満点取れました!
ありがとうございます!
出来れば係り結びの法則などの文法事項を書いてくれると、
ありがたいです。
よろしくお願いします。