【中1国語】「不便」の価値を見つめ直すの要旨・不便益・筆者の主張を解説
中学1年国語で学習する、川上浩司「『不便』の価値を見つめ直す」について解説するよ。
この記事では、「不便益」とは何か、筆者がどのような具体例を使って説明しているのか、そして筆者が最終的に何を伝えようとしているのかを整理していこう。
定期テストで押さえておきたい具体例と「不便益」の対応、筆者の主張、要旨、要約についても詳しく確認するよ。
「不便」の価値を見つめ直す 作品情報
| 題名 | 「不便」の価値を見つめ直す |
|---|---|
| 筆者 | 川上浩司 |
| 文章の種類 | 説明的文章 |
| 筆者の専門 | システム工学 |
| 中心となる考え | 不便だからこそ得られるよさ=「不便益」 |
たろう
くまごろう筆者・川上浩司について
川上浩司は、1964年生まれ、島根県出身の工学博士で、専門はシステム工学だよ。
著書には『不便から生まれるデザイン』『不便益のススメ』などがあり、この文章は教科書のために書き下ろされたものだよ。
「不便」の価値を見つめ直すの文章構成
まずは、文章全体がどのような流れで書かれているのか整理しよう。
| 部分 | 内容 |
|---|---|
| はじめ | 一般には「便利はよいこと」「不便は悪いこと」と考えられていることを示す。 |
| 筆者の問題意識 | 便利さだけを追求することに疑問をもち、「不便益」に注目するようになった経緯を説明する。 |
| 定義 | この文章での「不便」「便利」の意味を定め、「不便のよい面」という視点を示す。 |
| 具体例 | 移動方法、施設のデザイン、工場の生産方式という3つの事例を挙げる。 |
| 整理 | 具体例から「不便益」にどのようなものがあるかをまとめる。 |
| 主張 | 便利だけを無批判に追求せず、不便だからこそ得られるよさを認識して生かすことを提案する。 |
| 終わり | 日常生活の中でも「不便益」を探し、生活を見つめ直すよう読者に呼びかける。 |
たろう
くまごろう文章のはじめに示される一般的な価値観
文章は、
「不便でよかった。」と感じたことはないだろうか。
という問いかけから始まるよ。
けれども、多くの人は「不便でよかった」と聞くと、不思議そうな顔をする。
それは、多くの人が、
| 便利 | よいこと |
|---|---|
| 不便 | 悪いこと |
という価値観をもっているからなんだ。
実際に、社会では「手間要らず」「もっと便利に」といった便利さを求める考え方が広く見られる。
筆者の専門である機械設計や工業デザインの分野でも、長い間、手間を省き、便利にすることが人の生活を豊かにすると考えられてきたよ。
筆者が「便利さ」に疑問をもったきっかけ
筆者自身も、もともとは設計を自動化する研究をしていたんだ。
「欲しいものを伝えれば、コンピューターが自動的に設計してくれるようになれば楽になる」と考えていた。
ところが、あるとき筆者は疑問をもつ。
全てを自動化して、自分で考える必要がなくなれば、確かに便利にはなる。
しかしその一方で、
- 自分で考えることで得られる達成感
- 自分で成し遂げたときの喜び
- 技術の向上
まで望めなくなってしまうのではないか、と考えたんだ。
たろう
くまごろう本文での「不便」と「便利」の定義
「不便」という言葉は、人によって捉え方が違うよね。
そこで筆者は、議論を進めるために、この文章の中で「不便」と「便利」を次のように定義しているよ。
| 言葉 | この文章での意味 |
|---|---|
| 不便 | 何かをするときにかかる努力が多いこと。手間がかかったり、頭を使って考えなければならなかったりすること。 |
| 便利 | 手間もかからず、頭も使わなくてよいこと。 |
この定義は、定期テストで押さえておきたい大切なポイントだよ。
筆者は単純に、
| 便利 | =よい |
| 不便 | =悪い |
とは考えていない。
「便利」にもよい面と悪い面があり、「不便」にもよい面と悪い面がある、と考えているんだ。
「不便のよい面」に注目する
一般的には「便利のよい面」と「不便の悪い面」に目が向きやすいよね。
しかし筆者は、そこから視点を変えて、
- 不便のよい面
- 便利の悪い面
にも注目する。
そして、「不便」だからこそ得られるよさを「不便益」と呼んでいるんだ。

たろう
くまごろう不便益の具体例① 徒歩で移動する
1つ目は、移動方法についての例だよ。
例えば、同じ目的地へ行く場合でも、タクシーと徒歩では違いがある。
| 特徴 | |
|---|---|
| タクシー | 目的地を伝えれば座っていられる。時間や労力が少なく、便利。 |
| 徒歩 | 時間がかかり、疲れるので不便。 |
ところが、旅行などでは、あえて徒歩を選ぶ人もいる。
徒歩なら、タクシーでは気づかずに通り過ぎてしまうような場所へ立ち寄ったり、人や景色との出会いを楽しんだりできるからだね。
本文では、普段バイクで大学へ通っていた学生が、バイクが壊れて徒歩で通学したことをきっかけに、後に何度も訪れるお気に入りのお店を見つけたという例も紹介されているよ。
| 不便な点 | そこから得られる不便益 |
|---|---|
| 徒歩は時間がかかり、疲れる。 | 出会いや発見の機会が広がる。 |
不便益の具体例② あえてバリアを残す施設
2つ目は、施設のデザインについての例だよ。
段差をなくす「バリアフリー」は、足腰の不自由な人や、車椅子・ベビーカーを使う人などにとって必要なデザインだね。
筆者も、社会全体にバリアフリーが普及することは望ましいとしているよ。
ところがその一方で、介護施設の中には、あえて段差や坂、階段などを残したり設けたりしているところもある。
バリアがあれば、入居者にとっては移動するための労力が増える。
でも、そのバリアを日常生活の中で乗り越えることが、そのまま身体を使う機会になり、身体能力の低下を防ぐことにつながるんだ。
同じように、園庭をあえてでこぼこに設計している幼稚園も紹介されているよ。
| 不便な点 | そこから得られる不便益 |
|---|---|
| 段差・坂・階段・でこぼこなどがあり、移動に労力がかかる。 | 身体能力の低下を防ぐことにつながる。 |
たろう
くまごろう不便益の具体例③ セル生産方式
3つ目は、工場での生産方式についての例だよ。
本文では、「ライン生産方式」と「セル生産方式」が比較されているよ。
| ライン生産方式 | セル生産方式 | |
|---|---|---|
| 作業方法 | 各作業者が、自分の担当する限られた作業を繰り返す。 | 1人または少人数で、複雑な製品を初めから最後まで作る。 |
| 作業内容 | 比較的単純。 | 多様で複雑。 |
| 作業者の負担 | 比較的軽い。 | 重くなる。 |
| よい面 | 覚える手順や作業量が比較的少ない。 | 全体を見渡して工夫でき、モチベーションや技術力の向上につながる。 |
セル生産方式は、作業者1人1人の負担が重くなるという点では「不便」だね。
しかしその分、製品全体を見渡すことができ、自分なりに工夫する余地も大きくなる。
そのため、
- 作業者のモチベーションが高まる
- 技術力の向上につながる
という「不便益」が得られるんだ。
3つの具体例と「不便益」を整理しよう

| 具体例 | 不便な点 | 得られる「不便益」 |
|---|---|---|
| 徒歩で移動する | 時間がかかり、疲れる。 | 出会いや発見の機会が増える。 |
| 段差などのある施設 | 移動に労力がかかる。 | 身体能力の低下を防ぐことにつながる。 |
| セル生産方式 | 1人にかかる作業の負担が重い。 | 工夫する余地が増え、モチベーションや技術力が高まる。 |
具体例から分かる「不便益」とは
筆者は、集めた具体例を整理して、「不便益」には主に次のようなものがあるとしているよ。
| 不便益 | なぜ得られるのか |
|---|---|
| 発見や出会いの機会が増える | 目的を達成するまでの時間や道のりが長くなるから。 |
| 体力・知力・技術力の維持や向上を促す | 自分の体や頭を使う機会が増えるから。 |
| 意欲が高まる | 自分で考えたり工夫したりする余地があるから。 |
| 達成感が大きくなる | 自分の力で成し遂げる過程があるから。 |
なお、1つの事例から得られる「不便益」は1つとは限らないよ。
例えば徒歩なら、「出会いや発見の機会が増える」だけでなく、歩くことで運動能力の低下を防ぐという不便益も得られる。
筆者が指摘している「便利だけを追求すること」の問題
筆者は、「便利なものを使ってはいけない」と言っているわけではないよ。
問題にしているのは、
「便利はよいこと」「不便は悪いこと」と決めつけ、無批判に便利なものだけを選ぶこと
なんだ。
社会全体が便利だけを追求すると、私たちは自分で便利と不便を選ぶことすらできないまま、
- 本来得られていた楽しさや喜びを失う
- 自分の能力を発揮する機会を奪われる
可能性があると筆者は考えているよ。
「確かに~しかし~」の論理展開
本文では、筆者は便利さの問題だけを一方的に述べているわけではないよ。
まず「確かに」によって、便利になることで楽になるというよさや、それが必要な場面があることをいったん認めている。
そのうえで「しかし」と続け、一様に便利さばかりを追求し続けることで失われるものがあると、自分の考えにつなげているんだ。
たろう
くまごろう筆者は「便利」を否定しているわけではない
ここは定期テストでも押さえておきたいところだよ。
筆者自身が、誤解してほしくないこととして説明しているのは、
- 便利であることを否定しているのではない
- 昔の不便な生活に戻ろうと言っているのではない
- 不便なことが全てすばらしいと言っているのではない
ということだよ。
たろう
くまごろう「不便益」の考え方とは
本文では、「不便益」の考え方を、次のように整理できるよ。
「不便」だからこそ得られるよさがあることを認識し、それを生かして新しいデザインを創り出そうとする考え方。
実際に、この考え方に賛同する人たちによって、自動車の運転支援や観光ツアーの仕掛け作りなど、さまざまな分野で研究や提案が始まっていると説明されているよ。
最後の段落で筆者が読者に伝えていること
最後に筆者は、「不便益」は物のデザインだけでなく、日常生活にも生かせる考え方だとしているよ。
普段、
「不便で嫌だな。」
「面倒くさいな。」
と思って避けているものの中にも、新しい気づきや楽しみが隠れているかもしれない。
これまでの常識とは違う視点をもつことで、世界をもっと多様に見ることができるようになる、と筆者は考えているんだね。

「不便」の価値を見つめ直す 筆者の主張
筆者の主張をまとめると、次のようになるよ。
「便利はよい」「不便は悪い」と決めつけるのではなく、不便だからこそ得られるよさ=「不便益」にも目を向け、その価値を認識して生活や新しいデザインに生かすことが大切である。
ここで大切なのは、「不便の方が便利よりよい」と主張しているのではないことだよ。
便利と不便のどちらにもよい面・悪い面があることを理解して、固定観念にとらわれずに考えることが重要なんだ。
「不便」の価値を見つめ直すの要旨
要旨とは、その文章で筆者が最も伝えたいことを簡潔にまとめたものだよ。
この文章の要旨は、次のようにまとめられるよ。
一般には「便利はよい」「不便は悪い」と考えられがちだが、不便だからこそ、出会いや発見が増えたり、能力や意欲が高まったりする「不便益」が得られることがある。便利だけを無批判に追求するのではなく、不便の中にあるよさにも目を向け、その価値を生活や新しいデザインに生かすことが大切である。
200字程度で要約するとどうなる?
「学びへの扉」では、本文を200字程度で要約することが求められているよ。
要約するときは、細かい具体例を全て入れる必要はないよ。
次の4点を中心にまとめるとよいね。
- 一般には「便利=よい」「不便=悪い」と考えられている。
- 筆者は「不便」にもよい面があると考える。
- 不便だからこそ得られるよさを「不便益」と呼ぶ。
- 便利だけを追求せず、不便益を認識して生かすことが大切。
要約例
一般には「便利はよいこと」「不便は悪いこと」と考えられがちだ。しかし、不便であることで、発見や出会いの機会が増えたり、体力・知力・技術力の維持や向上につながったり、意欲や達成感が高まったりすることがある。筆者は、こうした「不便益」に注目し、便利だけを無批判に追求するのではなく、不便だからこそ得られるよさを認識して、生活や新しいデザインに生かすことが大切だと述べている。
「学びへの扉」で押さえるポイント
教科書の「学びへの扉」では、次の3段階で学習を深めるよ。
| 段階 | すること |
|---|---|
| 1 捉える | 「不便益」とは何かを確認し、筆者が挙げている具体例とそのよさを捉える。 |
| 2 読み深める | 本文を200字程度で要約し、筆者が主張する「不便のよい面」や「便利の悪い面」について検討する。 |
| 3 考えをもつ | 筆者の主張に賛成か反対かを明確にして、本文や自分の経験を根拠に意見を書く。 |
筆者の主張に対する自分の意見を書くには
教科書では、筆者の主張に対する自分の意見を書く活動もあるよ。
書くときには、次の3点を意識しよう。
- 筆者の主張に賛成か反対か、立場をはっきりさせる。
- 本文の要約や引用を使って、筆者の考えを正しく捉える。
- 自分の意見の根拠になる具体例を挙げる。
例えば、
私は、筆者の「不便だからこそ得られるよさがある」という考えに賛成だ。例えば、目的地まで歩くと時間はかかるが、普段気づかなかった店や景色を見つけることがある。このように、不便さによって新しい発見が生まれることがあるため、便利さだけを求めず、不便のよさにも目を向けることが大切だと思う。
というように、自分の立場+根拠となる具体例をセットにするとよいよ。
定期テストで押さえておきたい重要語句
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 一般に | 広く世間全体についていえるさま。普通に。 |
| 確かに | 間違いなく。また、相手の意見などをいったん認めるときにも使う。 |
| けげん | 事情が分からず、不思議そうにする様子。 |
| 追求 | 目的のものを手に入れようとして、どこまでも求めること。 |
| 複雑 | いろいろな要素が入り組んでいて、単純ではないこと。 |
| 見過ごす | 見ていながら気づかず、そのままにすること。 |
| 具体的 | 内容がはっきりしていて、実際の事物に即している様子。 |
| 実践 | 考えや理論を実際に行うこと。 |
| 普及 | 広く行き渡ること。 |
| 負担 | 引き受けなければならない仕事や責任、労力。 |
| 成し遂げる | 物事を最後までやり遂げる。 |
| 固定観念 | 簡単には変わらない、決まりきった考え方。 |
「不便」の価値を見つめ直す 新出漢字
| 漢字 | 音読み・訓読み | 熟語・本文中の語 |
|---|---|---|
| 般 | ハン | 一般 |
| 腰 | ヨウ/こし | 足腰 |
| 施 | シ・セ/ほどこす | 施設 |
| 幾 | キ/いく | 幾つ |
| 繰 | くる | 繰り返す |
| 及 | キュウ/およぶ・および・およぼす | 普及 |
| 嫌 | ケン・ゲン/きらう・いや | 嫌う |
| 援 | エン | 支援 |
| 奪 | ダツ/うばう | 奪う |
| 遂 | スイ/とげる | 成し遂げる |
| 促 | ソク/うながす | 促す |
「不便」の価値を見つめ直す テスト対策まとめ
- 筆者は、一般的な「便利=よい・不便=悪い」という価値観を疑っている。
- 本文での「不便」とは、何かをするときにかかる努力が多いこと。
- 「便利」とは、手間もかからず、頭も使わなくてよいこと。
- 「不便益」とは、不便だからこそ得られるよさのこと。
- 徒歩では、「出会いや発見の機会が増える」という不便益がある。
- 段差などのある施設では、「身体能力の低下を防ぐことにつながる」という不便益がある。
- セル生産方式では、「モチベーションや技術力が高まる」という不便益がある。
- 具体例をまとめると、不便益には、発見や出会い、体力・知力・技術力の維持や向上、意欲、達成感などがある。
- 1つの事例から複数の「不便益」が得られることもある。
- 筆者は、便利そのものを否定しているわけではない。
- 昔の不便な生活に戻ろうと主張しているわけでも、不便なら何でもよいと考えているわけでもない。
- 「確かに~しかし~」という展開で、便利のよさや必要性を認めたうえで、便利さばかりを追求することの問題を示している。
- 筆者は、不便だからこそ得られるよさを認識し、それを生活や新しいデザインに生かすことを提案している。
たろう
くまごろうここまで学習できたら、「『不便』の価値を見つめ直す」のテスト対策練習問題とドリルに挑戦しよう!
【中1国語】「不便」の価値を見つめ直す テスト対策練習問題
【中学国語】「『不便』の価値を見つめ直す」重要語句・漢字ドリル
【中学国語】「『不便』の価値を見つめ直す」基本理解ドリル
【中学国語】「『不便』の価値を見つめ直す」3つの具体例と不便益ドリル
【中学国語】「『不便』の価値を見つめ直す」筆者の主張・要旨ドリル

運営者情報
檜垣由美子
詳しいプロフィールを見る


