「星の花が降る頃に」あらすじとポイント考察をわかりやすく解説
中学校1年生の国語で学習する「星の花が降る頃に」のテスト対策ポイントをわかりやすく解説するよ。
お話のあらすじ、おさえるべき内容、使われている表現技法や言葉の意味、登場人物の心情など、大切なポイントを確認しよう。
「星の花が降る頃に」テスト対策ポイント
- 作者は安東みきえ
- 4つの場面に分けられる
- 夏実と別々に帰るようになったのは、小さな擦れ違いや誤解が重なったから
- 涙がにじんできたのは、戸部君のやさしさが嬉しかったから
- 「古い葉っぱを落として、新しい葉っぱを生やす」銀木犀の話が、「私」が夏実との友情だけに縛られず、新しい世界へ踏み出すための前向きな気持ちになるきっかけとなった
- 作者が伝えたいことは、「ひとつのことに縛られず、前向きに考えることの大切さ」
目次
- 「星の花が降る頃に」基本情報
- 「星の花が降る頃に」あらすじ
- 「星の花が降る頃に」内容とポイント(考察)
- 「星の花が降る頃に」表現技法
- 「星の花が降る頃に」言葉の意味
- 「星の花が降る頃に」新出漢字
- 「星の花が降る頃に」まとめ
- 「星の花が降る頃に」全文を確認しよう
「星の花が降る頃に」基本情報
「星の花が降る頃に」は、児童文学作家の安東みきえさんの作品。
国語の教科書のために書き下ろされたものなんだ。
秋に美しい花を咲かせる銀木犀を題材に、小学校からの親友だった夏実との関係の変化にゆれうごく「私」の心の成長を描いているよ。
「星の花が降る頃に」あらすじ
「星の花が降る頃に」
作:安東みきえ
去年の秋は、小学校からの親友の夏実と銀木犀の花が散るのを長いこと見上げていた。
銀木犀の花は甘い香りで、白く小さな星の形をしている。
足元は白い星型でいっぱいだ。
二人で銀木犀の木に閉じ込められた、そう言って笑った。
おなじく小学校から一緒の戸部君は、サッカー部の仲間とじゃれ合っては私にからんでくる。
今回も、塾の宿題で「『あたかも』を使った文の作り方」を聞かれたが、私はそれどころではない。
春までは、クラスが違っても一緒に帰っていた夏実とは、小さな擦れ違いや誤解が重なり一緒に帰らなくなっていた。
今日こそ仲直りをして、また銀木犀の花を拾ってポプリなんかも作ってみようと誘ってみるつもりだったのだ。
しかし、私の呼びかけに夏実が応えることはなかった。
顔を背け、目の前を通り過ぎて行ったその様子は、まるで音のないこま送りの映像のように、変に長く感じられた。
唇がふるえ、目のふちが熱くなる。そんな「ひどい顔」を、戸部君に見られた。
夏実とのことをみなに言い出さないか気がかりで、私は放課後に戸部君を探した。
彼はサッカーボールを懸命に磨いていた。
「使いたいときだけ使って、手入れをしないでいるのはだめなんだ。」彼の言葉を思い出した私は、自分の考えがひどく小さくくだらなく思えた。
水飲み場で、水を顔にかける。「魂」と「顔の輪郭」が戻ってきた気がした。
戸部君が私に声をかける。
何を言われるか身構えていると、なんてことない、例の塾の宿題の例文を考えついたという。
「おまえは俺を意外とハンサムだと思ったことがーあたかもしれない。」
二人でふき出した。
戸部君はいつのまにか私より背がずっと高くなっていた。
涙がにじんだ。笑いすぎたせいだ。たぶん。
学校からの帰りに、銀木犀の公園に立ち寄った。
常緑樹の銀木犀の葉っぱはずっと落ちないと思っていたが、どんどん古い葉っぱを落とし、代わりに新しい葉っぱを生やすということを掃除のおばさんに聞いて私はおどろく。
ポケットにしまっていた、去年の秋に夏実と拾った銀木犀の花を、私は、ぱらぱらと落とした。すっかり色あせたその花を。
ここでまた夏実と花を拾うかもしれないし、違うだれかと拾うかもしれないし、そもそももう拾わないかもしれない。
どちらだっていい。大丈夫、きっとなんとかやっていける。
私は銀木犀の木下をくぐって出た。
「星の花が降る頃に」内容とポイント(考察)
「星の花が降る頃に」は、4つの場面にわけることができるよ。
場面 | 本文 | 主な内容 |
---|---|---|
1 | 銀木犀の花は甘い香りで~そう言って笑った。 | 去年の秋の思い出 |
2 | ーガタン!~だれもいないのに。 | 廊下での夏実とのやりとり |
3 | 帰りは図書委員の~笑いすぎたせいだ、たぶん。 | 戸部君とのやりとり |
4 | 学校からの帰り~くぐって出た。 | 掃除のおばさんとのやりとり |
登場人物
- 私(主人公)
- 戸部君
- 夏実
- 夏美の友達
- 戸部君のサッカー部の仲間
- 掃除のおばさん
「小学生のころからわからないまま」とは
戸部君から、塾のプリントの問題について聞かれた「私」は、「私だってわからない。いっしょだった小学生のころからわからないままだ。」と思っているね。
最初の「私だってわからない」は、塾のプリントの問題のことかもしれないけれど、その後の「小学生のころからわからないまま」は、その後につづく「なんで戸部君はいつも私にからんでくるのか」「なんで同じ塾に入ってくるのか」「なんでサッカー部なのに先輩のように格好よくないのか」ということに対してだね。
戸部君は、友達といつもふざけているのに、すぐに本気のけんかをしたり、自分にぶつかってきたり、いかにも「やんちゃな男の子!」という雰囲気だよね。
「私」は、そんな戸部君の男の子っぽさを「わけがわからない」ときっぱりと言い切っているね。
なんとなく、「ついていけない」「こどもっぽい」と、あんまり良くは思っていないイメージだね。
だから、「サッカー部の先輩」とくらべて「格好良くない」と思っているんだよね。
夏実と別々に帰るようになったのはなぜか
去年の秋には一緒に銀木犀の木を一緒に見上げていて、中学に上がってもずっと親友でいようと約束をしていた「私」と夏実だけれど、春の間はクラスが違っても必ずいっしょに帰っていたのに、今は別々に帰るようになってしまっていたんだよね。
それはなぜかというと、何度か「小さな擦れ違い」があったり、「誤解」が重なったからだね。
すぐに謝ったりして誤解を解けば良かったのだけれど、おたがいに意地を張ってしまって、それから気まずくなってしまっているんだよね。
でも「私」は、夏実と仲直りをしたいと考えているよね。
だから、去年の秋に夏実と拾った銀木犀の花を今でもビニール袋に入れてポケットにお守りのようにしまっているんだよね。
廊下での夏実とのやりとり
隣の教室で椅子を引く音がすると、「私」はいそいで廊下に向かったよね。
きっと、夏実は隣の教室のクラスなんだね。
授業が終わったから、夏実が廊下に出てくるのではないかと思って、話すタイミングを作るために「私」はいそいで廊下に向かったんだね。
夏美の姿を見つけた「私」は、「自分の心臓がどこにあるのかがはっきりわかった。」と言っているね。
これは、心臓がどこにあるのかはっきりわかるくらい、心臓がドキドキしているということを表現しているね。
つまり、ずっと気まずくなってしまっていた夏実に話しかけるのに、とても緊張しているんだね。
勇気を出して話しかけたものの、ちょうど隣のクラスの子が夏実に話しかけたのと同時になってしまって、夏実は一瞬とまどったものの、結局は隣の子に答えながら、「私」のことは無視をして通り過ぎていってしまったね。
「私」にとっては、これは「自分(小学校からの親友)よりも、隣のクラスの友達(新しい友達)を選んだ」という風に感じてしまうよね。
隣のクラスの友達とは、後でもまた話ができるはずだよね。
「私」が勇気を出して話しかけたのだから、応えてくれてもよかったのでは?と思ってしまうよね。
でも、実際は「私」からすっと顔を背けて目の前を通り過ぎて行ってしまった…。
このときの「私」の気持ちを思うと、とてもつらいね。
このことがあまりにショックで、まるで「音のないこま送りの映像をみているよう」に、「変に長く感じられた」んだね。
「騒々しさがやっと耳に戻った」とは
夏実の様子にショックを受けた「私」は、「こま送りの映像のように」感じ、時間が「変に長く」感じられていたよね。
そのときはショックで、きっと「私」にはまわりの騒々しい音などは聞こえていなかったと考えられるよ。
しばらくして、「騒々しさがやっと耳に戻った」ことは、ショックを受けていた「私」が、はっと我にかえって、まわりの様子を気にかけることができるようになったことを表現しているんだ。
だから、教室の中の戸部君がこちらを見ていることにも気が付くことができたんだね。
夏実とのやりとりの後の「私」の様子
我にかえったものの、「私」は、夏実の様子に衝撃を受けたし、とても悲しかったはずだよね。
深いショックを受けたことが「唇がふるえている」ということから伝わるね。
「目のふちが熱い」というのは、泣きそうになっているということが分かるね。
唇がふるえていて、泣きそうになっている顔は「ひどい顔」だと思うのも当たり前だね。
そんな顔を戸部君に見られたことを、「きまりが悪い」と「私」は感じて、その場にいることができなくて、「はじかれたようにその場を離れた」んだね。
その場を離れた「私」は、窓に駆け寄ったね。そして、誰もいないのに友達を探しているふうに熱心に下を眺めたね。
これは、こうすれば誰にももうこの「ひどい顔」を見られる心配がないからだよね。
ただ顔を隠すだけじゃ、「どうしたんだろう?」とみんなが気にしてしまうよね。
「私」は、夏実に無視をされてしまったこと、自分がショックで泣きそうになっていることを誰にも知られたくなかったんだ。
だから、窓へ駆け寄って下を熱心に眺めたんだね。
でも、ここで「私」の悲痛な気持ちがはっきりと書かれているよ。
「本当は友達なんていないのに。」
これは、「裏門にも、コンクリートの通路にも人の姿はない」ということから、そこには誰もいないのだから、「友達なんていない」というようにも受け取れるけれど、そのあとに「夏実の他には友達とよびたい人なんてだれもいない」と続いているね。
「私」はまだ中学に上がったばかりだよね。
このお話は9月のことなので、4月の入学式から考えると、5ヶ月くらい。
きっと、「私」は春の間はずっと夏実といっしょに帰っていたので、「夏実とずっと親友でいられれば、他に友達はいらない」と、あんまり積極的に友達を作ろうとはしてこなかったのかもしれないね。
小学校から仲良しで、親友の夏実とずっといっしょにいられると思っていたんだね。
「私」にとっては、夏実は「たった一人の、友達と呼べる人」だったんだね。
そんな夏実に無視されたなんて、どれほどショックだっただろう。
なぜ「私」は戸部君を探したのか
「私」は、水飲み場の近くに座って戸部君を探したね。
これは、夏実とのやりとりを戸部君に見られてしまって、「繊細さのかけらもない」戸部君のことだから、みんなにそのことを言い出すのではないのかと、気が気ではなかったからだね。
「夏実とのことを人に知られたくない」という気持ちと、「戸部君は繊細さのかけらもない」と「私」が思っていることがポイントだよ。
なにが「八つ当たり」なのか
「私」は、戸部君に弱みをにぎられた気分になって、憎らしくてしかたなくなっていたね。
それはなぜかというと、夏実とのやりとりをなぜか戸部君がのんびりと眺めていて、見られたくない場面を見られたことの恥ずかしさ、みんなに言われてしまうのではないかという焦りを感じたんだよね。
さらに、夏実とのことを気にしている自分に比べて、のんびりとしている戸部君がなんだか憎らしい気持ちもあったのかもしれないね。
でも、夏実との擦れ違いには、戸部君は何も関係がないよね。
戸部君は何も知らなくて、たまたま夏実とのやりとりの場面を見てしまっただけなのに、本当なら「私」が憎らしく思う理由はないよね。
そういうところを、「八つ当たり」だと「私」は自分でもわかっているんだね。
「ひどく小さく、くだらないことに思えてきた」のはなぜか
戸部君が黙々とボール磨きをしている様子を見た「私」は、自分の考えていたことが急にひどく小さくて、くだらないことに思えてきたね。
なにがくだらないことだと思えたのかというと、「夏実とのやりとりを見た戸部君が、みんなにそれを言い出すのでないか」と心配していたことだね。
「私」は、戸部君のことを「繊細さのかけらもない」と思っていたよね。
だから、夏実とのことも考えなしにみんなに言いふらすのではないかと心配していたんだよね。
でも、そんなことを心配していた自分に比べて、戸部君は暑い中、黙々とボール磨きをしていたんだよね。
それも、イヤイヤやっているわけではなくて、砂を落としてやらないとぬい目がほころんでしまうからで、「使いたいときだけ使って、手入れをしないでいるのはだめだ」と戸部君は考えていたんだよね。
これって、まったく「繊細さのかけらもない」なんてことがないよね。
どちらかというと、とても丁寧にボールを扱っていて、大事にしている、戸部君の「繊細さ」とサッカーに対する真っ直ぐな気持ちを感じるよね。
そんな戸部君の姿を見て、「自分が心配していたことは、なんて小さくて、くだらないことなんだろう」と「私」はすこし恥ずかしくなったのかもしれないね。
そんな恥ずかしさとか気まずさから、「私」は水を顔にかけたのかな。
「やっと顔の輪郭が戻ってきたような気がした」とは
外の暑さに、「私」の魂は毛穴という毛穴から溶け出してしまいそうに感じていたね。
この時の「私」は、「戸部君が夏実とのことをみんなに言うのではないか」ということで頭がいっぱいだった。
いざ戸部君を見つけると、真剣にボール磨きをしている彼の姿に、「私」は「自分の考えがひどく小さくくだらなく」思えて、水を顔にかけたね。
それによって、溶け出していた魂がもう一度引っ込んで、「顔の輪郭が戻ってきたような気がした」んだね。
これは、自分の考えがくだらないこと、戸部君は自分の思っていたような無神経な人ではなかったことに気がついて、「私」が冷静になれたことを表していると考えることができるよ。
「何を言われるのか少し怖くて」と思ったのはなぜか
「おい。」と呼び止められて、「俺、考えたんだ」と戸部君に言われた「私」は、「何を言われるのか少し怖くて」身構えたね。
これは、廊下での夏実とのやりとりを目撃されたので、「夏実と何かあったのか」とか、「あのあと、泣いていたんじゃないか」とか、聞かれるかもしれないと身構えたんだね。
「私」は、夏実とのやりとりを戸部君に目撃されたことを「きまりがわるい」と感じていたから、できるだけ触れてほしくない話だよね。
また、ボール磨きをしていた戸部君のことをずっと見ていたことがバレていて、そのことを指摘されるのではないかとも思ったから、身構えたとも考えることができるよ。
「涙がにじんできた」のはなぜか
戸部君の『あたかも』を使った文を聞いた「私」は、戸部君と顔を見合わせてふき出したね。
その内容が面白くて、笑いすぎたせいだ、と「私」は考えているけれど、これはそれだけではないね。
戸部君は、落ち込んでいる「私」を励まそうと、わざと面白いことを言ったんだよね。
そんな戸部君のやさしさが嬉しくて、「私」は涙をにじませたんだね。
「私」は戸部君のやさしさに気がついていて、そのせいで自分は涙が出たのでもあることは、きちんとわかっているよ。
「たぶん」には、ちょっと気恥ずかしいと思いながらも、戸部君のやさしさを嬉しいと思っている「私」の気持ちが込められているんだね。
「戸部君の背はいつのまにか私よりずっと高くなっている」
戸部君の言ったことが面白くて、戸部君と顔を見合わせた「私」は、戸部君の背がいつのまにか自分よりもずっと高くなっていることに気がついたね。
戸部君と「私」は、小学校からずっといっしょだったので、「私」の中の戸部君は、いつまでも自分にからんでくる「繊細さのかけらもない」「子供っぽい」男の子だったんだよね。
けれど、落ち込んでいた自分を励まそうとして、わざと面白いことを言ったり、ボールを一生懸命に磨いている戸部君の新しい一面を見て、さらに自分よりも背が高くなっていることに気がついて、戸部君が肉体的にも精神的にも成長していたことに気がついたんだね。
私が「首をかしげた」のはなぜか
学校からの帰りに、銀木犀のある公園に立ち寄った「私」は、掃除をしているおばさんに会ったね。
おばさんが銀木犀の木について「葉っぱが落ちて案外厄介」という話をすると、「私」は首をかしげたね。
「首をかしげる」という表現から、「私」は何かを不思議に思っている様子がわかるね。
なにを不思議に思ったのかというと、「私」は銀木犀の葉っぱは「ずっと落ちない」ものだと思っていたから、おばさんが「葉っぱが落ちる」と言っていることを不思議に思ったんだね。
冬になると葉っぱがなくなってしまう木に対して、銀木犀は「常緑樹」なので、一年中葉っぱが茂っている木なんだよね。
一年中葉っぱが茂っているとはいっても、ずっと同じ葉っぱが茂っているわけではないよね。
古い葉っぱが落ちて、新しい葉っぱが生えてきているから、全体的には「ずっと葉っぱが茂っている」ように見えるだけなんだよね。
「私」は、常緑樹の銀木犀は、一年中ずっと葉っぱが茂っているから、ずっと葉っぱが落ちないものだと思いこんでいたんだね。
「古い葉っぱ」と「新しい葉っぱ」が象徴しているもの
おばさんは、「私」に対して銀木犀の木は「どんどん古い葉っぱを落っことして、その代わりに新しい葉っぱを生やす」ということを説明してくれたね。
この「古い葉っぱ」と「新しい葉っぱ」という言葉は、「私」にとってどんな風に受け取れたのだろう。
「私」は、銀木犀の木はずっと葉っぱが落ちないように思いこんでいたよね。
でも、本当は古くなった葉っぱを落として、新しい葉っぱを生やしていたんだよね。
ずっと同じ葉っぱが生えたままではいられないんだ。
そして、新しい葉っぱが生えるためにも、古い葉っぱは落ちていくんだよね。銀木犀の木が元気に生きて行くには、葉っぱがどんどん新しくなっていく必要があるんだよね。
「私」は、銀木犀の葉っぱと、自分の人間関係はおなじなのではないかと感じたんだ。
ずっとおなじ人とずっと一緒にいることに こだわるのではなくて、新しい出会いも経験していくことが、自分にとっても必要なことだと思ったんだね。
「花びらは小さく縮んで、もう色がすっかりあせている」
「花びら」は、去年の秋に夏実と一緒に拾った銀木犀の花びらだったね。
つまり、「花びら」=「夏実との友情」なんだ。
その花びらが「小さく縮んで、色があせている」ことから、「私」は、「夏実との友情が色あせてしまった」ことを あらためて実感しているんだ。
「星型の花を土の上にぱらぱらと落とした」私の心情
花びらが小さく縮んで、色あせてしまったことを実感した「私」は、その花びらをぱらぱらと落としたね。
「夏実との友情」を象徴する花びらをぱらぱらと落としたということは、「私」が夏実との友情に こだわるのをやめたことを表現しているんだ。
つまり、夏実との友情を「手放した」んだね。
「古い葉っぱ」を落として、「新しい葉っぱ」を生やすために、夏実との関係に一度区切りをつけて、気持ちを新たにしているんだよ。
「大丈夫、きっとなんとかやっていける」
夏実との友情を手放して、気持ちを新たにした「私」は、「銀木犀の木の下をくぐって出た」ね。
銀木犀の木の下も、「私」と夏実がいつも過ごした場所で、ふたりだけの秘密の場所だったね。
「ここにいれば大丈夫」「木が守ってくれる」とも思っていたよね。
そんな銀木犀の木の下を「出た」ということは、「私」が「夏実とずっと一緒にいること」にこだわることをやめて、「ここにいなくても大丈夫」「木に守られなくても、自分でやっていける」と強い気持ちで前を向けるようになったことを表現しているんだ。
「星の花が降る頃に」で作者が伝えたいこと
「星の花が降る頃に」で作者が伝えたいこと
ひとつのことに縛られず、前向きに考えることの大切さ
「星の花が降る頃に」では、夏実との友人関係がずっと続くものだと思いとらわれていた「私」が、まわりにも目をやり、新しい一歩を踏み出す勇気をもって前向きに進むまでの心の成長を描いている。
「星の花が降る頃に」表現技法と工夫
「なんで」という言葉がくり返し使われている(反復法)
「なんで戸部君はいつも私にからんでくるのか。なんで同じ塾に入ってくるのか。なんでサッカー部なのに先輩のように格好よくないのか。」という部分では、「なんで」という言葉がくり返し使われているね。
これは、同じ言葉や表現をくり返すことで、読み手の印象に強く残るようにする「反復法」だね。
「運動部のみんなはサバンナの動物みたいで入れかわり立ち替わり水を飲みにやって来る」(直喩)
ここでは、「運動部のみんな」のことを「サバンナの動物」にたとえているよね。
なので、使われている表現技法は「比喩」だよ。
比喩の中でも、「動物みたい」と書かれているので、「~みたい」という比喩表現の言葉を使ってたとえているので、「直喩」になるよ。
「夏実」の名前について
「夏実」の「み」は、「美」ではなくてフルーツの「実」だよね。
「夏実」の名前には意味があると考えることもできてんだ。
「星の花が降る頃に」のお話の舞台は9月で、秋のはじめだよね。
「夏実」は「夏の果実」なので、「すでに過ぎ去ったもの」であることを象徴していると考察することができるよ。
「私」は、お話の最後には過去の友人関係にとらわれずに、前に進もうとしているよね。
「私」にとって、「夏実」との関係が「過ぎ去ったもの・過去のもの」になることを表現しているのかもしれないね。
本当にそういう意味から、「夏実」という名前が付けられたかどうかはハッキリはしていないけれど、ちゃんと意味があって名前まで考えられているかもしれないと思いながら作品を読むと、より理解が深まるね。
なぜ「銀木犀」なのか
おなじように、「銀木犀」が作品のテーマに選ばれていることにも意味があると考えることができるよ。
実は、銀木犀の花言葉は「初恋」「あなたの気を引く」なんだ。
まるで、戸部君が「私」の気をひこうとちょっかいをかけることや、戸部君のやさしさや誠実さ、大人っぽさに「私」があらためて気が付くところなんかを象徴しているようだよね。
オレンジ色の花を咲かせる金木犀ではなく、白い花を咲かせる銀木犀なのも、「白色」に中学生の淡い恋心や、青春、若々しさ、初々しさをイメージさせる効果があるのかもしれないね。
「星の花が降る頃に」言葉の意味
言葉 | 意味 |
---|---|
銀木犀 | 秋(9~10月ごろ)に白い小さな花を咲かせる木。 とても香りがよい。 金木犀(きんもくせい)の花がオレンジなのに対し、白い花から銀木犀と呼ばれる。 |
こづき合い | 肘や手で軽く押し合ったり、触ったりすること。 ふざけ合って友達とこづき合うこと。 |
高じる | 何かがだんだんと強くなったり、進んだりすること。 |
あたかも | まるで〜のように、という意味です。たとえば、「あたかも夢の中にいるような気持ち」というように、例えるときに使う。 |
擦れ違い | 二人が同じ場所にいるけれど、すぐに別の方向へ行ってしまうこと。 お互い考えていることが別の方向を向いてしまって、心が通い合わなくなること。 |
ポプリ | 乾燥させた花や葉っぱを混ぜて、いい香りがするようにしたもの |
なだめる | 怒っている人や泣いている人を落ち着かせること |
ぎこちなく | 動きや行動が自然でなく、少しおかしい感じのこと |
とまどう | どうすればいいかわからなくなって困ること |
きまりが悪い | 恥ずかしい気持ちや、場の雰囲気に合わない感じがすること |
真夏日 | 気温が30度以上になる、とても暑い日のこと |
サバンナ | アフリカなどに広がる、草原が広がる地域のこと。木が少なく、たくさんの動物が住んでいる。 |
入れかわり立ちかわり | 次々と人や物が入れ替わること |
気がかり | 心配なことや気になること |
繊細さのかけらもない | 全く気を使わない、雑な感じがすること |
知れたものじゃない | どれだけすごいか分からない、予測できないという意味。 ここでは、戸部君がみんなにどんなことを言ってしまうか予測ができないという意味。 |
八つ当たり | 自分の気に入らないことを、関係のない人にぶつけること。 |
ほころびる | 布や服の縫い目が少しほどけること。 |
常緑樹 | 一年中葉が落ちず、緑のままでいる木のこと。 |
首をかしげる | 考えたり、疑問に思ったりしたときに首を少し傾けること。 |
半円球 | 半分に切った球のこと。 |
色があせる | 時間が経って色が薄くなったり、はっきりしなくなること。 |
「星の花が降る頃に」新出漢字
漢字 | 音読み | 訓読み |
---|---|---|
押 | オウ | お(す) お(さえる) |
俺 | おれ | |
塾 | ジュク | |
輩 | パイ | |
廊 | ロウ | |
眺 | チョウ | なが(める) |
挑 | チョウ | いど(む) |
誘 | ユウ | さそ(う) |
騒 | ソウ | さわ(ぐ) |
唇 | シン | くちびる |
駆 | ク | か(ける) |
遅 | チ | おく(れる) |
魂 | コン | たましい |
憎 | ゾウ | にく(い) にく(しみ) |
陰 | イン | かげ |
拭 | ショク | ふ(く) |
「星の花が降る頃に」テスト対策ポイントまとめ
「星の花が降る頃に」テスト対策ポイント
- 作者は安東みきえ
- 4つの場面に分けられる
- 夏実と別々に帰るようになったのは、小さな擦れ違いや誤解が重なったから
- 涙がにじんできたのは、戸部君のやさしさが嬉しかったから
- 「古い葉っぱを落として、新しい葉っぱを生やす」銀木犀の話が、「私」が夏実との友情だけに縛られず、新しい世界へ踏み出すための前向きな気持ちになるきっかけとなった
- 作者が伝えたいことは、「ひとつのことに縛られず、前向きに考えることの大切さ」
「星の花が降る頃に」全文を確認しよう
「星の花が降る頃に」の教科書の本文を確認できる動画を紹介するよ。
運営者情報
ゆみねこ
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青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。
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