徒然草「名を聞くより」古語・現代語訳・品詞分解を解説
高校古典で習う兼好法師の徒然草「名を聞くより」のテスト対策に必要になる要点を解説。古語の意味、係り結びと活用、現代語訳と口語訳も紹介。大学入試に向けた古典の復習にも役立ちます。
目次【本記事の内容】
- 1.あらすじと現代語訳
- 2.古語の意味
- 3.テスト対策ポイント
- 4.係り結びと活用について
徒然草「名を聞くより」
あらすじと現代語訳
「名を聞くより」は兼好法師の作品「徒然草」の一節(第七十一段)だよ。
「徒然草」は、兼好法師が「することがないので、心の中に思い浮かんだとりとめのないことを書き留めていった」作品だね。
「名を聞くより」も、兼好法師が「心の中に思い浮かんだとりとめのないこと」のひとつということだね。
「名を聞くより」原文
名を聞くより、やがて面影は推し量らるる心地するを、見るときは、また、かねて思ひつるままの顔したる人こそなけれ。昔物語を聞きても、この頃の人の家の、そこほどにてぞありけんとおぼえ、人も、今見る人のうちに思ひよそへらるるは、誰もかくおぼゆるにや。
また、いかなる折ぞ、ただ今人の言ふことも、目に見ゆるものも、わが心のうちも、かかることのいつぞやありしかとおぼえて、いつとは思ひ出でねども、まさしくありし心地のするは、我ばかりかく思ふにや。
(第七十一段)
「名を聞くより」現代語訳
名を聞くやいなや、ただちに(その人の)顔つきは想像することができる気持ちになるが、(いざ)見る時には、また、前もって思っていた通りの顔をしている人はいないものだ。昔のことについての話を聞いても、(話に登場する場所は)今現在の人の家の、そのあたりであっただろうと思われ、(話に登場する)人も、今現在に見る人の中に重ねて思えるのは、誰でもこのように思われるのだろうか。
また、どんな折だったか、今現在に人が言うことも、目に見えるものも、私の心の中のことも、このようなことがいつだったかあったなあと思われて、いつだったのかは思い出せないが、確かにあったという気持ちがするのは、私だけがこのように感じるのだろうか。
※( )の言葉は、原文には書かれていないけれど、文の意味をわかりやすくするために付け加えれたもの。
「名を聞くより」あらすじ(ざっくり口語訳)
名前を聞いて「あんな顔だったな」と思っても実際に見ると違ったりする。
昔話を聞けば、今現在の人や家などを連想してしまう。みんなもそうなのか?
それに、今現在人が言うこと、見えるもの、心の中のことも「こんなことあったな」と思えてしまうのは私だけなのか?
「徒然草」について解説したページ(中学生向け)もあるので、参考にチェックしてみてね。
徒然草「名を聞くより」
古語の意味
テストでは、「名を聞くより」の中で使われている古語の意味を聞かれることも多いよ。それぞれよく確認しておこう。
※「名を聞くより」で使われている意味を紹介しています。
やがて | すぐに・ただちに |
---|---|
らるる | 受け身や尊敬、自発、可能を意味する助動詞「らる」の連体形。 【本文】推し量らるる→推し量ることができる・推し量られる |
かねて | 「予ねて」と書く。 あらかじめ・前もってという意味。 “予測する”という意味の「かぬ」の連用形+接続助詞「て」 【本文】かねて思ひつるままの→以前から思っていた通り |
昔物語 | 昔のことについての話のこと |
この頃 | 今現在 |
そこほど | あそこのあたり・そのあたり・そこらあたり |
おぼゆ | 「覚ゆ」と書く。 思われる・感じられるという意味。 【本文】ありけんとおぼえ→あっただろうと思われ |
思ひよそふ | 「思ひ寄そふ」「思ひ準ふ」と書く。 他のものに重ね合わせて考える・連想するという意味。 【本文】今見る人のうちに思ひよそへらるるは→今見るひとの中に連想されるのは |
にや | 「にやあらむ」・「にやありけむ」が省略されている。疑問を表す。 格助詞「に」+係助詞「や」 |
いかなる | 「如何なる」と書く。 「どのような」という意味。 形容動詞「いかなり」の連体形 |
ただ今 | 今、現に |
かかる | 「斯かる」と書く。 「このような」という意味。 「かかり」の連体形。 |
いつぞや | 「何時ぞや」と書く。 「いつだったか」という意味。 副詞。 |
徒然草「名を聞くより」
テスト対策ポイント
「名を聞くより」のテストでよく問題にされるポイントを確認しよう。
「人も、今見る人の中に…」の「人」とは?
「人も、今現在見る人の中に重ねて思うのは…」の「人」とはいったいどんな人のことかな?
「人」 とはどんな人のこと?
今現在見る人の中に重ねて思う、の前に「昔話を聞いても」と書かれているね。
つまり、「昔話を聞いたときに出てくる人物が、まるで今、自分のまわりにいる人と重ねて思えてしまう」ということだね。
なのでこの「人」は、「昔の物語の中に出てくる人」のことだよ。
「かく思ふにや」の「かく」とは?
最後の部分「我ばかりかく思ふにや。」とあるけれど、この「かく」とは何を指しているのだろう?
「かく」は、「このように」という意味だね。つまり、「このように思うのは、私だけか?」と書かれているんだけれど、「このように」が指す内容はなんだろう?ということだね。
「かく」が指す内容
「このように思うのは」とはなんのことかというと、「人が言ったことや、見たこと、心の中のことが、いつかあったことのように思える」ということ。
原文では
「いかなる折ぞ、ただ今の言ふことも、目に見ゆる物も、わが心のうちも、かかることのいつぞやありしかとおぼえて、いつとは思ひ出でねども、まさしくありし心地のする」
という部分が「かく」が指す内容だよ。
徒然草「名を聞くより」
係り結びと活用
テストでは「名を聞くより」の中で使われている係り結びや、使われている言葉の活用の種類や活用形を聞かれることも多いので、確認をしておこう。
係り結び
係り結びは、文の中に「や」「か」「ぞ」「なむ」「こそ」がある場合に、それに応じて文の終わり(結び)の活用語が連体形または已然形になるルールのことだね。
「名を聞くより」では、係り結びが2箇所使われているよ。
かねて思ひつるままの顔したる人こそなけれ
「こそ」に応じて、過去を表す助動詞の「けり」が已然形の「けれ」になっているよ。
強調として係り結びが使われているね。
そこほどにてぞありけん
「ぞ」に応じて、推量をあらわす「けむ(けん)」が連体形の「けむ(けん)」になるよ。
これも強調として係結びが使われているね。
活用
使われている言葉の活用の種類と活用形を答えられるようにしておこう!
心地する | 終止形は「心地す」。「心地」+「す」 サ行変格活用の複合動詞 |
---|---|
見る時 | 終止形は「見る」。 マ行上一段活用動詞 体言である「時」が続くので、連体形。 |
おぼえ | 終止形は「おぼゆ」。 ヤ行下二段活用 連用形。 |
見ゆる | 終止形は「見ゆ」。 ヤ行下二段活用動詞 |
ありし | 終止形は「あり」。 ラ行変格活用動詞 ありしの「し」は過去の助動詞「き」の連体形。 なので、「あり」は連用形。 |
運営者情報
ゆみねこ
詳しいプロフィールを見る
青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。