「春暁」現代語訳・書き下し文・意味を簡単に解説(押韻と情景)
中学校2年生の国語で学習する「漢詩の風景」から、孟浩然作の五言絶句「春暁」について、現代語訳・書き下し文、漢詩の意味、押韻についてや春暁で描かれている情景をわかりやすく解説するよ。
漢詩の風景「春暁」テスト対策ポイントまとめ
- 「春暁」の読み方は「しゅんぎょう」
- 「春暁」とは、春の暁(あかつき)のこと
- 「春暁」で描かれている季節は「春」、時間は「明け方」
- 「春暁」の主題は、「春になった喜びとのどかな気持ち」
- 「春暁」の作者は唐代の詩人「孟浩然(もうこうねん)」
- 「春暁」の詩の形式は「五言絶句」
- 起承転結の構成で作られている
- 第一句・第二句・第四句で押韻という表現技法が使われている
- 「暁(ギョウ)」「鳥(チョウ)」「少(ショウ)」の3文字で韻が踏まれている
- 「不 レ 覚 レ 暁」で「レ点」が使われている
- 「聞 二 啼 鳥 一」で「一・二点」が使われている
孟浩然「春暁」の解説動画もあるよ!
作業時間や移動中に聞き流すだけでも、重要な語句などが頭に入るので、おすすめだよ!
目次
「春暁」基本情報
作品名 | 春暁(しゅんぎょう) |
作者 | 孟浩然(もうこうねん) |
詩の形式 | 五言絶句 |
表現技法 | 押韻(第一句・第二句・第四句) 体言止め(第三句) |
作品の主題 | 春になった喜びとのどかな気持ち |
※孟浩然は、唐代(中国の王朝の名前)に活躍した詩人
「春暁」の作者「孟浩然」
「春暁」の作者は、唐代(中国の「唐」が国を統一していた時代に活躍した)の「孟浩然(もうこうねん)」という詩人。
自然をテーマにした詩が評価されていたよ。
テストでは作者の名前を答えることが多いので、漢字で書けるようにしておこう。
「春暁」とは
「春暁」の読み方は、「しゅんぎょう」。
歴史的仮名遣いでは「しゅんげう」と書かれているよ。
「春の暁(あかつき)」という意味だね。「あかつき」とは、「明け方」のことだよ。
「春暁」は、「春の明け方」の情景を描いた漢詩なんだね。
「春眠暁を覚えず」という言葉は、日本でもよく使われるね。
「春は気持ちが良くて、ぐっすりと眠れるものなので、夜が明けたことにも気がつかずに寝過ごしてしまう」という意味で使われる言葉だよ。
実は中国の漢詩から生まれた言葉だったんだね。
「起承転結」の構成になっている
「春暁」は、全部で4つの句に分かれているよ。
4つの句は、それぞれ「起・承・転・結」の役割を持っているんだ。
「起」とは、「歌い起こし」。つまり、「スタート」というイメージかな。
そしてそれを受けて、さらに発展させているのが「承」。
物事をうけいれるとき、「承知しました」というように、「承」の字を使うよね。
「転」では、急に場面がかわるよ。
そして全てをまとめて締めくくるのが、「結」だね。
「春暁」原文(漢文)
「漢文」とは、昔の中国の文章のこと。
「原文」は、中国で書かれていた状態そのままで、すべて漢字のみで書かれているんだ。
「春暁」原文
春 眠 不 覚 暁
処 処 聞 啼 鳥
夜 来 風 雨 声
花 落 知 多 少
※左上から右下に向かって読むよ
「春暁」書き下し文
「書き下し文」とは、原文のままでは読めない漢文を、読む順番を変えたり送り仮名を補って日本語のように読めるようにしたものだよ。
「春暁」書き下し文
春眠暁を覚えず
処処啼鳥を聞く
夜来風雨の声
花落つること知る多少
「春暁」現代語訳
「書き下し文」では、まだ現代の日本語としては不自然さがのこるよね。言葉などを現代使われているものに直したものが「現代語訳」だよ。
「春暁」現代語訳
春の眠りは気持ちが良くて、夜が明けたことも気がつかないくらいだ
あちらこちらで、鳥の鳴き声が聞こえる
ゆうべは、風雨の音がしていた
(ゆうべの雨風で)花はどのくらい散ってしまっただろう
「春暁」詩の形式
詩の形式とは、「詩の形のパターン」と考えてもらえばOK。
ひとつの詩に、いくつの句(ひとまとまりの言葉)があるかとか、ひとつの句は、いくつの文字で作られているかとかでパターンが決まっているよ。
「春暁」は、「五言絶句」という形のパターンでできているんだ。
五言絶句とは
まず、「絶句」というのは、「ひとつの詩が4つの句」でできているもののこと。
そしてさらに、ひとつの句が「5文字(五言)」で作られているものを「五言絶句」というんだ。
「春暁」には4つの句があるね。
① 春 眠 不 覚 暁
② 処 処 聞 啼 鳥
③ 夜 来 風 雨 声
④ 花 落 知 多 少
だから「絶句」だということが分かるね。
そして、それぞれの句は、「5つの文字」で作られているね。
だから、「五言絶句」なんだね。
この「五言絶句」という詩の形式は、テストで必ず出されるといってもいいくらいなので、絶対に覚えておこう!!
「春暁」で使われている表現技法について
押韻
押韻というのは、わかりやすく言うと「韻を踏む」ということだよ。
似たような音の文字で韻を踏んで、リズム感を出したり、印象を強める表現技法なんだ。
ラップとかでもよく使われているよね。
漢詩では、押韻をするときは「第二句」と「第四句」の終わりの文字で韻を踏むのが決まりなんだけれど、
「春暁」では「第一句」と「第二句」そして「第四句」で韻が踏まれているよ。
第一句 春 眠 不 覚 暁(ギョウ)xiǎo
第二句 処 処 聞 啼 鳥 (チョウ)niǎo
第四句 花 落 知 多 少(ショウ)shǎo
本当だ、「ギョウ」「チョウ」「ショウ」って韻を踏んでいるね。
※正しい中国語での発音は、それぞれ「xiǎo」「niǎo」「shǎo」で音としては「シャオ」「ニァオ」「シャオ」となるよ。
テストで、「押韻が使われている箇所を答えなさい」という問題が出る学校もあるので、覚えておこうね。
体言止めについて
「春暁」の書き下し文では、体言止めがつかわれているよ。
体言止めとは
文の末尾(終わり)を名詞(体言)で終わらせることで、文章にリズム感や余韻を与えて印象を強くする表現技法。
「春暁」の書き下し文では、第三句が
「夜来風雨の声」となっていて、文が名詞の「声」で終わっているよね。
※この体言止めについては、書き下し文のことだけなので、授業やテストでも扱わない場合もあるよ。
また、第四句の「花落つること知る多少」の「多少」も体言止めであるという考え方もあるので、学校の授業で習ったとおりに合わせてテストでは答えると安心だよ。
「春暁」漢字の読み方・語句の意味
「春暁」は漢詩なので、普段あまり使わない言葉や、漢字の読みが難しい語句があるね。
テストでは、語句の意味や漢字の読み方が問題に出されたりもするので、しっかりおさえておこう。
語句 | 読み方 | 意味 |
---|---|---|
春眠 | しゅんみん | 春の眠り |
暁 | あかつき | 明け方 |
覚えず | おぼ(えず) | 「覚えず」は「気づかず」とか「いつの間にか」という意味がある。夜が明けたことにも気がつかないくらい、春の眠りが心地いいということ |
処処 | しょしょ | あちらこちら |
啼鳥 | ていちょう | 鳥の鳴き声 |
夜来 | やらい | 昨夜・夜間・ゆうべ |
声 | こえ | 中国語では、「声」には「音」という意味がある |
花落つる | はなお(つる) | 花が落ちる=花が散る |
知る | し(る) | 知っている・わかる |
多少 | たしょう | どのくらい ※中国語の「多少」は、「どのくらい?」という意味の疑問詞 |
「春暁」それぞれの句の意味と情景
「春暁」は、全部で4つの句に分かれていて、「起承転結」の構成になっているんだったよね。
それぞれの句の意味を確認していこう。
第一句(起句)の情景
「春眠暁を覚えず」という句は、
「春の眠りは気持ちが良くて、夜が明けたことも気がつかないくらいだ」という意味。
第一句は起承転結のうちの「起句」だったね。
「春の眠りはとっても気持ちがいいよね」と話をスタートさせているよね。
第二句(承句)の情景
「処処啼鳥を聞く」という句は、
「あちらこちらで、鳥の鳴き声が聞こえる」という意味。
「処処」が、「あちらこちら」ということだね。
「啼」は「啼く」という漢字だから、鳥の鳴き声ということになるんだ。
第二句は起承転結のうちの「承句」だったよね。
第一句では春の話をスタートさせたよね。そこに、あちらこちらで鳥の鳴き声が聞こえるという情景を伝えて、話をふくらませていっているよね。
第三句(転句)の情景
「夜来風雨の声」という句は、
「ゆうべは、風雨の音がしていた」という意味。
「夜来」とは、「ゆうべ」ということ。
※「ゆうべからずっと」という意味だという説もあるよ。
「風雨」は、日本語でも使われるように、雨と風のことだね。
風も強く吹く雨が降ったのかもしれないね。
「声」と書かれているけど、雨や風はもちろん喋ったりしないので、これは雨や風の「音」ということだよ。
第三句は起承転結のうちの「転句」だったね。
第一句も、第二句も、春ののどかな話をしていたのに、突然、夜の雨風の話が始まって、情景が急展開しているよね。
このギャップで、読み手は「おっ」と、さらに興味を持って先が知りたくなるね。
第四句(結句)の情景
「花落つること知る多少」という句は、
「(ゆうべの雨風で)花はどのくらい散ってしまっただろう」という意味。
「花落つる」は、「花が散ること」だね。
「多少」は、中国語では「どのくらい?」という意味の疑問詞になるんだ。英語の「how much」のイメージかな。
日本語の「少し」という意味とは違うので、注意が必要だね。
特に、「知る多少」とあると、「どのくらいか知っている」とか、「多少知っている」という意味に勘違いしてしまいがちなんだ。
孟浩然は、庭の花がどのくらい散ってしまったのか、まだ確認ができていないよ。寝床の中で、「庭の花はどのくらい散ってしまったかなぁ」と思っているだけだね。
第四句は起承転結のうちの「結句」だったね。
第三句で、夜の風雨という少し暗いイメージに変わってしまっていたところを、その雨風のせいで散った花が庭にたくさん散りばめられていて、鮮やかな情景にまた戻って全体をまとめあげているんだ。
※ここの句の書き下しは、「花落つること知る多少ぞ」となっている解釈や教科書もあるよ。
テストでは、学校で使っている教科書に合わせて答えるようにしよう。
「春暁」作者の心情と詩の主題
春暁で描かれているのは、「春の眠りが心地よく、明け方にまどろむ中、鳥のさえずりや庭に散り落ちた花などの自然の風情を感じている」情景。
作者の孟浩然は、春になった喜びを感じ、心地よさとのどかな気持ちに浸っているんだね。
「春暁」の主題
春になった喜びとのどかな気持ち
孟浩然は、なかなか職に恵まれなかった人で、役人として働くことが出来なかったんだ。(そもそも本人に、役人になりたいという必死さがなかった部分もあるよ。)
もし役人として働いていたら、明け方に寝床でこんなにのんびりと過ごすことは到底できないんだ。仕事にいかなくてはいけないからね。
「春暁」には、役人として朝から忙しく仕事へ向かう人と比べて、「自分はのんびりできていいだろう?」という優越感も感じられるし、第三句の暗いイメージや「花落ちる」というキーワードからは、役人になれなかったことへの劣等感が感じられるという考え方もあるよ。
漢文の知識について
漢詩は、もともと中国の人が作った詩だよね。
つまり、当たり前だけれど、中国語で作られているんだよ。
ということは、そのままでは日本人はが読んだり意味を理解するのは大変だよね。
そこで、中国語が分からない日本人でも読めるように工夫しているんだ。
ここで白文・訓読文・書き下し文とは何かをくわしく紹介するよ。
「白文(はくぶん)」とは
まだ工夫していない、中国語として書かれているもとのままの詩の状態を「白文」というよ。
「訓読文(くんどくぶん)」とは
日本語に近づけるために返り点や送り仮名などをつけたものを「訓読文」というよ。
「書き下し文(かきくだしぶん)」とは
訓読文をもとに、漢字とひらがなを使って日本語に近づけたものを「書き下し文」というんだ。
書き下し文になると、だいぶ日本語に近づいたイメージだね。
でも、まだ現代ではなじみのない言葉が使われたままだよね。
言葉などを現代のものを使って、もっと日本語として違和感のないように直したものを「口語訳(こうごやく)」や「現代語訳」というよ。
「返り点」とは
白文をどうやって工夫して日本語っぽく近づけるのかだけれど、
このとき使うのが「返り点」というものなんだ。
中国語と日本語では文法が違うんだから、言葉の並び方だって違うよね。
日本語で「私は昨日テレビを見ました。」という文があったとして、
英語なら「I watched TV yesterday.」となるよね。
「昨日」と「yesterday」の位置もそれぞれ違うし、「見た」と「watched 」の位置も変わるよね。
日本語と中国語も同じ。
でも、日本語と英語に比べたら、日本語と中国語はどちらも「漢字」を使うから、ちょっと分かるよね。
なので、あとは「言葉の順番をどう変えたらいいか」を伝える記号さえあれば、もっと意味が伝わりやすくなるんだ。
「返り点」というのは、「この言葉は、あの言葉よりも先に読むよ」とか、「この漢字に送り仮名をつけて読んでね」などを伝える記号のことなんだ。
返り点にはいくつか種類があって、次のようなものがあるよ。
ここでは「春暁」で使われている返り点の種類を紹介するね。
- 「レ点」:簡単に言うと、「上下をひっくり返して読む」。本当なら上から下にむかって読んでいくよね。2つの文字の間にレ点があったら、その2つをひっくり返して(つまり、下の文字を先に読んで、そのあとに上の文字を読む)読むんだ。
もしレ点が続いていたら、さらに下の文字から読むことになるよ。 - 「一・二点」:「先に一の部分を読んで、そのあとに二の部分を読む」。
レ点と同じで、さきに下の文字を読んで上の文字を読みたいのだけれど、レ点は「2つの文字を上下ひっくり返す」しかできなかったよね。
2つの文字以上をひっくり返したいときに「一・二点」を使うんだ。
テストでは、どの位置にどんな返り点があるか、問題に出ることがあるよ。
実際に自分で書き込まなくてはいけないことが多いので、しっかり対策しよう。
「春暁」では、どこに返り点が使われているかをよく確認しておこう。
「春暁」で返り点が使われているところ➀
第一句では、「不 覚 暁」のところに「レ点」が使われているね。
「不 レ 覚 レ 暁」となっているよね。
本当なら上から順に「不→覚→暁」となるところを、「不と覚」がひっくり返って、さらに「覚と暁」もひっくり返るから、結局「暁→覚→不」という順番になるんだよ。
「春暁」で返り点が使われているところ➁
第二句では、「聞 啼 鳥」のところに「一・二点」が使われているね。
「聞 二 啼 鳥 一」となっているよね。
本当なら上から順に「聞→啼→鳥」となるところを、「聞」の左下には「二」が書かれているので、先に「一」が書かれている「啼鳥」を読まなければならなくなるんだ。
先に読まなければいけない部分は、「二」と「一」書かれている間全部だよ。
(他の返り点と組み合わさると、もうすこし複雑になるよ)
まる覚えしてしまう方法もあるけど、おすすめは「書き下し文と白文を比べて、同じ言葉の順番になるように、ルールにしたがって返り点を考える」力をつけること。
そうすれば、覚えていなくても、それどころかはじめて見た漢詩でも、白文と書き下し文を見れば返り点が書き込めるようになるよ。
「春暁」テスト対策ポイントまとめ
漢詩の風景「春暁」テスト対策ポイントまとめ
- 「春暁」の読み方は「しゅんぎょう」
- 「春暁」とは、春の暁(あかつき)のこと
- 「春暁」で描かれている季節は「春」、時間は「明け方」
- 「春暁」の主題は、「春になった喜びとのどかな気持ち」
- 「春暁」の作者は唐代の詩人「孟浩然(もうこうねん)」
- 「春暁」の詩の形式は「五言絶句」
- 起承転結の構成で作られている
- 第一句・第二句・第四句で押韻という表現技法が使われている
- 「暁(ギョウ)」「鳥(チョウ)」「少(ショウ)」の3文字で韻が踏まれている
- 「不 レ 覚 レ 暁」で「レ点」が使われている
- 「聞 二 啼 鳥 一」で「一・二点」が使われている
ここまで学習できたら春暁のテスト練習問題のページにチャレンジしてみよう!
運営者情報
ゆみねこ
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青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。
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とても分かりやすくまとめてあり助かりました!
授業の復習ができました。ありがとうございました! -
めっちゃ助かりました!
明後日テストなんですけど、もっと早く気づきたかったです(笑)
これからも、利用させていただきますっ、ありがとうございます! -
めちゃくちゃわかりやすい解説ありがとうございます
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今回のテストもこのサイトを見たので安泰です
またこれからも愛用させて頂きますっ! -
とても分かりやすかったです!
風邪でその時の授業受けれなかったので助かりました -
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-
転句では、体言止めが使われているのではないでしょうか??
とても分かりやすかったです!
明日テストなのでこれでがんばれます!!