高村光太郎『レモン哀歌』表現技法・構成・主題を図解解説

東京書籍の中3教材にも掲載されているなど、中学国語で学習することがある高村光太郎の詩『レモン哀歌』について、使われている表現技法や言葉の意味、詩の構成(場面の切り替わり)、作者の思いなど、テスト対策に必要なポイントをわかりやすく解説するよ。

たろう
「哀歌(あいか)」って、悲しい歌っていう意味だよね。どんな詩なんだろう?
くまごろう
この詩は、作者である高村光太郎が、最愛の妻である「智恵子(ちえこ)」が亡くなる直前の様子と、その深い愛を描いたとても有名な作品だよ。レモンがどんな役割をしているのか、一緒に読み解いていこう!

『レモン哀歌』 高村光太郎たかむらこうたろう

そんなにもあなたはレモンを待つてゐた

かなしく白くあかるい死の床で

わたしの手からとつた一つのレモンを

あなたのきれいな歯ががりりと嚙んだ

トパァズいろの香気が立つ

その数滴の天のものなるレモンの汁は

ぱつとあなたの意識を正常にした

あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ

わたしの手を握るあなたの力の健康さよ

あなたの咽喉(のど)に嵐はあるが

かういふ命の瀬戸ぎはに

智恵子はもとの智恵子となり

生涯の愛を一瞬にかたむけた

それからひと時

昔山巓(さんてん)でしたやうな深呼吸を一つして

あなたの機関はそれなり止まつた

写真の前に挿した桜の花かげに

すずしく光るレモンを今日も置かう

『レモン哀歌』の基本情報と詩の構成

作者詩人・彫刻家の高村光太郎たかむらこうたろう
収録作品詩集智恵子抄ちえこしょう
詩の形式口語自由詩こうごじゆうし
詩の構成前半(1〜16行目):過去(臨終の時の回想)
後半(17〜18行目):現在(写真の前にレモンを供える)

作者の高村光太郎たかむらこうたろうは、日本を代表する彫刻家であり、詩人でもあるんだ。

『レモン哀歌』は、光太郎が妻の智恵子ちえこへの深い愛をつづった詩集智恵子抄ちえこしょうに収められているとても有名な作品だよ。

【参考】高村光太郎のもうひとつの作品「あどけない話」について

「あどけない話」は、高村光太郎が、妻・智恵子との思い出をもとに書いた詩だよ。
「レモン哀歌」が、智恵子の最期の場面をえがいた作品なのに対して、こちらは生前の智恵子の、無邪気で純粋な姿が印象的にえがかれているんだ。

題名にある「あどけない」とは、子どものように素直で、けがれのない様子のこと。
この詩からは、光太郎が智恵子のそうした魅力を、今も大切に思い続けていることが伝わってくるよ。

「レモン哀歌」とあわせて読むと、光太郎が智恵子を深く愛し、その存在をどれほど大切にしていたのかが、よりよくわかるので、「あどけない話」は、「レモン哀歌」を理解するときの参考作品として読むのにもぴったりの詩だよ。

たろう
「待つてゐた」とか「笑ふ」とか、ちょっと昔の言葉づかいになっているね。テストで現代の言葉に直す問題が出そうだな…。
くまごろう
よく気がついたね!これは「歴史的仮名遣い(旧かなづかい)」と言って、昔の書き方なんだ。テストでよく出る変換の例を表にまとめたから確認しておこう!
詩の中の表現(歴史的仮名遣い)現代仮名遣い
待つてゐた待っていた
とつたとった
笑ふ笑う
かういふこういう
瀬戸ぎはに瀬戸ぎわに
やうなような
止まつた止まった
置かう置こう

このような歴史的仮名遣いが使われているけれど、言葉そのものは「話し言葉(口語)」で書かれていて、文字数のルールもないから、詩の形式は「口語自由詩」になるよ。

詩の構成(場面の切り替わり)

この詩は、大きく2つの場面に分かれていることがテストでよく出題されるよ。

1行目から16行目までは、妻の智恵子が息を引き取る直前の「過去の回想」を描いているんだ。

そして、17行目の「写真の前に」という言葉から、場面が回想から現在へと切り替わるよ。
亡くなった智恵子の遺影(写真)の前に、今日もレモンを供えている、という光太郎の現在の姿が描かれているんだね。

高村光太郎の「レモン哀歌」の図解イラスト

【テスト頻出】『レモン哀歌』表現技法と「智恵子」の描写

『レモン哀歌』には、五感(見る・聞く・嗅ぐなど)を刺激する鮮やかな表現がたくさん使われているよ。一つずつ読み解いていこう。

「白くあかるい死の床」とは

普通、「死の床(亡くなる間際のベッド)」というと、暗くて悲惨なイメージがあるよね。でも光太郎は、それを「白くあかるい」と表現しているんだ。

たろう
どうして「あかるい」と感じたんだろう?
くまごろう
それは、光太郎にとって、愛する智恵子が最期を迎えるその場所が、ただ悲惨なものではなく、清らかで神聖なものとしてとらえているように読めるからなんだ。

鮮やかな感覚表現(擬音語と色彩)

詩の中で、智恵子がレモンをかじる音が「がりりと」という擬音語ぎおんごで表現されているね。静かな病室に響くこの音によって、レモンの新鮮さや、智恵子の最後の生命力の回復が強く伝わってくるよ。

また、かじったレモンの香りをトパァズいろの香気が立つと表現しているね。「トパーズ」とは、透き通った黄色やオレンジ色をした美しい宝石のこと。

目には見えないはずの「香り」を、あえて「色」で表現することで、レモンの爽やかで神聖な香りが、読者の目の前に鮮やかに広がるような効果があるんだ。

「意識を正常にした」=「もとの智恵子となり」

実は智恵子は心の病を抱えていて、病のため、ふだんの智恵子らしさが失われていた時期があったと言われているんだ。

でも、レモンの鮮烈な酸味と香りが、「ぱつとあなたの意識を正常にした」んだね。これは、智恵子の精神の明浄(めいじょう)をもたらしたと考えられているよ。

この部分は、12行目の「智恵子はもとの智恵子となり」と近い意味の表現だよ。病によって失われていた“智恵子らしさ”が、命の最後の最後に一瞬よみがえったように描かれているんだ。

「咽喉の嵐」と「機関が止まった」の意味

詩の後半には、次のような表現が出てくるよ。

  • 「あなたの咽喉のどに嵐はあるが」
    本当にのどの中に嵐が吹いているわけではないよね。これは、のどの激しい苦しさや荒い呼吸を「嵐」にたとえた比喩の表現だよ。
  • 「あなたの機関はそれなり止まつた」
    「機関」とは機械のエンジンのこと。ここでは、智恵子の心臓や呼吸といった身体の機能のことを指しているよ。つまり「機関が止まった」とは、「息を引き取った(亡くなった)」ということを意味しているんだ。

※テストでは、「この詩が臨終(死)の時を歌ったものだとわかる表現を抜き出しなさい」という問題が出ることがあるよ。例えば「死の床で」「命の瀬戸ぎはに」「あなたの機関はそれなり止まつた」などに注目しよう!

『レモン哀歌』における「レモン」の役割と主題

この詩の中で、「レモン」はただの果物ではなく、智恵子に一瞬の命の輝きを取り戻させた存在として、智恵子を強く思い起こさせる象徴として読めるよ。

智恵子は亡くなってしまったけれど、写真の前に「すずしく光るレモン」を置くことで、光太郎の心の中には今も「もとの智恵子」が生き続けているんだね。

『レモン哀歌』は、死という深い悲しみの中にあっても、愛する人の命が放った一瞬の美しさと、永遠に変わらない深い愛情を描いた作品と言えるよ。

【定期テスト予想問題】『レモン哀歌』に挑戦!

『レモン哀歌』テスト対策ポイント

  • 作者は詩人で彫刻家の高村光太郎たかむらこうたろう。詩集智恵子抄ちえこしょうに収録されている。
  • 詩の形式は「口語自由詩」(歴史的仮名遣いが使われている)。
  • 場面は、「写真の前に」から大きく切り替わる。(回想から現在へ)
  • レモンは、智恵子を強く思い起こさせる象徴として読める。
  • 「白くあかるい死の床」は、死の場面を悲惨なものではなく、「神聖なもの」としてとらえているように読める。
  • 「もとの智恵子となり」と近い意味の表現は、「意識を正常にした」
  • 「あなたの咽喉に嵐はあるが」は、のどの激しい苦しさや荒い呼吸を「嵐」にたとえた比喩
  • 「機関はそれなり止まつた」は、「息を引き取った(死)」ことを意味する。

ここまで学習できたら、ぜひ『レモン哀歌』のテスト対策練習問題とドリルに挑戦しよう!

高村光太郎『レモン哀歌』テスト対策練習問題と過去問まとめ
【中学国語】高村光太郎『レモン哀歌』漢字ドリル
【中学国語】高村光太郎『レモン哀歌』語句・表現技法ドリル
【中学国語】高村光太郎『レモン哀歌』内容理解ドリル
【中学国語】高村光太郎『レモン哀歌』主題・表現効果ドリル

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青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。 ※サイト全体の運営実績についてはこちらにまとめています。

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