全数調査・標本調査とは?「母集団」「無作為に抽出」など用語解説
中学3年生の数学で学習する「標本調査」について、「全数調査」「標本調査」の違いと、それぞれのメリットとデメリット、「母集団」「標本」とはどういう意味か、なぜ無作為に抽出しなくてはならないのか、またその方法などをくわしく解説するよ。
目次
街ゆく人に声をかけて意見を聞くインタビュー調査や、健康診断であるグループの人たちの数値を調べたり、市販で売られている缶詰の品質調査など、世の中にはいろいろな調査があるよね。
調べた結果をもとにして、「このグループには〇〇な傾向がある」とか、色々な傾向や特徴を発見することができたりするね。
今回は 「調査」 について、調査の方法や用語について学習していこう。
まず、調査の方法は「何を調べるか?」について、大きく2つにわけることができるんだ。
調査の方法(何を調べるか)
- 全数調査・・とにかく根こそぎ、全部を調べる!
- 標本調査・・全部は大変だから、一部だけ調べる!
それぞれどんな調査方法か、くわしく解説していくよ。
全数調査とは?全数調査の身近な例
「全数調査」というのは、漢字を見てわかると思うけれど、「全員」「全部」を調査する方法だと思ってもらったらOK。
教科書の言葉で言うと
全数調査とは「調査の対象となる集団全部について調査すること」となっているよ。
とりあえず、「全部」を調べるものだと思っておこう。
日常生活でどんなものが全数調査なのかを考えてみよう。
全数調査の例
全数調査とは、「全員」「全部」を調べるものなので、次のようなものが例としてあげられるよ。
全数調査の例
- 学校の健康診断
学校の生徒全員に対して調査を行っているよね。
「この人はやらなくてOK」とか、「クラスの5人だけにしよう」とかはしないよね。 - 高校の入学試験
その高校を受ける人は全員が入学試験を受けているよね。
「来た人の8人だけ入学試験を実施しよう」とかないよね。 - 空港の手荷物検査
全部の荷物を調べているはずだよね。
「この荷物は調べなくていいか。」とかないよね。
飛行機に乗る前に通る「金属探知機」なんかも全数調査だね。 - 国勢調査
国税調査とは、国民の家族の人数や、人口なんかを調べる調査のことだよ。
すべての家族について調べないといけないから、全数調査なんだ。
すべての家族についてとあって、実は大変だから5年に1回の実施なんだよ。
全数調査メリットとデメリット
全数調査は、「全員」「全部」を調べるから、時間や労力、たくさんのお金などがかかってとにかく大変だよね。ただ、「全て」を調べるから正確なんだよ。
全数調査のメリットとデメリット
- 〇正確な調査結果を得られる
- ✖調査の時間がかかる
- ✖調査のお金がかかる
標本調査とは?標本調査の身近な例
全数調査は「全て」を調べる方法だったけど、標本調査は全体のうちの「一部」だけを調べる調査方法だよ。
教科書の言葉で言うと
標本調査とは「集団の一部分を調査し、集団の傾向をとらえる調査」となっているよ。
とりあえず、全体の「一部」を調べる調査だと思ったらOK。
日常生活でどんなものが標本調査なのかを考えてみよう。
標本調査の例
標本調査っていうのは、一部分だけを調べる方法だから次のようなものがあげられるよ。
標本調査の例
- 缶詰の品質調査
すべての缶詰で調査していたら大変だし、すべてを調査してしまったら、売るものがなくなっちゃうよね。 - 世論調査
世論調査とは、政府の行っていることに対して国民はどう思っているかを調べることだよ。
調査のために、ランダムで電話をかけたり、家に行ったりしているよ。
もし国民全員に対して電話をしたり、家に行っていたら大変すぎるし、赤ちゃんなどは答えることができないよね。 - テレビの視聴率
全数調査のような感じがするけれど、実は標本調査なんだよ。
すべての家のテレビを調査するには、ものすごいお金がかかってしまうし、視聴率はテレビ局にとってとても重要な数値で、できるだけ速く知りたいんだ。そのためにも、全数調査していたら時間がかかりすぎてしまうんだよ。
一部の世帯や、「関東地方」「関西」などと絞って調べているよ。
学校のテストでは、どれが全数調査ですか?標本調査ですか?というような問題も出題されると思うから、しっかり覚えておこう。
標本調査のメリットとデメリット
全体の一部だけを調べるから、全数調査と比べれば時間もお金もかからずに済むんだけれど、正確ではないというデメリットがあるよ。
標本調査のメリットとデメリット
- 〇時間やお金がかからない。
- ✖誤差が生まれるなど、全数調査に比べて正確ではない。
母集団とは
「母集団」という言葉は、「標本調査」で登場する言葉だよ。
標本調査っていうのは「ある集団の一部分」だけを調べる方法だったよね。
そのもととなる集団のことを「母集団」というんだ。
「もととなる」ものだから、「母」という漢字が使われているよ。
その集団のお母さん、というイメージかな。
教科書には
「標本調査を行うとき、傾向を知りたい集団全体のことを母集団という」と書かれているよ。
母集団を求める問題
テストでは、問題文から「母集団」は何かを読み取る問題が出されるよ。
例題
ある町の人口10000人から500人を選んで、世論調査を行いました。
母集団を答えなさい。
傾向を知りたい集団全体のことを母集団といったから、この問題では「ある町の人口10000人」が母集団だよ。
標本とは
さっきから出てきていた「標本」という言葉だけれど、「一部分」という意味だと思ってもらったらOK。
教科書には
「母集団の一部分として取り出して、実際に調べたものを標本という」と書かれているよ。
「母集団」がお母さんだとしたら、そこから一部分だけ抜き出した子供みたいなものだね。
標本を求める問題
テストでは、おなじく問題文の中から「標本」は何かを読み取る問題が出るよ。さっきの例題で考えてみよう。
ある町の人口10000人から500人を選んで、世論調査を行いました。
母集団と標本を答えなさい。
母集団は「ある町の人口10000人」だったね。
標本は「取り出して調べた一部分」だったから、「選び出した500人」が標本だよ。
「無作為に抽出する」方法
さて、ここまでは「何を調べるか」の話だったね。
ここからは、「どうやってその調べるものを選ぶか?」という話だよ。
標本調査は時間もお金もかからないから便利なんだけれど、調査の結果をできるだけ正確にするためには1つだけ気をつけなきゃいけない重要なことがあるんだ。
それは「かたよりがないように標本をランダムに選ばなきゃいけない」ということ。
これを「無作為に抽出する」っていうよ。
「作為」とは、「手を加える」という意味なんだ。
なので、「無作為」とは、「手を加えない」ということになるね。
つまり、「標本を選ぶときに、余計な手を加えない」ということだよ。
「男子だけ」とか、「好きな人だけ」とかは、選ぶ人が手を加えているからダメということだね。
とはいっても、どうすれば「無作為に抽出した」と誰もが納得するように言い切れるのか、ハッキリしていないと困るよね。
では、「この方法なら、無作為に抽出したとハッキリ言えるよ」という方法を3つ紹介するよ。
「乱数さい」を使う方法
乱数を作る方法の1つが「乱数さい」なんだ。
まず「乱数」とは、規則性がない数字のこと。
「123456789」は、「1ずつ増えている」という規則があるよね。
それに比べて、例えば「2853942」みたいにデタラメに並べた数字は、何も規則性がないよね。
そうはいっても、人間が乱数を考えようとしても、デタラメな数字を「考える」時点で、無意識にある数字が偏って登場してしまったりする可能性がどうしてもあるよね。
乱数さいとは
乱数さいは、下の図のような正二十面体の各面に、0から9までの数字が2回ずつ書き込まれたさいころなんだ。
これを何も考えずに転がして乱数を作るんだよ。
※一般的な乱数さいは、「正二十面体に、0~9までの数字が書き込まれたもの」だけれど、場合によっては0~9以外の数字が書き込まれていたり、正二十面体以外のさいころが使われることもあるよ。
乱数さいを使う方法
例えば、400までの乱数を20個作るときに乱数さいを使う方法を紹介するよ。
①乱数さいを3個準備して、百の位、十の位、一の位のさいころを決めておく。
②何も考えずに振って、3けたの数をつくる。
③400を超えてしまったら、その数は捨てる。
例:382 942 102
同じ数が出ても、その数は捨てる。
例:235 235 172
④乱数を20個作る。
乱数表を使う方法
乱数表とは
乱数を作る方法として「乱数表」というものもあるよ。
乱数表は、0から9までの数字をランダムに並べた表のことで、どの部分をとっても0〜9の数字が同じ確率で現れるように作られている優れものだよ。
乱数表を使う方法
乱数表を使って、400までの乱数を20個作る方法を紹介するよ。
①目を閉じて、鉛筆の先を乱数表に突きさす。
②えんぴつの先にある数字から、3けたずつ区切って、3けたの数を作る。
③400を超えたら、その数は捨てる。
同じ数が出ても、その数は捨てる。
【乱数表の一部】
④乱数を20個作る
乱数ジェネレータという乱数表を作れるサイトもあるので、ぜひ実際に試してみよう!
表計算ソフトを使う方法
表計算ソフト(エクセル)を使って乱数を作る方法もあるよ。この方法が一番楽かもしれないよ。
表計算ソフトを使って、400までの乱数を20個作る方法を紹介するよ。
①エクセルのセルに「=INT(RAND()*400+1)」と入力する。
(1以上400以下の整数が作られるよ)
②下のセルにも同じようにする。
③各セルに表示された数で、同じものをのぞいて20個の数を取り出す。
今回は400までの乱数にしたけれど、500までにしたかったら「=INT(RAND()*500+1)」のように、コマンドの一部を変えれば良いので、とても便利だね!
「標本調査」まとめ
- 全数調査・・・「調査の対象となる集団全部について調査すること」
時間・労力・お金がかかるが、正確。
例:国勢調査・健康診断・入学試験・手荷物検査など - 標本調査・・・「集団の一部分を調査し、集団の傾向をとらえる調査」
時間・労力・お金がかからないが、誤差が出るなど、全数調査に比べて正確さに欠ける。
例:視聴率・食品の品質検査・世論調査など - 標本調査を行うとき、傾向を知りたい集団全体のことを母集団という
- 母集団の一部分として取り出して、実際に調べたものを標本という
- 標本は、かたよりがないようにランダムに選ばなくてはならなず、これを「無作為に抽出する」という
- 無作為に抽出するための方法は、以下の3つがある。
・乱数さいを使う
・乱数表を使う
・表計算ソフトを使う
運営者情報
ゆみねこ
詳しいプロフィールを見る
青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。
-
乱数さいの説明で、『乱数さいは、下の図のような正二十面体の各面に…』とありますが、掲載の図は10面体ではないかと思います。
また、乱数さいは、正二十面体に限らず、その時々に応じて正六面体、正八面体等も使用されます。
乱数さいの説明の中で、「乱数さいは、下の図のような正二十面体の各面に、0から9までの数字が2回ずつ書き込まれたさいころなんだ。」とありますが、図は10面対のように思われます。図の差し替えをご検討ください。