乗法公式を利用して「いろいろな式の展開」をする方法を解説
中学3年生の数学で学習した乗法公式を利用して、いろいろな式の展開をしてみよう。
一見、乗法公式が使えなさそうな式でも、工夫をすれば使うことができるよ。
目次
乗法公式を利用していろいろな式を展開してみよう
乗法公式を使うと、多項式×多項式の展開がとても簡単に早くできるんだったよね。
でも、乗法公式は4つの形があって、それぞれその形の多項式×多項式の式でないと使うことができないんだったよね。
でも、あきらめるのはまだ早いよ。
ちょっと工夫することで、パッと見たところは「乗法公式の形と違うから、使えないや・・・」と思った式でも、使える場合があるんだ。
ここでは、「ちょっと工夫することで乗法公式が使えるパターン」を紹介するよ。
まず、「乗法公式」をもう一度確認しよう。全部で4つあって、この4つを使うことで、速く展開することができるんだったよね。
乗法公式
1、(x+a)(x+b)=x2+(a+b)x+ab
2、(x+a)2=x2+2ax+a2
3、(x-a)2=x2-2ax+a2
4、(x+a)(x-a)=x2–a2
乗法公式について、「どういうものだったかな・・・?」と自身がなかったら、もう一度乗法公式について解説しているページをチェックしてね。
では、実際に乗法公式を使って、いろいろな式を展開する問題に挑戦してみよう。
(1) (2x+3)(2x+4)を展開しなさい。
パッと見ただけだと、この式は乗法公式の4つ形のどれにも当てはまらないよね。
でも、「なんか似ているなぁ」というものがあるね。
そう、乗法公式1の式「(x+a)(x+b)」だよ。
乗法公式の「x」の部分が、問題では「2x」になっているだけだからね。
この式だったら、乗法公式1の「(x+a)(x+b)=x2+(a+b)x+ab」を工夫して使えば、簡単に展開できそうな気がするね。
ではどういう工夫をするかというと、
「式の一部分を、文字におきかえてしまう」んだ。
たとえば、「2x」を「A」とおきかえてみよう。
そうすると
(2x+3)(2x+4)
=(A+3)(A+4)
となるよね。
そうすると、なんと乗法公式1の「(x+a)(x+b)」と同じ形になったね。
あとはそのまま「(x+a)(x+b)=x2+(a+b)x+ab」で展開すればよさそうだね。
(A+3)(A+4)
=A2+(3+4)A+3×4
=A2+7A+12
無事に展開できて、「安心!」と思ってしまいそうだけれど、
大事なことを思い出そう。
そう、「A」は仮におきかえただけの文字で、本当は「2x」だったよね。
なので、最後にちゃんと「A」を「2x」に戻してあげよう。
A2+7A+12
=(2x)2+7×2x+12
=4x2+14x+12
これで展開の完成だよ。もう一度やり方を確認してみよう。
(2x+3)(2x+4) の展開
(2x+3)(2x+4) ←「2x」を「A」とおこう
=(A+3)(A+4) ←乗法公式1を使って展開しよう。
=A2+(3+4)A+3×4
=A2+7A+12 ←「A」を「2x」にもどそう。
=(2x)2+7×2x+12
=4x2+14x+12
ちなみに「2x」を「A」とおいて展開する方法を紹介したけれど、展開に慣れてくると(2x+3)(2x+4)ぐらいなら、おきかえなくてもそのまま求めることもできるよ。
速く展開できる人の頭の中
(2x+3)(2x+4)
=(2x)2+(3+4)×2x+3×4
=4x2+14x+12
でも慣れないうちはミスも起こりやすいので、自身が持てるまでは、確実に展開できるように、文字でおきかえる方法でたくさん練習しよう。
(2) (2x+3)2を展開しなさい。
この式だったら、乗法公式2の「(x+a)2=x2+2ax+a2」を使えば、簡単に展開できそうな気がするね。
(x+a)2みたいな「(前+後)2」の形の式を展開すると
「前の2乗+後ろの2乗+2倍の前後」になるんだったよね。
(2x+3)2の展開
・前の2乗=(2x)2=4x2
・後ろの2乗=32=9
・2倍の前後=2×(2x)×3=12x
(2x+3)2を展開すると次のようになるよ。
(2x+3)2
=4x2+9+12x ←「9」と「12x」の順番を入れ替えよう。
=4x2+12x+9
(3) (3x+4)(3x-4)を展開しなさい。
この式だったら、乗法公式4の「(x+a)(x-a)=x2–a2」を使えば、簡単に展開できそうな気がするね。
「(前+後)(前-後)」のような形になっているから、展開すると「前の2乗-後ろの2乗」になるよ。
(3x+4)(3x-4)の展開
・「前の2乗」=(3x)2=9x2
・「後ろの2乗」=42=16
(3x+4)(3x-4)を展開すると次のようになるよ。
(3x+4)(3x-4)
=9x2-16
(4) (x+y+2)(x+y-4)を展開しなさい。
今までと違うのは、かっこの中の数字や文字が3つになっていることだね。こういうときは、3つの文字や数字を2つにすることを考えよう。
「(x+y+2)(x+y-4)」という式を見ると、どちらにも「x+y」があることがわかるかな?
この「x+y」を「A」とおいてみよう。
(x+y+2)(x+y-4)
=(A+2)(A-4)
この形にできてしまえば、あとは乗法公式1の「(x+a)(x+b)=x2+(a+b)x+ab」を使って展開すればいいよね。
(A+2)(A-4)
=A2+(-2+4)A+2×(-4)
=A2-2A-8
ここで「A」を「x+y」にもどすよ。
A2-2A-8
=(x+y)2-2(x+y)-8 ←(x+y)2=x2+2xy+y2となるよね。
=x2+2xy+y2-2x-2y-8
これで展開完了。このあとも計算できそうだけど、同類項がないので終わりだよ。
(x+y)2=x2+2xy+y2となる理由
乗法公式2「(x+a)2=x2+2ax+a2」の「a」を「y」として考えると、
「(x+y)2=x2+2xy+y2」になるよ。
(5) (x+y-3)2を展開しなさい。
(4)と同じように、かっこの中の数字や文字が3つになっているね。こういうときは、3つの文字や数字を2つにすることを考えよう。
「(x+y-3)2」の「x+y」を「A」とおいてみよう。
そうすると
(x+y-3)2
=(A-3)2
になるよね。
この式だったら、乗法公式3の「(x-a)2=x2-2ax+a2」を使えば、簡単に展開できそうな気がするね。
(x-a)2みたいな「(前-後)2」の形の式を展開すると
「前の2乗+後ろの2乗-2倍の前後」になるんだったよね。
(A-3)2の展開
・前の2乗=A2
・後ろの2乗=32=9
・2倍の前後=2×A×3=6A
(A-3)2を展開すると次のようになるよ。
(A-3)2
=A2+9-6A ←「9」と「-6A」の順番を入れ替えるよ。
=A2-6A+9
ここまで展開出来たら、「A」を「x+y」にもどそう。
A2-6A+9
=(x+y)2-6(x+y)+9 ←(x+y)2=x2+2xy+y2となるよね。
=x2-2xy+y2-6x+6y+9
(6) (x-3)2-(x+2)(x-4)を展開しなさい。
この式は今までと比べると長くて難しそうに感じるけど、分けて考えよう。
①(x-3)2の展開
(x-a)2みたいな「(前-後)2」の形の式を展開すると
「前の2乗+後ろの2乗-2倍の前後」になるんだったよね。
(x-3)2の展開
・前の2乗=x2
・後ろの2乗=32=9
・2倍の前後=2×x×3=6A
(x-3)2を展開すると次のようになるよ。
(x-3)2
=x2+9-6x ←「9」と「-6x」の順番を入れ替えるよ。
=x2-6x+9
②(x+2)(x-4)の展開
乗法公式1の「(x+a)(x+b)=x2+(a+b)x+ab」を使って展開するよ。
(x+2)(x-4)
=x2+(2-4)x+2×(-4)
=x2-2x-8
③(x-3)2-(x+2)(x-4)の展開
①と②から次のように(x-3)2-(x+2)(x-4)は展開できるよ。
(x-3)2–(x+2)(x-4)
=x2-6x+9-(x2-2x-8)
=x2-6x+9-x2+2x+8
=-4x+17
よくある間違い
(x-3)2–(x+2)(x-4)
(誤)=x2-6x+9-x2-2x-8
(正)=x2-6x+9-(x2-2x-8)
展開した後、かっこをつけわすれないようにしよう。
運営者情報
ゆみねこ
詳しいプロフィールを見る
青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。