「円周角と弧の定理」「直径と円周角の定理」をわかりやすく解説

中学3年生の数学で学習する、「円周角と弧の定理」「直径と円周角の定理」について、弧の長さが同じであれば円周角も等しくなる性質や、直径の円周角は90°になる性質をわかりやすく解説するよ。それぞれの例題の解き方もくわしく紹介するよ。

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「円周角と弧の定理」「直径と円周角の定理」を わかりやすく解説

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目次

円周角と弧の関係を調べてみよう

前回「1つの弧に対する円周角の大きさは一定である」という円周角の定理を学習したね。

1つの弧に対する円周角の大きさは一定である図

前回は「弧AB」だけに注目して見ればよかったよね。

今回は、弧ABとは別のところにある弧だけれど、弧ABと等しい弧について考えよう。

等しい弧に対する円周角

この図でイメージして欲しいのだけれど、「等しい弧」というわけなので、弧ABの部分をぐるっと円に沿ってスライドさせれば、弧CDとピッタリ重なるというわけだよね。

円周角の定理のイラスト

ということは、前回学習した「1つの弧に対する円周角」と同じ条件になるということだね。だから。別の等しい弧に対する円周角の大きさは変わらないんだよ。
今回の図だと、∠P=∠Qってことだね。

円周角と弧の関係のポイント

等しい弧に対する円周角の大きさは変わらない

それでは、練習問題にチャレンジしてみよう。

円周角と弧の関係を使った練習問題

下の図で、\(\overset{\frown}{AB}\)=\(\overset{\frown}{CD}\)である。
xの角度を求めなさい。

等しい弧に対する円周角の問題

\(\overset{\frown}{AB}\)=\(\overset{\frown}{CD}\)だから、

  • ・\(\overset{\frown}{AB}\)に対する円周角∠P
  • ・\(\overset{\frown}{CD}\)に対する円周角∠Q

は等しくなるよね。

だから、x=10°と求めることができるね。

下の図で、\(\overset{\frown}{AC}\)=2\(\overset{\frown}{CD}\)になっている。xの角度を求めなさい。

円周角と弧の長さの問題

この問題では、弧ABと弧CDは等しくはないので、今度はすこし様子が違うね。
でも難しく考えることはないよ。
弧の長さが2倍になっているなら、円周角も2倍になるというだけのことなんだ。

2倍すると20°になるのだから、x=10°が答えになるよ。

円周角と弧の定理

「弧の長さが等しければ、円周角も等しくなる」という円周角と弧の関係がわかったね。
この関係のことを「円周角と弧の定理」というよ。

円周角と弧の定理

  • 1つの円で弧の長さが等しいとき、それに対する円周角も等しい
円周角と弧の定理
  • 逆に、円周角が等しいとき、それに対する弧の長さも等しい
円周角と弧の定理

「弧の長さが等しい時、それに対する円周角も等しくなる問題」はさっきやったよね。

だから、逆の「円周角が等しい時、それに対する弧の長さも等しい」という性質を使った問題に挑戦してみよう。

円周角と弧の定理を使った練習問題

下の図で、平行な弦AD、弦BCにはさまれた\(\overset{\frown}{AB}\)と \(\overset{\frown}{CD}\)の長さが等しくなることを証明しなさい。

円周角と弧の定理を使った問題

まずACを結ぼう。

弦ADと弦BCは平行だから、錯角が等しくなって、∠A=∠Cになるよね。

円周角と弧の定理を使った問題

ここからが重要なポイントだよ。

  • ・∠Cは\(\overset{\frown}{AB}\)に対する円周角
  • ・∠Aは\(\overset{\frown}{CD}\)に対する円周角

だよね。

∠Aと∠Cの角度は等しいから、「円周角が等しいとき、それに対する弧の長さも等しい」という性質を使うと、

\(\overset{\frown}{AB}\)=\(\overset{\frown}{CD}\)

となることがわかるね。

円周角と弧の定理を使った問題

直径と円周角の定理

以前に円周角と中心角について学習したよね。ちょっと復習してみよう。

円周角の定理

1つの弧に対する円周角の大きさは、その弧の中心角の大きさの半分である。
∠APB=\(\frac{1}{2}\)∠AOB

円周角の定理のイラスト

例えば、∠AOBが60°だったら∠APBは30°になるってことだったよね。

円周角の定理の説明の図

では、もし中心角が180°だったら円周角は何度になるか考えよう。

直径と円周角の関係

同じ弧に対する中心角の半分が円周角になるから、
円周角は180°÷2=90°と求まるね。

直径と円周角の関係

ここで気づいてほしいんだけれど、中心角が180°になるときって、直径しかありえないよね。

中心角が180°になったら、円周角は90°になるから、次の関係が成り立つんだ。

直径と円周角の定理

線分ABを直径とする円の円周上に点Pを取ると、∠APB=90°になる

直径と円周角の関係

この関係を使って問題を解いてみよう。

直径と円周角の定理を使った練習問題

次の図で、線分ABが円Oの直径であるとき、xの角度を求めなさい。

直径と円周角の定理を使った練習問題

直径と円周角の関係を使うと、線分ABは直径だから中心角は180°になるよね。

このときの円周角∠Pは180°÷2=90°になるよね。

直径と円周角の定理を使った練習問題

△ABPに注目すると、内角の和が180°になるから、残ったxは50°とわかるね。

直径と円周角の定理の逆

直径と円周角の定理には逆が存在するんだ。

直径と円周角の定理の逆

∠APB=90°ならば、線分ABは円Oの直径になる

直径と円周角の定理の逆

この定理は円の中心を三角定規を使って求めるときに役立つよ。

次のような円があるとき「円の中心」を三角定規を使って求めなさい。

円の中心の求め方

コンパスを使って中心を求める方法は1年生の時に学習したよね。
3年生になると三角定規だけで円の中心を求めるようになるんだよ。

STEP1 三角定規の直角部分が円周に重なるように置いて、円周と交わる点を2つ取る

円の中心の求め方

STEP2 赤い点同士を結ぶ

結ぶと次のようになって、円周角が90°だから、赤線は直径ということがわかるよ。

つまり、円の中心は赤線の上にあるってことだね

円の中心の求め方

STEP3 さらに三角定規の直角部分が円周に重なるように置いて、円周と交わる点を2つ取る

円の中心の求め方

STEP4 青い点同士を結ぶ

結ぶと次のようになって、円周角が90°だから、青線は直径ってことがわかるよ。

つまり、円の中心は青線の上にあるってことだね。

円の中心の求め方

STEP5 赤線と青線が交わったところが中心

赤線も直径、青線も直径でどちらともの上に中心があるってことになるよ。

だから交わっているところが中心になるね。

円の中心の求め方

「円周角と弧の定理」「直径と円周角の定理」まとめ

  • 円周角と弧の定理

    ・1つの円で弧の長さが等しいとき、それに対する円周角も等しい
    ・円周角が等しいとき、それに対する弧の長さは等しい
  • 直径と円周角の定理

    ・線分ABを直径とする円の円周上に点Pを取ると、∠APB=90°になる
    ・∠APB=90°ならば、線分ABは円Oの直径である

運営者情報

青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。

感想や意見を聞かせてね

  1. もっちゃん より:

    また、教えてください。

    円周を全て適当な長さの円弧で分割した時、各円弧の中心角の総和は360度なのでその円周角の総和は180度となって、円周角は中心角の半分になるということとつじつまが合います。

    友達に聞かれてよくわからなくなったのですが、一つの円弧の中心角がどんどん大きくなって360度に近づくにつれ、円周角も限りなく180度に近づくのがわかります。
    でも、中心角が360度になってしまうと、円弧の両端と円周角の頂点は完全に一つの点になってしまう…円周角は出来ない??
    このことは0,999……=1になるという無限の考え方と同じで、179.999…..=180度にするんだろうなという話で終わっているのですが??

    • yumineko より:

      もっちゃんさんの疑問は、

      ・円周角と中心角の関係(円周角は中心角の半分)の基本
      ・中心角が360度に近づくにつれて、円周角はどうなるのか?
      ・中心角がちょうど360度になってしまったときの円周角の扱い
      ・「179.999… = 180度」という無限の考え方との関連

      という4つのポイントに整理できますね。一つずつ、分かりやすく説明していきます。

      円周角と中心角の関係について(基本)
      まず、もっちゃんさんの基本的な理解は正しいです。
      中心角: 円の中心を頂点とし、円周上の2点を通る2本の線分(半径)が作る角です。
      円周角: 円周上の1点を頂点とし、円周上の他の2点を通る2本の弦が作る角です。
      関係: 同じ円弧に対する円周角の大きさは、その円弧に対する中心角の大きさの半分になります。
      (中心角) = 2 × (円周角)

      もっちゃんさんがおっしゃるように、円周をいくつかの円弧に分割して、それぞれの中心角を足すと360度になるのはその通りです。そして、それぞれの円弧に対する円周角も、中心角の半分なので、それらを足し合わせると必ず180度になります。これは、円周角の定理の基本的な性質ですね。

      中心角が360度に近づくとき、円周角はどうなる?
      ここからが、もっちゃんさんの核心的な疑問ですね。
      円周をたくさんの小さな円弧に分割していくと、それぞれの中心角は小さくなります。
      しかし、逆に 「円弧がどんどん大きくなって、中心角が360度に近づく」 という状況を考えてみましょう。
      たとえば、円周を「2つの円弧」に分割するのではなく、「1つの円弧」だけを考えた場合を想像してみてください。
      中心角が、例えば270度になったとします。
      このとき、円周上の頂点A、B、Cがあるとします。中心O、弧ABに対する円周角は∠ACBです。
      中心角が360度に近づくということは、円弧が円周全体に近づいていく、ということです。
      もし、中心角が360度に近い角度(例えば359度)だったとしましょう。
      このとき、円周角の頂点(仮にCとします)は、中心角を作る2つの半径の「すぐ近く」にあります。
      中心角が360度に近いということは、円周角の頂点Cは、中心角を作る2つの半径の「始点」と「終点」がほぼ重なる、円周上の「ある一点」に非常に近づいている状態です。
      中心角が360度に近づくにつれて、円周角も中心角の半分なので、180度に近づきます。
      このときの円周角の頂点は、円周上のどこか一点に位置しますが、中心角が360度に近づくにつれて、その円周角の「両端」となる点(中心角を作る2つの半径が円周と交わる点)が、円周上の「一点」にどんどん近づいていくイメージです。

      中心角がちょうど360度になってしまったとき、円周角はできない?
      もっちゃんさんのご指摘は鋭いです。
      中心角がちょうど360度になるということは、円周上の2点(中心角の始点と終点)が、円周上の「同じ一点」に重なってしまう ということになります。
      この場合、円周角の定義を厳密に考えると、「円周上の2点を通る弦」 が必要ですが、2点が一点に重なってしまうと、弦は定義できなくなります。
      また、中心角が360度ということは、円周角の頂点も、中心角を作る2つの半径の「始点」と「終点」が重なる円周上の「一点」に位置することになります。
      そうなると、円周角の「頂点」と、円周角を作る「2つの弦の端」がすべて同じ点になってしまうため、「角」として意味をなさなくなります。

      数学では、このような「極限の状態」や「定義が曖昧になる場合」は、「定義されない」 とする場合があります。

      「179.999… = 180度」という無限の考え方との関連
      ここでもっちゃんさんが「179.999…..=180度にするんだろうな」とおっしゃったのは、まさにこの「極限」という考え方とつながります。
      数学では、ある値に限りなく近づくことを「極限」と言います。
      中心角が360度に「限りなく近づく」とき、円周角は180度に「限りなく近づきます」。
      この「限りなく近づく」という状態を考えると、数学的には180度とみなすことができるのです。
      ただし、中心角が 「ちょうど360度」 になった瞬間に、円周角の定義から外れてしまうため、「179.999…度」のように「限りなく180度に近づく」という状態とは少し異なります。

      「円周角はできない?」という疑問について、もう少し補足すると、
      中心角が360度になった場合、円周角の頂点が一点に集まってしまうため、私たちがイメージする「角」としては定義されなくなります。
      しかし、数学では、こうした「境界線」のような状態を考えるときに、「極限」という考え方を使って、その値に「限りなく近い」状態を考えることがあります。
      円周角の定理を考える上では、「中心角が360度未満の範囲」で考えていることがほとんどです。
      もし「中心角が360度」という状況をあえて考えるならば、それは「円周角」というよりは、線分が一点に重なった「退化(たいか)した状態」と考えることもできます。
      もっちゃんさんが友達との会話で「179.999…..=180度にするんだろうな」という結論になったのは、「中心角が360度に近づく」という現象から、円周角が180度に近づくことの「極限」としての意味合いにたどりついたという点で、非常に鋭い考えだと思います。

  2. もっちゃん より:

    ありがとうございます。
    先生の話をまとめると、次の理解で良いのでしょうか?

    極限の世界として1つの円弧の中心角が360度に限りなく近づく時、円周角は179.999… = 180度と考えることが出来るが、1つの円弧の中心角が360度となるときは、円周角は定義されない。

    • yumineko より:

      もっちゃんさん、ご自身の言葉でまとめくださりありがとうございます。
      中心角が360度に近づく場合と、ちょうど360度になった場合の区別を、明確に理解されているのがよく分かります。
      このまとめ方で良いと思います!

      • もっちゃん より:

        先生のこのサイトを知る事が出来てとてもよかった思ってます。これからもよろしくお願いいたします。

  3. もっちゃん より:

    このページを読みながらちょっと思い出したこと

    1、円周角と弧の定理
     練習問題において四角形ABCDは台形であり、また円周角と弧の定理の関係から円に内接する台形ABCDは必ず等脚台形になる。
    2、直径と円周角の定理
     円に内接する長方形の対角線はその円の直径になる。