ワクチンとは?免疫のしくみ・効果・副反応を中学生向けにわかりやすく解説
インフルエンザや新型コロナのニュースで、「ワクチン」という言葉を聞いたことがあるよね。
でも、「病気になる前に打つのはなぜ?」「ワクチンを打っても病気になる人がいるのはどうして?」と、不思議に思ったことはないかな。
そのなぞを解くカギが、わたしたちの体に備わっている免疫というしくみだよ。
たろう
くまごろうこの記事では、免疫とワクチンのしくみを学びながら、「効果がある」とはどういうことか、どんな情報を確かめればよいのかまで考えていくよ。
この記事でわかること
- 免疫が体を守るしくみ
- ワクチンを接種すると、体の中で何が起こるのか
- 「感染を防ぐ」「発症を防ぐ」「重症化を防ぐ」の違い
- ワクチンの効果と副反応
- SNSなどの情報を確かめるポイント
感染症そのものについて復習したい人は、「感染症の広がり方」を先に読んでみてね。
1.ワクチンとは?
ワクチンとは、体の免疫のしくみを利用して、特定の感染症に備えるための薬だよ。ワクチンを接種することを予防接種というんだ。
「接種」は、体にワクチンなどを取り入れること。注射するものもあれば、鼻の中に使うものもあるよ。
感染症は、ウイルスや細菌などの病原体が原因となる病気のこと。「病原体」は、文字どおり「病気の原因になるもの」という意味だよ。
ワクチンは、この病原体に対して、体が前もって準備できるようにするものなんだ。
ただし、ワクチンと、病気になってから使う治療薬は役割が違うよ。
| ワクチン | 治療薬 |
|---|---|
| 病気になる前などに、免疫が備えるのを助ける | 病気になったあとに、その病気を治すために使う |
| 感染症の発症や重症化などのリスクを減らすことを目指す | 病原体が増えるのをおさえたり、症状をやわらげたりする(薬によって違う) |
ワクチンは、感染してしまった病原体をその場で直接退治する治療薬ではないんだね。
2.免疫はどうやって体を守るの?
「免疫」という漢字を分けると、「免」は『まぬがれる』、「疫」は『流行する病気』という意味なんだ。病気から体を守るしくみだと考えると、覚えやすいね。
体の外側では、皮膚や、鼻・のどなどの粘膜が、病原体が入りにくくなるように守っているよ。
それでも病原体が入ってきたときには、白血球の仲間である免疫細胞などが働くんだ。免疫細胞は、体の中で異物を見つけたり、取り除くのを助けたりする細胞のことだよ。
免疫には、大きく分けて二つのしくみがあるんだ。

① 自然免疫――まず、すばやく反応する
自然免疫は、生まれつき備わっている防御のしくみだよ。
たとえば、病原体が入ってくると、マクロファージという免疫細胞などが反応するんだ。マクロファージには、病原体などを取り込む働きがあるよ。
「最初にかけつけて、体を守ろうとするチーム」と考えると、イメージしやすいね。ただし、実際にはさまざまな細胞が協力しているよ。
身近なたとえ:学校を守るしくみ
学校の入り口にある門や建物の壁は、外から勝手に入られないようにする役割があるよね。体でいえば、皮膚や粘膜がそれに近いんだ。そして、校内で何かおかしいことが起きたら、まずすばやく気づいて対応する人がいる。自然免疫は、その「最初に気づいて動く係」のようなイメージだよ。もちろん、実際の免疫は学校の人間のように考えて動くわけではないんだ。
② 獲得免疫――相手に合わせて反応する
「獲得」は「手に入れる」という意味。獲得免疫は、特定の病原体などの特徴を見分けて対応するしくみだよ。
ここでは、B細胞とT細胞という免疫細胞が大切な役割をもっているんだ。
- B細胞:刺激を受けると、抗体というものをつくる細胞に変化する。
- T細胞:ウイルスなどに感染した細胞を攻撃したり、ほかの免疫細胞を助けたりする。
「抗原」と「抗体」はどう違うの?

名前が似ているけれど、役割は違うよ。
- 抗原:免疫が見分ける「目印」になるもの。たとえば、ウイルスの表面にあるタンパク質など。
- 抗体:その目印に合う形で結びつき、病原体への防御を助けるタンパク質。
「抗」という漢字には「相手に立ち向かう」という意味があるよ。「抗体」は、病原体に対抗する働きを助けるもの、と覚えよう。
抗体を「目印に合う形の道具」にたとえると、イメージしやすいね。ただし、免疫は抗体だけで働くわけではなく、いろいろな細胞が力を合わせているんだよ。
身近なたとえ:パズルのピース
パズルでは、形が合うピースを見つけるよね。抗体も、決まった抗原の形に合うように結びつくんだ。「抗原が目印、抗体がそれを見つけて結びつくもの」と考えると整理しやすいよ。ただし、すべての抗体がどんな抗原にも合うわけではないし、体を守るしくみはパズルよりずっと複雑なんだ。
免疫が「覚える」って本当?
獲得免疫には、免疫記憶という性質があるんだ。
一度ある抗原に反応すると、記憶細胞と呼ばれる細胞が残ることがあるよ。そのおかげで、あとから同じ抗原に出会ったとき、すばやく反応しやすくなるんだ。
もちろん、細胞が人間のように頭で考えて「覚える」わけではないよ。次に同じ目印に出会ったときに反応しやすい状態が、体に残るということなんだ。
身近なたとえ:ゲームのボス戦
初めて出会うゲームのボスは、どんな攻撃をしてくるか分からなくて、対応が難しいことがあるよね。でも、攻撃の特徴を知っていると、次に戦うときに対応しやすくなる。免疫記憶も「同じ目印にもう一度出会ったとき、反応しやすくなる」という点が似ているよ。ただし、病原体の特徴が変われば、以前の免疫記憶だけでは十分に対応できないこともあるんだ。
たろう
くまごろう3.ワクチンを接種すると、体の中で何が起こるの?
免疫のしくみが分かったところで、ワクチンの働きを見てみよう。

ステップ① 病原体の「目印」を知らせる
ワクチンには、病原体の一部を使うもの、病原体の働きを弱めて使うもの、体の中で抗原をつくるための情報を使うものなど、いくつかの種類があるよ。
つくり方は違っても、体の免疫に病原体の特徴を知らせ、その病原体に備える手助けをするという目的は共通しているんだ。
ステップ② 免疫細胞が反応する
抗原が認識されると、さまざまな免疫細胞が働くよ。抗体がつくられたり、T細胞が反応したりするんだ。
ステップ③ 次に備える「免疫記憶」が残る
免疫反応のあと、記憶細胞が残ることがあるよ。そうすると、あとから同じ病原体に出会ったときに、免疫がすばやく働きやすくなるんだ。
ただし、ワクチンの種類や人によって、免疫がどのくらい強く、どのくらい長く働くかは違うよ。
身近なたとえ:学校の避難訓練
学校では、地震や火事が起きる前に、避難訓練をするよね。本当の災害が起こる前に、どう対応するかを練習しておくためだよ。ワクチンも、実際の感染症にかかる前に免疫が備えられるようにする、という点では似ているんだ。ただし、ワクチンの種類によってしくみは違うし、避難訓練で災害そのものを止められないのと同じように、接種しても感染を必ず防げるわけではないよ。
4.ワクチンを打っても病気になることがあるのはなぜ?
「予防接種を受けたのにインフルエンザになった」という話を聞くと、「ワクチンは意味がなかったの?」と思うかもしれないね。
でも、「ワクチンが効く」という言葉には、いくつかの意味があるんだ。
| 言葉 | どんな意味? |
|---|---|
| 感染予防 | 病原体が体の中で増えるなどして、感染が起こるのを防ぐこと |
| 発症予防 | 感染しても、熱やせきなどの症状が出て病気になるのを防ぐこと |
| 重症化予防 | 病気になっても、入院が必要になるなど重い状態になるのを防ぐこと |

「発症」は「病気の症状が出ること」。「重症化」は「病気が重くなること」という意味だよ。
身近なたとえ:ゲームの防具
ゲームで防具を身につけても、敵に絶対に出会わなくなるわけではないよね。でも、攻撃を受けたときのダメージが小さくなることはある。ワクチンの「重症化のリスクを減らす」という働きは、このイメージが少し近いよ。ただし、現実の感染症では「感染する」「症状が出る」「重い症状になる」は別々のこと。ワクチンによって、それぞれへの効果は違うんだ。
たろう
くまごろうインフルエンザと新型コロナでは違うの?

どちらもウイルスが原因の感染症だけれど、原因となるウイルスは別の種類だよ。
| インフルエンザ | 新型コロナウイルス感染症 | |
|---|---|---|
| 原因 | インフルエンザウイルス | 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2) |
| ワクチンに期待されること | 発症や重症化のリスクを減らす | 重症化などのリスクを減らす |
| 覚えておきたいこと | 流行するウイルスの型が変わることがある | ウイルスの変化や時間の経過で、効果が変わることがある |
そのため、どちらのワクチンも「接種したら必ず感染しない」というものではないよ。使用されるワクチンや接種の対象年齢なども同じとは限らないため、最新の情報を確認することが大切なんだ。
5.ワクチンの「副反応」って何?
ワクチンを接種したあと、注射したところが痛くなったり、熱が出たりすることがあるよね。
このように、ワクチンの本来の目的である免疫をつけること以外に起こる体の反応を、副反応というよ。
「副」は「主なものに付け加わる」という意味。「副反応」は、目的としている働きのほかに起こる反応、ということなんだ。
ワクチンの種類によっては、たとえば次のような症状が出ることがあるよ。
- 注射したところの痛み、赤み、はれ
- 発熱、頭痛、体のだるさ
- 筋肉や関節の痛み
多くは数日程度でおさまるけれど、症状や起こる割合はワクチンによって違うんだ。
また、まれに、すぐに治療が必要な強いアレルギー反応が起こる場合もあるよ。一部の新型コロナワクチンでは、心臓の筋肉やその周りの膜に炎症が起こる心筋炎・心膜炎も注意が必要な症状として示されているんだ。
「接種したあとに起きた」=「ワクチンが原因」なの?
たとえば、接種した翌日に頭が痛くなったとしても、原因はワクチンとは限らないよ。かぜや睡眠不足など、別の原因が重なっていることもあるんだ。
身近なたとえ:出来事の順番と原因
たとえば、学校のテストが終わったあとに雨が降っても、テストが雨を降らせたわけではないよね。「ある出来事のあとに起きたこと」と「その出来事が原因で起きたこと」は、区別して考える必要があるんだ。接種後の症状も同じで、原因を調べることが大切だよ。
反対に、接種との関係が疑われる症状を、最初から「関係ない」と決めつけてもいけないね。
日本には、接種後に起きた症状を集め、専門家が調べるしくみがあるよ。原因がまだはっきりしていない段階でも、必要な症状は「副反応の疑い」として報告されるんだ。
大切なのは、効果も注意点も、分かっていることを正しく確かめることだよ。
6.「効果が90%」って、どういう意味?
ニュースなどで「ワクチンの効果は90%」という数字を見たら、何を表しているのか考えてみよう。
ここからの数字は、計算の練習のために考えた架空の例だよ。実際のワクチンの結果ではないので注意してね。
同じような条件の人を、1,000人ずつ二つのグループに分けて比べたとするよ。
| グループ | 発症した人 | 発症した割合 |
|---|---|---|
| 接種していない1,000人 | 100人 | 10% |
| 接種した1,000人 | 10人 | 1% |

この例では、発症した割合が10%から1%に減っているよね。
接種していない人の「10%」を基準にすると、発症するリスクが90%少なくなったと計算できるよ。
計算は、(10%-1%)÷10%×100=90% だよ。
たろう
くまごろう数字を見るときは、何を比べたのか、どんな人を調べたのかも確認しよう。
7.ワクチンの情報は、どうやって確かめればいい?

SNSなどでは、「ワクチンは絶対に感染を防ぐ」「ワクチンは全部危険」といった、強い言い方の投稿を見かけることがあるかもしれないね。
そんなときは、すぐに信じたり否定したりする前に、次の5つを確かめてみよう。
- だれが発信している? 国の機関、研究機関、医療機関などの資料はあるかな。
- いつの情報? 古い情報ではないかな。
- 何を調べたの? 感染、発症、重症化のどの話かな。
- 数字の意味は? 何人を、どんな条件で比べたのかな。
- 効果と注意点の両方が書かれている? 一つの面だけを強調していないかな。
身近なたとえ:クラスのうわさ話
「明日の授業が全部なくなるらしいよ!」と友達から聞いたら、学校からのお知らせや先生の連絡を確かめたくなるよね。ワクチンについての情報も同じで、SNSの投稿だけで判断せず、元の資料を調べよう。さらに「いつ発表された情報か」「何を調べた結果か」まで確かめられるといいね。
たとえば「接種した人の中にも病気になった人がいる」という情報だけでは、ワクチンの効果がないとは判断できないよ。接種していない人たちと比べて、どのくらい差があったのかが大切だからね。
「分かっていること」と「まだ分からないこと」を分けて考えるのが、科学的な情報の読み方なんだ。
実際に接種するかどうかを考えるときは、年齢や健康状態、ワクチンの種類、最新の情報なども関係するよ。必要に応じて、保護者や医師と相談しよう。
8.ワクチンと免疫のまとめ
- 免疫は、病原体などから体を守るしくみ。
- 自然免疫はすばやく反応し、獲得免疫は特定の病原体などに合わせて反応する。
- 抗原は免疫が見分ける目印、抗体はその目印に結びつくもの。
- 免疫記憶は、次に同じ抗原に出会ったときの反応を助ける。
- ワクチンは免疫のしくみを利用して、感染症の発症や重症化などのリスクを減らすためのもの。
- 副反応には軽いものも、まれに重いものもある。
- 情報を読むときは、「何を、だれが、いつ、どのように調べたか」を確かめよう。
難しそうに見える免疫のしくみも、一つずつ整理すると、少しずつ分かってきたね。
次は、免疫細胞の動きを実際に操作できる教材や、情報の読み取り問題にも挑戦してみよう!
もっと基本的な感染予防を復習したい人は、「感染症の予防」も読んでみてね。
参考資料
運営者情報
檜垣由美子
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