「大造じいさんとガン」あらすじと意味調べ・伝えたいことは?

小学校5年生の国語で学習する椋鳩十さんの作品「大造じいさんとガン」について、あらすじと、おはなしの内容、ポイントをわかりやすく解説するよ。

作者が伝えたかったことはなにか、出てくる言葉の意味調べ、新しい漢字もくわしく紹介しているよ。

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「大造じいさんとガン」 あらすじと意味調べ・伝えたいことは?

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目次

「大造じいさんとガン」あらすじ

「大造じいさんとガン」のあらすじ・作者・登場人物を確認しよう。

作者について

「大造じいさんとガン」は、椋 鳩十(むく はとじゅう)さんが 書いたお話だよ。椋 鳩十さんは、動物を愛していて「片耳の大シカ」「マヤの一生」などの 動物が登場するお話を たくさん書いているよ。

登場人物

  • 【大造じいさん】
    七十二さいの 元気な老かりゅうど。
    三十五、六年前に、残雪やその仲間のガンを つかまえるために、三つの計略をしかけたよ。
    残雪のことを いまいましいと思っていたけれど、残雪の堂々とした態度にふれて、ガンの英雄とみとめたよ。
  • 【残雪】
    りこうなガンの頭領で、りょうじゅうのとどく所まで、人間を寄せつけなかったよ。
    大造じいさんのおとりのガンが ハヤブサにおそわれると、仲間を助けるために ハヤブサに立ち向かったよ。

あらすじ

大造じいさんとガン
作:椋 鳩十 絵:水上 みのり

残雪という、りこうなガンの頭領がいました。
残雪は ガンの群れの近くに 人間を寄せつけないので、大造じいさんは いまいましく思っていました。

ガンを手に入れたい大造じいさんは ある年、タニシを付けたウナギつりばりを 地面に打ち込んだ くいに結びつける「つりばりの計略」を 実行しました。
その結果、一羽のガンを 手に入れることができましたが、翌日は 残雪に見破られてしまいました。

よく年は、夏のうちから タニシを集め、数日続けて タニシをばらまいておく「タニシの計略」を 実行しました。
大造じいさんが タニシをばらまいた場所は、ガンの群れの お気に入りの場所になったので、大造じいさんは 小屋を作り、じゅうでうとうと ガンの群れを待ちました。
ところが、小屋に気づいた残雪は 別の場所に 着陸してしまいました。

その翌年、大造じいさんは「つりばりの計略」で手に入れ、飼いならしたガンを おとりに使って ガンをとらえる「おとりの計略」を 実行しました。
大造じいさんが、ガンの群れを おびきよせるために おとりのガンを よぼうとした時、ハヤブサが ガンの群れをおそいました。
残雪の指導のおかげで、ガンの群れは にげましたが、おとりのガンは にげおくれました。

すると、残雪が にげおくれたガンを助けるために、ハヤブサに 立ち向かいました。
大造じいさんは、残雪を うとうとしましたが、じゅうを おろしました。
残雪とハヤブサは、はげしく戦いましたが、大造じいさんが かけつけると、ハヤブサは にげていきました。
残雪は きずを負い、ぐったりしていましたが、大造じいさんを見ると、力をふりしぼって、大造じいさんを 正面からにらみつけました。
大造じいさんが手をのばしても、じたばたさわぎませんでした。
その様子は 最期の時を感じて、頭領としてのいげんをきずつけまいと努力しているようで、大造じいさんは 強く心を打たれました。

大造じいさんのかん病のおかげで 元気になった残雪は、ある晴れた春の朝、北へと飛び立ちました。
大造じいさんは、「おうい、ガンの英雄よ。」「おれたちは、また堂々と戦おうじゃあないか。」とよびかけながら、残雪が飛び去る様子を 見守り続けました。

「大造じいさんとガン」内容とポイント

「大造じいさんとガン」の場面分けごとに、内容とポイントを 確認しよう。

登場人物の セリフや行動から「登場人物が どんな気持ちだったか」を 考えてみよう。
登場人物の関係の変化にも 注目してみよう。

まえがき

「大造じいさんとガン」は わたし(語り手)が 大造じいさんから聞いた ガンがりの話を 土台にして書いた 物語だね。

大造じいさんが どんな人かというと、「七十二さい」で「こしひとつ曲がっていない、元気な老かりゅうど」で「なかなか話上手の人」だね。

ガンがりの話は 今から三十五、六年前の話なんだね。
つまり 大造じいさんが 三十七、八さいのころのお話だね。

第一の場面 つりばりの計略

【時間】今年・秋
【場所】ぬま地
【内容】大造じいさんが「つりばりの計略」を実行したところ、一羽だけガンをつかまえることができたよ。もっとつかまえようとしたけれど、残雪に見破られて 翌日は 一羽もガンをつかまえることが できなかったよ。

残雪の しょうかい

残雪とは、かりゅうどたちがつけた ガンの名前だね。
名前の由来は「左右のつばさに 一か所ずつ 真っ白な交じり毛を もっていた」ことだね。

残雪が ぬま地に来るようになってから、大造じいさんは 一羽のガンも 手に入れることが できなくなったね。
なぜかというと、残雪は「ガンの頭領」で「なかなかりこうなやつ」だからだね。

どのくらいりこうかというと 「仲間がえをあさっている間も、油断なく気を配っていて、りょうじゅうのとどく所まで、決して人間を寄せつけなかった」くらいだね。
つまり 残雪は ガンのリーダーとして、仲間が きけんな目にあわないよう、どんな時も周りを見ながら かしこい判断をし、仲間に指示を出したり、仲間をまとめたり していたんだね。

大造じいさんは、残雪のことを いまいましく思っていたね。
きっと「残雪さえいなければ ガン狩りが成功するのに…。」「残雪なんてじゃまだ!」という気持ちだったんじゃないかな。

そこで、大造じいさんは ガンをつかまえるための計略(作戦)を考えて、実行したよ。

つりばりの計略とは

大造じいさんは「今年こそはと、かねて考えておいた特別な方法」を実行したよ。
それは「つりばりの計略」だね。

【使う物】タニシ、ウナギつりばり、くい、たたみ糸
【準備期間】一ばん
【内容】いつも ガンが えをあさる辺り一面に くいを打ちこんで、タニシを付けた ウナギつりばりを、たたみ糸で結びつける。

ここからは、つりばりの計略はどんな準備をしたのか、計略を実行した結果どうなったのかをくわしく確認していこう。

つりばりの計略(準備)

つりばりの計略は、タニシをウナギつりばりにつけ、そのつりばりをたたみ糸で くいにつなぐというしかけだね。
つまり ガンが タニシを食べると、ウナギつりばりが のどにささり、さらには つりばり自体がくいに つながっているから にげようとしても にげることができない という仕組みじゃないかな。

くまごろうくまごろう

タニシとは、巻貝のことで、田んぼや沼や池などに すんでいるよ。この物語に登場する ガンたちの 好きな食べ物は、タニシみたいだね。

大造じいさんは、一晩中かかって たくさんのウナギつりばりを しかけたね。
ガンの群れは 朝に来るから、夜のうちに しかけをすませたんだね。
ねる時間をけずって 準備するなんて、気合が入っていることが わかるね。

大造じいさんは、うまくいきそうな気がしたね。
「かねてから考えておいた特別な方法」だったから、自信があったんじゃないかな。

翌日の昼近く、大造じいさんは むねをわくわくさせながら、ぬま地に行ったね。
きっと「今年こそは、ガンが取れるぞ。」「つりばりに ガンが かかっているはずだ。」と 楽しみだったんじゃないかな。

つりばりのしかけの辺りに、何かバタバタするものが 見えると、大造じいさんは「しめだぞ。」とつぶやき、夢中で かけつけたね。
大造じいさんのセリフや行動から、「ガンがかかっているに ちがいない!」と喜んでいる様子が 伝わるね。

大造じいさんは「ほほう、これはすばらしい。」と子どものように 声を上げて喜んだね。
なぜかというと、生きているガンが 一羽手に入ったからだね。
計略がうまくいって、うれしい気持ちが すなおに出たんだね。

「何かバタバタするもの」は 大造じいさんが期待したとおりの「ガン」だったね。

でも、つりばりにかかっていたのは 一羽だけで 付近にガンの群れは いなかったね。
なぜかというと、「これに危険きけんを感じてえさ場を変えたらしい」からだね。

「これ」とは、つりばりにかかった一羽のガンが、さかんにばたついたことだね。
つりばりにかかったガンは にげようと ていこうして、あばれたんだね。

きっと その様子を見た残雪が「このあたりのタニシには、しかけがかけられているようだ。きけんだから 場所を変えよう。」と 仲間に 提案したんじゃないかな。

大造じいさんは 一晩たてば、またわすれてやって来るにちがいない と考えたね。
なぜかというと、たかが鳥のことだ と思ったからだね。
「たかが鳥」という言い方は、鳥のことをバカにして 下に見ているよね。

そこで 大造じいさんは 昨日よりも もっとたくさんのつりばりを ばらまいたよ。
「もっとつかまえてやるぞ!」という 気持ちを感じるね。

つりばりの計略(結果)

翌日、昨日と同じ時刻じこくに、大造じいさんは ぬま地に行ったね。
「昨日と同じ時刻」は、昼近くのことだね。

「秋の日が 美しくかがやいていました」という情景から、大造じいさんの心の中も キラキラとかがやくように 楽しみにしている感じがするよね。

でも、大造じいさんは「はてな。」と 首をかしげたね。
なぜかというと、ガンが えをあさった形跡けいせきがあるのに、一羽もはりに かかっていなかったからだね。

なぜかというと、残雪が 仲間を指導したからだね。
どんな指導をしたかというと「まず、えをくちばしの先にくわえて、ぐうと引っ張ってから、いじょうなしとみとめると、初めて飲み込む」ように ということだね。
「いじょうなし」とは「タニシに しかけ(ウナギつりばり)がついていない」ということだね。

大造じいさんは、思わず 感たんの声をもらしたね。
「しかけにかからずに、えを食べるよう指導するなんて 残雪はなんてりこうなんだ。」「想像していたよりも 残雪はすごいな。」と思ったんじゃないかな。

第ニの場面 タニシの計略

【時間】その翌年(第一の場面の 翌年の秋)
【場所】ぬま地
【内容】大造じいさんは「タニシの計略」を実行したよ。けれど、残雪に見破られて ガンをつかまえることができなかったよ。

タニシの計略とは

翌年、大造じいさんは 新たな計略を 実行したよ。

【使う物】五ひょうのタニシ
【準備期間】夏のうちから
【内容】タニシを五ばかり集め、四、五日続けて、ガンの好みそうな場所にばらまく。ガンがその場所を気に入り、毎日来るようになったら、じゅうでうつ。

ここからは、タニシの計略はどんな準備をしたのか、計略を実行した結果どうなったのかをくわしく確認していこう。

タニシの計略(準備)

大造じいさんは、夏のうちから心がけて、タニシを五俵ばかり集めたね。

くまごろうくまごろう

五俵とは お米だとしたら 約300kgだよ。たくさんのタニシを用意したんだね。

五俵も タニシを集めるなんて 大変な作業だよね。
それに「夏のうちから」用意をしておくなんて、どうしてもガンを手に入れたい という大造じいさんの気持ちが ひしひしと伝わってくるね。

なぜ 五俵のタニシを集めたかと言うと、ガンの好みそうな場所に ばらまくためだね。
つまり、ガンたちに「ここは えさがたくさんあるいい場所だな。」と思わせるために タニシをたくさんまき、一か所に おびきよせようとしたんだね。

大造じいさんは 四、五日続けて、同じ場所に、うんとこさとタニシをまいたよ。

「つりばりの計略」は 一晩中かかったけれど、「タニシの計略」は 夏のうちから準備し、四、五日続けてタニシをまいたね。
「タニシの計略」の方が より気合が入っているね。

ガンたちは、思わぬごちそうが四、五日も続いたから、そこがいちばん気に入りの場所となったね。
「そこ」とは、大造じいさんが タニシをまいた場所だね。

大造じいさんは、会心のえみをもらしたね。
なぜかというと、自分の思ったとおりに ガンが集まってくれるようになったから、大満足だったんじゃないかな。

そこで、大造じいさんは 夜の間に えさ場より 少しはなれた所に 小さな小屋を作ったね。
そして 小屋の中で ガンの群れを 待ったね。

くまごろうくまごろう

大造じいさんは、ガンの群れをじゅうでうつために、小屋を作って 様子を見ていたんだね。

タニシの計略(結果)

あかつきの光が、小屋の中に すがすがしく流れ込んできたね。
「あかつき」とあるから、翌朝になったということだね。

朝日が すがすがしく流れ込む様子は、さわやかで 明るい感じがするよね。
まるで「きっとうまくいくぞ。がんばろう!」と、楽しみにしている 大造じいさんの心の中 を表しているようだね。

ガンの群れが やって来るのを見つけると、大造じいさんは「しめだぞ。もう少しのしんぼうだ。」などと言い、ほおがびりびりするほど 引きしまったね。
大造じいさんのセリフや行動から、「早くうちたい!」という気持ちや、「今年こそは しとめるぞ!」という 真けんな気持ちが感じられるね。

ところが、残雪は ぐっと、急角度に方向を変えると、その広いぬま地の ずっと西側のはしに 着陸したね。
つまり、大造じいさんのいる場所とはちがう方向の、遠いところに行ったんだね。

なぜかというと、昨日までなかった 小さな小屋に気づき、本能で「様子の変わった所には、近づかぬがよいぞ。」と 感じ取ったからだね。

くまごろうくまごろう

「タニシの計略」も残雪にあやしまれて、失敗したんだね。

大造じいさんは、広いぬま地の向こうを じっと見つめたまま、「ううん。」と うなってしまったね。
きっと「また残雪に負けた…」「あと少しだったのに…」と ショックだったんじゃないかな。

「つりばりの計略」では、残雪に感心していたけれど、「タニシの計略」は くやしそうだね。
二回目の計略だったし、もう少しで うてそうだったから、なおさら くやしかったのかもしれないね。

第三の場面 おとりの計略

【時間】例のぬま地にガンの来る季節(第二の場面の 翌年の秋)
【場所】ぬま地
【内容】大造じいさんが 飼いならしたガンをおとりにする 「おとりの計略」を 実行したけれど、とちゅうで ハヤブサが ガンの群れをおそったよ。
にげおくれた おとりのガンを助けるために、残雪は ハヤブサと戦ったよ。

おとりの計略とは

タニシの計略の翌年、大造じいさんは、新たな計略を実行したよ。

【使う物】「つりばりの計略」で手に入れた一羽のガン
【準備期間】二年前から
【内容】「つりばりの計略」で手に入れたガンを、おとりとして使うために 飼いならしておく。おとりのガンをぬま地に放ち、大造じいさんが おとりのガンを呼ぶための口笛をふく。ガンは、習性からおとりのガンの後に続くだろうから、ガンの群れが近づいてきたところをうつ。

ここからは、おとりの計略はどんな準備をしたのか、計略を実行した結果どうなったのかをくわしく確認していこう。

おとりの計略(準備)

大造じいさんは、鳥小屋に 一羽のガンを飼っていたよ。
このガンは 二年前に「つりばりの計略」で 生けどったガンだね。

大造じいさんは、手に入れたガンを売らずに、飼いならしていたんだね。
なぜかというと、ガンは いちばん最初に飛び立ったものの 後について飛ぶ習性がある と知っていたから、ガンを手に入れたときから、このガンをおとりに使って、残雪の仲間をとらえてやろう と考えていたからだね。

二年前から準備していたなんて、「つりばりの計略」「タニシの計略」の時よりも、さらに気合が入っているよね。

ガンは 大造じいさんに なついていたね。
どのくらいなついていたかというと、口笛をふけば、どこにいても じいさんのところに帰ってきて、そのかた先に止まるほどだね。

この年のガンたちは、昨年じいさんが 小屋がけした所から、たまのとどくきょりの三倍も はなれている地点を えさ場にしていたね。
なぜかというと、夏の出水で 大きな水たまりができて、えが十分にあるらしかった からだね。
それに 残雪が昨年あやしかった場所を 一年たっても覚えていて、用心している感じがするね。

大造じいさんは「うまくいくぞ。」と、青くすんだ空を見上げて、にっこりしたね。
「青くすんだ空」は、モヤモヤした気持ちや迷いがない、自信たっぷりの大造じいさんの心の中を 表しているようだね。

おとりの計略(結果)

大造じいさんは、「さあ、いよいよ戦とう開始だ。」と言ったね。
東の空が 真っ赤に燃えて、朝が来たね。

「真っ赤に燃えて」は、朝日のことだね。
「東の空が真っ赤に燃えて」という情景は、「今度こそガンをうつぞ!」とメラメラとやる気に燃えている 大造じいさんの心の中と重なるね。

ガンの群れが えさ場にやってくると、大造じいさんのむねは、わくわくしたね。
きっと「ついにガンをつかまえられる!」と、興奮こうふんしていたんだね。

大造じいさんは、しばらく目をつぶって、心の落ち着くのを待ったね。
興奮していると 集中できないから、冷静になろうとしたんだね。

それから、じゅうしんを ぎゅっとにぎりしめたね。
心が落ち着いて、ぐっと集中していることがわかるね。

そして、目を開き、「さあ、今日こそ、あの残雪めにひとあわふかせてやるぞ。」と言ったね。
大造じいさんの 強い決意を感じるね。

ところが、大造じいさんが おとりを呼ぶために 口笛をふこうとしたとき、ものすごい羽音とともに、ガンの群れが 一度にバタバタと飛び立ったね。
なぜかというと、ハヤブサが ガンの群れをおそってきたからだね。

「ガンの群れを目がけて、白い雲の辺りから、何か一直線に落ちてきた」という様子から、ハヤブサが ものすごいスピードで、ガンの群れめがけて つっこんできたことが わかるね。

くまごろうくまごろう

ハヤブサは肉食で、鳥を食べるんだ。ガンにとって ハヤブサは 勝ち目はないといってもいいくらい、おそろしいてきだよ。

ガンの群れは、残雪に導かれて、実にすばやい動作で、飛び去ったね。
かしこい残雪のおかげで、ガンたちは にげることができたんだね。

けれど、大造じいさんの おとりのガンだけが 飛びおくれたね。
なぜかというと、長い間飼いならされていたので、野鳥としての本能が にぶっていたからだね。

ハヤブサは その一羽を見のがさなかったね。
「その一羽」は 大造じいさんのおとりのガンだね。

大造じいさんが 口笛をふくと、こんな命がけの場合でも、ガンはこっちに方向を変えたね。
「こんな命がけの場合」は、ハヤブサに おそわれていることだね。
「こっち」は大造じいさんの方向だね。

けれども、ハヤブサは その道をさえぎって、バーンと一けりけったね。
「その道」とは、おとりのガンが 大造じいさんのところへ 向かおうとする道のことだね。

さらにハヤブサが おとりのガンをこうげきしようとしたとき、さっと大きなかげが空を 横ぎったね。
「大きなかげ」は なんと残雪だったね。
残雪は おとりのガンを助けに来てくれたんだね。

大造じいさんは、ぐっと じゅうをかたに当てて、残雪をねらったね。
残雪が近くに来たから、「うつチャンスだ!」と思ったんだね。

けれど、なんと思ったか、再びじゅうを下ろしたね。

なぜじゅうをおろしたのかは、書いていなけれど、「残雪が 命がけでてきと戦っているところを 横からうっていいのか」「こんなひきょうな勝ち方をしていいのか」などと、かりゅうどとしてのプライドが ゆらいだからじゃないかな。
残雪が 仲間を助けるために ハヤブサに立ち向かう様子を見て、大造じいさんは「今うっていいのか」と考え直したのかもしれないね。

くまごろうくまごろう

ここからは、残雪とハヤブサの戦いが続くよ。

残雪の目には、人間もハヤブサもなく、救わなければならない仲間のすがたがあるだけだったね。
つまり、残雪にとって 人間もハヤブサもてきなのに、人間やハヤブサを おそれる気持ちはなくて、仲間のガンを救いたい という気持ちだけで助けに来たんだね。

残雪は 仲間思いで、とても勇気があるね。
命がけで仲間のために 行動してくれる、すばらしいリーダーだね。

「いきなり、てきにぶつかっていった」「大きな羽で、力いっぱい相手をなぐりつけた」という残雪の行動からも、「仲間を助けるんだ!」という 強い気持ちが伝わってくるね。

ハヤブサは 空中で ふらふらとよろめいたけれど、残雪のむな元に飛びこんだよ。
ハヤブサは強いから 残雪にこうげきされても すぐに反げきしたんだね。
「ぱっ」「ぱっ」と残雪の羽が 飛び散る様子から、ハヤブサのこうげきの強さが伝わってくるね。

ハヤブサと残雪が、ぬま地へ落ちていくと、大造じいさんはかけつけたよ。
きっと「ハヤブサと残雪の戦いは どうなったのだろう?」「残雪は大じょう夫か?」と心配だったんじゃないかな。

二羽の鳥は、地上ではげしく戦っていたけれど、ハヤブサは 大造じいさんを見ると、飛び去っていったね。

残雪は むねの辺りを くれないにそめて、ぐったりとしていたね。
「くれないにそめて」とは、血が出ていて、血の色で むねが赤くなっているということだね。

残雪は ハヤブサに こうげきされて、深いきずを負ったんだね。
むねが血でそまるなんて、命にかかわる きずかもしれないね。

けれど、第二のおそろしいてきが 近づいてきたのを感じると、残りの力をふりしぼって、首を持ち上げたね。
「第二のおそろしいてき」は 大造じいさんだね。

そして 残雪は 大造じいさんを 正面からにらみつけたね。
それは いかにも頭領らしい、堂々たる態度だったね。

つまり残雪は、けがをして 飛ぶ力もなく にげることもできない状きょうで、自分を殺そうとするてきが やってきても、あわてたり、あきらめたりすることなく、堂々とまっすぐに てきと向き合ったんだね。

大造じいさんが、手をのばしても、残雪は もうじたばたさわがなかったね。
それは、最期の時を感じて、せめて頭領としての いげんをきずつけまいと 努力しているようだったね。

きっと残雪は「死ぬ時まで堂々としていよう。りっぱな頭領として死のう。」という強い気持ちを 持っていたんじゃないかな。

大造じいさんは、強く心を打たれて、ただの鳥に対しているような気が しなかったね。
「ただの鳥に対しているような気がしない」とは、残雪のことを自分と同じか、それ以上のすばらしいそん在だと 思ったんじゃないかな。

なぜかというと、残雪の最期まで 堂々としている態度にふれて、感動したからだね。
「なんてりっぱで かっこいい鳥なんだ。」「残雪にはかなわない。」という 気持ちだったんじゃないかな。

第四の場面 残雪を見送る

【時間】ある晴れた春の朝
【内容】大造じいさんは 残雪が 北へ飛び立つ様子を 見送ったよ。

残雪は 大造じいさんのおりの中で、一冬をこし、春になると、むねのきずも体力も回復したね。
大造じいさんは 残雪のお世話やきずの手当てを していたんだね。

ある晴れた春の朝、大造じいさんは おりのふたを いっぱいに開けたね。
「残雪、元気でいってこい!」と 送り出している感じがするね。

「晴れた春の朝」という情景は、大造じいさんの晴れやかな気持ちや、大造じいさんと残雪の新しい関係のはじまりを 表しているのかもしれないね。

くまごろうくまごろう

第一の場面「秋」→第二の場面「その翌年の秋」→第三の場面「その翌年の秋」→第四の場面「その次の春」という時間の流れから、「大造じいさんとガン」は、約二年半にわたるお話 であることがわかるね。

 

残雪は、快い羽音一番、一直線に空へ飛び上がったね。
「バシッ」という羽音や「一直線」という言葉から、残雪が迷うことなく、力強く進んでいった様子が 想像できるね。

「らんまんとさいたコスモスの花が、その羽にふれて、雪のように清らかに、はらはらと散りました」という文章から、花がたくさん咲いている 明るくて心地がいい、美しい情景が思いうかぶね。
残雪の回復や出発を 喜んでいるかのような情景だね。

大造じいさんは、大きな声で
「おうい、ガンの英雄よ。おまえみたいなえらぶつを、おれは、ひきょうなやり方でやっつけたかあないぞ。なあ、おい。今年の冬も、仲間を連れてぬま地にやって来いよ。そうして、おれたちは、また堂々と戦おうじゃあないか。」と残雪によびかけたよ。

大造じいさんは 残雪のことを、第一の場面では「いまいましい」、第二の場面では「たかが鳥」「あの残雪め」、第三の場面でも「あの残雪め」と言っていて、よく思っていなかったよね。
けれど、第四の場面では「ガンの英雄」や「えらぶつ」とよんで、残雪のことを りっぱなそん在とみとめ、そんけいしているよね。

第三の場面で「自分の命よりも 仲間を大切にする勇気やリーダーシップがあるところ」や「死にそうな状況でも、堂々としているところ」をまのあたりにして、大造じいさんの残雪に対する見方や気持ちが、大きく変わったんだね。

それから 「ひきょうなやり方」とは、仲間のためにハヤブサと戦っている残雪を 横から うとうとしたこと じゃないかな。
きっと大造じいさんは、堂々とした残雪と自分の行動を比べ、「ひきょうなやり方をした自分がはずかしいな…」と思ったんじゃないかな。
残雪のように りっぱでありたいという気持ちに なったのかもしれないね。

「また堂々と戦おうじゃないか」ということは、これまでの「ガンをとにかく手に入れたい」という気持ちが、「残雪と正々堂々と戦いたい」という気持ちに 変わったんだね。
残雪のことを 対等に戦う相手として 大事に思っているよね。
つまり、大造じいさんにとって 残雪は とてもいいライバルになったんだね。

大造じいさんは、残雪が飛び立っていくのを 見守ったね。
残雪はライバルだけれど、「晴れ晴れとした顔つき」や「いつまでも、いつまでも」という様子から、残雪との別れをさみしく思いながらも、「元気でな。また必ず会おう!」と 大事な仲間のように温かく見守っていることが 伝わってくるね。

「大造じいさんとガン」作者が伝えたかったこと

「大造じいさんとガン」の作者である椋鳩十さんは、子供にむけた「動物文学作品」の作者として有名なんだ。

椋鳩十さんは、かずかずの作品で、「命の大切さ」、「大自然の中で輝く動物たちの命のすばらしさ」を描いているよ。

「大造じいさんとガン」では、最初はかりゅうどである大造じいさんは、ガンのことをただの「えもの」としてしか見ていなかったね。
残雪のことも、自分のかりをじゃまする「いまいましい相手」としか思っていなかった。

でも、残雪が仲間を救うために、自分の命さえ投げ出して、ハヤブサに立ち向かっていくようす、傷を負って、最期ともいえる姿になってしまっても、大造じいさんの前で「頭領としてのいげんをきずつけまい」と堂々としているようすに強く心をうたれて、残雪を助けて、「ひきょうなやり方でやっつけたかあないぞ。堂々とたたかおうじゃあないか。」と言ってはなしたね。

椋鳩十さんは、このお話をとおして、「動物は、人間が好き勝手に殺してよいものではない」「動物の命も、ひとつの大切な命である」「動物にも、仲間を思いやる優しいこころがある」ということを伝えたかったのではないかな。

そして、実は椋鳩十さんがかつやくしていた時代は、日本でも戦争に対して「戦争で、国のために命を落とすことはすばらしいこと」とされていたんだ。
さらに、敵の国の人の命をうばうことはあたりまえなことと国民が思うようにさせていたんだ。

そんな中、椋鳩十さんが書いた作品は、世の中に出すことがゆるされなかったんだ。

そこで、椋鳩十さんは「動物」作品として書くことにしたんだ。
そうすれば、政府からの監視(かんし)の目をくぐりぬけて、子供たちに「命の素晴らしさ」を伝えることができるから。

「大造じいさんとガン」では、「大造じいさん」と「ガン」として描かれているけれど、これは「敵として戦っている国の人も、ひとつの大切な命」「殺してよい命などない」「敵にも仲間がいて、思いやる心をもった、ひとりの人間なのだ」ということを伝えようとしているのではないかな。

「大造じいさんとガン」意味調べ(言葉の意味)

「大造じいさんとガン」で出てくる言葉の意味をまとめているよ。
「大造じいさんとガン」で使われている意味なので、注意しよう。

言葉意味
かりゅうど鳥やけものをとることを仕事にしている人
栗野岳鹿児島県の北部にある山。高さは1094メートル
ふもと山の下の方の、なだらかになったところ
がんじょうじょうぶで、弱くなりそうにないこと
かざす手をあげて、何かをおおうようにすること
愉快(ゆかい)気持ちがよくて、楽しいこと
さかんいきおいがあること。
さかんに来ていた=たくさんのガンが来ていた、よく来ていたというイメージ
その折との時
自在かぎいろりの上から下げて、なべなどをかけてつるす道具のこと
すがすがしいきよらかで、気持ちがよいこと
立ちこめるけむりなどがその場所にいっぱいに広がること
山家山の中にある家のこと
ろばたいろりのそばのこと
率いる引き連れていくこと
ぬま地泥が深くて、じめじめしている土地のこと
頭領おかしら。リーダーのイメージ
りこうかしこいこと
あさるえさを探しもとめること
油断すきをみせたり、不注意になること
気を配る色々なところに注意をはらうこと
りょうじゅうりょうに使うじゅうのこと
寄せ付けない近づかないようにさせること
いまいましい腹立たしく思うこと
かねて前もって
たたみ糸青あさで作った太い糸。
しかけるある目的のために、道具などをそなえつけること。ここでは、ガンをつかまえるためにワナになる道具をしかけている。
しめたうまくいったぞ、という意味
付近そのあたり
たかがそれを「たいしたことない」と思って使う言葉
はてなふしぎに思ったときに使う言葉
形跡それがおこなわれたと分かる「あと」のこと
こりる失敗などで痛い思いをして、「もう二度としない」と思うこと
いじょう普通のときとちがって、どこかがおかしいこと
みとめる見てはんだんすること
指導おしえること
感嘆かんしんして、ほめること
例によっていつものように
見通しのきくとおくまでよく見えること
心がけるわすれないようにすること
五俵「俵」は、お米や塩、石炭などを運ぶんだり、ほかんするために使われた、「わら」を丸いつつの形にあんだもの。お米のばあい、一俵で60キログラムの量になる。
あんばいぐあい
案の定思ったとおり
うんとこさとたくさん、いっぱい
会心のえみ心のそこからまんぞくして、しぜんに出たほほえみのこと
ねぐら鳥がねるところ
あかつき太陽がのぼる前の、ほの暗いころ
かなた遠くはなれたところ
しんぼうじっとがまんすること
目にもの見せるひどい目にあわせること
本能動物が生まれつきもっている感覚
してやられるうまくやられてしまう、だまされる
ぼつぼつまばらに
計略もくろみ、相手をだまそうとするたくらみ
生けどる生きたままつかまえること
おとりさそいよせるために使う道具のこと
出水大雨などで川などの水があふれ出ること
真一文字「一」の字のようにまっすぐなこと
やかましい不快に感じるほど大きな音のこと
ひとあわふかせる相手のすきをついて、おどろきあわてさせること
目をくらます見つけられないようにすること
よろめくたおれそうになること
さるものなかなかの者、したたかな者のこと
花弁はなびら
もつれ合うふたつの物がおたがいに入りくんで、みだれるようす
くれないあざやかなこい赤
むねの辺りをくれないにそめて=むねのところにケガをして、血が出ているようすをあらわす
堂々どっしりとしたりっぱなようす
最期命がつきるとき
いげん堂々としているようす
心を打たれる強く感動すること
らんまん花が美しくゆたかにさいているようす

「大造じいさんとガン」新出漢字

「大造じいさんとガン」で新しく習う漢字のなぞりがきプリントを用意したよ。
書き順を確認しながら、何度も練習しておこう。

「大造じいさんとガン」の新出漢字のなぞりがきプリントの画像

「大造じいさんとガン」全文を確認しよう

「大造じいさんとガン」の教科書の全文が確認できる動画を紹介するよ。
音読の参考にして、たくさん練習しよう!

運営者情報

青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。

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