高校古文『徒然草』「花は盛りに」現代語訳・品詞・内容をわかりやすく解説
高校古文で学習する『徒然草』「花は盛りに」について、本文・現代語訳・あらすじ・重要語句・文法・内容をわかりやすく解説するよ。
この章段では、作者の兼好法師が、花・月・恋について、完全な状態だけが美しいのではないという考えを述べているよ。満開の花、曇りのない満月、恋人と直接会う恋だけではなく、まだ咲かない花、散ったあとの庭、雲に隠れた月、会えない恋にも、深い趣があると考えているんだ。
この記事で分かること
- 『徒然草』「花は盛りに」の現代語訳
- 作者が考える「花」の美
- 作者が考える「月」の美
- 作者が考える「恋」の美
- 「ものかは」「ことかは」などの反語
- 「こそ〜已然形」の係り結び
- 「咲きぬべきほど」の助動詞「ぬ」「べし」
- 「知らぬ」の「ぬ」と「咲きぬべき」の「ぬ」の違い
- 「あだなる契り」「色好む」「頼もしう」などの重要語句
- 「あはれなり」「まかる」「をかし」などの古語の詳しい意味
- 「遠き雲居を思ひやり」「待ち出でたる」の読解ポイント
- テストで問われやすいポイント
目次
1.『徒然草』「花は盛りに」とは
「花は盛りに」は、『徒然草』第百三十七段の一部だよ。
『徒然草』は、兼好法師が書いた随筆で、自然や人間、世の中のあり方について、作者の考えが自由につづられている作品だよ。
この「花は盛りに」では、花・月・恋を例にして、作者が完成した美しさだけではなく、まだ満たされていない状態や、失われたものを思う心にも美しさがあると述べているんだ。
つまり、満開の花や、雲一つない満月だけを美しいとするのではなく、咲きそうな花、散ったあとの庭、雲に隠れた月、会えない恋などにも、深い趣を見いだしているんだね。
2.本文
教科書によって、表記や送り仮名、句読点が少し異なる場合があるよ。定期テストでは、学校で使っている本文を優先して確認しよう。
花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは。雨に対ひて月を恋ひ、垂れこめて春の行方知らぬも、なほあはれに情け深し。
咲きぬべきほどの梢、散りしをれたる庭などこそ、見どころ多けれ。
歌の詞書にも、「花見にまかれりけるに、早く散り過ぎにければ」とも、「障ることありてまからで」なども書けるは、「花を見て」と言へるに劣れることかは。
花の散り、月の傾くを慕ふならひはさることなれど、殊にかたくななる人ぞ、「この枝、かの枝散りにけり。今は見どころなし。」などは言ふめる。
よろづのことも、始め終はりこそをかしけれ。
男女の情けも、ひとへにあひ見るをばいふものかは。あはでやみにし憂さを思ひ、あだなる契りをかこち、長き夜を独り明かし、遠き雲居を思ひやり、浅茅が宿に昔をしのぶこそ、色好むとはいはめ。
望月の隈なきを千里の外までながめたるよりも、暁近くなりて待ち出でたるが、いと心深う、青みたるやうにて、深き山の杉の梢に見えたる、木の間の影、うちしぐれたる群雲隠れのほど、またなくあはれなり。
椎柴、白樫などの濡れたるやうなる葉の上にきらめきたるこそ、身にしみて、心あらん友もがなと、都恋しうおぼゆれ。
すべて、月、花をば、さのみ目にて見るものかは。春は家を立ち去らでも、月の夜は閨のうちながらも思へるこそ、いと頼もしう、をかしけれ。
3.現代語訳
花は満開のときだけ、月は曇りなく明るいものだけを見るものだろうか、いや、そうではない。雨に向かって月を恋しく思い、家にこもって春の過ぎていく様子を知らないのも、やはりしみじみと趣があり、情趣深いものだ。
今にもきっと咲きそうな梢や、花が散ってしおれた庭などにこそ、見る価値が多い。
和歌の詞書にも、「花見に参りましたが、すでに早く散り過ぎていたので」とか、「差し支えることがあって参らないで」などと書いてあるものは、「花を見て」と書いてあるものに劣るだろうか、いや、劣らない。
花が散るのを惜しみ、月が西へ傾くのを慕う習慣はもっともなことだが、特に情趣を解しない人は、「この枝も、あの枝も散ってしまった。今は見る価値がない。」などと言うようだ。
すべてのことは、始まりと終わりこそ趣深いものなのだ。
男女の恋も、ただひたすら直接会うことだけをいうものだろうか、いや、そうではない。会わないまま終わってしまったつらさを思い、はかなく実を結ばなかった約束を嘆き、長い夜を独りで明かし、遠く離れた人のことを思いやり、荒れた家で昔をしのぶことこそ、恋の情趣を解するというものだろう。
隈のない満月を、遠くまで広々と眺めるよりも、明け方近くなって待ち迎えた月が、たいそう趣深く、青みがかっているようで、深い山の杉の梢に見える、その木の間の光や、時雨を降らせた群雲に隠れる様子は、このうえなくしみじみと趣深い。
椎や白樫などの、濡れたような葉の上に月の光がきらめいているのは、身にしみるほど趣深く、情趣を理解する友がいてほしいと思われ、都が恋しく感じられる。
すべて、月や花を、そのように目で見るだけのものだろうか、いや、そうではない。春は家を出なくても、月の夜は寝室の中にいながらでも、花や月を心に思っていることこそ、たいそう期待が持て、趣深いものなのだ。
4.あらすじ
この文章で作者は、花や月は、満開や満月のときだけを見るものではないと述べているよ。
雨の日に月を思うこと、家にこもって春の行方を知らないこと、今にも咲きそうな花や散ったあとの庭を見ることにも、深い趣があると考えているんだ。
また、恋についても、直接会うことだけがすべてではないと言っているよ。会えないつらさ、実らなかった約束、長い夜を独りで過ごすこと、遠く離れた人を思うことにも、恋の情趣があると考えているんだね。
さらに、月についても、曇りのない満月だけではなく、明け方近くに待ち出て見る月や、木の間に見える月、群雲に隠れる月に、深い趣があると述べているよ。
最後に、花や月は目で見るだけのものではなく、家の中にいて心で思うことにも美しさがあるとまとめているんだ。
5.作者が考える「花」の美
作者は、花について、満開のときだけが美しいとは考えていないよ。
花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは。
「花は盛りに」とは、花が満開である状態のことだよ。「月は隈なき」とは、曇りや影がなく、明るく澄んだ月のことだね。
作者は、それだけを見るものだろうか、いや、そうではない、と反語で述べているんだ。
たとえば、今にも咲きそうな梢や、散ってしおれた庭にも、見どころが多いと言っているよ。
| 花の状態 | 作者の見方 |
|---|---|
| 満開の花 | もちろん美しい。 |
| 咲きそうな梢 | これから咲きそうな状態にも、見どころがある。 |
| 散ってしおれた庭 | 花が散ったあとの状態にも、見どころがある。 |
| 花見に行ったが散っていたこと | 実際に花を見た場合に劣らず、趣深い歌の題材になりうる。 |
| 事情があって花見に行けなかったこと | 「花を見て」と書いた歌に劣らないものとして扱われている。 |
たろう6.作者が考える「月」の美
作者は、月についても、ただ澄みきった満月だけが美しいとは考えていないよ。
「望月の隈なき」とは、曇りや影のない満月のことだよ。ふつうなら、月の美しさの代表のように思えるね。
けれど作者は、それよりも、明け方近くに待ち出て見た月、深い山の杉の梢に見える月、木の間から見える月、群雲に隠れる月に、深い趣を感じているよ。
| 月の状態 | 作者の評価 |
|---|---|
| 隈なき望月 | 完全で明るい月。 |
| 暁近く待ち出でた月 | 待って見るからこそ、心深い。 |
| 杉の梢に見える月 | 自然の中に見える月として趣深い。 |
| 木の間の影 | はっきり見えすぎないところに余情がある。 |
| 群雲隠れの月 | 雲に隠れることで、かえってしみじみとした美しさがある。 |
内容確認ポイント:「待ち出でたる」の後に補う語
暁近くなりて待ち出でたるが、いと心深う、青みたるやうにて
「待ち出でたる」の後には、「月」という語を補って読むと分かりやすいよ。
つまり、「暁近くなりて待ち出でたるが」は、「明け方近くになって、待っているうちに出てきた月が」、または「明け方近くになって、待って迎えた月が」という意味になるんだ。
直前に「望月の隈なきを千里の外までながめたるよりも」とあるので、ここでも話題の中心は月だよ。隈のない満月を広々と眺めるよりも、明け方近くまで待ってようやく見えた月のほうが、作者には「いと心深う」感じられるんだね。
作者にとって月の美しさは、明るく完全に見えることだけではないんだ。少し隠れていたり、待ってやっと見えたりする月にも、心に深くしみる美しさがあると考えているんだね。
7.作者が考える「恋」の美
この文章では、花や月だけでなく、恋についても同じ考え方が示されているよ。
男女の情けも、ひとへにあひ見るをばいふものかは。
これは、「男女の恋も、ただ直接会うことだけをいうものだろうか、いや、そうではない」という意味だよ。
作者は、恋人と会えた状態だけをよいものとは考えていないんだ。会えないつらさ、実らなかった約束、長い夜を独りで明かすこと、遠く離れた人を思うこと、昔をしのぶことにも、恋の情趣があると考えているよ。
| 恋の状態 | 作者の見方 |
|---|---|
| 直接会う恋 | もちろん恋の一つの形。 |
| 会わないまま終わった恋 | つらさや余情がある。 |
| 実らなかった約束 | はかなさや嘆きがある。 |
| 長い夜を独りで過ごす恋 | 相手を思う心が深まる。 |
| 遠く離れた人を思う恋 | 想像や憧れが生まれる。 |
| 昔をしのぶ恋 | 過ぎ去った時間へのしみじみとした思いがある。 |
直接会えて満たされた恋だけでなく、会えない恋や過ぎ去った恋を思うところにも、深い恋の情趣を認めているんだ。
くまごろう内容確認ポイント:「遠き雲居を思ひやり」とは
遠き雲居を思ひやり
「遠き雲居」とは、遠く離れた場所のことだよ。ここでは、遠く離れた恋しい相手のいる場所、または遠く離れた相手そのものを思い浮かべて読むと分かりやすいんだ。
「思ひやり」は、遠くにあるものへ心を向けて思うこと。つまり「遠き雲居を思ひやり」は、直接会えない相手のいる遠い場所を思いやるという意味になるよ。
この表現は、「恋は直接会うことだけではない」という作者の考えにつながっているよ。会えないからこそ、相手のいる遠い場所を心の中で思い続ける。そのような恋にも、作者は深い情趣を認めているんだ。

8.この文章の主題

「花は盛りに」の主題は、物事の美しさは、完全な状態だけにあるのではないということだよ。
満開の花、雲のない満月、恋人と会える恋は、もちろん分かりやすい美しさだね。でも作者は、美をそこだけに限定する見方を退けているんだ。
まだ咲かない花には「これから咲く気配」があり、散った庭には「過ぎ去った美しさの余韻」がある。雲に隠れた月には「見えそうで見えない趣」があり、会えない恋には「思い続ける心の深さ」がある。
このように、作者は不完全さ・欠け・隔たり・余韻の中にも、深い美しさがあると考えているんだ。
最後の「月、花をば、さのみ目にて見るものかは」という表現も重要だよ。花や月は、実際に目で見るだけのものではなく、心で思い、想像することにも価値があるという考えが表れているんだ。

9.本文の論の展開
「花は盛りに」は、花・月・恋について話題が移っていくので、論の流れを整理して読むことが大切だよ。

| 流れ | 本文の内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ① 問題提起 | 花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは。 | 満開の花・隈のない月だけを見るものではない、と反語で述べる。 |
| ② 花の具体例 | 咲きぬべきほどの梢、散りしをれたる庭 | 咲く前や散った後にも見どころがある。 |
| ③ 詞書の例 | 花見に行ったが散っていた、事情があって行けなかった | 実際に花を見た歌に劣らないと述べる。 |
| ④ 一般化 | よろづのことも、始め終はりこそをかしけれ。 | 花の話から、すべてのことへ考えを広げる重要な一文。 |
| ⑤ 恋への展開 | 男女の情けも、ひとへにあひ見るをばいふものかは。 | 恋も、直接会うことだけがすべてではないと述べる。 |
| ⑥ 月の具体例 | 暁近く待ち出でたる月、群雲隠れの月 | 完全に明るい月ではない月にも、深い趣がある。 |
| ⑦ まとめ | 月、花をば、さのみ目にて見るものかは。 | 花や月は目で見るだけでなく、心で思うことにも価値がある。 |
特に、「よろづのことも、始め終はりこそをかしけれ」は重要だよ。ここで作者は、花の話から「すべてのこと」へ考えを広げているんだ。そのため、この一文は、本文全体の主題につながる橋渡しの表現として押さえよう。
10.実は、昔の詩や和歌も踏まえている
「花は盛りに」には、昔の漢詩や和歌の世界を踏まえた表現も出てくるよ。
たとえば、「雨に対ひて月を恋ひ」は、雨の日に見えない月を思うという発想だよ。これは、平安時代の漢詩の題にある「対雨恋月」のような、雨と月を結び付ける表現を思わせるんだ。
また、「垂れこめて春の行方知らぬも」は、『古今和歌集』に見られる「垂れこめて春の行方も知らぬ間に……」という発想と関わる表現として読めるよ。家にこもっているうちに、春が過ぎていくことを知らないという趣だね。
さらに、「千里の外」は、『和漢朗詠集』に収められた白居易の漢詩に見える、遠く離れた友を月と結び付けて思う表現を踏まえていると考えられるよ。
つまり兼好は、自分だけの感覚を述べているのではなく、先行する漢詩や和歌に見られる美意識も踏まえながら、花・月・恋の美しさを語っているんだ。
11.重要語句
| 語句 | 意味・ポイント |
|---|---|
| 花は盛りに | 花が満開のときに。 |
| 隈なき | 曇りや影がない。ここでは月が明るく澄んでいること。 |
| 見るものかは | 見るものだろうか、いや、そうではない。反語。 |
| 雨に対ひて月を恋ひ | 雨に向かいながら、見えない月を恋しく思うこと。 |
| 垂れこめて | 家にこもって。すだれなどを垂れてこもること。 |
| 春の行方知らぬ | 春が過ぎていく様子を知らない。 |
| あはれに情け深し | しみじみと趣があり、情趣深い。 |
| 咲きぬべきほど | 今にもきっと咲きそうなころ。「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」の終止形で、ここでは強意。「べき」は推量の助動詞「べし」の連体形。 |
| 梢 | 木の枝の先。 |
| 散りしをれたる | 花が散ってしおれている。 |
| 詞書 | 和歌の前に、その歌を詠んだ事情などを書いた文章。 |
| 障ること | 差し支えること。都合の悪いこと。 |
| 劣れることかは | 劣るだろうか、いや、劣らない。反語。 |
| 慕ふ | 恋しく思う。心ひかれる。 |
| さることなれど | もっともなことではあるが。 |
| 殊に | 特に。 |
| かたくななる人 | 情趣を理解しない人。ものの趣を解さない人。 |
| よろづのこと | すべてのこと。 |
| 始め終はり | 物事の始まりと終わり。 |
| をかし | 趣深い。興味深い。 |
| 男女の情け | 男女の恋情。恋の情趣。 |
| ひとへに | ただひたすらに。ただそれだけに。 |
| あひ見る | 直接会う。 |
| あはでやみにし | 会わないまま終わってしまった。 |
| 憂さ | つらさ。悲しさ。 |
| あだなる契り | はかなく実を結ばなかった約束。 |
| かこち | 嘆き。不平を言い。 |
| 雲居 | 遠く離れた場所。空のかなた。 |
| 浅茅が宿 | 浅茅が生えた荒れた家。 |
| 色好む | 恋の情趣を解する。風流な恋を理解する。単に「異性好き」という意味ではない。 |
| 望月 | 満月。 |
| 千里の外 | はるか遠い所。 |
| 暁 | 夜明け前。 |
| 群雲隠れ | 群がる雲に隠れること。 |
| 椎柴 | 椎の木。 |
| 白樫 | 樫の一種。葉が小さく、裏が白い。 |
| 心あらん友 | 情趣を理解する友。風流を分かる友。 |
| 都恋しうおぼゆれ | 都が恋しく感じられる。 |
| さのみ | そのようにばかり。 |
| 閨 | 寝室。寝所。 |
| 頼もしう | 期待が持てて。 |
古語を詳しく確認しよう
ここからは、テストで意味や文法を問われやすい古語を、もう少し詳しく確認するよ。
「あはれなり」
「あはれなり」は、しみじみと心にしみる趣があるという意味だよ。現代語の「あわれ」のように、単に「かわいそう」「悲しい」という意味だけではないことに注意しよう。
本文では、「なほあはれに情け深し」や「またなくあはれなり」という形で使われているよ。どちらも、花や月を直接はっきり見るだけではない状態に、しみじみとした趣があることを表しているんだ。
「まかる」
「まかる」は、もともと謙譲語として使われることのある移動表現で、文脈によって参る・退出する・行くなどと訳すよ。
本文では、「花見にまかれりけるに」「障ることありてまからで」と出てくるね。ここでは、詞書の中の表現として、「花見に参りましたところ」「差し支えることがあって参らないで」ほどに訳すと分かりやすいよ。
「をかし」
「をかし」は、趣深い・心ひかれる・興味深いという意味だよ。『枕草子』でもよく出てくる重要古語だね。
本文では、「よろづのことも、始め終はりこそをかしけれ」や「思へるこそ、いと頼もしう、をかしけれ」に出てくるよ。完成した状態だけではなく、始まりや終わり、心で思うことにも趣があるという考えを表す大切な語なんだ。
| 語 | 意味の中心 | 本文でのニュアンス |
|---|---|---|
| あはれなり | しみじみと心にしみる | 月や花の余韻が深く感じられる。 |
| をかし | 趣深い・心ひかれる | 始まりや終わり、心で思うことに趣がある。 |
「あだなり」
「あだなり」は、ナリ活用の形容動詞で、はかない・むなしい・実を結ばないという意味だよ。
本文では、「あだなる契り」という形で出てくるね。「あだなる」は連体形で、後ろの「契り」にかかっているよ。「あだなる契り」は、はかなく実を結ばなかった約束という意味になるんだ。
「契り」
「契り」は、約束という意味だよ。古文では、男女の関係や、前世からの縁のような意味で使われることもあるけれど、この本文では恋の文脈で、相手との約束として読むと分かりやすいよ。
「あだなる契り」は、ただの約束ではなく、はかなく、実を結ばなかった約束のこと。直接会えて満たされた恋だけでなく、果たされなかった約束を思うことにも、作者は恋の情趣を見ているんだ。
「かこつ」
「かこつ」は、嘆く・不平を言う・恨みごとを言うという意味だよ。本文では「かこち」という形で使われているね。
「あだなる契りをかこち」は、はかなく実を結ばなかった約束を嘆きという意味になるよ。ここも、会えない恋や実らなかった恋を思うことに情趣を見いだす、本文の大切な部分なんだ。
12.重要文法
反語「ものかは」「ことかは」
この文章で特に大切なのが、反語の表現だよ。
花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは。
「花を見て」と言へるに劣れることかは。
男女の情けも、ひとへにあひ見るをばいふものかは。
月、花をば、さのみ目にて見るものかは。
「〜ものかは」「〜ことかは」は、〜だろうか、いや、そうではないという反語を表すよ。
| 本文 | 意味 |
|---|---|
| 見るものかは | 見るものだろうか、いや、そうではない。 |
| 劣れることかは | 劣るだろうか、いや、劣らない。 |
| いふものかは | いうものだろうか、いや、そうではない。 |
作者はこの反語を繰り返すことで、「満開だけ」「満月だけ」「直接会う恋だけ」という一般的な見方を次々に問い直しているんだ。
係り結び「こそ〜已然形」
本文には、係助詞「こそ」による係り結びも出てくるよ。
散りしをれたる庭などこそ、見どころ多けれ。
始め終はりこそをかしけれ。
昔をしのぶこそ、色好むとはいはめ。
葉の上にきらめきたるこそ、身にしみて、心あらん友もがなと、都恋しうおぼゆれ。
思へるこそ、いと頼もしう、をかしけれ。
係助詞「こそ」があると、結びは已然形になるよ。これを係り結びというんだ。
| 係助詞 | 結び | 本文例 |
|---|---|---|
| こそ | 已然形 | 多けれ・をかしけれ・いはめ・おぼゆれ |
「こそ」は強調の働きをするよ。作者が特に強く言いたいところに使われていると考えよう。
なお、「いはめ」は、「言は」+「め」に分けられるよ。「め」は推量の助動詞「む」の已然形で、「昔をしのぶこそ」の「こそ」を受けて、結びが已然形になっているんだ。

「咲きぬべきほど」の助動詞
咲きぬべきほどの梢
「咲きぬべきほど」は、「今にもきっと咲きそうなころ」という意味だよ。
文法的には、次のように分けられるよ。
| 部分 | 文法 | 意味・働き |
|---|---|---|
| 咲き | カ行四段活用「咲く」の連用形 | 咲く。 |
| ぬ | 完了の助動詞「ぬ」の終止形 | ここでは強意の意味。「きっと〜する」と強く言う働き。 |
| べき | 推量の助動詞「べし」の連体形 | 〜だろう。〜そうだ。 |
「ぬ+べし」は、強い推量を表す形だよ。ここでは、「今にもきっと咲きそうな」という意味で押さえよう。
注意したいのは、「ぬ」という助動詞そのものは完了の助動詞であり、この文脈では強意の意味で使われているということだよ。つまり、助動詞の分類は「完了」、この場面での意味は「強意」と整理すると正確なんだ。

「知らぬ」の「ぬ」と「咲きぬべき」の「ぬ」の違い
本文には、同じ「ぬ」に見えても、別の助動詞として考えるものが出てくるよ。
春の行方知らぬも
咲きぬべきほどの梢
| 本文 | 「ぬ」の基本形 | 意味 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 知らぬ | 打消の助動詞「ず」 | 知らない | 「ぬ」は、打消「ず」の連体形。 |
| 咲きぬべき | 完了の助動詞「ぬ」 | ここでは強意 | 「ぬ+べし」で、強い推量を表す。 |
「知らぬ」の「ぬ」は、打消の助動詞「ず」の連体形だよ。一方、「咲きぬべき」の「ぬ」は、完了の助動詞「ぬ」の終止形で、ここでは強意の意味になるんだ。
同じ「ぬ」に見えても、打消の「ず」なのか、完了の「ぬ」なのかを文脈と接続から判断することが大切だよ。

形容詞「なし」と打消の助動詞「ず」
月は隈なきをのみ見るものかは
「隈なき」の「なき」は、形容詞「なし」の連体形だよ。「隈なき」は、曇りや影がない、という意味になるんだ。
「知らぬ」の「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形だけれど、「隈なき」の「なき」は形容詞「なし」の連体形だよ。どちらも否定の意味を含むけれど、文法上は別のものとして整理しよう。
13.テストで問われやすい内容
「花は盛りに」は、内容理解・反語・係り結び・重要語句・助動詞がよく問われるよ。特に、作者がどのような美を評価しているのかを整理することが大切なんだ。
- 作者は、花や月について、どのような美を推賞しているのか。
- 作者は、恋について、どのようなあり方をよいとしているのか。
この二つは、本文全体の主題に関わる重要な問いだよ。花・月・恋を別々に覚えるだけでなく、完全に満たされた状態だけでなく、不完全さや余韻の中にも美を認めるという共通点を押さえよう。
- 出典は『徒然草』第百三十七段。
- 作者は兼好法師。
- 「花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは」は反語。
- 作者は、満開の花や隈なき月だけを美しいとは考えていない。
- 咲きそうな梢や、散ってしおれた庭にも見どころがあると考えている。
- 「咲きぬべきほど」は、「ぬ」=完了の助動詞「ぬ」の終止形、ここでは強意。「べき」=推量の助動詞「べし」の連体形。
- 「知らぬ」の「ぬ」は、打消の助動詞「ず」の連体形。
- 同じ「ぬ」に見えても、「咲きぬべき」の「ぬ」と「知らぬ」の「ぬ」は別の助動詞。
- 雨の日に月を思うことや、家にこもって春を想像することにも趣がある。
- 詞書では、花見に行ったが散っていたこと、事情があって行けなかったことも、「花を見て」と書いた歌に劣らないとされている。
- 「かたくななる人」は、情趣を理解しない人。
- 「よろづのことも、始め終はりこそをかしけれ」は、花の話からすべてのことへ考えを広げる重要な一文。
- 恋も、直接会うことだけがすべてではない。
- 会えない恋、実らない約束、昔をしのぶ心にも恋の情趣がある。
- 「色好む」は、ここでは恋の情趣を理解するという意味。
- 「望月」は満月。
- 作者は、隈なき望月よりも、暁近く待ち出でて見る月に深い趣を感じている。
- 「月、花をば、さのみ目にて見るものかは」は、目で見るだけでなく、心で思うことの価値を示している。
- 「ものかは」「ことかは」は反語。
- 反語を繰り返すことで、作者は一般的な見方を問い直している。
- 「こそ」は係助詞で、結びは已然形になる。
- 「多けれ」「をかしけれ」「いはめ」「おぼゆれ」は、係助詞「こそ」の結び。
- 「いはめ」は「言は」+「め」で、「め」は推量の助動詞「む」の已然形。
- この文章の主題は、不完全な状態や余韻の中にも深い美しさがあるということ。
ここまで学習できたら、『徒然草』「花は盛りに」のテスト対策練習問題とドリルにも挑戦して、理解を定着させよう。
『徒然草』「花は盛りに」テスト対策練習問題
【高校古文】徒然草「花は盛りに」古語ドリル
【高校古文】徒然草「花は盛りに」内容理解ドリル
【高校古文】徒然草「花は盛りに」文法ドリル
【高校古文】徒然草「花は盛りに」総合確認ドリル

参考文献・参考資料
- 東京書籍『新編古典探究』令和4年「花は盛りに」
- 兼好法師『徒然草』第百三十七段「花は盛りに」
- 東京書籍 東書Eネット「徒然草 兼好法師/花は盛りに【第百三十七段】(原文と口語訳)」
- 東京書籍 東書Eネット「徒然草 兼好法師/花は盛りに【第百三十七段】(語句と表現)」
- 東京書籍 東書Eネット「徒然草 兼好法師/花は盛りに【第百三十七段】(解説プリント)」
- 小学館『デジタル大辞泉』「ぬべし」
- 小学館『精選版 日本国語大辞典』「ぬべし」「ぬ」
運営者情報
檜垣由美子
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