大和物語「姨捨(をばすて)」現代語訳・品詞分解・あらすじを解説
高校古典で学習する大和物語「姨捨(をばすて)」について、現代語訳・口語訳・あらすじ・古語の意味・重要文法・品詞分解など、テスト対策に役立つポイントをわかりやすく解説するよ。
大和物語「姨捨」
テスト対策ポイントまとめ
- 作品名は『大和物語』。ジャンルは、和歌とその和歌にまつわる話を中心にした歌物語。
- 『大和物語』は平安時代中期ごろに成立したとされ、作者ははっきり分かっていない。
- 「姨捨」は第百五十六段の話。舞台は信濃国の更級。
- 男は、若いころに親を亡くし、伯母を親のようにして育ってきた。
- しかし、男の妻は年老いた伯母を嫌い、男に悪く言い聞かせたため、男の伯母への態度も昔のようではなくなっていった。
- 男は妻に責められ、伯母を山に捨ててしまうが、帰宅後、明るい月を見て悲しみに耐えられなくなり、和歌を詠んで伯母を迎えに戻る。
- 和歌「わが心慰めかねつ更級や姨捨山に照る月を見て」は、男の後悔と悲しみを表す重要な歌。
ここを押さえればテストで安心
- 人物関係:男にとって伯母は、親のように自分を育ててくれた存在。妻にとっては、邪魔で疎ましい存在として描かれている。
- 男の心情変化:妻に責められて伯母を捨てる → 家に帰って後悔する → 月を見て悲しみが深まる → 和歌を詠み、伯母を迎えに戻る。
- 重要古語:心憂し=つらい・いやな感じがする・情けない、さがなし=意地が悪い、おろかなり=おろそかだ、わぶ=困る、夜一夜=一晩中。
- 重要文法:をばなむ親のごとくに、若くより添ひてあるには係り結びの流れ、さしてむは「そうしてしまおう」、すなるは「するそうだ」という伝聞。
- 和歌のポイント:句切れは二句切れと見る。男は、姨捨山に照る月を見て、心を慰めることができないほど悲しんでいる。
大和物語「姨捨」解説
「姨捨」は、『大和物語』に収録されているお話だよ。
まずは、『大和物語』について最低限知っておきたいことを確認しておこう。
『大和物語』は、平安時代中期ごろに成立したとされる歌物語だよ。
歌物語とは、和歌を中心にして、その和歌が詠まれた事情や、和歌にまつわる人間関係を語る物語のこと。
同じ歌物語としては、『伊勢物語』や『平中物語』などがあるよ。
『大和物語』の作者ははっきり分かっていないけれど、和歌にまつわる多くの話を集めた作品として、高校古典でもよく扱われるんだ。
今回学習する「姨捨」は、第百五十六段のお話。親のように自分を育ててくれた伯母を、妻に責められて山に捨ててしまった男が、月を見て深く後悔し、伯母を迎えに戻るという内容だよ。
タイトルの「姨」は、ここでは伯母のこと。つまり「姨捨」とは、年老いた伯母を山に捨てる話という意味になるんだ。
ただし、この話は「老人を捨てる残酷な話」というだけでは終わらないよ。
男がいったん伯母を捨ててしまうこと、しかし長年の情を思い出して後悔すること、そして月を見て心を慰めることができず、和歌を詠んで伯母を迎えに戻ること。この男の心の動きを読み取ることが、この単元のいちばん大事なポイントなんだ。
大和物語「姨捨」あらすじ
「姨捨」のあらすじを、まずは短く確認しよう。

信濃国の更級という所に、ある男が住んでいた。男は若いころに親を亡くしていたので、伯母が親のように男に寄り添って育ててくれた。
ところが、男の妻は心が薄情で、年老いて腰の曲がった伯母をいつも憎んでいた。そして、伯母の心が意地悪で悪いのだと、男にも言い聞かせた。そのため男も、昔のようには伯母を大切にしなくなっていった。
妻はさらに伯母を疎ましがり、「深い山に捨ててください」と男を責め続けた。男はついに困り果てて、伯母を山に捨ててしまおうと思うようになる。
月のとても明るい夜、男は伯母に「尊い仏事を見せてあげましょう」と言って背負い、山奥へ連れて行く。そして、下りてこられそうもない高い山の峰に伯母を置いて、返事もしないまま逃げ帰ってしまった。
しかし家に帰ると、男は長年、伯母が親のように自分を養ってくれたことを思い出し、とても悲しくなる。山の上から出た明るい月を眺めながら一晩中眠れず、悲しみの中で和歌を詠む。
その後、男はふたたび山へ行き、伯母を迎えに行った。それ以来、その山を「姨捨山」と呼ぶようになったという。
大和物語「姨捨」原文
大和物語 第百五十六段
「姨捨」
信濃の国に更級といふ所に、男住みけり。
若き時に親は死にければ、をばなむ親のごとくに、若くより添ひてあるに、この妻(め)の心憂きこと多くて、この姑(しうとめ)の、老いかがまりてゐたるを常に憎みつつ、男にも、このをばの御心(みこころ)のさがなく悪しきことを言ひ聞かせければ、昔のごとくにもあらず、おろかなること多く、このをばのためになりゆきけり。このをば、いといたう老いて、二重(ふたへ)にてゐたり。これをなほ、この嫁、所狭(せ)がりて、今まで死なぬことと思ひて、よからぬことを言ひつつ、「持ていまして、深き山に捨て給(たう)びてよ。」とのみ責めければ、責められわびて、さしてむと思ひなりぬ。
月のいと明かき夜、「嫗(おうな)ども、いざ給へ。寺に尊き業(わざ)すなる、見せ奉らむ。」と言ひければ、限りなく喜びて負はれにけり。高き山の麓(ふもと)に住みければ、その山にはるばると入りて、高き山の峰の、下り来べくもあらぬに、置きて逃げて来ぬ。「やや。」と言へど、答(いら)へもせで、逃げて家に来て思ひをるに、言ひ腹立てける折は、腹立ちてかくしつれど、年ごろ親のごと養ひつつ相(あひ)添ひにければ、いと悲しくおぼえけり。
この山の上(かみ)より、月もいと限りなく明かく出でたるを眺めて、夜一夜(よひとよ)、寝(い)も寝られず、悲しうおぼえければ、かく詠みたりける。
わが心慰めかねつ更級や姨捨山に照る月を見て
と詠みてなむ、また行きて迎へ持て来にける。それより後(のち)なむ、姨捨山といひける。慰め難(がた)しとは、これが由(よし)になむありける。
大和物語「姨捨」現代語訳
信濃の国に更級という所があり、そこに一人の男が住んでいた。
男が若い時に親は死んでしまったので、伯母が親のように、男が若いころから寄り添って暮らしていたが、この男の妻には、情けなく感じられるところが多く、この姑が年老いて腰が曲がって座っているのをいつも憎んでいた。そして男にも、この伯母の心が意地悪で悪いことを言い聞かせたので、男も昔のようではなくなり、伯母に対しておろそかにすることが多くなっていった。この伯母は、たいそうひどく老いて、腰が二つに折れ曲がったようになっていた。それをやはり、この嫁は窮屈に思い、「今まで死なないことよ」と思って、よくないことを言いながら、「お連れになって、深い山に捨ててください。」とばかり責めたので、男は責められて困り果てて、そうしてしまおうと思うようになった。
月がたいそう明るい夜に、男が「おばあさんたち、さあ、いらっしゃい。寺で尊い仏事をするそうです。それをお見せ申し上げましょう。」と言ったので、伯母はこの上なく喜んで、男に背負われた。男は高い山のふもとに住んでいたので、その山に遠く深く入っていき、高い山の峰で、下りてこられそうもない所に伯母を置いて逃げて帰ってきた。伯母が「もしもし。」と言っても、男は返事もしないで逃げて家に帰った。そして考えていると、妻が伯母のことを悪く言って腹を立てていた時には、自分も腹を立ててこのようなことをしたけれど、長年、伯母が親のように自分を養い、寄り添ってくれていたので、たいそう悲しく思われた。
この山の上から、月もこの上なく明るく出ているのを眺めて、一晩中、寝ることもできず、悲しく思われたので、このように詠んだ。
私の心は慰めることができない。更級の姨捨山に照る月を見て。
と詠んで、ふたたび山へ行って、伯母を迎えて連れて帰った。それ以来、その山を姨捨山と言うようになった。「慰め難し」とは、このことが由来なのであった。
大和物語「姨捨」口語訳
信濃の国の更級という所に、ある男が住んでいた。男は若いころに親を亡くしていたので、伯母が親のように育ててくれた。
ところが、男の妻は薄情で、年老いて腰の曲がった伯母を嫌っていた。妻は男にも「伯母さんは意地が悪い人だ」と悪く言い聞かせた。そのせいで、男も昔のようには伯母を大切にしなくなっていった。
伯母はとても年老いて、腰が二つに折れ曲がったようになっていた。妻はそれをますます邪魔に思い、「深い山に捨ててください」と男を責め続けた。男は困り果てて、とうとう伯母を山に捨てようと思ってしまった。
月がとても明るい夜、男は伯母に「寺で尊い仏事があるそうです。見せてあげましょう」と言い、伯母を背負って山へ入った。伯母は、男が親切にしてくれるのだと思って、とても喜んだ。
しかし男は、伯母が下りてこられないような高い山の峰に伯母を置き、呼びかけられても返事をせずに逃げ帰ってしまった。
家に帰ると、男はだんだん悲しくなった。腹を立てていたときは伯母を捨ててしまったけれど、よく考えれば、伯母は長い間、親のように自分を育ててくれた人だったからだ。
山の上から明るく出ている月を見ると、男は一晩中眠れないほど悲しくなり、歌を詠んだ。
私の心はどうしても慰めることができない。更級の姨捨山に照っている月を見ていると。
男はその歌を詠んで、ふたたび山へ行き、伯母を迎えて連れて帰った。それ以来、その山を姨捨山と呼ぶようになったという。
大和物語「姨捨」古語の意味
「姨捨」に出てくる古語の意味をまとめたよ。この作品で使われている意味を中心に確認しよう。
| 古語 | 意味 |
|---|---|
| 信濃国 | 現在の長野県あたり。 |
| 更級 | 信濃国にあった地名。姨捨山の伝説と結びつく場所。 |
| をば | 伯母。父母の姉妹。 |
| ごとくなり | 〜のようだ。比況を表す。 |
| 添ふ | 寄り添う。一緒にいる。 |
| 心憂し | つらい。情けない。ここでは、薄情でいやな感じがするという意味。 |
| 姑 | しゅうとめ。夫または妻の母。ここでは嫁から見た年長の女性として、伯母を指している。 |
| 老いかがまる | 年老いて腰が曲がる。 |
| 御心 | お心。「御」は尊敬を表す接頭語。 |
| さがなし | 意地が悪い。性質がよくない。 |
| おろかなり | おろそかだ。いい加減だ。 |
| なりゆきけり | だんだんそうなっていった。 |
| いといたう | たいそうひどく。非常に。 |
| 二重にてゐたり | 腰が二つに折れたように曲がって座っている。 |
| 所狭がる | 窮屈に思う。邪魔だと思う。 |
| 持ていまして | お連れになって。「います」は「行く・来る・いる」などの尊敬語。 |
| 捨て給びてよ | 捨ててください。捨ててしまってください。 |
| わぶ | 困る。つらく思う。どうしようもなくなる。 |
| さしてむ | そうしてしまおう。 |
| 嫗 | 老女。おばあさん。 |
| いざ給へ | さあ、いらっしゃい。 |
| 尊き業 | 尊い仏事。ありがたい宗教行事。 |
| 見せ奉らむ | お見せ申し上げよう。 |
| 限りなく | この上なく。非常に。 |
| 負はる | 背負われる。 |
| はるばると | 遠くまで。ずっと奥まで。 |
| 下り来べくもあらぬ | 下りてくることができそうもない。 |
| やや | もしもし。呼びかけの言葉。 |
| 答へ | 返事。ここでは「いらへ」と読む。 |
| せで | しないで。 |
| 年ごろ | 長年。何年もの間。 |
| 相添ふ | 寄り添う。一緒に暮らす。 |
| おぼゆ | 思われる。感じられる。 |
| 山の上 | 山の上の方。「かみ」と読む。 |
| 夜一夜 | 一晩中。 |
| 寝も寝られず | 寝ることもできず。 |
| 慰めかねつ | 慰めることができない。 |
| 由 | わけ。由来。理由。 |
大和物語「姨捨」内容とポイント
ここでは、テストに出やすい内容理解のポイントを整理していくよ。
「姨捨山」とは何か
「姨捨山」とは、文字どおりには年老いた伯母を捨てた山という意味になるよ。
この話では、男が妻に責められて、親のように自分を育ててくれた伯母を山に置き去りにしてしまう。そして、そのあと月を見て深く後悔し、伯母を迎えに戻る。
つまり「姨捨」は、単に山の名前の由来を説明する話であると同時に、人の心が迷い、後悔し、もう一度大切なものを取り戻そうとする話でもあるんだ。
「男」と「妻」にとって、伯母はどのような存在か
この話でまず押さえたいのは、伯母が男にとってどのような存在だったかということ。
本文には、
をばなむ親のごとくに、若くより添ひてある
とあるよね。
これは、男が若いころに親を亡くしたため、伯母が親のように男に寄り添って育ててきたということ。
つまり、男にとって伯母は、ただの親戚ではなく、親の代わりのような大切な存在だったんだ。
一方で、妻にとって伯母は、年老いて腰が曲がり、世話の必要な邪魔な存在として見られている。だから妻は伯母を憎み、男にも悪く言い聞かせてしまうんだね。
「老いかがまりてゐたる」と「二重にてゐたり」
伯母の老いた様子は、本文で二度表現されているよ。
老いかがまりてゐたる
いといたう老いて、二重にてゐたり
どちらも、伯母がたいへん年を取り、腰が曲がっている様子を表しているよ。
「二重にてゐたり」は、体が二つに折れたように曲がって座っている、というかなり強い表現だね。
テストでは、「老いかがまりてゐたる」と同じ内容を表す部分を抜き出す問題として、「いといたう老いて、二重にてゐたり」が出ることがあるよ。
「おろかなること多く、このをばのためになりゆきけり」は誰の様子か
ここは主語を間違えやすいところだよ。
昔のごとくにもあらず、おろかなること多く、このをばのためになりゆきけり。
これは、男の様子を表しているよ。
妻から伯母の悪口を聞かされ続けたことで、男は昔のようには伯母を大切にしなくなった。つまり、伯母に対する扱いがおろそかになっていった、という意味なんだ。
伯母自身がおろそかになったという意味ではなく、男の伯母への接し方が、おろそかになっていったと読むのがポイントだよ。
「さしてむ」とは何をすることか
妻は男に、伯母を深い山へ捨てるように何度も責めたね。
「持ていまして、深き山に捨て給びてよ。」とのみ責めければ、責められわびて、さしてむと思ひなりぬ。
「さしてむ」は、「そうしてしまおう」という意味だよ。
では、「そう」とは何を指しているのかというと、直前の妻の言葉である「持ていまして、深き山に捨て給びてよ。」だね。
つまり、男は妻に責められて困り果て、伯母を深い山へ連れて行って捨ててしまおうと思うようになったんだ。
男の気持ちはどのように変化したのか
この話でいちばん大切なのは、男の気持ちの変化だよ。

流れを整理すると、こうなるよ。
- 若いころ、伯母に親のように育てられる。
- 妻から伯母の悪口を聞かされ、伯母への態度が昔のようではなくなる。
- 妻に責められ、伯母を山に捨てようと思う。
- 伯母を山に置いて逃げ帰る。
- 家に帰って、長年の伯母の恩を思い出し、悲しくなる。
- 月を見て、心を慰めることができず、和歌を詠む。
- ふたたび山へ行き、伯母を迎えて連れ帰る。
男は、最初から伯母を憎んでいたわけではないんだ。
妻の言葉に流され、腹を立てて伯母を捨ててしまうけれど、帰ってから伯母の恩を思い出し、深く後悔する。ここが、この話の中心なんだよ。
男が伯母を迎えに行ったきっかけ
男が伯母を迎えに行くきっかけになったのは、月だよ。
本文では、山の上から出た月が、とても明るく描かれている。
月もいと限りなく明かく出でたるを眺めて、夜一夜、寝も寝られず
明るい月を見ることで、男は山に置いてきた伯母のことを思い出し、悲しみがさらに深くなる。
月は、男の後悔や悲しみを引き出す大切な存在として描かれているんだね。
和歌「わが心慰めかねつ更級や姨捨山に照る月を見て」
この話の中心にある和歌が、次の歌だよ。
わが心慰めかねつ更級や姨捨山に照る月を見て
現代語訳は、
私の心は慰めることができない。更級の姨捨山に照る月を見て。
という意味だよ。
「慰めかねつ」は「慰めることができない」という意味。男は、月を見ても心が慰められるどころか、むしろ悲しみが深くなっているんだ。
句切れは、二句切れ。
「わが心慰めかねつ」で一度意味が切れるよ。
また、「姨捨山に照る月を見て、わが心慰めかねつ」という語順を入れ替えた形とも読めるので、倒置法が使われていると押さえておこう。
この歌は、伯母を捨ててしまった男の後悔と悲しみを、月の光と結びつけて表しているんだ。

大和物語「姨捨」文法
ここでは、「姨捨」でテストに出やすい文法を整理するよ。
「をばなむ親のごとくに、若くより添ひてあるに」の係り結び
この文には、係助詞「なむ」が使われているよ。
をばなむ親のごとくに、若くより添ひてあるに
本来、係助詞「なむ」は、文末を連体形にする働きがあるよ。
ここでも「あり」が連体形のあるになっている。
ただし、そのあとに接続助詞「に」が続いているので、文がそこで終わらず、次へ流れているよね。
このように、係り結びの結びにさらに助詞がついて文が続いていく形を、係り結びの流れ(結びの流れ)というんだ。
「親のごとくに」の「ごとくに」
「親のごとくに」は、「親のように」という比況の意味を表す表現だよ。文法上は、比況の助動詞「ごとし」系の語法として押さえておくと安心だね。
意味は「親のように」。
伯母が、男にとって親の代わりのような存在だったことを表しているんだ。
「老いかがまりてゐたる」の「たる」
「老いかがまりてゐたる」の「たる」は、完了・存続の助動詞「たり」の連体形だよ。
ここでは、伯母が年老いて腰が曲がり、その状態が続いているので、存続の意味で考えよう。
「さしてむと思ひなりぬ」
「さしてむ」は、文法問題でとても出やすいところだよ。
さしてむと思ひなりぬ
「さしてむ」は、
- さ:副詞。「そう」という意味。
- し:サ行変格活用「す」の連用形。
- て:強意の助動詞「つ」の未然形。
- む:意志の助動詞「む」の終止形。
と分けられるよ。
意味は、「そうしてしまおう」。
ここでは、妻が言ったように伯母を深い山へ捨ててしまおう、という男の決意を表しているんだ。
「寺に尊き業すなる」の「なる」
「寺に尊き業すなる」は、「す」+伝聞の助動詞「なり」の連体形「なる」で、「するそうだ」という意味になるよ。
意味は、「〜するそうだ」。
つまり、「寺で尊い仏事をするそうです」という意味になるんだ。
敬語「いざ給へ」「見せ奉らむ」「持ていまして」
この話では、敬語もテストで出やすいよ。
| 表現 | 文法・意味 |
|---|---|
| いざ給へ | 「給へ」は尊敬語。意味は「さあ、いらっしゃい」。伯母に対する敬意を表す。 |
| 見せ奉らむ | 「奉る」は謙譲語。「お見せ申し上げよう」という意味。 |
| 持ていまして | 「います」は「行く・来る・いる」などの尊敬語で、「おいでになる」という意味を表すよ。ここでは「お連れになって」と訳すと自然。 |
| 捨て給びてよ | 「給び」は尊敬の補助動詞。「てよ」は接続助詞「て」+命令・依頼の終助詞「よ」と考えると安全。「捨ててください」という意味。 |
ただし、ここでの敬語は、男や妻が本当に伯母を大切にしていることだけを示すわけではないよ。
とくに男の「寺に尊き業すなる、見せ奉らむ」は、伯母をだまして山へ連れて行くための言葉でもある。丁寧な言い方の裏に、残酷な行動が隠れている点にも注意しよう。
「高き山の峰の、下り来べくもあらぬに」
「高き山の峰の」の「の」は、同格の格助詞として考えるよ。
「高い山の峰で、下りてくることができそうもない所に」という意味になるんだ。
また、「下り来べくもあらぬ」は、ひとまとまりで「下りてくることができそうもない」という意味で押さえると分かりやすいよ。「べく」は助動詞「べし」の連用形で、ここでは可能の意味で読むと自然だね。
「寝も寝られず」
「寝も寝られず」は、寝ることもできずという意味だよ。
「られ」は可能の助動詞「らる」の未然形、「ず」は打消の助動詞だね。
伯母を山に捨てた後悔や悲しみで、男が一晩中眠れなかったことを表しているんだ。
「かく詠みたりける」の「ける」
「かく詠みたりける」の「ける」は、過去の助動詞「けり」の連体形だよ。
ここでは、後ろに「歌」のような体言が省略されていると考えることができるよ。
つまり、「このように詠んだ歌」という形で、次の和歌につながっているんだね。
また、「詠みたりける」で文を余韻をもって止めているようにも見えるため、連体形止めとして押さえておくとよいよ。
大和物語「姨捨」品詞分解
ここでは、テストで特に問われやすい部分を中心に品詞分解を確認するよ。
信濃の国に更級といふ所に、男住みけり。
| 信濃の国 | 名詞 |
| に | 格助詞:場所 |
| 更級 | 名詞 |
| と | 格助詞:引用 |
| いふ | 動詞:ハ行四段活用「いふ」の連体形 |
| 所 | 名詞 |
| に | 格助詞:場所 |
| 男 | 名詞 |
| 住み | 動詞:マ行四段活用「住む」の連用形 |
| けり | 助動詞:過去「けり」の終止形 |
若き時に親は死にければ、をばなむ親のごとくに、若くより添ひてあるに、
| 若き | 形容詞:ク活用「若し」の連体形 |
| 時 | 名詞 |
| に | 格助詞:時 |
| 親 | 名詞 |
| は | 係助詞:主題の提示 |
| 死に | 動詞:ナ行変格活用「死ぬ」の連用形 |
| けれ | 助動詞:過去「けり」の已然形 |
| ば | 接続助詞:原因・理由 |
| をば | 名詞 |
| なむ | 係助詞:強意 |
| 親 | 名詞 |
| の | 格助詞:連体修飾格 |
| ごとくに | 比況の表現。「〜のように」という意味 |
| 若く | 形容詞:ク活用「若し」の連用形 |
| より | 格助詞:起点 |
| 添ひ | 動詞:ハ行四段活用「添ふ」の連用形 |
| て | 接続助詞:単純接続 |
| ある | 動詞:ラ行変格活用「あり」の連体形。係助詞「なむ」の結び |
| に | 接続助詞:逆接・単純接続 |
この妻の心憂きこと多くて、この姑の、老いかがまりてゐたるを常に憎みつつ、
| この | 連体詞 |
| 妻 | 名詞 |
| の | 格助詞:連体修飾格 |
| 心憂き | 形容詞:ク活用「心憂し」の連体形 |
| こと | 名詞 |
| 多く | 形容詞:ク活用「多し」の連用形 |
| て | 接続助詞:単純接続 |
| この | 連体詞 |
| 姑 | 名詞 |
| の | 格助詞:主格 |
| 老いかがまり | 動詞:ラ行四段活用「老いかがまる」の連用形 |
| て | 接続助詞:単純接続 |
| ゐ | 動詞:ワ行上一段活用「ゐる」の連用形 |
| たる | 助動詞:存続「たり」の連体形 |
| を | 格助詞:動作の対象 |
| 常に | 副詞 |
| 憎み | 動詞:マ行四段活用「憎む」の連用形 |
| つつ | 接続助詞:反復・継続 |
「持ていまして、深き山に捨て給びてよ。」とのみ責めければ、責められわびて、さしてむと思ひなりぬ。
| 持て | 動詞:タ行四段活用「持つ」の連用形「持ち」+接続助詞「て」の音便形 |
| いまし | 動詞:サ行四段活用「います」の連用形。行く・来る・いるなどの尊敬語 |
| て | 接続助詞:単純接続 |
| 深き | 形容詞:ク活用「深し」の連体形 |
| 山 | 名詞 |
| に | 格助詞:場所 |
| 捨て | 動詞:タ行下二段活用「捨つ」の連用形 |
| 給び | 尊敬の補助動詞:バ行四段活用「給ぶ」の連用形 |
| てよ | 接続助詞「て」+終助詞「よ」:命令・依頼 |
| と | 格助詞:引用 |
| のみ | 副助詞:限定 |
| 責め | 動詞:マ行下二段活用「責む」の連用形 |
| けれ | 助動詞:過去「けり」の已然形 |
| ば | 接続助詞:原因・理由 |
| 責め | 動詞:マ行下二段活用「責む」の未然形 |
| られ | 助動詞:受身「らる」の連用形 |
| わび | 動詞:バ行上二段活用「わぶ」の連用形 |
| て | 接続助詞:単純接続 |
| さ | 副詞 |
| し | 動詞:サ行変格活用「す」の連用形 |
| て | 助動詞:強意「つ」の未然形 |
| む | 助動詞:意志「む」の終止形 |
| と | 格助詞:引用 |
| 思ひなり | 動詞:ラ行四段活用「思ひなる」の連用形 |
| ぬ | 助動詞:完了「ぬ」の終止形 |
月のいと明かき夜、「嫗ども、いざ給へ。寺に尊き業すなる、見せ奉らむ。」と言ひければ、
| 月 | 名詞 |
| の | 格助詞:主格 |
| いと | 副詞 |
| 明かき | 形容詞:ク活用「明かし」の連体形 |
| 夜 | 名詞 |
| 嫗ども | 名詞 |
| いざ | 感動詞 |
| 給へ | 補助動詞:ハ行四段活用「給ふ」の命令形。尊敬 |
| 寺 | 名詞 |
| に | 格助詞:場所 |
| 尊き | 形容詞:ク活用「尊し」の連体形 |
| 業 | 名詞 |
| す | 動詞:サ行変格活用「す」の終止形 |
| なる | 助動詞:伝聞「なり」の連体形。「すなる」全体で「するそうだ」 |
| 見せ | 動詞:サ行下二段活用「見す」の連用形 |
| 奉ら | 補助動詞:ラ行四段活用「奉る」の未然形。謙譲 |
| む | 助動詞:意志「む」の終止形 |
| と | 格助詞:引用 |
| 言ひ | 動詞:ハ行四段活用「言ふ」の連用形 |
| けれ | 助動詞:過去「けり」の已然形 |
| ば | 接続助詞:原因・理由 |
高き山の峰の、下り来べくもあらぬに、置きて逃げて来ぬ。
| 高き | 形容詞:ク活用「高し」の連体形 |
| 山 | 名詞 |
| の | 格助詞:連体修飾格 |
| 峰 | 名詞 |
| の | 格助詞:同格 |
| 下り来 | 動詞:カ行変格活用「下り来」の終止形 |
| べく | 助動詞:可能「べし」の連用形 |
| も | 係助詞:強意 |
| あら | 動詞:ラ行変格活用「あり」の未然形 |
| ぬ | 助動詞:打消「ず」の連体形 |
| に | 格助詞:場所。「所」が省略されている |
| 置き | 動詞:カ行四段活用「置く」の連用形 |
| て | 接続助詞:単純接続 |
| 逃げ | 動詞:ガ行下二段活用「逃ぐ」の連用形 |
| て | 接続助詞:単純接続 |
| 来 | 動詞:カ行変格活用「来」の連用形 |
| ぬ | 助動詞:完了「ぬ」の終止形 |
夜一夜、寝も寝られず、悲しうおぼえければ、かく詠みたりける。
| 夜一夜 | 名詞 |
| 寝 | 動詞:ナ行下二段活用「寝」の未然形 |
| も | 係助詞:強意 |
| 寝 | 動詞:ナ行下二段活用「寝」の未然形 |
| られ | 助動詞:可能「らる」の未然形 |
| ず | 助動詞:打消「ず」の連用形 |
| 悲しう | 形容詞:シク活用「悲し」の連用形「悲しく」のウ音便 |
| おぼえ | 動詞:ヤ行下二段活用「おぼゆ」の連用形 |
| けれ | 助動詞:過去「けり」の已然形 |
| ば | 接続助詞:原因・理由 |
| かく | 副詞 |
| 詠み | 動詞:マ行四段活用「詠む」の連用形 |
| たり | 助動詞:完了「たり」の連用形 |
| ける | 助動詞:過去「けり」の連体形。後ろに「歌」などが省略されていると考える |
と詠みてなむ、また行きて迎へ持て来にける。
| と | 格助詞:引用 |
| 詠み | 動詞:マ行四段活用「詠む」の連用形 |
| て | 接続助詞:単純接続 |
| なむ | 係助詞:強意 |
| また | 副詞 |
| 行き | 動詞:カ行四段活用「行く」の連用形 |
| て | 接続助詞:単純接続 |
| 迎へ | 動詞:ハ行下二段活用「迎ふ」の連用形 |
| 持て来 | 動詞:カ行変格活用「持て来」の連用形 |
| に | 助動詞:完了「ぬ」の連用形 |
| ける | 助動詞:過去「けり」の連体形。係助詞「なむ」の結び |
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青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。 ※サイト全体の運営実績についてはこちらにまとめています。

