「偏西風はなぜ吹くのか」イラストでわかりやすく解説
目次【本記事の内容】
- 1.偏西風とは
- 2.偏西風が吹く仕組み
- 3.偏西風が吹くとどうなるの?
- 4.偏西風と季節風の違い
- 5.まとめ
偏西風とは
【偏西風とは】
偏西風とは、35〜65度の地域の上空で西から東に向かって吹く恒常風のこと
地球の緯度35〜65度のところでは、いつも西から東にむかってばっかり風が吹いている!
それではひとつひとつくわしく説明していくよ。
35〜65度とはどこのこと?
35〜65度は、地球の緯度の角度のことを言っているんだ。
緯度は赤道を基本にして、北半球を北緯、南半球を南緯で数えるよね。
ここでは「35〜65度」とだけ言っているので、つまり北緯か南緯かは関係ないということ。
だから北緯と南緯それぞれの35〜65度のところ どっちもが当てはまるよ。
ということは、地球上に35〜65度の地域は2つあるんだね。
恒常風とは
「恒常」は「一定で変わりがないこと」という意味だよね。
その名の通り、恒常風とは「一年中同じ方向へ吹く風」のことなんだ。
偏西風は「西から東に向かって吹く風」
偏西風とは「偏って」「西から吹く風」という意味なんだ。
「西からばっかり吹く風」というイメージだね。
ちなみに、西風は「西から吹く風のこと」だよ。
風の名前は、「風が吹いてくる方向」を基準につけられているので反対に勘違いしないように注意しよう!
もし風の名前と、吹いてくる方向の関係がわからなくなってしまった時には、「北風」のことを思い出そう。
北風は寒いよね。それは北から風が吹いてくるからだよね。
そう考えれば、風の名前=吹いてくる方向だということが思い出せるね。
偏西風は「西から東に向かってばかり吹く風」だから、一年中同じ方向へ吹く風という意味で恒常風とも呼ばれるんだね。
偏西風が吹く仕組み
偏西風がどんなものかわかったかな?
では、そもそもなんで35〜65度の地域では、一年中西から東に向かって風が吹くのか、その仕組みをみてみよう。
①太陽が地球をあたためる
→上昇気流が発生
まず、太陽によって地球の赤道付近があたためられる。
赤道付近の空気はあたためられて膨張して軽くなり、上の方に行くよね(上昇気流が発生)
そうすると、もとの場所の空気が少なくなる(気圧が低くなる)。
そうして低気圧になったところに、まわりの空気が流れ込む。
②地球上で空気の対流がおこる
すると、流れ込んだもとの場所が低気圧になるので、さらにそこに別のまわりから空気が流れ込んでいくんだ。
こうやって下のイラストのように、空気の対流がどんどん続いていくんだ。
※イラストには北半球の分しか描いていないけれど、南半球にも同じことがおこっていくよ。
こうやって空気の対流で生まれた風のうち、地上付近の風に注目してみよう。
この風を地球全体に描くと、下のイラストのようになるよ。
③地球の自転により風が曲がる
地球上での風の吹き方はわかったかな?では、今度はその風がなぜ曲がるかということを説明するよ。
地球は常に反時計回りに回っているよね。
この地球の自転によって、それぞれの風には「コリオリの力」がはたらいて曲がるんだ。
※中学地理では、「コリオリの力」の詳しい内容まで覚える必要はないよ。
ただ、どうして風が曲がるのかをよく理解するために紹介しているよ。
あっ!本当だ!
ちょうど35〜65度のところの風の向きが西から東になっているね。
コリオリの力とは、回転しているものの上で移動したときに、物体にはたらく慣性のはたらきのことだよ。
言葉で説明するのは難しいので、わかりやすく実験してくれている動画を見つけたよ。
コリオリの力で、北半球(北極点を中心に左回り)では北極点に向かって吹く風は右向きに曲がるんだ。
南半球(南極点を中心に右回り)では南極点に向かって吹く風は左向きに曲がるよ。
その結果、風は「西から東に向かって吹く」ことになるというわけだね。
- 地球が太陽にあたためられることで空気の対流が生まれ風がおきる。
- 地球が自転することでコリオリの力がはたらき、風が曲がる。
- 35〜65度の地域の風は、❷で曲がった結果、西から東へ吹く。
偏西風が吹くとどうなるの?
偏西風が日本に与える影響
日本では、偏西風の影響をうけて、天気が西から東にむかって変わっていくよ。
例えば天気予報を見ていると、九州で雨が降った何日か後に関東で雨が降ったりしているよね。
そして台風。
台風が日本に近づいたあたりから、まるで日本列島に沿ったように動いていくのも偏西風の影響なんだ。
偏西風がヨーロッパの気候に与える影響
ヨーロッパは高緯度にあるので、本当なら寒い地域のはずだよね。
日本の北海道よりも北にあることを考えるとイメージしやすいよね。
でも、偏西風のおかげで比較的温暖(あたたかい)な気候の地域があるんだ。
それはなぜかというと、ヨーロッパには赤道付近であたためられた暖流(あたたかい水温の海流のこと)が流れてきていて、その上を偏西風が吹くので、暖流の上の暖かい空気がヨーロッパに流れ込んでくるからなんだ。
まるでヒーターで温められているみたいだね。
ヨーロッパの気候についてくわしく解説しているページもあるので、合わせてチェックしてみてね!
偏西風と季節風の違い
偏西風は、太陽によって地球があたためられて、さらに地球が回っていることによっておこる風なので、その条件が変わらないかぎりずっと吹く風だよね。
だからもちろん、偏西風と季節には関係がないよね。
季節によっては太陽がなくなってしまうとか、地球の自転が止まったりするなんてあり得ないもんね。
つまり、偏西風は一年中同じ方向へ吹く風なんだ。だから偏西風のことを恒常風というんだね。
それにくらべて、季節風は名前の通り夏と冬などの季節ごとに風向きが変わる風なんだ。
季節風の解説ページも後日作成予定なので確認してみてね。
恒常風と季節風の違い
- 恒常風 … 一年中同じ方向に吹く風
- 季節風 … 夏と冬とで吹く方向が変わる風
偏西風について まとめ
- 偏西風とは、35〜65度の地域の上空で西から東に向かって吹く恒常風のこと
- 恒常風とは「一年中同じ方向へ吹く風」のこと
- 【偏西風が吹く仕組み] まとめ
❶ 地球が太陽にあたためられることで空気の対流が生まれ風がおきる
❷ 地球が自転することでコリオリの力がはたらき、風が曲がる
❸ 35〜65度の地域の風は、❷で曲がった結果、西から東へ吹く - 日本では偏西風の影響を受けて天気が西から東に変わっていく
- 日本では偏西風の影響を受けて台風が日本列島に沿うように移動する
- ヨーロッパの一部の地域では暖流によってあたためられた空気が偏西風によって流れ込むので、高緯度のわりに温暖な気候である
運営者情報
ゆみねこ
詳しいプロフィールを見る
青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。
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南北方向の風の向きの説明が説明になっていないと思います。
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とってもためになりました。
ありがとうございました。
他の解説等も参考させていただきます -
35〜65度の地域の地上付近では、コリオリの力により風が東に曲がるのは分かるのですが、最初のイラストにある通り、上空では南に向かって風が吹いているのですから、同じくコリオリの力により西に曲がり、東向きの風になるような気がします。
何か勘違いしているでしょうか?
「偏西風とは35〜65度の地域の上空で西から東に向かって吹く恒常風のこと」と説明していただいていますが、イラストは地上の風を表しているように思います。
すみません。多少馬鹿でもわかるように説明いただけるととてもありがたいです。 -
説明では、フェレル循環による地表近辺の南寄りの風がコリオリ力で東に曲がって偏西風となる、という説明のように見受けられます。しかし偏西風は、対流圏上層(10,000m近辺)の風ですから、地表付近の風で説明はできないと思います。
説明としては、例えば、「高層の気圧が赤道地方で高く極地方で低いために、北半球では赤道地方から極地方に向けて吹き出す南寄りの風がコリオリ力で曲がり西寄りの風(偏西風)となる」(地衡風平衡)。(一般気象第2版補訂版p176-177, 図7.9, 図7.10)とするのがよいのではないかと考えます。-
確かにその通りですね。
対流圏上層における圧力差(極で低く、赤道で高い)によって生じる気圧傾度力とコリオリ力が釣り合う向きとして考えるのが偏西風の向きを考えるうえで妥当な考え方だと思われました。
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わかりやすくて、自主学にまとめやすかったです。ありがとうございます
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偏西風が低緯度で吹くハドレー循環による貿易風のように地表部で吹く風ならこの説明も成り立ちますが、偏西風は高空で吹いており、フェレル循環で偏西風を説明するのは無理ですね。
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ハドレー循環で低緯度の地表部で吹く貿易風と異なり、高層域の対流圏界面付近で吹く偏西風をフェレル循環で地表部を吹いて発生する風だとの説明は無理がありますね。
対流圏は寒暖差から赤道付近の空気層は16~17kmと高く厚く気圧も高い、極の空気層は8km程度と低く気圧も低くなっている。このことから、高い方から低い方へ空気が流れていく動きがコリオリの力で緯度が30~65°あたりで西へとなり偏西風となるとの説明の方が合っているのではないかと思います。 -
ありがとうございます
とても分かりやすくてよかったです。 これからもどんどん学生さんのために役に立つ情報を教えてもらいたいです。