大和物語「姨捨(姥捨て山)」テスト対策練習問題➁
高校古典で学習する大和物語より「姨捨(姨捨て山)」について、定期テストでよく出題される問題や、過去問をまとめているよ。
大和物語について、お話のポイントや古語の意味、活用の文法問題など、テスト対策に重要なポイントを確認しよう。
次の「姨捨」の原文を読んで、問いに答えなさい。
姨捨(第百五十六段)
信濃の国に更級といふ所に、男住みけり。
若き時に親は死にければ、をばなむ親のごとくに、若くより添ひてあるに、この妻の心憂きこと多くて、この姑の、老いかがまりてゐたるを常に憎みつつ、男にも、このをばの御心のさがなく悪しきことを言ひ聞かせれけば、昔のごとくにもあらず、おろかなること多く、このをばのためになりゆきけり。このをば、いといたう老いて、二重にてゐたり。これをなほ、この嫁、所狭がりて、今まで死なぬことと思ひて、よからぬことを言ひつつ、「持ていまして、深き山に捨て給びてよ。」とのみ責めければ、責められわびて、さしてむと思ひなりぬ。
月のいと明かき夜、「嫗ども、いざ給へ。寺に尊き業すなる、見せ奉らむ。」と言ひければ、限りなく喜びて負はれにけり。高き山の麓に住みければ、その山にはるばると入りて、高き山の峰の、下り来べくもあらぬに、置きて逃げて来ぬ。「やや。」と言へど、答へもせで、逃げて家に来て思ひをるに、言ひ腹立てける折は、腹立ちてかくしつれど、年ごろ親のごと養ひつつ相添ひにければ、いと悲しくおぼえけり。
この山の上より、月もいと限りなく明かく出でたるを眺めて、夜一夜、寝も寝られず、悲しうおぼえければ、かく詠みたりける。
わが心慰めかねつ更級や姨捨山に照る月を見て
と詠みてなむ、また行きて迎へ持て来にける。それより後なむ、姨捨山といひける。慰め難しとは、これが由になむありける。
問1
「限りなく喜びて負はれにけり。」とあるが、その理由としてふさわしいものを次の中からすべて選びなさい。
ア:尊い仏事を見に行けるから
イ:冷たかった甥に優しくされたから
ウ:意地の悪い嫁から離れて暮らせるから
エ:美しい月を見に山に入れるから
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答え:ア・イ
問2
「下り来べくもあらぬに、置きて逃げて来ぬ。」を現代語訳しなさい。
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答え:(例)下りてくることができそうもない所に置いて逃げて来た。
問3
「下り来べくもあらぬに」とあるが、「あらぬ」のあとに来るべき省略されている語句として相応しいものを、原文より1文字で答えなさい。
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答え:所
【解説】「下り来べくもあらぬに」は、「下りてこられそうもない所に」という意味。「あらぬ所に」の「所」が省略されている。「所」の文字は、原文の「この嫁、所狭せがりて」より抜き出すことができる。
問4
「やや。」と言った人物を次の中から選びなさい。
ア:をば
イ:男
ウ:男の妻
エ:寺の僧
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答え:ア
問5
「答へもせで」を現代語訳しなさい。
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答え:(例)返事もせずに
問6
男がをばを山に捨てることに至った理由として、正しくないものを次の中から選びなさい。
ア:をばが年をとり、意地が悪くなったから
イ:妻に悪口を聞かされ、をばへの親しみの心が薄れていたから
ウ:妻がをばを疎ましく思っていたから
エ:をばが年をとり、腰がひどく曲がっていたから
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答え:ア
【解説】エについては、男が直接腰が曲がったをばを悪く思ったわけではないが、をばの腰が曲がったことを良く思わない妻にせがまれて男がをばを山に捨てることに至ったため、理由として正しくなくはない。
問7
「腹立ちてかくしつれど」とあるが、「かくしつれ」の内容として正しいものを次の中から選びなさい。
ア:をばを疎ましく思うこと
イ:をばを仏事へ誘ったこと
ウ:山に入ったこと
エ:をばを山へ置いてきたこと
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答え:エ
問8
「夜一夜」の意味として正しいものを次の中から選びなさい。
ア:毎夜
イ:一晩中
ウ:ひと晩も
エ:夜から夜まで
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答え:イ
問9
「いと悲しくおぼえけり」とあるが、その理由として最も正しいものを次の中から選びなさい。
ア:をばに二度と会うことができないから
イ:をばを山に捨てるという酷いことをした自分を許せないから
ウ:長年親のように育ててくれたをばだから
エ:山の中では、をばは無事ではいられないだろうから
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答え:ウ
問10
「わが心慰めかねつ更級や姨捨山に照る月を見て」の和歌の句切れを答えなさい。
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答え:二句切れ
【解説】句切れとは、和歌の途中で意味や調子の流れが一度切れるところのこと。この和歌では、「わが心慰めかねつ」と「更級や姥捨山に照る月を見て」の間で意味が切れている。五・七・五・七・七の二句目で切れているため、二句切れが正解。
問11
「わが心慰めかねつ更級や姨捨山に照る月を見て」の和歌に使われている修辞法を答えなさい。
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答え:倒置法
問12
男が山へをばを迎えにいったきっかけとなったものを、原文から3文字で抜き出して答えなさい。
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答え:照る月
問13
「をばなむ親のごとくに」の「ごとくに」の文法的意味を答えなさい。
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答え:比況
問14
「をばなむ親のごとくに、若くより添ひてあるに、」の係り結びについて文法的に説明しなさい。
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答え:強調の係助詞「なむ」により、結びは連体形となるが、「ある」に接続助詞「に」が付いているため係り結びの消滅が起きている。
【解説】「係り結びの消滅」の他に、「結びの流れ」ともいう。接続助詞が付いていることで、結びが流れていることを説明できているかがポイント。
問15
「老いかがまりてゐたる」の「たる」を文法的に説明しなさい。
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答え:存続の助動詞「たり」の連体形
問16
「さしてむと思ひなりぬ」の「さしてむ」を単語ごとに文法的に説明しなさい。
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答え:
「さ」は副詞、「し」はサ行変格活用の動詞「す」の連用形、「て」は強意の助動詞「つ」の未然形、「む」は意志の助動詞「む」の終止形。
問17
「寺に尊き業すなる」の「なる」を文法的に説明しなさい。
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答え:伝聞の助動詞「なり」の連体形
問18
「高き山の峰の、下り来べくもあらぬに」の 「高き山の峰」の「の」を文法的に説明しなさい
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答え:同格の格助詞
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ゆみねこ
詳しいプロフィールを見る
青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。