ベートヴェン「交響曲第5番ハ短調(運命)」特徴とテスト対策解説

中学音楽で学習するベートーヴェン作曲「交響曲第5番ハ短調(運命)」について、定期テストで必要になるポイントをわかりやすく解説するよ!

作曲者のベートーヴェンについて、「動機」とはなにか、「ソナタ形式」とはなにか、使われている楽器一覧、楽曲についての知識など、交響曲第5番ハ短調の特徴と重要なポイントを確認しよう。

「交響曲第5番ハ短調(運命)」テスト対策ポイント

  • 作曲者はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
  • ベートーヴェンの活躍した音楽的時代は「古典派」から「ロマン派」
  • ベートーベンが活躍した時代は、日本でいうと江戸時代にあたる。
  • 「交響曲第5番ハ短調」が作曲されたころ、日本では本居宣長が古事記伝を完成させた。
  • ベートーヴェンはドイツボンで生まれ、21歳のときにウィーンへ移り住んだ。
  • ベートーヴェンの父は宮廷の音楽家
  • ベートーベンは難聴を患い、ほとんど聴力を失ったと言われている
  • ベートーヴェンは9曲の交響曲、32曲のピアノソナタを残している。
  • 交響曲とは、オーケストラのための大規模な楽曲のこと。
  • 交響曲第5番ハ短調」は、全部で4楽章からなる。
  • 授業で鑑賞したのは、第一楽章。
  • 第一楽章はソナタ形式で書かれている。
  • ソナタ形式とは、提示部、展開部、再現部、コーダの4つのまとまりをもつ形式のこと。
  • 動機とは、旋律のもととなる最も小さなまとまりのこと。

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ベートーヴェン「交響曲第5番ハ短調 (運命)」テスト対策ポイント

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目次

「交響曲第5番ハ短調」基本情報

正式名称交響曲第5番ハ短調(作品67)
通称「運命」
※ベートーヴェンが標題をつけたわけではない
作曲者ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
作曲された年1807~1808年
曲の種類交響曲
(オーケストラのための大規模な楽曲)
演奏形態オーケストラ(管弦楽)
楽章4楽章
(演奏時間:約35分)
第一楽章の形式ソナタ形式
※第四楽章もソナタ形式だよ!
第一楽章の調ハ短調
主音はハ(ド・C)
※フラットの数が3つ
第一楽章の拍子4分の2拍子
第一楽章の速度記号Allegro con brio(アレグロ・コン・ブリオ)
速くいきいきと

「交響曲第5番ハ短調」は、その名前のとおり、ベートーヴェンが作曲した交響曲のうち、5番目に作曲された曲のことだよ。
世界的にとても有名な曲で、通称「運命」と呼ばれているんだ。

海外では「交響曲第5番」と呼ぶほうが一般的だけれど、特に日本では「運命」という呼び方のほうがメジャーかもしれないね。

なぜ「運命」と呼ばれているのか

交響曲第5番ハ短調の有名な動機(あとで解説するよ!)の「ダダダ・ダーン」というメロディーがあるんだけれど、これは一体なにを表しているの?と聞かれたベートーヴェンが、「運命は、このように扉をたたくのだ」と答えたというエピソードがもとになっているんだ。

「運命」が扉をたたいて驚いているベートーヴェンのイラスト

けれど、このエピソード、実はベートーヴェンの秘書が残したメモがもとになっているんだけれど、そのメモが嘘かもしれないと今は言われているんだ。

もし嘘だったとしても、この交響曲第5番ハ短調の激しく緊迫感のあるメロディーには、たしかに「運命」という言葉がピッタリかもしれないね。

ハ短調について

「交響曲第5番ハ短調」はその名のとおり、ハ短調で作られた曲だね。
ハ短調のイメージは、「悲しい」「暗い」「陰鬱とした」「わびしさ」などだよ。
ベートーヴェンにとって、この「ハ短調」は特別な意味をもつもので、それまでの作曲でも「嵐のような英雄的な曲」を表現するために使われてきたよ。

主音は「ハ」(ドレミでいうと「ド」、ABCでいうと「C」)。
フラットは「ロ(シ)」「ホ(ミ)」「イ(ラ)」の3つにつくよ。

つまり、「ハ 二 ♭ホ ヘ ト ♭イ ♭ロ ハ」という音階をもとにして作られている曲だね。

ハ短調の音階とフラットがどこにつくかを説明している図解イラスト

4楽章から構成されている

「交響曲第5番ハ短調」は、全部で4つの楽章で作られているよ。

「楽章」とは?

楽章とは、曲をいくつかに分けたときの、それぞれの部分のこと。
物語の本でも、「第一章」とかあるよね。それとおなじイメージだよ。

学校の授業で鑑賞する、一番有名な「ダダダ・ダーン」が使われているのは第一楽章

交響曲は、原則として3~4つの楽章で作られるんだ。そして、そのうち一つはソナタ形式になっている必要があるよ(例外もある)。
通常、一楽章と四楽章がソナタ形式になっているんだ。

一般的に、それぞれの楽章は次のような特徴になっていることが多いよ。

第一楽章:ソナタ形式でテンポが速め
第二楽章:ゆったりとしている
第三楽章:メヌエットなどの舞曲になっている
第四楽章:フィナーレにふさわしい盛り上がりのある曲

くまごろうくまごろう

「急・緩・舞曲・急」になっているんだね!

それぞれの楽章に特徴があることで、ひとつの曲が物語のようにドラマティックになるよね。

「交響曲第5番ハ短調」も、第一楽章はハ短調で暗く、速いテンポが激しさや緊張感を感じさせるよね。

第二楽章は変イ長調で優しく穏やかなイメージの曲になっているよ。
曲の途中では、ハ長調の「ファンファーレ」も登場するよ。
これは、希望の光を表現していると考えることができるよ。
第一楽章の「絶望・不安」から、第二楽章になると「希望の光」が差し込んでくるんだ。

第三楽章はハ短調に戻り、また不安が襲って来るね。
けれど途中で「フーガ(遁走とんそう曲)」が登場して、絶望に負けずに進んでいくような前向きな印象を与えているよ。そして、そのまま第四楽章へ突入するんだ。
※遁走とは、逃れ走ること。追いかけてくる絶望にのまれまいと、走り続けるイメージだね。

第四楽章はハ長調で演奏されるんだ。
第一楽章の絶望を表すハ短調に対して、フィナーレの第四楽章で希望を表すハ長調を持ってくるところがさすがだよね。
また希望が現れ、絶望に打ち勝つような印象を与えるよ。

「交響曲第5番ハ短調」でベートーヴェンが表現したかったもの

ベートーヴェンは、作曲家・演奏家として致命的である「聴力を失う」ということに、絶望を感じていたんだ。
人との接触を避けて、一度は自殺まで考えたほどだったよ。
第一楽章は、そのときベートーヴェンが味わった「絶望・不安」を表していると考えることができるんだ。

けれどベートーヴェンは、自殺を思いとどまり、音楽家としての自分の使命を全うしようと決意し、そこからさらに意欲的に作曲活動に身を捧げたね。
第二楽章のように希望の光を感じ、第三楽章のようにまた絶望が襲ってきても、第四楽章のように絶望に打ち勝って音楽家としての人生を突き進んでいった、ベートーヴェンの音楽への情熱と思いがこの曲には込められているのではないかな。

「交響曲第5番ハ短調」のそれぞれの楽章の特徴

楽章速度記号調・拍子・形式
第一楽章Allegro con brio
速くいきいきと
ハ短調
4分の2拍子
ソナタ形式
第二楽章Andante con moto
ゆっくり歩くような速さで、動きをつけて
変イ長調
8分の3拍子
変奏曲
第三楽章Allegro
速く
ハ短調
4分の3拍子
複合三部形式
第四楽章Allegro-Presto
速く-急速に
ハ長調
4分の4拍子
ソナタ形式
くまごろうくまごろう

第三楽章には「atacca(アタッカ)」という指示が書かれているよ。

これは、「楽章のさかい目を切ることなく演奏する」という意味なんだ。
第三楽章からそのままつづけて第四楽章を演奏するんだよ。
また襲ってきた絶望に負けずに打ち勝った喜びを表現するには、つづけて演奏されたほうがより伝わるよね。

ちなみに、第三楽章は「複合三部形式」になっているよね。
これは、3つの部分からなる「三部形式」の曲に対して、それぞれの部分がさらにいくつかに分かれている形式のことだよ。

複合三部形式とはどういう構成の曲かを説明している図解イラスト

「交響曲第5番ハ短調」の「動機」とは

動機」というのは、「行動するきっかけ」という意味があるね。
「なんでそうしたかったの?動機は?」なんていうように使うよね。

音楽では、旋律(メロディー)のもとになる最も小さなまとまりのことを、動機と呼ぶんだ。
その曲のメロディーのきっかけ、というところかな。

「交響曲第5番ハ短調」のメロディーは、あの有名な「ダダダ・ダーン」がもとになっているよね。
この「ダダダ・ダーン」が、最も小さなまとまりである「動機」なんだよ。

ベートーヴェン作曲「交響曲第5番」運命の提示部主題1の動機の楽譜と説明の図解イラスト
くまごろうくまごろう

この「動機」という言葉は、テストで必ず出ると言ってもいいくらい だよ。
絶対に漢字で書けるようにしておこう!

ソナタ形式とは

「交響曲第5番ハ短調」の第一楽章の形式は、「ソナタ形式」だよね。

ソナタ形式とは

ソナタ形式とは、提示部、展開部、再現部、コーダ(結尾部)の4つのまとまりをもつ曲の形式のこと。

これはつまり、
「この曲では、こんな主題(メロディー)を使っていきます!!(提示)」
「その主題を、こんなふうにアレンジしてみました!(展開)」
「もう一度もとの主題に戻ります!(再現)」
「さあ!クライマックスです!(コーダ)」
というイメージ。

そもそも「ソナタ」とは何?

「ソナタ」は、イタリア語で「鳴り響く」という意味の「sonata(ソナータ)」がもとになっているよ。
声楽曲の「cantata(カンタータ)」に対して、ソナタは楽器のみで演奏される器楽曲なんだ。

器楽曲には歌詞がないので、もし単調なメロディーがずっと続いていたら、聴いている人は飽きてしまうかもしれないよね。
だから、曲に物語性を持たせて、ドラマティックにするために確立されたのが「ソナタ形式」なんだ。

たとえば、交響曲第5番ハ短調の動機「ダダダ・ダーン」で考えてみよう。

提示部で、「ダダダ・ダーン」という動機(主題)が初登場するよ!
主題は、いくつかのパターンになっていることもあるんだ。「交響曲第5番ハ短調」では、2つの主題があると考えられているよ。(3つとする考え方もある)

まずは第1主題(Aメロ)。

ベートーヴェン作曲「交響曲第5番」運命の提示部主題1の動機の楽譜と説明の図解イラスト

第2主題(Bメロ)はホルンで演奏されるよ。

ベートーヴェン作曲「交響曲第5番」運命の提示部主題2の動機の楽譜と説明の図解イラスト
くまごろうくまごろう

通常、この「提示部」が1回くり返して演奏されるよ。

2つの主題の紹介(提示)が終わったので、今度はその主題たちをアレンジしていくよ。
これが「展開部」だね。
「ダダダ・ダーン」がちょっと変身していくよ!

ベートーヴェン作曲「交響曲第5番」運命展開部の動機の楽譜と説明の図解イラスト

再現部では、アレンジした主題たちがまたもとのメロディーに戻って演奏されるんだ。
もとの「ダダダ・ダーン」がまた登場するよ!

ベートーヴェン作曲「交響曲第5番」運命の再現部の動機の楽譜と説明の図解イラスト

再現部の途中では、オーボエによる独奏(ソロ)が入るよ。

そして再現部での主題2の演奏は、ホルンからファゴットに変わっているのもポイント。
そのままホルンを使うのではなく、少し変化をもたせているんだね。

そして曲はクライマックスを迎え、最後をしめくくるのにふさわしい壮大な演奏がされるよ。
まさにフィナーレというところだね。
これが、コーダだよ。

ベートーヴェン作曲「交響曲第5番」運命のコーダの動機の楽譜と説明の図解イラスト

この「提示部」「展開部」「再現部」「コーダ」という言葉と、順番は絶対に覚えておこう!

「交響曲第5番ハ短調」曲の種類と演奏形態

曲には、ピアノで弾くための曲とか、バイオリンで弾くための曲とか色々種類があるね。

「交響曲第5番ハ短調」は、その題名のとおり「交響曲」という種類で、これは「オーケストラのための大規模な楽曲」のことなんだ。

くまごろうくまごろう

オーケストラのたくさんの楽器の「響きが交わる曲」と考えるとわかりやすいね。

オーケストラとは?

オーケストラは、「管弦楽かんげんがく」のことで、「管楽器」や「弦楽器」「打楽器」「鍵盤楽器」「電気楽器」などの楽器で演奏されるよ。

室内オーケストラなどは1声部が1人、つまりそれぞれの楽器が1人ずつだったりするのに対して、オーケストラはそれぞれの楽器が複数の人で演奏されるんだよ。

オーケストラの演奏を見たことがあるかな?
中には1人で演奏している楽器もあるけど、バイオリンなんかは、たくさんの人が一緒に演奏しているよね。

交響曲が「オーケストラのための大規模な楽曲」なんだから、演奏形態はもちろん「オーケストラ」だね。

「交響曲第5番ハ短調」でつかわれる楽器一覧

「交響曲第5番ハ短調」で使われる楽器を紹介するよ。
「交響曲第5番ハ短調」の演奏形態は、オーケストラなので、「弦楽器」「木管楽器」「金管楽器」「打楽器」が使われるよ。

交響曲第5番ハ短調で使われている楽器の一覧イラスト
弦楽器ヴァイオリン
ヴィオラ
チェロ
コントラバス
木管楽器フルート
ピッコロ(四楽章)
オーボエ
クラリネット
ファゴット
コントラファゴット(四楽章)
金管楽器ホルン
トランペット
トロンボーン(四楽章)
打楽器ティンパニ

当時の管弦楽(オーケストラ)では、ピッコロ・コントラファゴット・トロンボーンは「珍しい楽器」とされていたんだ。
この3つの楽器を交響曲で使ったのは、ベートーヴェンのこの「交響曲第5番ハ短調」が初めてだったよ。
ベートーヴェンは、第四楽章で「歓喜」を表現するためにピッコロとトロンボーンを導入したんだ。

それからは、この3つの楽器はオーケストラでは定番となったことからも、「交響曲第5番ハ短調」は特別な曲とされているよ。

「交響曲第5番ハ短調」作曲者ベートーヴェンについて

「交響曲第5番ハ短調」を作曲したのは、ドイツの作曲家・ピアニストであるベートーヴェン(1770~1827)。
正式な名前は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンというよ。

ベートーヴェンの肖像画のイラスト
ドイツ
都市ボン
正式な名前 Ludwig van Beethoven
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
生没1770年12月16日~1827年3月26日
※誕生日は諸説有り
通称楽聖
音楽的時代古典派〜ロマン派
ベートーヴェンとはどんな人物かについて特徴をまとめた図解イラスト

ベートーヴェンはドイツのボンで生まれたよ。

ベートーヴェンの人生史の図解

父親による厳しい指導と虐待

ベートーヴェンのお父さんは、宮廷に使える音楽家だったよ。
そんなお父さんによって、ベートーヴェンはたった3歳のころから音楽指導を受け始めたんだ。

ベートーヴェンのお父さんは、大のお酒好きでお金をドンドン使ってしまう人だったので、一家は生活に困るくらいいつもお金に苦労していたよ。
お父さんは、ベートーヴェンにピアノの才能があると気が付くと、ベートーヴェンに「少年音楽家」として稼いでもらおうと期待して、とても厳しく指導したんだ。
それこそ、「第二のモーツァルト」のように仕上げようと計画したんだ。
その厳しさは、まるで虐待のようだったとも言われているよ。

ベートーヴェンが満足に演奏できなかったときは暴力をふるったし、上手く弾けるようになるまで、部屋から出ることも食事をすることも許されなかったんだ。
そのせいで一時は、ベートーヴェンは音楽が嫌いにまでなってしまったこともあるんだって。

ベートーヴェンが16歳のころには、お母さんが亡くなり、お父さんもアルコール依存性のせいで仕事ができなくなってしまったので、ベートーヴェンが弟2人も含む一家を大黒柱として支えていたりもしたよ。
暴力的でお酒におぼれていたお父さんのことは、ベートーヴェンは最後まで憎んでいたと言われているよ。
22歳の時にお父さんは亡くなるんだけれど、当時ウィーンにいたベートーヴェンはお葬式にも帰らなかったんだ。

音楽の中心地、ウィーンへ

ベートーヴェンは、21歳の時にオーストリアのウィーンへ移り住んだよ。
なぜなら、あの有名なモーツァルトも活躍しているウィーンはそのころの音楽の中心地だったから。
また、「音楽の母」としても知られるハイドンに、ベートーヴェンは弟子入りすることができたんだ。
ハイドンのもとで、ベートーヴェンは作曲を学んでいったよ。

ベートーヴェンの過ごしたドイツとオーストリアの位置関係を説明している図解いらすと

難聴に絶望する

ウィーンでピアノ演奏や作曲活動を頑張っていたベートーヴェンだけれど、とても残酷な試練が待ち受けていたんだ。

ベートーヴェンは20代後半のころ耳に異常を感じ初めて、とうとう28歳のころには最高度難聴者(耳元で話をされても、聞き取れないくらい)になってしまったよ・・・。
※ベートーヴェンの難聴の程度や年齢については、色々な説があるよ。

たろうたろう

音楽家なのに、耳が聞こえなくなるなんて…!

サッカー選手が事故で足を切断してしまうとか…
画家なのに、目が見えなくなってしまうとか…
おきかえて想像してみると、ものすごい絶望だっただろうね…。

作曲家・演奏家として、耳が聞こえなくなるということは致命的なことなんだ。
まわりにも知られれば、「もう彼は作曲家としては無理だな」と思われてしまう可能性もあるよね。
そのため、ベートーヴェンは聴力を失っていっていることを必死に隠して、できるだけ人との接触を避ける生活を送っていたよ。

あまりの辛さに、ベートーヴェンは31歳のときに自殺を考え、遺書まで残したことがあるんだ(ハイリゲンシュタットという町で書いたことから、「ハイリゲンシュタットの遺書」と呼ばれる)。
この遺書で、「耳が聞こえなくなっていること」と自身の絶望を告白したんだ。

くまごろうくまごろう

難聴の原因は、「鉛中毒」説、「耳硬化症」説、「父親からの暴力」説などがあるよ。

芸術のために乗り越える

でも、ベートーヴェンは諦めなかったよ。
ピアニストとしての活動は難しくても、作曲家として芸術の道を進み続け、音楽家としての自分の使命を全うすることを決意したんだ。
遺書には、「自分の生命(いのち)を絶つまでほんの少しの所であった。…私を引き留めたのは、ただ”芸術”だけであった」と書かれているよ。

これまでの音楽家活動で、ベートーヴェンの頭の中にはすでに楽器それぞれの音色がインプットされていたんだ。
ベートーヴェンは、頭の中で音楽を鳴らして、曲を生み出しつづけたんだよ。

「交響曲第5番ハ短調」も、1807年~1808年、ベートーヴェンが37歳ごろに作曲された曲だよね。
そう、すでに耳がほぼ聞こえない状態でこの曲は作られたんだ。

交響曲で最期の作品となった第九を初披露するときには、耳が聞こえないながらも自ら指揮までしたというエピソードもあるよ。

ベートーヴェンと補聴器

当時は、ブリキ式のラッパのようなものを使っていたよ。
現代の補聴器のように電気式ではなくて、細い部分を耳にあてて、口の広い部分で音を集める仕組みだね。
メガホンを耳に当てるのとおなじイメージかな。

骨伝導も使っていた

ベートーヴェンは、歯でくわえた棒をピアノにあてて、音の振動を感じ取っていたとも言われているよ。
難聴に屈することなく、それでも音楽と向き合おうとしていたベートーヴェンの情熱が伝わるね。

「楽聖」として称えられる

ベートーヴェンは、作曲家・演奏家としては致命的な「聴力を失う」という運命にも負けることなく、意欲的に音楽活動をつづけて、たくさんの名曲を生み出してきたんだ。
それまで、「形式的」でしかなかった音楽を「芸術」にまで高めたベートーヴェンの音楽活動は、その後の作曲家たちに「革命」ともいえるような大きな影響を与えたよ。

そのため、ベートーヴェンは「楽聖(歴史上の偉大な音楽家という意味)」として称えられているんだ。

ベートーヴェンの人柄と病死について

肖像画でも気難しそうな表情をしている印象が強いベートーヴェン。
実際、とても怒りっぽく、気に入らないことがあると物を投げたり怒鳴りつけることも多かったんだ。
難しい性格から、使用人をすぐにクビにしたり、引越しを何度もしたりしているよ。

ベートーヴェンはずっと独身のままだったけれど、「不滅の恋人」という宛名で残した手紙が見つかっていて、とても愛していた女性がいたことがわかっているよ。
ただ、その女性がだれだったのかは「謎」として、今でもいろいろな説があるんだ。

ベートーヴェンはコーヒーとワインが大好きで、ワインには酢酸鉛(さくさんなまり)を入れて飲んでいたと言われているよ。
なぜなら、酢酸鉛は砂糖とそっくりな味なんだ。
高価な砂糖の代わりに入れていたんだね。

それが原因か、ベートーヴェンは鉛中毒で体を壊したとも言われているんだ。
そして最終的には、お酒の飲みすぎによる肝硬変を発症して、56歳で亡くなってしまったよ。

ベートーヴェンのお葬式には2万人もの参列者がいたということから、ベートーヴェンが音楽界に与えた影響の大きさ、人々の心を動かす作品を多く生み出した音楽家だったということがわかるね。

ベートーヴェンの作品について

ベートーヴェンが生み出した作品は素晴らしいものばかりなんだ。
ここでは、交響曲とピアノソナタについて紹介するよ。

9曲の交響曲

ベートーヴェンが作曲した交響曲は、全部で9曲
有名なものを紹介するね。

交響曲第3番「英雄」
もとはナポレオンのことを讃える曲として作曲したんだ。
※ナポレオンが皇帝につくと、「裏切られた」と激怒して、表紙をぐしゃぐしゃにしてしまったと言われているよ。

交響曲第5番「運命」
今回学習する曲だね。

交響曲第6番「田園」
ベートーヴェンが唯一、自分で名前をつけた交響曲。ベートーヴェンが好きだった田舎での思い出を表現していると言われているよ。
ディズニー作品「ファンタジア」でもこの作品が使われているよ。

交響曲第7番
「のだめカンタービレ」のメインテーマで使われるようになって、日本での知名度が上がったよ。

交響曲第9番「合唱」
「歓喜の歌」「第九」とも呼ばれるよ。一番有名な作品といっても良いくらいの傑作けっさくで、名前のとおりオーケストラ演奏と、独唱・合唱が組み合わさった作品。日本では、年末によく演奏されるよ。

ベートーヴェンは、交響曲10番を作曲途中に亡くなってしまったんだ。
だから、第九がベートーヴェン最後の交響曲となったよ。

32曲のピアノソナタ

ピアノソナタとは、「ソナタ形式」で作られているピアノのための作品。
ベートーヴェンは、全部で32曲のピアノソナタを残しているよ。
特に有名なものを紹介するよ。

ピアノソナタ8番「悲愴ひそう
ベートーヴェンが名前を付けたという説もある。
※音源は2楽章の有名なフレーズ

ピアノソナタ14番「月光」
ベートーヴェンが愛した女性に贈った曲と言われているよ。

ピアノソナタ15番「田園」

ピアノソナタ17番「テンペスト」
テンペストは、「嵐」という意味。

ピアノソナタ21番「ワルトシュタイン」
ワルトシュタイン伯爵に贈った曲。

ピアノソナタ23番「熱情」
「熱情」には、「交響曲第5番ハ短調」と同じ動機「ダダダ・ダーン」が使われているよ。

同じ動機が出てくることから、「交響曲第5番ハ短調」の関連作品と考えることもできるんだ。
そのため、ピアノソナタ「熱情」はテストでも狙われやすいかもしれないね。

ピアノソナタ26番「告別」
ベートーヴェンが名前を付けた曲。大切な友人のルドルフ大公との別れと再会がテーマになっているよ。

この中で、「悲愴」「月光」「熱情」は、ベートーヴェンの3大ピアノソナタと呼ばれているよ。
この3つはテストでも問題にでることがあるので、できるだけ覚えておこう。

ベートーヴェンの活躍した音楽的時代

ベートーヴェンが活躍した時期は、音楽的時代でいうと「古典派」から「ロマン派」にかけてなんだ。

古典派とロマン派の違いのひとつが、古典派は「貴族のための音楽」だったのが、ロマン派では「庶民のための音楽」になったこと。
音楽に、「芸術」や作曲家の「感情」を表現するようになったのがロマン派なんだ。
ハイドンやモーツァルトの肖像画を思い出してみて。
みんな、宮廷音楽家としての正装である「カツラ」を着けているよね。

それに対して、ベートーヴェンは自分の髪をそのまま振り乱した姿だよね。
「自分は、貴族のために働く音楽家ではない、芸術のための音楽家なのだ」というベートーヴェンの意思表示だったと考えられるんだよ。

音楽が貴族のものから庶民のものになっていたきっかけのひとつが、「フランス革命」。
王と貴族などによる権力をくずして、市民が自由と平等を勝ち取ろうと立ち上がった革命だね。
絶対王政から共和制(人民が主権をもつ体制)になったのに合わせて、音楽も貴族が楽しむものから、庶民のものになったんだ。

ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」は、フランス革命で活躍したナポレオンに献呈するために作曲されたものだよ。
※ナポレオンが皇帝の座につくと、今度はナポレオンが権力を握るつもりなのではないかと激怒したベートーヴェンは、表紙にあったナポレオンの名前をぐしゃぐしゃにかき消してしまったよ。

「古典派」には、他にハイドン、モーツァルト、「ロマン派」には他にショパン、シューベルトなどが活躍しているよ。
特にモーツァルトは、ベートーヴェンと同じ時代にウィーンで活躍した作曲家なので、テストで狙われることもあるので、覚えておこう。

この古典派〜ロマン派は、日本でいうと江戸時代にあたるんだ。
「交響曲第5番ハ短調」が作曲されたころは、ちょうど日本で本居宣長もとおりのりながが「古事記伝こじきでん」を完成させたころだよ。

「交響曲第5番ハ短調」テスト対策ポイントまとめ

「交響曲第5番ハ短調(運命)」テスト対策ポイント

  • 作曲者はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
  • ベートーヴェンの活躍した音楽的時代は「古典派」から「ロマン派」
  • ベートーベンが活躍した時代は、日本でいうと江戸時代にあたる。
  • 「交響曲第5番ハ短調」が作曲されたころ、日本では本居宣長が古事記伝を完成させた。
  • ベートーヴェンはドイツボンで生まれ、21歳のときにウィーンへ移り住んだ。
  • ベートーヴェンの父は宮廷の音楽家
  • ベートーベンは難聴を患い、ほとんど聴力を失ったと言われている
  • ベートーヴェンは9曲の交響曲、32曲のピアノソナタを残している。
  • 交響曲とは、オーケストラのための大規模な楽曲のこと。
  • 交響曲第5番ハ短調」は、全部で4楽章からなる。
  • 授業で鑑賞したのは、第一楽章。
  • 第一楽章はソナタ形式で書かれている。
  • ソナタ形式とは、提示部、展開部、再現部、コーダの4つのまとまりをもつ形式のこと。
  • 動機とは、旋律のもととなる最も小さなまとまりのこと。
くまごろうくまごろう

ここまで学習できたら、「交響曲第5番ハ短調」のテスト対策練習問題のページにチャレンジしてみよう!

運営者情報

青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。

感想や意見を聞かせてね

  1. 匿名 より:

    いいね

  2. より:

    いいね

  3. 匿名 より:

    これからテストなので役立ちます。
    ありがとうございます!

  4. 音楽苦手 より:

    ・古典派時代は演奏を聞く場が次第に○○へ開かれた。
    ・悲愴の楽章について、それぞれの楽章に○○がつけられている。
    最後に交響曲第5番の大きな特徴3つ教えてください!!テストの過去問題に出たんですが全く歯がたちませんでした。何個も質問すみません。

    • yumineko より:

      音楽苦手さん

      かなり難しい問題ですね!

      ・古典は時代は演奏を聞く場が次第に「民衆」へ開かれた。
      →それまでは、音楽は貴族が楽しむものでした。それが、ベートーヴェンが活躍する古典派時代にだんだん一般民衆が聴くこともできるものになっていったということです。
      こちらの問題は、高い確率で「民衆」で正解かと思います。

      ・悲愴の楽章について、それぞれの楽章に「標題」がつけられている。
      →こちらの問題ですが、「標題」ぐらいしか考えられないのですが、正解かどうかが自信がありません。
      というのは、ベートーヴェンのピアノソナタ全32曲のうち、ベートーヴェン自身によって「標題」を付けられた曲が「悲愴」と「告別」という2曲のみになっています(有名な熱情、月光は第三者によって付けられたものです)。
      とはいえ、悲愴の「それぞれの楽章」には特に標題のようなものはつけられていないかと認識しています。
      実際の楽譜も持っているので確認しましたが、やはり楽章に対しての特別な記載は何もありませんでした。
      情報も可能な限り探してみましたが、やはりそれらしい情報は見つけることができませんでした。
      こちらの問題について、もし正解がお分かりになりましたら、ぜひ教えていただけると とても勉強になります。

      ・交響曲第5番の大きな特徴3つ・・・
      →こちらも、確実に正解と言えるようなものがないように思います。
      問題の意図としては、「交響曲第5番」だけに見られる特徴ということでしょうか・・。もし、交響曲の特徴ということであれば、4つの楽章で構成されているなど、交響曲ならではの特徴を挙げることができるかとは思いますが。
      「交響曲第5番」だけに見られる特徴というのは、かなり難しいです。
      たとえば、「運命」という名称も、あくまで通称でベートーヴェンが付けたものではないですし、「ジャジャジャジャーン」という有名な主題(動機)も、動機があること自体は交響曲第5番だけの特徴ではないので・・。
      問題の意図を、もう少し詳しく知りたいところではあります。

      かなり難しい問題が出るようで、驚きました。
      お役に立てず、大変申し訳ないです。

  5. 匿 名太郎 より:

    大変助かりました!!

  6. (=^・^=)ニャー より:

    レポートをまとめるのに、とても役立ちました。
    一つ質問です。この曲には、前奏がありませんなぜですか?
    できれば答えてくれると嬉しいです。お願いします‼

    • yumineko より:

      (=^・^=)ニャーさん

      ありがとうございます!
      たしかに、ベートヴェンの「運命」は、前奏もなくいきなり動機の「タタタターン!」が始まりますね。
      ベートヴェンがはっきりと理由を言っているわけではないので、これは憶測にはなってしまうのですが、
      以下のような効果や理由があるのではないでしょうか。

      ➀曲のはじめに突然動機が提示されることで、聴き手に強い印象を与えることができる。
      ➁ベートヴェンが、「タタタターン」という動機を「運命がこのように扉をたたく」と言ったという説があることから、
      「運命はとつぜん、前触れもなくやってくる」というドラマティックさを演出したかった。

      現代でも、流行っている歌などのなかには、突然サビの部分から始まるものがあったりしますよね。
      (残酷な天使のテーゼとか・・)そういう曲だと、やはり印象に残ったりしませんか?

      少しでも参考になれば嬉しいです(^^)

      • (=^・^=)ニャー より:

        ありがとうございます。
        分かりやすく説明してくれて、とても役立ちました‼
        これで、レポートまとめられそうです‼

  7. バキバキ童貞 より:

    わかりやすい!テスト勉強に役立てるわ

  8. バキバキ童貞 より:

    これでテストeasy

  9. より:

    これからテストだから分かりやすかった!テスト前にちょうどいい!

  10. みかん より:

    とても参考になりました!
    感じられることや、それに関連する音楽の特徴、その働きについても載せて欲しいです-(. .)-お願いします

  11. 音楽嫌い より:

    わかりやすい

  12. 名無しさん より:

    マジで助かります!