ATPとは?ATPの役割と構造「生命活動とエネルギー」を解説

高校生物で学習する「生命活動とエネルギー」について、「ATP」とは何か、ATPの構造と、役割について解説するよ。

生命活動とはどういうことなのか、生物はどうやってエネルギーを取り入れ、生命活動に利用しているのか、呼吸と光合成の違いや、代謝とはなにか、代謝の「同化」と「異化」とはどういうことかを、くわしく解説するよ。

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ATPとは?ATPの役割と構造 「生命活動とエネルギー」を解説

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目次

生命活動とエネルギー

生き物は、食べたり、運動したり、考えたり、毎日いろいろな活動をしているね。

自発的にする活動の他にも、体が勝手にする活動、つまり、食べたものを消化・吸収したり、体温を一定に保ったりするような、生きていくために必要な活動もしているね。

そのような生物の活動を全部まとめて、生命活動というよ。

そして、生物が生命活動を行うにはエネルギーが必要なんだ。

生命活動で使うエネルギーのもとになるのは、食事などで体内に取り入れた有機物だよ。

例えば運動をするときには、有機物に含まれる化学エネルギーが、運動エネルギーや熱エネルギーに変換されているよ。

他にも、ホタルは化学エネルギーを光エネルギーに変えて発光しているし、デンキウナギは電気エネルギーに変えて発電しているよ。私たちヒトにはできないことだね。

生物が生命活動にエネルギーを利用していることを説明するイラスト

呼吸とエネルギー

生物は、呼吸によって有機物からエネルギーを取り出して、利用しているよ。

私たちが普段している呼吸は、酸素を吸って二酸化炭素を吐くことだね。それでどうやって有機物からエネルギーを取り出しているんだろう?

有機物と呼吸を、順に説明していくね。

有機物は、炭素原子が含まれる物質で、燃やしたら二酸化炭素と水ができるよ。
例えば米やお肉など生物の栄養になるものや、生物が作り出すものは有機物が多いよ。

石油や石炭も有機物だよ。昔の生物の死骸が変化したものだね。
有機物は、高い化学エネルギーを持っている、生物が作り出す大きくて複雑な物質というイメージだよ。

水は無機物だね。二酸化炭素も炭素原子が含まれているけど、有機物じゃなくて、無機物なんだ。

二酸化炭素自体は燃えないし、水も出ないし、生物が作り出す複雑な物質ではないからだね。

有機物の一つである炭水化物を見てみよう。ごはんやパンに含まれる炭水化物は、食べると細かく分解されて、グルコース(ブドウ糖)という物質になって体内に吸収されるよ。

吸収されたグルコースは細胞に運ばれ、細胞小器官のミトコンドリアに入る

グルコースはミトコンドリアで、酸素を使って、まるでものが燃えるのと同じような感じで、エネルギーを出して分解されるんだ。

有機物がミトコンドリアでエネルギーを出して分解されることを説明するイラスト

私たちがバーベキューで炭を燃やすと、熱エネルギーや光エネルギーが出るね。

 それと同じように、グルコースはミトコンドリアで分解されて、生命活動に必要なエネルギーを出しているんだよ。

この二つは、よく似た現象なんだ。

有機物が燃えるときは酸素が必要で、光や熱エネルギーを出して、最後に二酸化炭素と水(水蒸気)に分解される。

グルコースもミトコンドリアで分解されるときは酸素が必要で、分解されるときエネルギーを出し、最後は二酸化炭素と水になるよ。

このように、酸素を使って有機物を分解し、エネルギーを取り出すことを、生物の言葉で「呼吸」というんだ。
私たちが普段している、吸ったり吐いたりする呼吸は、体中の細胞で酸素を使うので、まとめて肺に酸素を取り入れて、出てきた二酸化炭素をまとめて外に出していることなんだよ。

ものが燃えることを説明するイラスト

ATPとは?ATPの役割

生物は呼吸によって有機物を分解してエネルギーを得ているね。

 でも、せっかく取り出したエネルギーは、何もしないと、ただものを燃やした時のように熱エネルギーになって出て行ってしまって、筋肉を動かす運動エネルギーや、体に必要な物質を作るエネルギーにすることができないんだ。

 どうしたら体に必要なエネルギーにすることができるんだろう?

答えは、「出てきたエネルギーを、化学エネルギーに変えて、ATPに貯めておく」だよ。

ミトコンドリアで出てきたエネルギーをATPに貯めておくことを説明しているイラスト

生物の体内にはATP(アデノシン三リン酸)という物質があるよ。この物質に、取り出したエネルギーを化学エネルギーとして蓄えておくんだ。

ATPの構造

以下にATPの構造式を模式的に示すよ。

ATPの構造のイラスト

ATPは、塩基(アデニン)と糖(リボース)が結合したアデノシンという物質に、リン酸が3つ結合した物質だよ。正式名称のアデノシン三リン酸という名前は構造そのままだね。

ATPの中でも、リン酸同士の結合は「高エネルギーリン酸結合」といって、多量のエネルギーが蓄えられているんだよ。

だから、ATPからリン酸が1つ離れるとき、たくさんのエネルギーを放出するんだ。

例えば運動をするのに筋肉にエネルギーが必要だ!となったら、ATPからエネルギーを放出して使うんだ。

リン酸が1つ離れて2つになったら、ADP(アデノシン二リン酸)になる。リン酸1つ分、エネルギーが少ない状態だね。

ADPに、エネルギーを使って再びリン酸をくっつけると、ATPに戻って、そのエネルギーを貯めておけるんだ。

つまり、呼吸によって取り出されたエネルギーで、ADPにリン酸を1つくっつけて、ATPというエネルギーを多量に持った物質を作る。

そしてATPは、必要に応じてリン酸を1つ離し、エネルギーを放出するんだ。

ちょうど携帯の充電器のように、ATPにエネルギーを貯めておくような感じだよ。

ATPのエネルギー受け渡しの仕組みのイラスト

このように、ATPは生物の体の中でエネルギーを受け渡す役割をしているよ。

ATPは「エネルギーの通貨」と呼ばれるんだ。
通貨(お金)は、商品を買ったりサービスの代金にしたり、さまざまなことの対価として使われるね。

ATPも、体の中でエネルギーを必要とするいろいろな生命活動に使えるから、その様子が似ているんだよ。

ATPとは何かを説明するイラスト

呼吸と光合成の関係

 動物と植物では、有機物の取り入れ方が違うんだ。

 動物は食事で有機物を取っているね。そして呼吸で有機物からエネルギーを取り出している。

 植物は基本的に食事をしないね。一部の食虫植物が虫を消化しているぐらいだね。
一般的に植物は、光合成で有機物を体内で合成しているよ。

動物と植物の有機物の取り入れ方の違いを説明しているイラスト

光合成は、二酸化炭素と水を材料にして、光エネルギーを吸収して、有機物を合成しているんだ。最後に酸素が出てくるよ。

 呼吸は、酸素を使って有機物を分解して、エネルギーを出し、最後に二酸化炭素と水が出てくるよ。

 呼吸と光合成は逆の関係なんだ。

呼吸と光合成は逆の関係であることを説明しているイラスト

植物は、光合成で自ら有機物を作り出し、呼吸でそれからエネルギーを取り出しているよ。

 動物は光合成ができないから、食事で直接有機物を取り込んでいるんだよ。

代謝と同化・異化

生物の体の中では、エネルギーの出入りを伴って、いろいろな物質の化学変化が起こっているんだ。

光合成では、二酸化炭素と水を材料にして、光エネルギーでATPを合成して、ATPのエネルギーで有機物が合成されるよ。

 呼吸では逆に、体内に取り込んだ有機物が分解されてエネルギーが放出される。エネルギーはATPに貯められ、有機物は二酸化炭素と水に分解されるよ。

このような、生体内で起こる物質の化学変化をまとめて代謝というよ。

普段使う言葉では、汗をかきやすいことを代謝がいいと言ったり、細胞の入れ替わりのことを新陳代謝と言ったりするけど、それらよりもっと広い意味だから注意してね。

代謝は、「同化」と「異化」の大きく2つに分けられるよ。

光合成のように、エネルギーを吸収して、二酸化炭素と水のような単純な物質から有機物のような複雑な物質を合成することを、同化というよ。

また、呼吸のように、有機物のような複雑な物質を分解してエネルギーを取り出し、二酸化炭素と水のような単純な物質に分解することを、異化というよ。

有機物をつくって体に「同化」して、体内の有機物を分解して外に出して「異化」する、というイメージだよ。

代謝の同化と異化を説明しているイラスト

水や二酸化炭素のような無機物は、くっついている原子の数が少なくて、単純な物質なんだ。

 有機物は、原子が何千、何万と結合していることもある、大きくて複雑な物質なんだ。

基本的に、単純な物質より、複雑で大きな物質の方が大きな化学エネルギーを持っているよ。

 単純な物質を、複雑な物質に組み上げていくには、エネルギーが必要なんだ。だから、光合成には光エネルギーが必要なんだよ。

 逆に、複雑な物質は化学エネルギーを蓄えているから、分解されるとエネルギーが放出されるよ。

だから、有機物を燃やしたり、ミトコンドリアで分解されると、エネルギーが生まれるんだ。

生物なのに、原子や化学反応のような化学の話が出てくるよね。

化学は生物のベースになる分野なので、時々知識が必要になるんだ。 全部覚えなくていいけど、必要なところはイメージできるようにしていこう!

無機物と有機物の基本的なイメージのイラスト

「生命活動とエネルギー」まとめ

  • 生物の活動を全部まとめて、生命活動という
  • 生物が生命活動で使うエネルギーのもとになるのは、食事などで体内に取り入れた有機物である
  • 生物は、呼吸によって有機物からエネルギーを取り出して利用している
  • 酸素を使って有機物を分解し、エネルギーを取り出すことを、「呼吸」という
  • ATPとは、生物の体内にある「アデノシン三リン酸」という物質である
    ※塩基(アデニン)+糖(リボース)+リン酸3つ
  • 生物は、呼吸によって取り出したエネルギーを、化学エネルギーとしてATPに蓄えておく
  • ATPは生物の体内でエネルギーを受け渡す役割をしている(エネルギーの通貨と呼ばれる)
  • 生物は食事で有機物を取り、呼吸で有機物からエネルギーを取り出している
  • 植物は光合成で有機物を体内で合成している
  • 光合成では、二酸化炭素と水を材料にして光エネルギーを吸収して有機物が合成され、酸素が出される
  • 呼吸では、酸素を使って有機物を分解し、エネルギーを出し、二酸化炭素と水が出される
  • 光合成と呼吸のように、生体内で起こる物質の化学変化を「代謝」という
  • 代謝のうち、光合成のように、エネルギーを吸収して二酸化炭素と水のような単純な物質から有機物のような複雑な物質を合成することを「同化」という
  • 代謝のうち、呼吸のように、有機物のような複雑な物質を分解してエネルギーを取り出し、二酸化炭素と水のような単純な物質に分解することを「異化」という

運営者情報

青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。

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