生物の特徴と共通性(細胞・DNA・代謝・エネルギー・遺伝)を解説

高校生物で学習する「生物の特徴と共通性」について、生物に共通する特徴とはなにか、細胞とDNAとはなにか。代謝したり遺伝したりするというのはどういうことかを詳しく解説するよ。

生物に共通する特徴5つを確認しよう!

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生物の特徴と共通性 (細胞・DNA・代謝・エネルギー・遺伝)を解説

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目次

生物の特徴と共通性とは

地球上には、実に様々な生物がいるね。私たちヒト、動物、植物、目に見えない微生物も生きているね。

では、「生きているもの」と「生き物ではないもの」は、どうやって区別できるのかな?

「そんなの簡単。例えば、生き物は動く、生き物でないものは動かないで区別できるよ?」と思う人もいるかもしれないね。

でも、そこの床を掃除してくれているロボット掃除機も動いているよ。
自分でゴミを探すから、まるで生きているように自律的に動くよね。
でも、ロボット掃除機を生き物だ!と言う人はいないよね。

それに、動かない生き物もいるよね。例えば、植物は根っこがしっかり地についていて動かないよね。

つまり、動かない生き物も、自律的に動く物もある。

「動くか動かないか」は、生物と生物でないものを分ける特徴ではないんだね。

では、こう考えてみよう。生き物なら必ず持っている特徴、つまり、生物の共通性とは何かな?

すべての生き物に共通する特徴があれば、それを持つものが「生きている」ということになるね。 いろいろな答えがあるよ。ぜひ一度自分で考えてみてね!

生物と非生物の違いを表したイラスト

では、今考えられている「生き物に共通する特徴」を挙げてみるよ。

生物の共通性は5つあると考えられているんだ。

生物の共通性5つとは?

  • 細胞からできていること
  • DNAをもつこと
  • エネルギーを利用すること(代謝する)
  • 自分と同じ構造をもつ個体をつくること(遺伝する)
  • 体内の状態を一定に保つこと(恒常性をもつ)

今後、これにはあてはまらない生き物が見つかるかもしないし、他にも共通する特徴として認められるものがあるかもしれないけど、みんなが考えて、現在納得されている特徴だよ。

それでは、ひとつひとつの特徴をくわしく確認していこう。

生物の共通性1:細胞からできている

生物の共通性のひとつは、「細胞からできていること」。

「細胞」とは

すべての生物は、細胞でできているよ。

細胞とは、生物が持つ基本的な単位のことで、外界と自分を隔てる細胞膜を持っているよ。 英語でcell(セル)といい、小部屋という意味なんだ。

細胞の構造のイラスト

それ自体が生命の単位にもなるよ。単細胞生物といって、一つの細胞だけでできている生物もいるよ。乳酸菌などの細菌がそうだね。

私たちヒトはたくさんの細胞でできている多細胞生物だよ。皮膚の細胞や神経細胞は形も大きさも機能も大きく違うけど、それぞれの細胞が役割を分担して互いに連携して、ヒトという生き物を形成しているよ。

でも、細菌などの細胞も、ヒトのいろいろな細胞も、細胞の基本的な構造は同じなんだよ。

細胞は、単独だったり、たくさん集まったりして、それぞれの生物を形作っているんだよ。

生物の共通性2:DNAをもつこと

生物の共通性のひとつは、DNAをもっていること。

「DNA」とは

生物は遺伝物質としてDNAをもつよ。

DNAはよく聞いたことがある言葉だよね。その正体は、デオキシリボ核酸という物質なんだ。

この中に、それぞれの生き物の遺伝情報が蓄えられているんだ。

例えば、ヒトという生物の遺伝情報には

  • 目が二つある
  • 鼻が一つある
  • 手は右手と左手がある

など、ヒトに共通する基本的な情報や、

  • 髪の毛は巻き毛
  • 髪の毛は直毛

など、それぞれの個体の特徴の情報があるね。

それらの情報が、全部DNAの中に入っているんだ。

DNAは、私たち一人一人が持つ、生物の情報がすべて書かれた大百科事典!というイメージなんだよ。
生物は、DNAという物質に生物の情報を蓄えて、次世代の子孫にそれを伝えていくんだよ。

DNAとは何かを説明するイラスト

生物の共通性3:「代謝」する

生物は、エネルギーを利用して、いろいろな生命活動を行っているよ。

私たちは、食事をして栄養を取っているよね。

ごはんやパンからは炭水化物という栄養分が取れるね。炭水化物は、体内に吸収されるには大きすぎるので、体の中でグルコース(ブドウ糖)という小さな物質に分解されて、体内に吸収されるよ。

グルコースが吸収されると、細胞の中に入る。

そこで分解されて、エネルギーが出るんだ。

ちょうど、バーベキューで炭を燃やした時に、熱と光というエネルギーが出るような感じだよ。

細胞の中でグルコースが静かに燃えて、生きていくのに必要なエネルギーを出しているんだ。

それぞれの細胞が出したエネルギーは、ATPという物質に蓄えられる。携帯の充電器のような感じで、細胞から出てくるエネルギーを無駄なくATPに蓄えていくんだ。
蓄えられたエネルギーは、筋肉を動かすエネルギーにしたり、内臓を働かせたりと、体中で使えるエネルギーになるんだ。
とっても便利だね!

ものが燃えることと、代謝は似ていることを説明するイラスト

このように、体内で物質を分解したり、また、エネルギーを使って体に必要な物質を作ったりするのは、体の中で行われている物質の化学変化なんだ。

この、生物の体内で行われる化学変化をまとめて、代謝というよ。

「代謝」は一般的にも使われる言葉だね。例えば汗をかきやすい体質を代謝がいいとか、古い細胞が新しい細胞に置き換わる新陳代謝のように使われるね。

でも、体の中で起こる化学変化全体を代謝というので、生物で使う「代謝」は、光合成や呼吸も含まれる、もっと広い意味の言葉なんだよ。

生物の共通性4:「遺伝」する

生物の親のかたちや性質が子に伝わっていくことを遺伝というよ。

生物には、自分と同じ構造を持つ個体をつくる、自己複製能力があるんだ。

自己複製能力とは、DNAが複製されたり、細胞が分裂して同じ細胞が増えていくことなどの他に、広い意味でとらえると、生殖で次世代の個体を生み出していくことも含まれるよ。

生殖には、細菌などのように、細胞分裂で自分と同じ個体をどんどん増やしていく「無性生殖」や、動物などのように、オスとメスが互いの精子と卵を受精させることで次世代の子どもをつくっていく「有性生殖」があるよ。その時に次世代に伝えていく情報の入れ物がDNAなんだよ。

生き物には寿命があるよね。長生きする植物には数千年生きるものもいるけど、地球の歴史は46億年といわれているので、いくら寿命が長くても個体の命が尽きたら種が絶滅してしまう。

限りある命を持つ生物は、生きている間に自己複製をして、何千年も何万年も命をつないでいくんだ。

生物の共通性5:「恒常性」をもつ

生物の共通性のひとつは、恒常性(ホメオスタシス)という、体内の状態を一定に保つ仕組みがあること。
例えば、暑くて汗がたくさん出るとき、水を飲むよね。そうすると体内の塩分やいろいろな物質の濃度が変わってくる。
それを一定の濃度に保つために、尿を多く作って排出したりする仕組みも恒常性だよ。
体液の組成や濃度を大きく変えず、一定に保つんだ。

恒常性とはなにかを説明しているイラスト

外界の刺激を受容し、それに対して反応すること。

例えば、ミミズは光を察知して、光の当たらない方へ進む光走性(負の光走性)という性質があるよ。自然の中で光が当たるのは太陽が当たっていることなので、そのままだとミミズは干からびてしまうからね。 このような、光や音や重力などの外界の刺激を感じ取り、それに反応する仕組みも生物の持つ特徴と言われているよ。

外界の刺激の受容と反応を説明するイラスト

これら「細胞からできていること」「DNAをもつこと」「代謝をすること」「遺伝をすること」「体内の状態一定にたもつこと」が、生物にすべて共通する特徴といわれているよ。

これらの特徴は、今も世界中の人が考えて議論していることなので、今後も新しい特徴が生物の共通性として認められるかもしれないよ。
みんなもぜひ考えてみてね。

私たちヒトや、植物や、細菌や、生物にすべて共通する特徴があるなんて驚きだね。

この、生物にすべて共通する特徴があるということが、生物はすべて共通する祖先から生まれたという説の根拠になっているんだ。

すべての生物に共通する祖先がこれらの特徴を持っていたので、その子孫である生き物はすべてこの特徴を受け継いでいるという考え方だよ。

生物の共通性 まとめ

  • 生物か、生物でないかは、「生物に共通する特徴をもっているか」で判断することができる。
  • すべての生物に共通する特徴(共通性)は、5つと考えられている。
  • 1つは、細胞からできていること。
  • 1つは、DNA(デオキシリボ核酸)をもっていること。
  • 1つは、エネルギーを利用する(代謝する)こと。
  • 1つは、自分と同じ構造をもつ個体を作る(遺伝する)こと。
  • 1つは、体内の状態を一定に保つ(恒常性をもつ)こと。

ウイルスは生物なのか?

これまで、生物にはどういう特徴があるのかを見てきたね。
ここでひとつ、疑問に思うのは「ウイルスって、生物なの?」ということ。

風邪の原因であったり、世界的に大流行したコロナウイルスやインフルエンザウイルスなど、ウイルスという仲間がいるね。

他にも、病気の原因になったりする微生物には、細菌がいるね。細菌は生物の共通する特徴を持っているから、生物だと考えられているよ。

でも、ウイルスは上で述べた細胞の特徴と異なる点が多いので、生物ではないと考えられているんだ。

ウイルスと細菌は私たちから見ると目に見えないぐらい小さいので、同じようなものと考えてしまいそうだけど、ウイルスは細菌に比べて100分の1か1000分の1ぐらいの大きさで、理科室にある光学顕微鏡で見ることができないぐらい小さいんだ。

その他の細菌との違いを比べてみよう。

1. 細胞膜がない

ウイルスは自分の遺伝物質をタンパク質の殻に包んだだけの単純な仕組みなんだ。
外界と自分を隔てる殻(カプシドという)はあるけど、細胞膜の構造、機能とは異なるよ。

細胞膜は湿っていて柔らかく、細胞のぷよぷよしたかたちを包むもの、というイメージだけど、ウイルスのはメカのような正二十面体のような、幾何学的な形をもつものが多いんだ。

2. 遺伝物質としてDNAを持たないものもある

ウイルスにはDNAを持つものもあるけど、もっと単純なRNAという物質をもつものがあるよ。RNAは単純な形なので、突然変異が起こりやすく、性質をどんどん変えていくと言われているんだ。

コロナウイルスはRNAをもつウイルスなんだ。デルタ株、オミクロン株と、すごいスピードでどんどん性質が変化していったよね。

生き残るのに有利な性質に変化したウイルスが、古いウイルスを駆逐して、置き換わっていくんだよ。

3. エネルギーを得る仕組みがなく、自分で増殖できない

ウイルスは栄養を取らないし、自力で増えることができないんだ。 どうやって増えるかというと、他の生物の細胞に寄生するんだ。寄生した細胞に自分の遺伝物質と殻を作らせて、細胞を壊して出ていくんだ。すごいスピードで増えていくよ。

ウイルスが増殖する仕組みを表したイラスト

ウイルスが生物かどうかは、長い間議論されてきたんだ。すごい自己複製能力をもつけれど、他の生き物に寄生しないと増えられない。それは、生き物とは何か?ということを私たちに問い直すことになったんだ。 ウイルスは、生物と非生物の間にいるものなのかもしれないね

運営者情報

青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。

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