32土佐日記「帰京」②
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さて、池めいてくぼまり、水つける所あり。
ほとりに松もありき。五年六年のうちに、千年や過ぎにけむ、片方はなくなりにけり。
今生ひたるぞ交じれる。
「千年や過ぎにけむ」とあるが、助動詞「けむ」の意味を次の中から選び、カタカナで答えなさい。
ア:過去推量
イ:過去の原因推量
ウ:過去の婉曲
エ:過去の伝聞
正解は「ア」です。
助動詞「けむ」には、過去推量・過去の原因推量・過去の婉曲・過去の伝聞の4つの意味があり、まずは過去の事実かどうかで見分けると良い。過去の事実の場合、「原因推量」となり、そうでない場合は「過去推量」となる。
さて、池めいてくぼまり、水つける所あり。
ほとりに松もありき。五年六年のうちに、千年や過ぎにけむ、片方はなくなりにけり。
今生ひたるぞ交じれる。
「片方はなくなりにけり」とあるが、何の「片方」が無くなったのか。古文より抜き出して答えなさい。
正解は「松」です。
おほかたの、みな荒れにたれば、「あはれ。」とぞ人々言ふ。
思ひ出でぬことなく、思ひ恋しきがうちに、この家にて生まれし女子の、もろともに帰らねば、いかがは悲しき。
船人もみな、子たかりてののしる。
「思ひ出でぬことなく」の現代語訳として正しいものを次の中から選び、カタカナで答えなさい。
ア:思い出すことはない
イ:思い出ではない
ウ:思い出さないことはない
エ:思い出にはならない
正解は「ウ」です。
打ち消しの「ぬ」と「ない」で、二重否定となっていることに注意しよう。
おほかたの、みな荒れにたれば、「あはれ。」とぞ人々言ふ。
思ひ出でぬことなく、思ひ恋しきがうちに、この家にて生まれし女子の、もろともに帰らねば、いかがは悲しき。
船人もみな、子たかりてののしる。
「もろともに帰らねば、いかがは悲しき。」の現代語訳として正しいものを次の中から選び、カタカナで答えなさい。
ア:一緒に帰らないと、どれほど悲しいのか
イ:一緒に帰ると、どれほど悲しいことか
ウ:誰も帰らないので、どれほど悲しいことか
エ:一緒に帰らないので、どれほど悲しいことか
正解は「ウ」です。
打ち消しの「ぬ」と「ない」で、二重否定となっていることに注意しよう。
おほかたの、みな荒れにたれば、「あはれ。」とぞ人々言ふ。
思ひ出でぬことなく、思ひ恋しきがうちに、この家にて生まれし女子の、もろともに帰らねば、いかがは悲しき。
船人もみな、子たかりてののしる。
「ののしる」の意味として正しいものを選びなさい。
ア:文句をいう
イ:非難する
ウ:騒ぎ立てる
エ:叱る
正解は「ウ」です。
かかるうちに、なほ悲しきに堪へずして、ひそかに心知れる人と言へりける歌、
生まれしも帰らぬものをわが宿に小松のあるを見るが悲しさ
とぞ言へる。
「ひそかに心知れる人」とは誰のことか。次の中から選びなさい。
ア:紀貫之
イ:隣人
ウ:紀貫之の妻
エ:紀貫之の娘
正解は「ウ」です。
娘を失った悲しみを共に理解している、紀貫之の妻のことである。
さて、池めいてくぼまり、水つける所あり。
ほとりに松もありき。五年六年のうちに、千年や過ぎにけむ、片方はなくなりにけり。
今生ひたるぞ交じれる。
おほかたの、みな荒れにたれば、「あはれ。」とぞ人々言ふ。
思ひ出でぬことなく、思ひ恋しきがうちに、この家にて生まれし女子の、もろともに帰らねば、いかがは悲しき。
船人もみな、子たかりてののしる。
かかるうちに、なほ悲しきに堪へずして、ひそかに心知れる人と言へりける歌、
生まれしも帰らぬものをわが宿に小松のあるを見るが悲しさ
とぞ言へる。
「今生ひたる」とは何が「生ひたる」のか。原文よりぬき出して答えなさい。
正解は「小松」です。
かかるうちに、なほ悲しきに堪へずして、ひそかに心知れる人と言へりける歌、
生まれしも帰らぬものをわが宿に小松のあるを見るが悲しさ
とぞ言へる。
「帰らぬものを」の現代語訳として正しいものを次の中から選び、カタカナで答えなさい。
ア:帰らないものを
イ:帰らないのだろうか
ウ:帰ってきてほしい
エ:帰らないけれども
正解は「エ」です。
「ものを」は逆接であることに注意しよう。
かかるうちに、なほ悲しきに堪へずして、ひそかに心知れる人と言へりける歌、
生まれしも帰らぬものをわが宿に小松のあるを見るが悲しさ
とぞ言へる。
和歌「生まれしも帰らぬものをわが宿に小松のあるを見るが悲しさ」の「小松」に対して、作者は何を連想しているのか、本文から抜き出して答えなさい。
正解は「女子」です。
「帰らぬもの」も、女子のことを指しているが、ここではハッキリと紀貫之の娘をあらわす「女子」を最適解としている。
かかるうちに、なほ悲しきに堪へずして、ひそかに心知れる人と言へりける歌、
生まれしも帰らぬものをわが宿に小松のあるを見るが悲しさ
とぞ言へる。
なほ飽かずやあらむ、また、かくなむ。
「かくなむ」の直後に省略されている語を、原文より抜き出して答えなさい。
※句読点は含まず入力すること。
正解は「言へる」です。
なほ飽かずやあらむ、また、かくなむ。
見し人の松の千年に見ましかば遠く悲しき別れせましや
忘れ難く、口惜しきこと多かれど、え尽くさず。
とまれかうまれ、疾く破りてむ。
「なほ飽かずやあらむ」の現代語訳として正しいものを次の中から選び、カタカナで答えなさい。
ア:また、満足しないので
イ:それでも満足しないのだろうか
ウ:それでも満足して
エ:それで満足したのだろうか
正解は「イ」です。
ここでの「飽く」は「満足する」という意味なので注意する。「あらむ」の「む」は推量の助動詞。主語が三人称であることから見分けられる。
なほ飽かずやあらむ、また、かくなむ。
見し人の松の千年に見ましかば遠く悲しき別れせましや
忘れ難く、口惜しきこと多かれど、え尽くさず。
とまれかうまれ、疾く破りてむ。
和歌「見し人の松の千年に見ましかば遠く悲しき別れせましや」の「見し人」とは誰のことを指すか、正しいものを次の中から選びなさい。
ア:紀貫之
イ:ひそかに心知れる人
ウ:船人
エ:女子
正解は「エ」です。
なほ飽かずやあらむ、また、かくなむ。
見し人の松の千年に見ましかば遠く悲しき別れせましや
忘れ難く、口惜しきこと多かれど、え尽くさず。
とまれかうまれ、疾く破りてむ。
和歌「見し人の松の千年に見ましかば遠く悲しき別れせましや」の「まし」の助動詞の意味を漢字4文字で答えなさい。
正解は「反実仮想」です。
「まし」は、「反実仮想」と「ためらい」の2つの意味があるが、ここでは、亡くなってしまった娘が生きていた場合のことを歌っているので、反実仮想が正しい。
なほ飽かずやあらむ、また、かくなむ。
見し人の松の千年に見ましかば遠く悲しき別れせましや
忘れ難く、口惜しきこと多かれど、え尽くさず。
とまれかうまれ、疾く破りてむ。
和歌「見し人の松の千年に見ましかば遠く悲しき別れせましや」の「遠く悲しき別れ」とは何を指すか。正しいものを次の中から選びなさい。
ア:娘との永遠の別れ
イ:美しかった松をもう見ることはできないこと
ウ:土佐の友人との別れ
エ:土佐での娘との死別
正解は「エ」です。
なほ飽かずやあらむ、また、かくなむ。
見し人の松の千年に見ましかば遠く悲しき別れせましや
忘れ難く、口惜しきこと多かれど、え尽くさず。
とまれかうまれ、疾く破りてむ。
「口惜しきこと多かれど、え尽くさず。」の現代語訳として正しいものを次の中から選び、カタカナで答えなさい。
ア:残念なことが多いが、書き尽くすことができない。
イ:残念なことが多いので、書ききることができない。
ウ:残念なことは多いが、書き尽くすことはしない。
エ:残念なことが多いので、書き尽くそう。
正解は「ア」です。
なほ飽かずやあらむ、また、かくなむ。
見し人の松の千年に見ましかば遠く悲しき別れせましや
忘れ難く、口惜しきこと多かれど、え尽くさず。
とまれかうまれ、疾く破りてむ。
下線㉑「疾く破りてむ。」とあるが、何を破るのか。次の中から正しいものを選びなさい。
ア:日記
イ:隣人との約束
ウ:任務
エ:娘との思い出
正解は「ア」です。
なほ飽かずやあらむ、また、かくなむ。
見し人の松の千年に見ましかば遠く悲しき別れせましや
忘れ難く、口惜しきこと多かれど、え尽くさず。
とまれかうまれ、疾く破りてむ。
「疾く破りてむ。」の助動詞「て」の意味を答えなさい。
正解は「強意」です。
完了の助動詞「つ」「ぬ」は、その直後に推量の意味をもつ助動詞が来ると、「強意」の助動詞になる。
京に入り立ちてうれし。
家に至りて、門に入るに、月明かければ、いとよくありさま見ゆ。
聞きしよりもまして、いふかひなくぞこぼれ破れたる。
家に預けたりつる人の心も、荒れたるなりけり。
中垣こそあれ、ひとつ家のやうなれば、望みて預かれるなり。
以上の原文より、諧謔的な一文を抜き出し、最初の5文字を答えなさい。
正解は「家に預けた」です。
抜き出す一文は「家に預けたりつる人の心も、荒れたるなりけり。」。諧謔的とは、皮肉・ユーモアのこと。
さるは、たよりごとに物も絶えず得させたり。
今宵、「かかること。」と、声高にものも言はせず。
いとはつらく見ゆれど、こころざしはせむとす。
さて、池めいてくぼまり、水つける所あり。
以上の原文より、諧謔的な一文を抜き出し、最初の5文字を答えなさい。
正解は「さて、池め」です。
抜き出す一文は「さて、池めいてくぼまり、水つける所あり。」。諧謔的とは、皮肉・ユーモアのこと。
ほとりに松もありき。五年六年のうちに、千年や過ぎにけむ、片方はなくなりにけり。
今生ひたるぞ交じれる。
おほかたの、みな荒れにたれば、「あはれ。」とぞ人々言ふ。
思ひ出でぬことなく、思ひ恋しきがうちに、この家にて生まれし女子の、もろともに帰らねば、いかがは悲しき。
以上の原文より、諧謔的な一文を抜き出し、最初の5文字を答えなさい。
正解は「五年六年の」です。
抜き出す一文は「五年六年のうちに、千年や過ぎにけむ、片方はなくなりにけり。」。諧謔的とは、皮肉・ユーモアのこと。
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ゆみねこ
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青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。