重力加速度の求め方「自由落下運動の公式」をわかりやすく解説
高校物理で学習する「自由落下運動」について自由落下運動とはどういうもおか、重力加速度とはなにか、重力加速度の求め方や自由落下運動の公式の考え方をわかりやすく解説しているよ。
目次
自由落下運動とは
さて、ここからは前回勉強した等加速度運動を実際に現実でどんなふうに応用できるのかを勉強していこう。
その一つ目の例が自由落下運動だよ。
自由落下運動っていうのはその名の通り、「物体が自由に重力に従って落下していく運動」のことだね。
けれど、この高校で習う「自由落下運動」っていうのはいくつか取り決めがあって、現実の世界とは少しちがった設定になっているんだ。それが下の二つだよ。
1: 風は吹かないものとする。
2: 空気抵抗は無視する。
問題を解くときは、特別に書かれていないかぎり、このふたつのことを基本設定とするんだよ。
こういうことを設定してあげる理由は、やっぱり問題をカンタンにするため、これに尽きるんだ。
たとえば、1の「風は吹かないものとする。」について。
現実の世界だったら、室内じゃなきゃかならず多少の風は吹いているよね。
もしこの「風が吹いていること」をそのまま考えないといけなくなると、物体を落としたあとに、風の力によってその物体が左右に動いたりすることになってしまうよね。
そうすると今ある公式だけでは考えることができなくなってしまうんだ。
2の「空気抵抗は無視する。」もおんなじで、みんなは空気抵抗って言葉を聞いたことがあると思うんだけど、ものが動くときっていうのは基本的に空気にその運動を邪魔されているんだよね。
目に見えない空気の粒が運動してる方向と逆にぶつかることで、物体を押し返すイメージかな。
これによって、物体の速度が微妙に変化してくるんだ。
すると当然、等加速度ではなくなってしまうよね。
そうすると前回の「等加速度運動」の学習で証明した等加速度運動の公式を使うことができなくなってしまうんだ。
このように、いろんな邪魔者をなくしてなるべくカンタンにするために、この2つの基本設定があるんだよ。
ひとことで言えば、「そんなこといちいち考えてたらキリがないから、ここでは無視しよう!」ということだね。
では、早速これらを基本にして、自由落下運動について考えていこう。
けれどその前に、一つ覚えてほしい単語があって、それが鉛直方向(えんちょくほうこう)っていう言葉なんだ。
鉛直方向とは、「重力の方向」のことだよ。「鉛」は「なまり」だよね。
もともとは、糸に鉛をくくりつけて、垂らした時の方向のことなんだ。
糸に鉛をくくりつけて垂らすと、重力にしたがって地面に向かって垂直にした方向を差すよね。
だから、「鉛直方向」は地面に向かって垂直に下向きのことになるよ。
まぁただ下向きってだけだからそんな難しい言葉じゃないね。
でもこの言葉はこれからの力学においてたくさん出てくるから、しっかり覚えておこうね。
自由落下運動というのは基本はまっすぐ下に落ちる運動になるんだけど、この下方向のことを表現するのに、「鉛直方向」というふうに使われるよ。
自由落下運動 まとめ
- 物体が自由に重力の力で落ちていく運動を「自由落下運動」という。
- 考えたらキリがないので、「風は吹かない」「空気抵抗はない」ということにする。
- 自由落下する時の下向きの方向を、「鉛直方向」と呼ぶ。
- 鉛直方向とは、鉛を糸にくくって吊り下げた時の方向。つまり重力の向きで、地面に垂直に下を向く。
重力加速度とは
さて1章で解説した通り、自由落下運動っていうのは等加速度運動をするわけなんだけど、じゃあその加速度は一体いくつになるのかっていうことが全く分からないよね。
でも、自由落下っていうことはその運動自体は地球上のどこで行ったとしても働いている力は結局「重力」で、その運動を行う人(物体を落とした人)とは全く関係がないよね。
つまり、一回計測してしまえば、誰がどこで自由落下させようが、その加速度は絶対変化しないはずなんだ。
そこで中世の学者たちはこの加速度を物理定数(物体の状態に関係なく、常に一定の値をもつ物理量のこと)の一つとして、「重力加速度」と名付けたんだ。
この重力加速度を英語の「gravity(重力)」の頭文字をとってgと表すことに決めたんだ。
ちなみにこれの具体的な値はいくつかというと、様々な計測方法があって、それによると9.806192…という値をとることが知られているんだよ。
中学の物理で、物体に働く重力はその質量に10をかけろ、みたいなことを言われなかったかな?
あれはこの重力加速度の9.80…っていう値を計算の簡略化のために10で近似していたっていうことなんだね。
この話も後でもう一度出てくるよ。
また、中学の物理では「10」でもよかったけれど、高校では10で近似するとすこし精度が怪しくなってくるから、9.8で近似することとしているよ。
問題文に特に重力加速度についての但し書きがなかったら、普通は9.8で式を書いてもらって問題ないよ。
重力加速度 まとめ
- 自由落下は、重力による運動だから、誰がどこで自由落下させようとその運動の加速度は変わらない。
- 重力によって加速されるから、「gravity(重力)」の頭文字gで表す。
- 常に一定の値になるので、物理定数の一つとして「重力加速度」と名付けた。
- 計測した結果、9.806192・・・という数字になったので、9.8で計算する。(中学は10だった)
自由落下運動の公式
これでようやく公式が考えられるようになったね。
とはいっても、自由落下運動は結局ただの等加速度運動だから、前回やった加速度の公式が全部に応用できるわけなんだ。
一つだけ変わるのが、「重力加速度が加速度と入れ替わっている」ということだけ。
なので、「等加速度運動の公式」をそのまま借りて、
\begin{eqnarray}v=gt+v_0\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}s=\frac{1}{2}gt^2+v_0t\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}v^2-v_0^2=2gs\end{eqnarray}
この3つが自由落下運動の公式として成り立つんだ。ただ、これで終わってしまってはナンセンス。
これらの式に一つだけおかしなところがないかな?
そう、初速度だね。
自由落下の時は、物体に何の力も加えずただ落とすだけだよね。
このとき、つまり物体を手から離した瞬間の速度はどうなっているかな?
一瞬物体は静止していないかな?
実際に何かものを手から離してみたらわかってくれると思う。
ということは、初速度は0といえるわけだね。 すると、これらの式はもう少し簡単に書けるよね。実際に「初速度を0」にするために、\(\begin{eqnarray}v_0=0\end{eqnarray}\)を代入してみると、
\(\begin{eqnarray}v=gt\end{eqnarray}\)・・・・・(16)
\(\begin{eqnarray}s=\frac{1}{2}gt^2\end{eqnarray}\)・・・・・(17)
\(\begin{eqnarray}v^2=2gs\end{eqnarray}\)・・・・・(18)
これが本当の自由落下運動の公式となるわけだよ。
かなりすっきりしたね。
この3つの公式をつかって、いろんな問題を解いていくわけだね。ひとつだけ例題を紹介するよ。
【例題】
地面から高さ19.6mの場所からボールを自由落下させた。\(\sqrt{2}=1.4\)で近似するものとする。このとき、以下の問いに答えよ。
(1)ボールが空中に放たれてから地面に接触するまでの時間を求めよ。
(2)ボールが地面に到達したときの速度を求めよ。
【解答】
(1) 地面に接触するときっていうのはボールが19.6m移動したって意味と同じだから、(17)式を用いて、
\begin{eqnarray}19.6=\frac{1}{2}\times 9.8\times t^2\end{eqnarray}
この t についての2次方程式を解けばいいから、もちろんtは正として、
\begin{eqnarray}A. t=2\end{eqnarray}
(2)ボールが地面に接触するまでの時間は(1)より、2秒とわかっているので(16)式より、
\begin{eqnarray}v=9.8\times 2\end{eqnarray}
したがって、
\begin{eqnarray}A. v=19.6\end{eqnarray}
【別解】
すでに距離と加速度はわかっているので、(18)式より、
\begin{eqnarray}v^2=2\times 9.8\times 19.6\end{eqnarray}
したがって、
\begin{eqnarray}A. v=19.6\end{eqnarray}
こんな風に物理には別解がある場合がいっぱいあるから、一つの考え方に固執しないでいろんな考え方を試して最適な方法をとれるようにしようね。
自由落下運動の公式 まとめ
- 自由落下運動の公式は、等加速度運動の公式の「加速度」の部分が「重力加速度」と入れ替わると考えることができる。
- 自由落下運動では初速度0の等加速度運動をする。
【自由落下運動の公式】
\begin{eqnarray}v=gt\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}s=\frac{1}{2}gt^2\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}v^2=2gs\end{eqnarray}
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ゆみねこ
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青山学院大学教育学科卒業。TOEIC795点。2児の母。2019年の長女の高校受験時、訳あって塾には行かずに自宅学習のみで挑戦することになり、教科書をイチから一緒に読み直しながら勉強を見た結果、偏差値20上昇。志望校の特待生クラストップ10位内で合格を果たす。