中学1年国語で学ぶ「少年の日の思い出」について、そのあらすじと、テストで必要になるポイントを解説するよ。
「少年の日の思い出」
目次【本記事の内容】
- 1.「少年の日の思い出」あらすじ
- 2.テスト対策ポイント①「現在」と「過去」について理解しよう
- 2-1.「現在」の部分
- 2-1.「過去」の部分
- 3.テスト対策ポイント②登場人物の行動や気持ちを理解しよう
- 4.テスト対策ポイント③登場する語句の意味を確認しよう!
- 5.まとめ

「少年の日の思い出」
あらすじ
「私」のところに客がやってきた。
「私」は一年前からまた始めた「ちょう集め」のことを彼に話し、ちょうの収集を見せた。
しかし彼は少し見ただけでやめてしまい、彼もまた子供のころに「ちょう集め」をしていたものの、自分でその思い出をけがしてしまったと、その思い出を語り出した。
ー「彼」の思い出ー
「僕(客である彼の子供の頃)」は「ちょう集め」のとりことなり、立派な道具は買ってもらえないながらも、自分で工夫して収集の道具などを用意し、楽しんでいた。
しかしやはり ぜいたくな道具を持っている友人に比べて見劣りする自分の収集を他人に見せる気にはなれず、珍しいちょうを手に入れても、妹たちだけに見せるだけにしていた。
そんな時,とても珍しいコムラサキを捕まえ、得意のあまり隣の子供だけに見せることにした。
隣の少年は、模範的な少年で、「僕」は好きではなかった。
その少年エーミールは、「僕」のコムラサキを珍しいと認めながらも難癖をつけた。
「僕」は二度とエーミールに獲物を見せることはなかった。
2年後、エーミールがまだ誰も手に入れたことのないクジャクヤママユをサナギからかえしたという話を聞きつけ、「僕」はすっかり興奮してしまいエーミールのもとへ向かう。
エーミールは不在で、「僕」はせめてクジャクヤママユだけでも見たいと部屋へ入る。
いざクジャクヤママユを手に取ると、そのあまりの素晴らしさに「僕」はこの宝を手に入れたいという欲望に負け、生まれて初めての盗みを犯す。
部屋を出て階段を降りる途中、人の気配に驚いた「僕」はとっさに ちょうをポケット突っ込んでしまう。
そして恐ろしくなり、もとの場所に戻そうとするが、クジャクヤママユは無惨につぶれてしまっていた。
悲しい気持ちで家に戻った「僕」は、母に告白をする。
母はエーミールに謝りに行くように諭す。
エーミールのもとへ行き、すべて話すと、エーミールは怒るわけでもなく、ただただ「僕」を軽蔑した。
お詫びに自分のコレクションを全て譲ると言っても、「僕」の持っているちょうは全て知っており、今回のように ちょうを酷く扱うような「僕」の収集は要らないと言う。
この時「僕」は、一度起きたことはもう償いのできないものだということを悟った。
夜、「僕」は自分の収集箱からちょうを取り出すと、ひとつひとつ指で粉々に押しつぶした。
「少年の日の思い出」のテスト対策ポイント
①この物語は、
「私」から見た前半と、客の思い出である「僕」から見た後半の2つの部分に分かれている ことを理解しよう。
②登場人物のセリフや行動から、気持ちがどう変わっていっているのか、なぜその人物がそのように言ったり行動したのかを読み取れるようにしよう。
③登場する言葉の意味を理解しておこう。
④新しく登場する漢字の読み書きを出来るようにしておこう。
⑤作者について基本的なことを確認しておこう!
「少年の日の思い出」テスト対策ポイント①
「現在」と「過去」について理解しよう
この小説は、「私」が主人公である「現在」と、「僕」が主人公である「過去(思い出)」の部分に分かれているよ。
「現在」の部分
現在の部分では、「私」が主人公で「客」をおもてなししているよ。
子供が生まれてからまた「ちょう集め」を始めた「私」の話をきっかけに、2人で「私」の収集を見ることになったね。
自分も情熱的な ちょうの収集家だったという「客」だけれど、いざ ちょうを目にするとすぐに戻してしまい、ちょう集めにはつらい思い出があると、過去の思い出を語り始めるね。
ここから先の「思い出話」が後半の「過去」の部分になる よ。
「過去(思い出)の部分
過去では、「客」が自分の思い出を語るので、今度は「僕(客の子供の頃)」が主人公になっているよ。
本文では、「僕は、八つか九つのとき、ちょう集めを始めた。」という一文から後半の「過去」の部分が始まっていることを意識してお こう。
とても情熱的に ちょう集めをしていた「僕」だけれど、とても珍しいクジャクヤママユを手に入れたエーミールの話を聞いて、部屋へ勝手に入って持ち出してしまい、見つかりそうになって慌ててポケットに突っ込んだことで大切なちょうを潰してしまったんだよね。
正直に友人には打ち明けるものの、エーミールは怒るわけでもなく「僕」のことを軽蔑した。
代わりに自分の持っているコレクションを譲ろうとしても、エーミールには「僕」の収集なんか要らないと拒絶されてしまった。
「僕」は一度起きたことはもう償いできないと悟って、自分の ちょうを全て指で粉々につぶしてしまった。
「少年の日の思い出」テスト対策ポイント②
登場人物の行動や気持ちを理解しよう
ここで特にテストで出る可能性が高い部分をひとつひとつ確認していくよ。
「友人」が、「もう結構」と言って
「私」のちょうを戻して箱の蓋を閉じた
→友人は、自分も少年の頃は ちょうの熱情的な収集家だったが、その思い出は自分で汚してしまっていて、「私」のちょうを見ることでその汚された思い出がよみがえってしまうから、「もう、結構(もう見たくない)」と ちょうを元に戻したんだね。
「僕」は、自分の収集を仲間に見せずに
自分の妹たちだけに見せていた
→「僕」の両親は立派な道具をくれなかったが、ちょう集めの仲間である他の者は、ぜいたくなものを持っていたので、恥ずかしくて自分の幼稚な設備を自慢することができなかったんだね。
妹以外には収集を見せない「僕」が、
隣の子供に捕まえたコムラサキを見せた
→「僕」が捕まえた青いコムラサキは、「僕」が住んでいたところでは珍しいちょうだったから、得意のあまり誰かに見せたくなって、「せめて隣の子供にだけは見せよう」と考えたからだね。
「僕」は隣の子供のことを妬み、嘆賞しながら憎んでいた
→隣の子供は先生の息子で、非の打ちどころがなかった(欠点がなく完璧ということ)。
子供なのに「非の打ちどころがない」というのは、「僕」にとって気味が悪いものだった。
また彼の収集はこぎれいで、手入れも正確で、珍しい技術も持っていて、模範少年だったからだね。
カンタンに言えば、「出来過ぎて気に食わないヤツ」といったところだね。
「僕」は隣の子供に二度と獲物を見せなかった
→せっかく捕まえた珍しいコムラサキを見せたのに、隣の子供は「珍しい」と認めはしたもののそのコムラサキの欠陥を発見したり展翅の仕方が悪いと難癖をつけたから、嬉しかった気持ちが台無しになってしまったからだね。
「僕」がエーミールのクジャクヤママユを盗んだ
→「僕」たち ちょう集めをしている仲間の中でクジャクヤママユを捕らえた者はまだいなかったし、「僕」も本の挿絵で見たことがあるだけだったため、「僕」にとっては熱烈に欲しいものだった。そんなクジャクヤママユをエーミールがさなぎからかえしたという話をきいて、もともとは「見せてもらう」つもりでエーミールの部屋へ行ったんだ。
でも、エーミールがいなかったので、どうしても見たかった「僕」は展翅板にまだ留められていたクジャクヤママユを勝手に見てしまう。
クジャクヤママユの1番の特徴である四つの大きな斑点が展翅するための細長い紙で隠れてしまっていたので、「僕」は紙切れを取り除けるために留め針を抜いてしまう。
そしてとうとう斑点を目にすると、その美しさにどうしても「この宝を手に入れたい」という気持ちに逆らえず持ち出してしまった。
ポイント:この時の「僕」は、純粋に「手に入れたい」という気持ちだけで持ち出してしまっているよ。それが「盗む」ことだということは意識していないね。だから、不安や罪悪感はなく、「大きな満足感」しか感じていないんだ。
「僕」が、クジャクヤママユを持った手を上着のポケットに突っ込む
→「手に入れたい」という気持ちだけでクジャクヤママユを持ち出した「僕」だったけれど、エーミールの家の女中が階段を上がってくる音を聞いてハッと我にかえったんだね。
「自分は盗みをしてしまった」という事をあらためて理解して、大きな不安に襲われるよ。
そうして、「見つかったら大変だ」と咄嗟にクジャクヤママユを上着のポケットに隠してしまったんだね。
エーミールの部屋へ引き返す
→「盗みをしてしまった」という恐ろしい事実に気がついた「僕」は、その不安と罪悪感に耐えられなくて「ちょうを元に戻さなくては」と思って部屋へ引き返したんだね。
「僕」が母へ告白をした時の母の対応
→「僕」のお母さんは、「僕」が盗みをしてしまったことを告白すると驚いて悲しんだけれど、「僕」を叱りつけたりすることは無かったね。
これは、「僕」が自分の犯してしまった罪についてお母さんに告白すること自体が、どんな罰を受けるよりも もう十分「僕」にとって辛いことだということを分かっていたからだね。
そして「僕」にこれからどうするべきかを助言してくれたね。これは「僕」のためを思って、罪を償うために誠意をもって対応すべき、と教えてくれているんだね。
なかなか謝りに行くことができない「僕」
→「僕」は、なかなかエーミールのところへ謝りに行くことが出来なかったね。
他の友達だったら、すぐに謝りに行けたけれど、エーミールのところへは行きづらい理由は、エーミールにはどうせ自分の事を信じてもらえないだろうと思っていたからだね。
何を信じるかというと、はじめからクジャクヤママユを盗むつもりなんてなくて、ただ見てみたかっただけ、そしていざ目にするとどうしても欲しくなってしまって持ち出してしまっただけ。そして、潰してしまったのもワザとではなかったということだね。
エーミールは「僕」を怒鳴りつけなかった
→「僕」の告白を聞いたエーミールは、ただ舌打ちしただけで、怒ったり怒鳴りつけたりすることはなかったね。
これは、もちろんクジャクヤママユを潰されてしまったことに怒っていなかったとかではなくて、「僕」が「盗み」をするような卑怯なやつで、大切なちょうを潰してしまうような「ちょうの扱いまでひどいやつ」と決めつけて軽蔑したからだね。
つまり、「こんな卑怯なやつに怒ったって仕方ない、怒る価値もない」と思ったということ。
自分の手でちょうを全て押しつぶしてしまった「僕」
→「僕」は、何とかして償いをしようと、自分のおもちゃや収集を全てエーミールへ譲ろうとしたりしたけれど、エーミールはそれを全て拒絶したね。
「僕」は本当は「盗むつもりで部屋に入った」わけでもなかったし、もちろんクジャクヤママユをわざと潰してしまったわけでもなかった。
でも、エーミールは聞く耳も持たず「僕」のことを悪漢で、ちょうを酷い扱いするヤツだと決めつけてしまった。
「僕」は、「一度起きてしまったことはもう償えない」、「もうどうしょうもない」と絶望したんだ。そして「僕」の収集にはエーミールにとって「価値がない」と言われてしまったようなものだったんだ。
だから「僕」は、自分の手で自分のちょうを全て押しつぶしてしまうことで、自分で自分を罰したんだ。そして、同時に「もうちょう集めはしない」と心に決めたんだね。
「少年の日の思い出」テスト対策ポイント③
登場する語句の意味を確認しよう!
※「少年の日の思い出」の中で使われている意味を紹介しているので注意してね。
色あせる | 【意味】色が薄くなって、くすんで見えること。 【本文】窓の外には、色あせた湖が・・ |
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よみがえる | 【意味】再び戻ってくること。 【本文】自分の幼年時代のいろいろの習慣や楽しみ事が、またよみがえってきたよ。 |
たちまち | 【意味】非常に短い時間のこと。 【本文】たちまち外の景色は闇に沈んでしまい・・ |
そそる | 【意味】ある感情や、行動を起こすように誘うこと。 【本文】幼年時代の思い出を強くそそられるものはない。 |
熱情 | 【意味】激しい、熱い思いのこと。 【本文】熱情的な収集家だったものだ。 |
けがす | 【意味】美しいもの、清らかなものをきたなくしてしまうこと。 【本文】残念ながら自分でその思い出をけがしてしまった。 |
打ち込む | 【意味】なにか物事に熱中して取り組むこと。 【本文】僕は全くこの遊戯のとりこになり、ひどく心を打ち込んでしまい・・ |
身にしみる | 【意味】しみじみと深く感じること。 【本文】あの熱情が身にしみて感じられる。 |
むさぼる | 【意味】あまりに夢中になってしまって、自分を忘れてしまうこと。 (本来は欲深く望むという意味)【本文】あのなんともいえない、むさぼるような、うっとりした感じに襲われる。 |
微妙 | 【意味】細かく複雑なので、カンタンには言い表せない様子のこと。 【本文】そうした微妙な喜びと、激しい欲望との入り交じった気持ちは・・ |
展翅 | 【意味】昆虫を標本にするために、羽を広げて板に留めること。 |
非の打ちどころがない | 【意味】完璧で、欠点が全くないこと。 【本文】この少年は、非の打ちどころがないという悪徳をもっていた。 |
悪徳 | 【意味】人の道にそむく心や行いのこと。 【本文】この少年は、非の打ちどころがないという悪徳をもっていた。 |
果たして | 【意味】思っていたとおり・案の定。 【本文】果たしてそこにあった。 |
あいにく | 【意味】具合が悪いことに・都合の悪いことに。 【本文】あいにく、あの有名な斑点だけは見られなかった。 |
さしずめ | 【意味】さしあたって・今の局面で、つまり。 【本文】さしずめ僕は、大きな満足感のほか何も感じていなかった。 |
良心 | 【意味】悪をしりぞける、正く行動しようとする心。 【本文】その瞬間に、僕の良心は目覚めた。 |
下劣 | 【意味】人間性や考え方が下品なこと。 【本文】自分は盗みをした、下劣なやつだということを悟った。 |
・・・ばかり | 【意味】今にも〇〇しそうな様子 【本文】そして、泣かんばかりだった。 |
忍ぶ | 【意味】我慢すること・耐えること。 【本文】この告白が、どんな罰を忍ぶことより・・ |
おそらく | 【意味】きっと・多分 【本文】おそらく全然信じようともしないだろうということを・・ |
丹念 | 【意味】心を込めて取り扱うこと。 【本文】壊れた羽は丹念に広げられ・・ |
・・・よしもない | 【意味】方法がない・手段がないこと。 【本文】しかし、それは直すよしもなかった。 |
冷淡 | 【意味】興味を持たず、同情する心ももたない様子 【本文】彼は冷淡に構え、以前僕をただ軽蔑的に見つめていたので・・ |
・・・を盾に | 【意味】○○を理由にして。 【本文】冷然と、正義を盾に、あなどるように僕の前に立っていた。 |
あなどる | 【意味】馬鹿にして軽く見ること。 【本文】あなどるように僕の前に立っていた。 |
根掘り葉掘り | 【意味】細かいところまで何もかも残らず 【本文】母が根掘り葉掘りきこうとしないで、僕にキスだけして・・ |
「少年の日の思い出」
作者について
作者のヘルマン・ヘッセは、ドイツの詩人・小説家。
ノーベル文学賞を受賞しているよ。
他の有名な作品には、「郷愁」「車輪の下」「青春はうるわし」「デミアン」「がらす玉演戯」などがあるよ。
「少年の日の思い出」
まとめ
- まずはあらすじを読んで物語の流れをつかもう
- 物語は、「私」と「客」が登場する「現在」を書いた前半と、「僕」が主人公になる客の過去の部分の後半に分かれている。
- 登場人物の行動や気持ちを細かく理解しておこう。
- 物語に登場する語句の意味を理解しておこう。
- 作者について基本的なことを確認しておこう。

